石戸奈々子メッセージ

我が国が直面する課題は、経済であれば「成長」、社会では「少子化」、行政は「財政再建」が挙げられる。国としてはこれらへの処方が急がれる。
    一方、本懇談会のテーマである「持続性」(経済)、「パブリック」(社会)、「民主主義・革新」(行政)は、より長期的な、「国のかたち」を再構築しようとするものであろう。
    とはいえ、国民は、高邁な議論以上に、具体的な施策、つまり国が何を行い、国民が何をすべきかの方向性を求めるものと考える。
    懇談会としては、長期的な目線を保ちつつ、打つべき政策をアウトプットとして考えておくのがよいのではないか。

    この観点から1・7回の多岐にわたる振り返りを踏まえると、「情報化/IT化」に(1つの)方向を求めるべきではないか。コミュニティ形成、異文化・異世代コミュニケーション、教育情報化、行政のIT化、そして社会運動。これらの基盤をなす情報化を一層推進することが進む道と考える。
    日本はブロードバンドの整備やデバイスの普及などITの構築面では世界先端を行く。しかし、教育・医療・行政といったパブリック部門でのIT利用度や、企業経営層のIT利用度という点では後進的である。オープンデータの取組も始まったばかりと言ってよい。
    これは制度面など国の努力に求められる面もあるが、世代格差、企業・国民の認識なども原因となっており、社会全体が取り組むべき課題として共通認識を持つ必要があろう。

    短期的な課題にしろ、長期的なテーマにしろ、現在、我が国を覆う問題に立ち向かうには、変わることに対する不安を吹き飛ばすことが必要と考える。デジタル教育を推進していて感じるのは、社会が変化することに対する拒否感だ。
    20年の停滞で閉塞した空気を換えるには、政治・行政によるリーダーシップの発揮を求めることと合わせて、国民側から変革していく機運を高めていきたい。突破型のメッセージが出せれば良いと考える。