懇談会が注目する3つの視点(3つの軸)

I 新しい時代の行政の役割を描き直そう(「あれもこれも」から「あれかこれか」へ。「国依存」、「国中心」のパブリックから「国民一人ひとりも共に支える」パブリックに変わる中での、新しい国・行政のカタチへ。)

【問題意識】
    行政は時代の要請に応えて必要な役割を懸命に果たさなければならない。しかしながら、資源は限られている。税を集めて、国や行政が何でもやる時代は終わりを迎えつつある。これからの行政が担うべき役割や提供できる価値は何か。
    無謬性に駆り立てられ、国に過度な完璧性を求めてきたが、それは税を負担することで国を支える私たち国民にとっても、持続的な姿なのだろうか。また、本来、時代時代で行政に求められる役割は異なり、行政に完成形などないはずだが、行政は時代の変化に柔軟に対応できているのだろうか。行政と私たちとの協働や共創は、どうすれば実現できるのか。
    高齢化の進展のなかで、行政へのニーズは増えていく。単に行政を小さくすれば良いというものではない。同時に、資源は限られている。政府を徒に大きくするべきではなく、行政には、より効果的・効率的に仕事をして貰う必要がある。個人の主体性と結びついて、新しい国・行政の革新(イノベーション)を進めていかなくてはならない。

  1. 国にしか担えないパブリックの領域は何か。リソースが限られる中で、あれかこれかの優先順位は誰がどう決めるか。
    • 資源は限られている。社会全体を存続させるために、国がやることとして何を残し、何をあきらめるか  森田
    • 国家は国民全体に対して責任を負っている。弱い部分、遅れた部分に対する最低限の配慮だけは失うべきではない。  大屋
    • 弱者の定義、国を維持するために必要な政策の優先順位づけ  横田
    • トリアージのような状況についての社会的合意をどうするか?あらかじめフレームワーク化しておくことの重要性。  第4回
    • 皆で共有できるリスクは民間(保険)でできる。皆で共有できないリスクをどうするか?  第4回
    • 残されるものについても、国と民間の責任分担をどうグラデーションで描くか?  第9回
    • 国家財政の持続性に最もインパクトを与える社会保障(医療、年金問題等)におけるプライオリティをどう付ければよいか?なんとか上手く世論形成ができないか?  小林
    •   (例示)
    • 延命治療についてどう考えたらよいか?望むサービスにより、負担に差をつけられるか?ペナルティを与えられるか?どう死ぬかではなく、どう生きるかという視点をあらためて考える必要。  第8回
    • 予算制約を曖昧にしてきた日本の医療。医療にかかるコストを「見える化」して判断。  第8回
    • 支えられる側が増えていく中で、今までのように支えきれるのか?(アリとキリギリスの新展開)  第8回
  2. 古くなった役割は捨てて、担うべき新たな役割を考えていこう。
    • 完璧な守りの限界からレジリエンスへ  第4回
    • 参加型の社会では、行政専管の事業以外は、「組む相手」がいるのだから、行政の一つの役割は、つなぐことやベストプラクティスの横展開になる(横浜共創の挑戦など)。地域特化型の解決法の場合、全く違う地域に同様のニーズがある場合もあるが、ヨコ展開は行政でないと難しい。  第7回
    • ダウンサイジングや多様化のなかでの新しい行政の方向性(教育におけるクリエイティブな学校マネジメント、地域や家庭との協力、一斉授業の限界や反転授業への転換、データの積極的活用など)  第3回  藤原
    • 求められる人財育成(正解を教えるから課題設定と納得解の模索へ)と教育格差への対応  第3回
    • 日本は、国民が持つスキルの種類などで見ると多様性がかなり高い。この多様性を行政にも活かせないか?  第9回
  3. 行政がリーダーシップを発揮し、内部・外部を問わず「組むこと」で課題解決力を高めよう。  第6回
    • 「組むこと」で行政の質、付加価値を上げる。
    • 「困った子は困っている子。」(丸山元校長)。問題は子供にとどまらず、現役世代や高齢世代でも同じ。様々な関係者が「組むこと」で相談・対処することの有効性。
    • 役割分担の明確化ではなく、「事業目的の共有化」と成功へのコミットメントがカギ。タテ割りで完結せず、問題意識を「共有」。その上で、連携、協働することでソーシャル・イノベーションが生まれる。  第7回
    • 全体を理解し、リードする「プロジェクト・マネジャー」が成否を左右。
    • 協働型の社会をどのように広めればよいのか?
    •   (例示)
    • 産業育成と雇用関係部局間の連携、情報共有の一層の推進。
    • 教育と福祉をつなぐ「動ける人材」スクールソーシャルワーカーの意義。一方で職業として成立していない「処遇」との不整合。
  4. 行政の一部に「永遠のβ版」的発想を導入し、トライアル・アンド・エラーを認めていこう。
    • webの世界は、時間をかけずにスタートし、随時改良するような開発スタイルを取るという「永遠のβ版文化」。行政にこのようなトライアル・アンド・エラーは許されるか。  第5回
    • すべて完璧にならなければスタートできないとなると、住民は飽きてしまう。住民参加型で事業を進めるなら、どうしてもβ版的発想が必要。
    • 無謬を担保するには、多くの行政コストを要する。試行錯誤を許容するイギリスの行政では、合理的説明があれば責任を問わないというあり方。その背景にある行政に対するコスト意識。  第9回
    • 政府が国民の要望を柔軟に受け止めて実行に移す際には、行政当局が完全無欠でない対応を行うことを、一定の許容範囲のなかで国民が認めることが必要。  土居
    • 広く薄く全体に対して確実に保障されるべき国家の機能(保障領域)とそれを超えて実験的・挑戦的な試みが許される部分(実験領域)とを切り分けるための、国民的な合意形成が必要。そのための基準づくり、チャレンジ枠の設定。  大屋  第7回
    •   (例示)
    • 行政と多様な民間が情報共有やサービス提供で実験的に連携し、高齢者のケアに早めに介入していく。  第8回
  5. 開かれたパブリックを実現するために、ITを活用し、行政とつなげよう。  第5回
    • オープンデータの推進により、住民が課題を発見し、可視化・共有化し、優先順位を付け、境界を越え、国を超えて知恵を借り、自ら課題解決する「参加型社会」が実現。
    • オープン311、ちばレポの試み  小林弘  千葉市
    • 行政のIT化、特に教育、医療などのIT化が重要。「素敵な監視社会」における、利便性とリスクのトレードオフ。
    • マイナンバーに関する国民の意識の変化。
    • ITの推進について、個人、企業、経営者、世代を超えて、社会全体が取り組むべき課題としての共通認識を持つ。  石戸
    • IT技術力と課題解決力の両方の素養を持った人材育成が必要。
    • ITに興味が無い役所幹部と政策を担っていないIT部局のずれ。
  6. ITも活用して、オープンかつ科学的に政策をデザインしよう  第9回
    • 客観的定量的なデータの収集と蓄積と公開。客観的なデータと恣意的なデータを峻別。経験や勘も用いて因果を見出し、事業の有効性を評価。
    • 行政をインプット(予算、人員、時間)ではなく、アウトカムで評価。
    • 政策を科学的に考える土壌はあるか?お客様視点でのサービス提供はできているか?  第5回
    • 政策の作り手である政治家・官僚と受け手の国民・マスコミ双方とも科学的政策立案への理解は十分か?
    • 国はいろいろやってくれているが、どこまでそれは届いているか?
    • 住民の価値判断、民主主義をどのように取り入れるか?サイレントマジョリティの声をどう掴むか。  佐藤
    • 行政の助成金などは、どのように配分されているのか国民はあまり分からないし、開示されていても面白くないから興味を持たない。例えば、クラウドファンディングの手法を用いて、国民にこういうアイデアは必要かと問うことは可能か?  米良
    • わかりにくい行政を改めよう。行政事業レビューで、国の事業を具体的にみると、「事業目的」と「やっていること」が合っていないことに驚く。事業目的という「抽象的な言葉」を「具体的」にブレイクダウンしてみれば、何を考えればよいかがわかる。  諏訪
    • 国家は昔よりも国民の声を聴きたいと思っているし、自分たちが完全に正しいとも思っていない。懇談会の取組みがすべて成功したわけではないが、形式については十分な実験ができた。今回のような形式を取り入れた会議が増えていけば、「国行政のあり方は変わるのではないか」という希望を持てた。  古市
    • 行政をインプット(予算、人員、時間)ではなく、アウトカムで評価。
    • 方向性を最初から決めているのではなく、さまざまな人にさまざまな形で参加を求め、もっと知恵を出してもらい、もっと良い結論や国民理解の高まりが期待できるような取組みを継続してほしい。政府の有識者会議を双方向のコミュニケーションの場にする取組み。  諏訪
  7. 霞ヶ関にチェンジメーカーを増やそう。
    • 官僚自身が「イントラプレナー(組織内の変革者)」  槌屋
    • 働き方と活躍の場を広げることで、イノベーティブで起業家精神を持って活躍する官僚を増やそう。週に3日公務員、1日企業人、1日NPOボランティアといった働き方。  第7回  田中
    • 100点主義からのリスクテイク枠を認めよう。プロジェクト・マネジャーとしての役人。そのあり方を考え、公務員の評価軸を修正していくことも。  横田
    • みんなのためだけが動機だと、抵抗にあって長続きしない。自分ごとにすることで変革マインドを持続しよう。  第10回
  8. 国やコミュニティの方針に加わらない・加われない人々もいる。行政の責任でどこまで強制すべきか、考えていく必要がある。
    • 自分は保護してもらうが、国のために犠牲になるなんて嫌ですよ、誰かがやればいいでしょというような国民ばかりになったら、国は成り立つのか?  森田
    • 権利を与えられる「国民」とは何か?義務を果たさない人は「国民」ではないのか?  森田
    • 認知症の人をコミュニティは、どう受け入れてくれるのか。行政の役割ではないか。  第2回
    • 避難指示に従わないなど、拒絶する人に行政はどこまで立ち入れるか?  第4回
    • 他方で、関わりたくても関われない人がいることを理解することも大事。住民参加といっても、その度合いはさまざま。「参加の階段」を一歩ずつ登っていくきっかけを社会にたくさんつくっていくこと。その方法論は?
    •   (例示)
    • ITを活用した、手話通訳サービスの導入など。  第7回