地下水涵養

地下水涵養に関して、先進的に取組を進めている地方公共団体等を紹介します。

安曇野市

長野県安曇野市は、三川合流部と呼ばれる犀川・高瀬川・穂高川の合流部を含む松本盆地の中央に位置し、地下水・湧水の恩恵を古くから享受してきましたが、近年、地下水位が低下傾向にあり、地域を代表する産業であるわさび栽培に深刻な影響を及ぼし始めていました。これを機に、地下水を保全する具体的な対策を望む声が高まり、以来、「安曇野市地下水資源強化・活用指針(平成24(2012)年8月)」で掲げた、『地下水を市民共有の財産』とする基本理念「安曇野ルール」に基づき様々な地下水保全の取組を進めてきました。
取組の当初、安曇野市では地下水利用に関する届出や規制がなかったため、地下水・湧水がどのような状態にあるのか詳しく知られていませんでした。このため、平成22(2010)年7月に「安曇野市地下水保全対策研究委員会」を立ち上げ、まずは市内の井戸設置や利用の状況、毎年どれくらいの水が供給され出ていくのか、地下水の存在する量が昔と比べてどれくらい減ったのかといった実態調査から始めました。
平成24(2012)年8月に「安曇野市地下水資源強化・活用指針」(以下、指針)を制定、平成25(2013)年3月に「安曇野市地下水の保全・涵養及び適正利用に関する条例」を制定しました。また、具体的な実施方針は、平成29(2017)年3月に「安曇野市水環境基本計画(マスタープラン)」として策定しています。

また、平成24(2012)年度~28(2016)年度までの5年間、転作田の連作障害や抑草効果といった水田機能の維持、地力増進を促進する取組の一環で、副次的効果として水田からの人工涵養を期待する「地下水涵養(麦後湛水)検証事業」を行われ、2平成28(2016) 年度の試算では97.0万m3が地下に涵養されました。また、平成27(2015)年8月の地下水賦存量は平成19(2007)年8月に比べて年間56万トン相当の回復が確認されています。

平成31(2019)年2月8日には、安曇野市が参加するアルプス地域地下水保全対策協議会で「地下水の保全及びかん養に関する指針」を策定しました。地域共有の貴重な財産である松本盆地の地下水を、将来にわたり守り育てるために、協力して施策を推進し、住民や事業者と協働して、地下水の保全及びかん養並びに適正利用に向けたに取組むこととしています。

熊本地域

人口50万人以上の都市で水道水源を100%地下水で賄っている都市は、熊本市が日本で唯一であり、熊本地域11 市町村で水源涵養林整備や水田湛水事業などの地下水保全事業に取り組んでいます。

熊本地域の地下水涵養量は、年間約6億4千万m3と見積もられています。このうち水田からの涵養量が2億1千万m3と全体の3分の1を占めており、水田が地下水涵養の重要な役割を果たしていることが明らかになっています。特に、菊陽町と大津町にまたがる白川中流域は地下水プールと呼ばれており、平成16年(2004)度から線虫駆除など営農の一環として転作田に水を張ることにより地下水を涵養する「白川中流域水田湛水事業」が行われています。

熊本地域の地下水量の保全のためには、白川中流域以外の台地部(菊池市、西原村、御船町、益城町等)においても、新たな水田湛水事業の実施や拡大が必要です。
公益財団法人くまもと地下水財団が、地元関係機関との協力・連携により、大津町、益城町、西原村、甲佐町、御船町で冬期湛水事業や水田オーナー制度を推進しています。

各家庭では、お米をはじめ地元産農産物を消費することで、地下水を育む農業を応援することができるウォーターオフセットにも取り組んでいます。「ウォーターオフセット」とは地下水を育む田畑で栽培された農産物(農産加工品)や、それを食べて育った畜産物を購入・消費することで、地下水保全につながる取り組みです。