地下水汚染対策

地下水汚染対策に関して、先進的に取組を進めている地方公共団体等を紹介します。

秦野市

秦野市では明治23年から水道水源として地下水を利用しており、市民の中に地下水の公共的な位置づけの理解が根付いていましたが、昭和40年代の急激な水需要の増大により地下水位の低下や湧水枯れが生じ、水道水源確保への懸念が増大しました。
このような背景から水循環の実態把握調査結果も踏まえて、取水事業者との協定により地下水保全事業への協力金の納付を求め、その後、地下水位は徐々に安定しました。
一方、平成元(1989)年1月に名水の汚染が発覚し、井戸水を飲用利用している市民にも不安が広がったことから、平成元(1989)年10月に地下水汚染対策審議会を組織し、全市的な調査を行い、平成6年1月に「秦野市地下水汚染の防止及び浄化に関する条例」を施行しました。
この条例は、汚染原因者負担を原則とした国内では類を見ないもので、以降、この条例に沿って水質浄化事業を実施した結果、地下水質は大きく改善し、平成16(2004)年には「秦野盆地湧水群」の「名水の復活」が宣言されました。
また、市内の一部に残るテトラクロロエチレン等の有機塩素系化学物質により汚染された地下水の水質改善を目的として、平成8(1996)年度から地下水の浄化事業を継続して実施しています。

都城盆地(宮崎県都城市・三股町・高原町、鹿児島県曽於市)

宮崎県南西部から鹿児島県北東部にかけて位置する都城盆地は、東に鰐塚山系、北西に霧島連山に囲まれ、水道水源をはじめとした多くの用水に地下水を利用していますが、生活排水や家畜排せつ物、施肥、工場排水などを起因とする窒素負荷によって、地下水汚染が懸念されています。
平成7(1995)年より宮崎県および鹿児島県内の市町で「都城盆地地下水保全対策連絡協議会」を設立し、宮崎大学農学部や工学部と共同で調査・研究を進めた結果、都城盆地の井戸は、硝酸性窒素濃度の環境基準を超えている割合が全国平均より高いことが判明し、緊急対策が必要となりました。
このため、平成15(2003)年5月に宮崎県、鹿児島県、市町、関係団体および有識者などによる「都城盆地硝酸性窒素対策推進連絡会議」を立ち上げ、平成16(2004)年6月に「都城盆地硝酸性窒素削減対策基本計画」を策定しました。また、平成16(2004)年8月には関係団体、事業者、および市民を交えた「都城盆地硝酸性窒素削減対策協議会」を立ち上げて、効果的な地下水保全対策を進めています。

調査の開始から30年近くが経過し、硝酸性窒素濃度が環境基準値を超過する井戸の割合は年々減少しており、井戸所有者の地下水に対する意識の向上にもつながっています。
また、都城盆地の土壌に供給される窒素供給量の削減のために「資源循環型畜産」および「環境保全型農業」を推進しています。