領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会提言

「領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会」は、平成25年4月より会合を重ね、同年7月に懇談会での議論の成果を報告書として取りまとめ、公表した。 前回の報告書における提言の内容(「力による現状変更への反対」、「法の支配」の強調等の第三国の共感を得られるメッセージの発信等)は、領土・主権をめぐる内外発信に関する戦略的な方策を包括的に示したものであった。今般、これまでの政府の施策の成果やこの2年間の領土・主権をめぐる国内外の情勢の変化を踏まえ、前回の報告書のフォローアップとして、本有識者懇談会において、以下の提言を取りまとめた。

1.対外発信の内容

対外発信にあたっては、前回の報告書における提言の内容を基本としつつ、以下の点にも留意すべきである。

(1)一貫した国際法重視の姿勢の強調

日本は、領土・主権をめぐる情勢に関して、物理的な力の行使による現状変更は許さないこと、一貫して国際法を重視し、平和的方法により国際法に基づいて対応してきていることを十分にアピールすべきである。

(2)領土・主権に関する相手方の主張への迅速な対応

領土・主権に関する相手方の主張に迅速に対応していくことが重要である。

(3)発信対象のニーズに応じた発信

国際情勢や各国メディア事情に通じた専門家とも連携しながら、発信対象のニーズや関心に応じたきめ細かい発信を行うことに留意する。

(4)第三国に対する発信

国際社会の広範な理解を得るため、米国をはじめとして、アジア、欧州等、幅広い地域に発信することが必要となってきている。

2.重層的対外発信の強化

対外発信にあたっては、前回の報告書における提言の内容を基本としつつ、以下の点にも留意すべきである。
政府による対外発信の強化に加えて、政府以外の主体がより効果的に対外発信を行うことのできる環境の整備に一層努めていく必要がある。

 
(1)海外赴任者、在留邦人、留学生等に対する啓発の推進

海外赴任者、在留邦人、留学生等を対象に、ソーシャル・メディア、パンフレット、動画、フリーペーパー等を活用し、日本の領土・主権に関する正確な知識を伝える啓発事業を実施する必要がある。

(2)対外発信力を有する人材の育成

日本の領土・主権をめぐる問題に関して、十分な知識を備えるとともに対外的に強い発信力を持つ人材の育成を図ることが重要である。そのためには、若手の学者や幅広い分野の専門家が海外で発信する機会を一層確保していくことが有益である。

(3)国内外の関心層に対する情報提供の推進

 日本の領土・主権をめぐる問題に関して、諸外国において正しい理解が進むよう、国内外の関心層や政策コミュニティーの人々への迅速な知識・情報の提供を一層推進するための施策を講じていく必要がある。

3.国内啓発の強化

領土・主権をめぐる政府の施策の遂行には、国内世論によるサポートが不可欠であり、教育現場との連携も含め、国内啓発を引き続き強化する必要がある。その際、領土・主権をめぐる問題に関して、対話を通じた相互理解や法の支配の下で平和的解決を目指すことの重要性に関する啓発も必要である。

(1)世論調査の結果を踏まえた国内啓発の強化

竹島及び尖閣諸島に関する世論調査の結果を踏まえて、国民各層の意識・関心を高めるため、今後、専門家を招いた領土・主権に関するセミナーの実施やウェブサイトの充実等による広報・啓発を検討すべきである。

(2)教育現場を通じた更なる啓発の強化

各学校における啓発を更に推進していくため、教育現場で活用できる資料等を一層充実させていく必要がある。

4.関連資料の保全、専門家の育成

竹島及び尖閣諸島に関して、日本の主張を裏付ける国内外の資料の保全や活用、調査等に従事できる専門家の一層の育成が必要である。

(1)資料保全のための支援

日本の主張を裏付ける資料の保全や活用を行う体制を早急に整えるべきである。

(2)関連資料の外国語訳による活用

日本の主張を裏付ける重要な関連資料に関して、海外の関心層や政策コミュニティーの人々が一層利用できるよう、一次資料等の外国語訳(特に英訳)を進めるべきである。

(3)学術的な調査・研究を行う専門家の育成、支援

領土・主権問題をめぐる歴史的な経緯や文献・史料に関する学術的な調査研究や収集に携わる学識・経験豊富な専門家の取組を引き続き支援するとともに、将来を見据えて、若手の専門家の育成を含めた体制整備を図る必要がある。

5.領土・主権に関する発信の前線に立つ地元への支援

国内啓発の強化を図る観点からは、国民が領土・主権に関する問題を身近に感じることが重要である。特に、領土・主権に関する発信の前線に立つ地元が領土・主権問題に継続して取り組んでいけるよう、政府としても地元の取組の後押しを行う必要がある。

(1)地元の地域振興と連携した取組の推進

領土・主権に関する発信の前線に立つ地元の魅力を広め、地域振興を進める取組と連携しつつ、領土・主権問題を啓発するべきである。

(2)地元における取組の全国的な普及の促進

島根県をはじめとする地元で行われている領土・主権問題に対する取組を、地元の協力を得ながら、他の地域にも普及させるべきである。


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