協議会設置事例

地下水マネジメントの実施状況

平成30年12月に、内閣官房水循環政策本部事務局が各地方公共団体へ行った「水循環基本計画見直しのためのアンケート」、及び令和元年7月に行った「地下水マネジメント実施状況調査」の中で調査した結果は次のとおりです。

地下水協議会の設置範囲は様々であり、単独の地方公共団体で設置する場合、帯水層の広がり等に応じて複数の地方公共団体や都府県にまたがって設置する場合、都道府県全域又は地域毎に設置する場合など、地域の実情に応じて異なります。

単独の地方公共団体による地下水協議会(西条市:西条市地下水保全協議会)

西条市は約400年前から、地下水を活用した干拓事業で拡大した町です。地下水の涵養域には大量取水企業や地下水汚染につながる化学薬品等を使用する企業を誘致しないという「まちづくりの掟」があり、農業関係者を中心にその掟を忠実に守ってきた歴史があります。
地下水への依存度の高さを背景に、昭和29年頃から地下水調査が始まり、平成8年から平成11年にかけて西条平野の地下水賦存量の調査が行った結果、地下水を水道水源に利用している地域において地下水塩水化の兆候がみられました。
このため、平成19年から「道前平野地下水資源調査委員会」を組織し、また、水文学・地質学・行政学・法学等の専門家による「地下水法システム研究会」を立ち上げ、「地下水保全管理計画」を平成29年8月に策定し、さらに平成30年11月に、市民・事業者・市の職員および外部専門家(アドバイザー)により構成される地下水保全協議会が設置されました。

単独の地方公共団体による地下水協議会(北杜市:白州町地下水保全・利用対策協議会)

山梨県の旧白州町では、昭和50年代からの地下水取水企業の地域参入を機に水道水源への影響の懸念が広がりました。
地域住民の保全の要望を受けた町は、平成8年に「白州町地下水保全条例」を制定するとともに、大規模事業者に働きかけて「白州町地下水保全・利用対策協議会」を平成10年に設置し、事業者が費用分担して設置した観測井によるモニタリングを開始しました。
平成16年11月1日、旧白州町を含めた北巨摩郡7町村が合併し、北杜市が誕生した後も観測は継続されており、取水事業に対する地域住民の理解にもつながっています。

複数の地方公共団体による地下水協議会(佐久地域流域水循環協議会)

佐久地域は、小諸市、佐久市、東御市、小海町、川上村、南牧村、南 相木村、北相木村、佐久穂町、軽井沢町、御代田町、立科町の12市町村からなり、日本最長の信濃川水系千曲川の源流を抱える最上流部に位置しています。
周辺の山々から涵養された豊富な地下水は、地域におけるほぼ全ての水道水の水源となり、農業・林業・水産業・酒類製造業など産業にも利用されるとともに、水にまつわる祭事などの文化の継承の礎ともなっています。
また、佐久地域にとって、良質で豊富な水を信濃川の下流域に送り続けることは、社会的に果たすべき役割ともなっています。
一方、近年過剰な施肥などを原因とする浅井戸の硝酸態窒素汚染等の環境問題を背景に、健全な水循環の維持または回復の重要性が増しています。
しかしながら、水は地域の枠を超え、長い年月をかけて循環していることから、水循環に関わる取組、特に地下水等水資源の保存の取組は、市町村の枠に収まるものではなく、流域全体で連携し取り組む必要があります。
このような背景から、佐久地域では、2018年8月に佐久地域流域水循環協議会を設立し、2021年8月に佐久地域流域水循環計画を策定しました。

佐久市ホームページ: 佐久地域流域水循環計画

複数の地方公共団体による地下水協議会(アルプス地域地下水保全対策協議会)

地下水位の低下傾向や一部湧水の枯渇等を受けて、安曇野市内各地のわさび組合等から出された地下水保全対策の要望に対して、平成21年3月、市長が地域審議会役員会で地下水保全条例制定に着手する考えを示しました。これを受けて平成22年7月に設置された国・県・市関係部署・利害関係者による「安曇野市地下水保全対策研究委員会」が平成24年8月に「安曇野市地下水資源強化・活用指針」を策定・答申し、市長が指針を決定。この指針に基づき平成25年4月に「安曇野市地下水の保全・涵養及び適正利用に関する条例」が施行されました。
一方、平成19年2月の中信四市(安曇野市、塩尻市、大町市、松本市)の市長懇談会における安曇野市長からの提案により、平成20年2月に第1回目の中信四市地下水行政担当職員情報交換会が開催されました。その後、平成23年2月の中信四市市長懇談会における安曇野市長からの「アルプス地域地下水保全対策協議会(仮称)」の設立の提案を受けて、平成23年10月に協議会及び準備会の設立について各市が了承し、また、準備会からの要望を受けて長野県も加わり、平成24年2月に「アルプス地域地下水保全対策協議会」が設立されました。

複数の地方公共団体による地下水協議会(栃木市・小山市・野木町地盤沈下防止連絡協議会)

平成11年3月、小山市、野木町、旧藤岡町(現栃木市)は、関東平野北部地盤沈下防止等対策要綱の保全地域である3市町の地下 水利用者及び関係行政機関と栃木市・小山市・野木町地盤沈下防止連絡協議会を設置し、 地下水位計からリアル タイムの情報を入手して、その水位が「点検水位」、「節水水位」を下回った場 合には、協議会を通じて地下水利用者へ「点検要請」、「節水要請」を実施し ています。

都道府県全域を対象とする地下水協議会(鳥取県持続可能な地下水利用協議会)

鳥取県では、大山地域に地下水を利用した飲料水製造企業が相次いで進出し、県議会における地下水資源の枯渇や利水への影響についての活発な議論を経て、持続的な地下水利用のための制度検討を開始しました。
平成19年度から3年間実施した地元大学との共同研究による地下水調査結果を踏まえ、平成23年に「持続可能な地下水利用に係る検討会」を設置して条例化の検討に着手、平成25年に「とっとりの豊かで良質な地下水の保全及び持続的な利用に関する条例」を施行しました。
平成25年4月以降、協議会設立準備会が事業者説明会を開催し、平成25年7月に条例に基づく「鳥取県持続可能な地下水利用協議会」を設立しています。
令和5年3月現在、水道事業会員17事業所、一般事業会員82事業所、賛助会員2事業所で、総会員数は101事業所となっています。

地域毎の地下水利用対策協議会

地下水の適正利用の推進等の事業を行うため、経済産業省が昭和40年~平成19年度まで121地域で実施した地下水利用適正化調査の地域等で設立された各地域の「地下水利用対策協議会」が22協議会(令和4年7月現在)あります。