諏訪貴子メッセージ

    〇    中小企業も、自分が見えなくなっている

中小企業は、消費者のニーズやどのようなものを造ればよいのかを、これまで大企業から教わっていた。「町工場」ならぬ「待ち工場」でよかった。
    しかし、グローバル化の中での「欧米流資本主義」の行き過ぎのせいだろうか、いまでは、大企業との間に商社が介在し、「安ければどこからでも買う」という価格競争ばかりになってしまった。育てるとか、共に成長するという感じがなくなってしまった。ゆえに、中小企業は自社の強みをしっかりと把握し、「待ち工場からの脱却」をしなくてはならない。
    本来商社は様々な製品を独自のルートを使い販売する事が事業目的のはず。集めた情報を分析し、戦略を立てるというやり方だった。その方が付加価値は高いはずなのだが、現在は同業種の価格競争を促し、コストで顧客満足を得ようとしている。
    もともとコストダウンなどで頭を悩ませることが多いなか、中小企業の経営者は、「考える時間」も「ゆとり」もなくなっている。大企業などと直接情報交換できればよいが、そうでないと、自分の強みもわからなくなっている。懇談会で、活躍を期待されるミドル層の多くが、自分のスキルを分かっていないという話があったが、それと同じ状況かもしれない。

    〇    組んで付加価値を産むことのできるフロンティアが広がっている。

自分も10年前に父の会社の事業承継をした。いろいろチャレンジをし、経営計画を立てながら、スリム化などもしてきた。働き手のモチベーションを上げるため、交換日記をしたことなど、具体的な事例を、いまは講演させていただいている。こうした活動を通じて、自分が伝えるとともに、自分も教わることも多い。そのような情報の直接なやりとりが、もっとあればよいと思う。
    他者とのかかわりのなか、ドーナツのカタチの中で、自分を見つめ直そう、組むことで付加価値を上げようというメッセージが懇談会にあったが、これは企業でも同じ。企業の間の「つながり」や「組むこと」を強めていけば、もっと新しいモノづくりのヒントや投資の可能性を見つけることができるはず。
    いまは見えていないフロンティが、まだまだ広がっている。「組むこと」や「つながり」をどうやって確保するか?多額の予算を投入せずとも、こうした成長戦略にも力を割いていってはどうか?

    〇    自分をもっと表現しよう

自分の価値がわからないというが、日本人は、自分を「表現」しないし、できない。人の目を気にしすぎている。もっと自己表現力を高める為の教育も必要なのではないか?
    そうするなかで、自分で自分を見つめ直し、よりよく理解することもできる。これも主体性を考えていくうえで、大切なのではないか?

    〇    国はいろいろやってくれているが、それは伝わっていない

中小企業者の間で話をしていても、みな不公平感がいっぱい。国は、補助金やいろいろな施策をやってくれているが、自分たちには届いていないし、不公平だと感じている。

    〇    わかりにくい行政

補助金の申請書の書き方がわかりにくいと申し上げたことがある。その結果、申請書の枚数は工夫して減らしていただいたが、根本的な問題が解決していない。
    例えば、「事業目的」を書けと言われても、そのような抽象的な書き方に現場は慣れていない。行政事業レビューに参加したことがあるが、シートの事業目的を見ると、役人ですら、ポイントを外して書いていることが多い。むしろ枚数が増えてもいいから、一問一答形式で、具体的に小分けにして聞いてもらった方が、何を書いたらいいかがわかる。
    同じく、国の事業のお金の流れなどを見ると、「事業目的」と「やっていること」が、ときどき全然合っていないことに驚く。そのような事業を続けておいて、よいのだろうか?

    〇    予定調和の審議会でなく、本当に国民が議論をする場を作って、ともに考えよう。

審議会などに呼んでいただくことが多いが、方向性が最初に決まっていることも多い。
    せっかくだから、参加する人の知恵をもっとだしてもらい、それを活かしていけば、もっとよい結論や、国民の間での理解の高まりが期待できるのではないか?今回の懇談会のような取組みを継続していったらよい。