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2022年度版 女性国家公務員の活躍事例 2022年度版 女性国家公務員の活躍事例

多様な働き方で誰もが活躍できます

国家公務員として、さまざまな分野、地域で活躍し、時には失敗もしながら、着実に経験と成長を重ねてきた女性職員たち。
今回は、キャリアアップの過程で、仕事と生活の両立を実現してきた女性職員たちについて、
過去の活躍事例と、その後、彼女たちが更に経験を積んで成長した現在の活躍事例をご紹介します。
彼女たちを見て、「こうなりたい」または「こんな風には頑張れない」など、さまざまな感想を抱くと思います。
あなた自身が、共感できる、尊敬できる「要素」を探してみてください。
皆さんの一歩踏み出す勇気として、その「要素」が参考になれば幸いです。

01
土井 志保さん
2016年度(過去インタビュー)財務省 国税庁 名古屋国税局 総務部 税務相談室管理係長
※掲載記事は、2015年10〜12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成10年度〜平成27年度)
平成10年 名古屋国税局入局(国税専門官採用)浜松西税務署法人課税部門(企業に対する税務調査担当)
平成14年 四日市税務署法人課税部門国税調査官(企業に対する特別調査担当)〜結婚(夫も同じ職場)
平成15年 長男出産 育児休業(約1年)
平成17年 長女出産 育児休業(約3か月) 四日市税務署法人課税部門国税調査官(企業に対する税務調査担当として復帰)
平成19年 津税務署法人課税部門国税調査官(企業に対する税務調査<広域担当>)
平成24年 松阪税務署法人課税部門上席国税調査官(法人部門の総括事務及び法人税審理担当)
平成26年〜 名古屋国税局総務部税務相談室管理係長(税務相談室内の運営、他部門との連絡調整に関する業務等)

「私流仕事と育児の両立」

仕事との出会い

 私は、最初に浜松西税務署に赴任して以降、10年以上法人税調査を担当してきました。
 調査の相手は、小さいながらも「会社」を経営し、従業員やその家族の生活をも担っている中小企業の社長で、自分の父親よりも年上の方が大半。そんな相手と渡り合い、納めていない「税金」を見つけてくるのが仕事でした。
 最初は、経理関係書類の見方も分からず、「こんなことも知らないのか!」と社長から怒鳴られ、署に泣きながら帰ったこともありました。
 また、私がいくら説得してもしらばっくれていた社長≠ェ、上司の前ではなぜか正直に話をし、「申し訳なかった」とあっさり謝る。そんな悔しい思いもしました。
 しかし、最初の上司からの「調査は3年やると面白くなる」との言葉通り、3年目から不正経理の把握が多くなるにつれ、「税務調査」という仕事に充実感を覚えるようになっていきました。

出産後の生活

 仕事を始めて5年目、年子で2人の子供を出産し、育児休業を2年間取得。その後、下の子供が5か月になった頃、2人の子供を保育園に預けて仕事に復帰しました。可愛い子供のそばにもう少しいたい気持ちもありましたが、仕事から長く離れることへの焦りが、早めの復帰を決めた一番の理由でした。
 5時に仕事を終え、保育園にお迎えに行くのは私の役目で、帰宅後も甘えたくて仕方がない2人の子供の相手をしながら夕食作りをするなど、まるで毎日が戦争のようでしたが、頑張っているのは私だけではなく、夫や子供たちも一緒です。夫も子供のおむつ替えやお風呂、それに洗濯、ごみ出しなど子育てや家事に積極的に協力してくれました。
 夜9時頃には子供に添い寝しながら私も就寝していましたが、そんな中でも、朝は4時半に起き、ランニングや読書をしたりと自分の時間を作っていました。

復帰後の仕事

 復帰後も引き続き法人税調査の担当となり、2年のブランクがあることからちゃんと仕事ができるのだろうかと不安でしたが、当時の同僚や先輩からのフォローもあり、スムーズに復帰することができました。
 調査日程等は以前から決まっているため、子供の急な発熱の時等は、夫とどちらが休むかで朝から喧嘩となった日もありました。しかし、調査日程等の計画は自分で組めるので、保育園や小学校の行事等あらかじめ分かっている場合は、他の職員に迷惑をかけずに休暇を取得することができるという点ではありがたかったです。
 また、育児のため残業ができない中、限られた時間で最大限パフォーマンスを発揮するため、疑問に思ったことはその場で確認する、機動的な調査展開を図る、物事の見極めを早くする、検討課題は集中して処理するなど、効率的に調査を進めることで出産前以上に充実感が得られたように思います。

最後に

 昨年から、税務相談室の管理係長となり、初めての国税局勤務となりました。
 今までやってきた調査の仕事とは違い、庶務や他部課等との連絡調整、相談室における環境整備等を担当しています。また、来年には、庁舎移転が予定されているため、その準備等にも携わっています。
 現在、通勤も遠くなり、帰宅時間も遅くなりましたが、これまで仕事を続けてこられたのは、上司や同僚の理解、それから近くに住む両親や夫の協力、そして何よりも子供の頑張りに支えられてきたおかげであり、本当に感謝しています。

一日のタイムスケジュール例
05:00
起床
06:00
朝食〜子供と一緒に
06:20
出勤〜私、夫、子供の順に出発
09:00
職員への連絡、メールの整理、報告書類の作成、打合せなど
19:30
退庁
21:00
息子のサッカースクールのお迎え(ママ友4人と分担して送迎)
21:50
帰宅〜娘からの連絡メモを確認
22:00
息子と夜食
23:30
就寝
女性職員へのメッセージ

子育て中でも、勤務時間中は甘えることなく一生懸命仕事に取り組むことで、必ず周りの応援と理解が得られると思います。そのような仕事のしやすい環境を自らつくること、それが一番大切だと思います。

2022年度(現在インタビュー)財務省 国税庁 名古屋国税局 桑名税務署 総務課 課長
※掲載記事は、2021年12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成28年度〜現在)
平成28年 名古屋国税局課税第二部法人課税課 監理第二係長(署法人課税部門の内部事務の指導担当)
平成29年 名古屋国税局課税第二部消費税課 連絡調整官(消費税に関する質疑調整、他部門との連絡調整事務担当)
平成30年 名古屋国税局課税第二部資料調査第一課 連絡調整官(資料調査課の運営、他部門との連絡調整業務担当)
令和元年 津税務署法人課税第二部門 統括国税調査官(企業の税務調査担当)
令和2年 津税務署酒類指導官部門 筆頭酒類指導官(酒類業免許の審査、酒造業者の管理・調査・指導担当)
令和3年 桑名税務署 総務課 課長

周りの意見を聞いて、対応すべき理由を整理
多くの情報から最適な方向を決定

 これまでは国税局を中心に、様々な業務を経験してきましたが、令和3年の7月からは桑名税務署の総務課長として、署長を補佐し、署の運営全般に携わっています。この桑名税務署は小さな組織。そのため通常であれば署長の下には副署長がいるところを課長が担い、各部門の取りまとめや対外的な窓口となる業務を担当しています。

 これまで経験がなかったような業務にも関わることが多くなりましたが、その際に心がけているのは物事を想像で判断しない、ということ。分からないことが発生した場合は周りの意見を聞き、なぜそのような対応をしているのかなどをヒアリングしながら調整し、理解をした上で今後の方向性を決めるようにしています。

 私の役割は、職員みんながそれぞれの担当業務をスムーズに進行できるように、バックアップをすることだと思っています。近年では超過勤務時間の縮減など、ワーク・ライフ・バランスに関する意識の変化は実感していますね。しかし、コロナ禍でテレワークが推奨される中、私たち税務署の業務は守秘義務に関わる情報も多いため、署内でしか対応できないものも多いです。

 一方、署内でも様々なシステムが改善され、業務スピードがアップしているのです。最近では職員同士「しっかり休もう」という目標を掲げて、分散して休暇を取るなどの対応もしています。遅くまで仕事をしている人が評価されるわけではないという考え方が定着し、闇雲に遅くまで仕事をする時代ではなくなったことを実感します。

家族の闘病と向き合う時間を守るため、
介護休暇の活用や業務の最適な分担

 この桑名税務署に配属になる前、実は夫のがんが判明し、介護休暇などの制度を使い定期的な休暇を取得しながら、勤務を続けていた時期があります。当時は名古屋国税局の勤務だったのですが、上司や同僚の理解や協力があり、夫の闘病期間を一緒に過ごすことができました。その後は自宅に近い津税務署へ異動に。職場と病院を行き来しながらの毎日を経て、家族全員で夫を看取ることがかないました。

 仕事は好きでしたし、看病のために辞めるという選択肢はありませんでしたね。そんな私をチームのみんなが支えてくれて、業務を分担し、互いにフォローしながら効率よく仕事をする体制を作っていけたと思います。気持ちよく仕事をし、定時で帰る。みんなが「17時で仕事を終えるんだ」という意識を持ち、上司という立場の人間が率先して定時で帰っていく姿を見せることも重要です。仕事は常にオーバーフローしているわけではないはず。一人ひとりの心がけがあれば、無理のない働き方を共有できる時代になってきているのですね。

 また、夫が亡くなった後の心理的なダメージは大きく、喪失感や不安に押しつぶされそうになることもありましたが、仕事に熱中することで気持ちの安定をはかることもできました。当時は子どもが中学生と高校生でしたが、仕事を続けることで経済的な心配もなくなり、「仕事があってよかった」、今振り返ってみても心からそう思っています。

一人に業務が集中しないよう広い視野で進行を管理、
無理のない働き方を推進

 現在勤務する桑名税務署でも、これまでの経験を活かし、業務の分担をしながら部下たちをまとめることを大切にしています。一人に業務が集中しないように目を配り、臨機応変な対応をすること。そして私自身は進行管理を徹底することによって、職員みんなが定時で帰れる環境が定着してきました。

 子どもが小さかったころ、「ママのような仕事には絶対就きたくない」と言われてしまったことがあります。きっと子どもたちは時間に追われて働く両親に対して、寂しい気持ちを抱いていたのでしょう。しかし夫が亡くなったことや、子どもたちが高校生になり、同じ大人同士として将来の進路を考え話し合う機会も増えたことで、私の仕事や働き方を分かってくれるようになってきました。「ママが働いていてよかった」「自分たちもママのようにずっと続けられる仕事に就きたい」という言葉を聞けたことは、嬉しい変化です。

 組織で仕事をしていますので、どんな成果も自分一人の力ではなく、周囲の協力という強い味方があってのこと。これまで様々な異動を重ねてきましたが、どの仕事で得た経験も、今の自分の力になっていると感じます。

女性国家公務員の皆さんへ

 多くの異動を経験し、幅広い業務に携わることができました。その中で私自身、こうなりたいと思ってキャリアを積んできたわけではなく、いつも手探りで歩んできたと思います。

 以前は自分の仕事を効率よく進めることを重視していました。しかし今は、困っている人がいれば声をかけ、アドバイスをするなど、働きやすい職場づくりに貢献することを意識しています。みんなが同じ方向を向いて、気持ち良く勤務できる場を築いていくことが今の目標です。
 これまで私自身の育児期間や家族の介護期間は、多くの上司や同僚から協力や理解を受けてきました。この強い味方があってこそ、現在の私のキャリアがあります。このサポートを今度は私が返していく番。それぞれが、それぞれの形で最大限の力を発揮できる職場のあり方を考えていきたいです。

 私が入庁した頃は、ロールモデルとなる女性職員が少ない時代でした。今はどんどん女性が増え、活躍している職員がたくさんいます。私は男性にしかできない仕事というものは存在しないと思うんです。現在は働きやすさを支える制度も整ってきているので、勇気を持ってチャレンジをしていってください。きっと自信となる経験が得られるはずです。

02
北野 明子さん
2016年度(過去インタビュー)防衛省 自衛隊千葉地方協力本部 援護課 予備自衛官室長
※掲載記事は、2015年10〜12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成7年度〜平成27年度)
平成7年 防衛庁入庁(U種(行政区分)採用)(陸上自衛隊人事統計隊システム設計科プログラム係 人事システムの開発・保守)
平成11年 陸上自衛隊 補給統制本部情報処理部 システム技術課システム技術主任(補給システムの保守)〜長女出産
平成16年 陸上自衛隊 補給統制本部総務部人事課職員人事管理室人事主任(事務官等の人事業務)〜長男出産
平成17年 情報本部 総務部人事教育課職員人事管理室人事資料主任(事務官等の人事業務)
平成20年 陸上自衛隊 衛生学校総務部総務課職員人事係長(事務官等の人事業務)
平成22年 陸上幕僚監部 人事部補任課職員人事管理室補任専門官(事務官等の人事業務)
平成24年 東北方面総監部 人事部人事課職員人事管理室補任専門官(事務官等の人事業務)〜単身赴任
平成26年〜 自衛隊 千葉地方協力本部援護課予備自衛官室長(予備自衛官等業務)

「母として職業人として」

自衛隊の「営業マン」

 自衛隊地方協力本部(地本)は、各都道府県における防衛省・自衛隊の窓口、いわゆるワンストップサービスを担う機関で、一般企業でいえば営業所のようなところです。自治体との連絡調整、自衛官等の募集・再就職援助、広報等地域に密着した幅広い業務を行っています。私は予備自衛官等に関する業務を担当しています。予備自衛官等は、普段は社会人として働きながら決められた日数の訓練に参加し、いざという時には国防や災害派遣等の任務で活躍します。企業を訪問して説明を行ったり、部隊に出向いて調整したりといった自衛隊の「営業マン」としての仕事にやりがいを感じています。

職場の理解と職場への理解

 地本では、緊急事態に備え、職員(陸海空の自衛官と事務官)が24時間交替で当直に就きます。予備自衛官等の訓練や自衛官の採用試験は休日に行われることが多いのですが、子供の学校行事等で勤務に就けない日は、勤務割りを調整してもらい、家庭との両立を図っています。ちょっとした職場の配慮があるかどうかで働きやすさやモチベーションは大きく変わってくると思います。
 また、家庭では日頃から職場のことを話すようにしています。万一大規模災害等が発生すれば長期間帰れないので、異動の都度子供を職場に連れて行き見学させています。お母さんは、こんな場所でこんな人達と一緒に働いているのかと具体的にイメージできると子供も安心するようです。

仕事はチームで

 育児や介護等、家庭の事情を抱えているのは女性ばかりではありません。年上の男性も含め7名の部下と働いていますが、皆それぞれ私生活上の懸案を持ちつつ、公私のバランスを図り職場に来ています。お互い様と助け合い、チームとしてパフォーマンスを発揮できればよいので、信頼関係と情報共有を大切に「チームで仕事をする」環境を整えるよう心掛けています。私生活で心配事があると仕事に集中できないので、個人的なことも話しやすい雰囲気をつくり、特に子供がいる部下には、誕生日など家族の記念日に早く帰宅したり、計画的に休暇をとりPTAや地域活動にも積極的に参加して生活基盤を安定させるよう勧めています。

「母」の転勤

 国家公務員という職を選んだのだから、全国規模で広い視野で仕事がしたいと思っていましたが、子育てや介護の事情から通勤圏での勤務を続けていました。東日本大震災の翌年、宮城県への異動の打診があり、家族と相談の結果、当時中学1年の娘と小学3年の息子を夫に託し単身赴任することを決めました。「親の都合を子供に押しつけてかわいそう」「母親がいないなんて子供に悪影響がある」という声に心が揺れましたが、「自然体でいけば大丈夫」という言葉には救われました。何より、せっかく機会が巡ってきたのに、今行かなくていつ行くのかという気持ちが強かったです。子供達も「頑張って」と背中を押してくれました。
 初めての地方勤務では、仕事の幅が広がり、数々の気付きがあり、目の前が開ける思いがしました。この経験は、今の仕事に確実に活かされています。キャリアアップというのは、一足飛びにできるものではなく、こつこつ地道に経験を積み重ね、教訓を自分の中に蓄積していくことなのだと分かりました。
 私の場合には、自営業の夫が全面的に協力してくれ、母や妹が育児を手助けしてくれたので、思い切って単身赴任という選択をしましたが、方法はいろいろあると思います。子供がいるから無理と決めつけず、工夫すれば可能性が広がり、やれることが増え、仕事は更に面白くなるのではないでしょうか。

一日のタイムスケジュール例
05:00
起床、子供の弁当作り
06:30
娘(高1)と出発
08:00
登庁
08:45
本部定例ミーティング
10:30
駐屯地で予備自衛官等制度教育
12:00
昼休み〜同僚とジョギング
14:00
企業訪問し、予備自衛官等制度説明
18:30
退庁
19:30
息子(小6)の習い事の迎え、帰宅
20:00
子供の宿題チェック、家事を夫と分担
23:00
就寝
女性職員へのメッセージ

仕事も家庭もカンペキを目指さないこと。他人と比較する必要はありません。自分なりの到達点を探しましょう。周囲への感謝の気持ちを忘れず、悩みはひとりで抱えこまず、信頼できる相談相手を見つけてください。

2022年度(現在インタビュー)防衛省 陸上自衛隊 基礎情報隊 第4科長
※掲載記事は、2021年12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成28年度〜現在)
平成28年 自衛隊 埼玉地方協力本部 総務課長(総務業務の統括担当)
平成30年 陸上幕僚監部 監理部総務課 隊史編さん官(部隊史の作成を担当)
令和3年 陸上自衛隊 基礎情報隊 第4科長(国内情報業務の統括担当)

集めた情報の質を保つため、
曖昧さを排除したルールの共有を徹底

 初めて管理職という立場となったのは、平成28年、自衛隊埼玉地方協力本部でのことでした。今思うと、当時はその役割に気負っていたのだと思います。ビジネス書などを読んで挑んだのですが、その知識はあくまでも借り物。メンバーとの意識にズレが生じ、信頼関係を上手く築くことができなかったのです。理想を押し付け空回りしていた当時の日々から、信頼というものは知識で構築するものではなく、日常の仕事ややり取りの積み重ねから生まれてくるものなのだと身を持って理解しました。

 その反省を踏まえ、現在所属する基礎情報隊では、メンバーと信頼しあえる関係を築けるよう報告や情報共有を重ね、コミュニケーションを取りながらチームで仕事をするということを大切にしています。この職場は新聞やインターネットなどの公刊資料から防衛問題に関わる情報を収集し、資料を作成するということが業務の中心となっています。メンバーによって集める情報にトーンの差があってはならないという性質上、誰が担当しても同じ質を保つ必要があります。そのためにもメンバー同士の意思疎通が重要なのです。

 コロナ禍にあってメンバーが顔を合わせることが減った時期があり、業務処理に関しては明文化をしていくことを重視しました。「こうしてくれるだろう」「分かってくれるはずだ」という暗黙の了解による曖昧さを排除し、業務ルールブックを作成してメンバー全員で共有したのです。過去の失敗から、管理者だからと自分の考えを押し付けるのではなく、個人の考え方を聞き取りながら、一人ひとりの認識の差を明らかにした上で、最適なルールを作成して情報収集にあたっています。

過去の先輩たちも未来の後輩たちも、
同じチームだという意識を

 防衛省に女性職員が増えていく中、高い能力を持っているけれど現在のライフスタイルを大切にしたいという思いから、地方転勤を避けたいと考える人も多いようです。転勤や単身赴任に対して尻込みをしてしまう気持ちも分かりますし、昇格しなくてもいいという考えも尊重したいと思っています。どんな選択肢を選んでもいいのですが、過去の先輩たちからつないできたバトンを未来へ渡していくためにも、環境が許すのであれば転勤という働き方も経験してみて、そこで得たものを次世代のための環境整備などに役立てることにもチャレンジしてほしいですね。

 前回のインタビューでもお話したように、私自身は家族と相談のもと宮城県への単身赴任を経験しています。その際の体験談や想いを伝えていくことも、私の役割の一つだと感じています。仕事をする上で何をモチベーションとするかは人それぞれですが、自分のためだけに頑張っていても限界があるのではないでしょうか。今自分が整備された環境の中で仕事ができているのは、過去に先輩たちがたくさんの苦労をして、少しずつ状況を変化させてきたから。今一緒に仕事をしている人たちだけが「チーム」ではない。過去の先輩方も、未来の後輩たちもチームだという意識を持つと、自分のやるべきことの意味を見出せるのではないかと思います。

 事情のある人が無理に転勤をしなくてはならないわけではありません。しかし少しでもチャレンジしてみたいという意欲があるのであれば、どうすればそのチャレンジと向き合っていけるのかを一緒に考えてきましょう。

がん治療を支えてくれた職場や家族
その配慮に感謝し、未来へつなぐバトン

 私は令和元年の末にがん治療のため3か月の病気休暇に引き続き4か月の病気休職という経験をしました。そして治療を終えて復職した後は、テレワークと出勤を併用しながら勤務に当たることで体力的に厳しい時期を乗り越えることができました。

 この時の体験をもとに、産前休暇前の同僚の女性職員の業務を、テレワークに適したものに切り替えることを提案し、柔軟な対応を実施してもらうことができました。私たちの仕事は職場外に持ち出せないものも多いので、テレワークを踏まえたルール作りをしていくことも今後の課題となっています。

 これからは育児だけでなく、介護や病気の治療などをしながら仕事を続ける職員も増えていくことでしょう。今はその制度を作り上げていく過渡期。テレワークなど多様な働き方は特別な人がやるものではなく、誰もが利用できるようにしていくことに大きなメリットがあることにも気づきました。これからはより柔軟な選択ができる体制となっていくのだと思います。

 病気治療によって長期間仕事を休むことになったことで、職場に迷惑をかけてしまったと落ち込んでいた時期もあります。そんなときに私の心に響いたのが当時読んだ本で知った「閑古錐(かんこすい)」という禅の言葉でした。「古い錐に新品のような鋭い切れ味はないが、人を傷つけず、使う人の手に馴染むように働いてくれる。人間も同じ。若い人のような集中力や瞬発力はないが、キャリアを重ねてきた経験と培われた判断力がある。」著者のこの言葉に勇気づけられ、私も閑古錐として、これからの公務を担う次世代の方々に貢献していくことが、これからの役割となると感じています。

女性国家公務員の皆さんへ

 現在所属している基礎情報隊でも女性職員がたくさん活躍している中、私はその最年長者となりました。彼女たちにこれまでの経験を色々と話し、それぞれのキャリア形成の相談に乗っています。私の考えを押し付けるのではなく、その人が本当にどうしたいのか、その人のキャリア・アンカーは何なのかを話しながら、前向きな選択を一緒に考え、背中を押してあげたいですね。

 私ががんを告げられ頭が真っ白になった時、精神的な支えになってくれたのががん経験者のための相談施設でした。そのときのサポートをお手本に、人の話を聞き、整理し、ともに未来を考えていくことができたらと思います。育児や介護や病気を経験し、職場や家族に助けてもらいながら仕事を続けてきた私だからこそできる貢献の仕方があるのかもしれない、そう思っています。

 仕事を続けていけば、迷いが生じることも多いと思います。そんなときは自分が納得できる選択をしてください。自分が考えて選んだことであれば、きっとそれは最善のことだと思えるでしょう。人との出会いも、仕事の機会も大切な縁。しっかり受け止めていってください。

03
原田 郁さん
2018・2019年度(過去インタビュー)公正取引委員会 審董局 管理企画諜 公正競争監視室長
※掲載記事は、2017年11〜12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成11年度〜平成29年度)
平成11年 公正取引委員会事務総局入局(I種(法律区分)採用)取引部取引企画課係員(部内・他部局・他省庁との総合調整業務)
平成12年 審査局係員 独占禁止法違反事件の審査業務(カルテル事件の審査、課徴金算定・審判対応)
平成13年 審査局係長
平成15年 人事院長期在外研究員(米国ジョージタウン大学ローセンター)
平成17年 官房国際課課長補佐(国際関係業務<OECD等の国際機関における対応>)
平成18年 長男出産 産前・産後休暇、育児休業(1年3か月)
平成20年 審査局企画室総括補佐(独占禁止法違反事件の審査業務<法解釈・運用の確認>)
平成21年 長女出産 産前・産後休暇、育児休業(7か月)
平成22年 経済取引局企業結合課課長補佐(国際的な企業結合案件の審査業務、企業結合規制の見直し業務)
平成24年 次女出産 産前・産後休暇、育児休業(7か月)
平成25年 経済取引局調整課課長補佐(他省庁との調整業務<法令調整、相談対応>)
平成26年 取引部相談指導室総括補佐(事業者・事業者団体の活動に関する相談対応、知財関連ガイドラインの見直し業務)
平成27年 官房国際課総括補佐(国際関係業務<海外当局との連携強化、海外への広報活動>)
平成28年 経済取引局総務課総括補佐(局内・他部局・他省庁との総合調整業務)
平成29年〜 審査局管理企画課公正競争監視室長(独占禁止法違反事件の審査業務<不当廉売・差別対価事案への対応>)

「チャンスを諦めるのは勿体ない―制約がある中での心がけ―」

子育てをしながらのキャリアアップを模索

 公正取引委貝会では独占禁止法の運用や競争政策の推進のために日々様々な業務を行っています。関連する業界についての理解も必要になり、外国当局との国際的な連携も年々必要性を増しています。入局以来、部署ごとに多くの経験をさせていただきましたが、その都度新たな知識が得られ、やりがいも大きく、全く飽きることなく仕事を楽しんでいます。

 私は長男、長女、次女と3人の子どもを出産する都度、育休を取得しております。長男の出産までは無定量無制限な働き方も可能だったのですが、総括補佐といったポジションに就くと国会関係などで迅速な対応が必要となり、その途中で「お迎えの時間になったから帰ります」ということでは上司や同僚の負担も大きくなることから、しばらくはそのような対応の少ないポジションに配置するよう職場に御配慮いただいたのだと思います。

 長女出産後に異動した企業結合課では、当時、外国当局とも連携を取って審査する国際的な事案や、企業結合審査の制度自体をより時代に合ったものに改正するという業務があり、それらに携われたことはとても良い経験になりました。そういった経験もあって、子どもがいるからといって消極的な言い方ばかりしてチャンスを諦めるのは勿体無いのでは感じるようになりました。そのため、次女出産後は、「総括補佐といったポジションにもチャレンジしたいけれど、国会対応は係長さんと分担してやっていきたい」といった希望を表明し、局の総務課の総括補佐も経験することが出来て、管理職に昇任し、現在に至ります。そのような働き方を可能にしてくれた組織の配慮、これまでの上司や同僚に大変感謝しております。

夫との連携で日々乗り切る

 長男が生まれて私が1年3か月の育休を取った後に、夫が1年の育休を取りました。当時、義母がくも膜下出血で倒れ要介護状態となり、認知症の祖母の介護も義父が主に担っていた状況にあったため、夫は自分ももっと介護に関わりたい、子どもとの関わりも増やしたいという思いがあったそうです。

 夫の育休復帰後は共働き状態になるので、仕事と育児・介護を両立できるのか、子どもや自分たちが新しい生活に馴染めるのか不安でした。夫が介護のために利用した保育園での一時保育が、長男や私達夫婦にとって復帰後の良い練習になりました。

 これまでに育休のほか、7か月で保育園に入園した長女の授乳のため保育時間や昼休み短縮制度を利用し、現在は早出勤務を活用しています。日々夫婦で連絡し合い、行けるほうが保育園と学童のお迎えに行くようにしています。送り迎えの動線に無駄がないよう駅に近くて保育國のあるマンションに住む、ファミリーサポート制度や病児シッターも利用するなど、仕事との両立を図るために体制を少しずつ整えてきました。

 男性のほうが仕事と育児・介護との両立のロールモデルが少なく、職場の理解を得るにも難しい部分があると思うのですが、妻への思いやりを忘れず家族にとって最良の方法を模索してくれる夫にいつも感謝しております。また、自身もワーキングマザーだった実母が惜しみなく協力してくれることも有難く思っております。

制約のある中で心がけていること

 出産後は時間に制約がある分、部署の皆さんと業務の進捗状況や学校行事なども含めスケジュールをまめに共有することを意識しました。異動の際は内示をいただいた時点で、育児や介護の状況、早出勤務などの申請、子どもの体調不良時に御迷惑をかける可能性があるなど、まず新しい上司に説明して御理解いただくようにし、同僚にも事情をオープンにしてきました。

 管理職となってからは、部下との面談の機会があると、家族の状況や自身の健康状態など、何か上司に知っておいてほしいことはないか、必ず聞くようにしています。職員の多様性が進む現在、皆さん何かしらの制約は抱えているものですし、育児や介護の状況もオープンにする事で周囲の協力を得られた自身の体験から、そのように心がけるようになりました。

一日のタイムスケジュール例
05:30
起床、朝食
07:00
次女を保育園に預ける(夫は長男長女の登校見送り、家事(朝食分の食洗器セット、ロボット掃除機が動けるよう部屋の片付け、ゴミ出し))
08:30
登庁
09:00
決裁処理
10:00
厳正対処事案の処理について地方事務所と打合せ
11:00
対応方針について幹部に説明
12:00
昼食
13:00
幹部説明後の対応について関係部署と打合せ
15:00
決裁処理、担当班との打合せ
17:15
退庁(夫は18:15定時、以下の子どものケア・家事は夫も帰宅次第参戦)
18:30
長女を学童またはファミリーサポート協力員宅に迎えに行く(曜日により)次女を保育園に迎えに行く
19:00
帰宅、夕食、入浴
20:00
子供のケア(宿題・持ち物確認、学校・保育園・習い事への提出物準備、薬投与・塗布、歯磨き、次女への絵本読み聞かせ)、家事(夕食分の食洗器セット、洗濯)
22:00
夫への報告・連絡・相談、自分のケア(ヨガ・筋トレ・マッサージ、録画番組視聴、読書)
22:30
就寝
女性職員へのメッセージ

“Every cloud has a silver lining”、どんな困難な状況にも必ず希望があるものです。そして、「禍福は糾える縄の如し」、悪いことの次には良いことが来るものですし、自分の態度・考え方次第でピンチもチャンスになります。

2022年度(現在インタビュー)公正取引委員会 事務総局 審査局 第三上席審査専門官
※掲載記事は、2021年12月にインタビュー等により作成したものです。
【経歴】(平成30年度〜現在)
平成30年 経済取引局 取引部 取引企画課 相談指導室長(事業者・事業者団体の活動に関する相談対応)
平成31年 経済取引局 企業結合課 上席企業結合調査官
令和3年 審査局 第三審査上席審査専門官(独占禁止法違反事件の審査業務担当)

リモート環境での情報共有のため、
チームで取り組む環境づくり

 以前所属していた企業結合課では、企業の合併や株式取得などが競争上の問題を引き起こすこととならないか、審査していました。管理職として2つのチームを担当し、海外も含め外部とのやり取りも多く、コミュニケーション能力が鍛えられました。現在は、ユニットに所属するメンバーとともに、独占禁止法違反事件の審査を行っています。ユニットごとに担当事件の割当があり、背景となる業界の特性を研究しながら、違反に至った経緯や違反事実の解明をしていきます。企業結合審査も事件審査も前例の踏襲では解決しないものばかりですが、チームでひとつの案件を仕上げることができたときの達成感は非常に大きいです。

 審査をしていく過程では、方向性を大きく左右するような情報を早めに把握し、チーム内で共有することが欠かせません。管理職として、いかにメンバーの持っている情報をスムーズに集約して展開し、メンバー同士が話し合える環境を作っていくかが大切な課題です。コロナ禍もありテレワーク勤務が当たり前になっていますので、資料のデジタル化やこまめな情報更新を行うことで、リモート環境でも互いの問題意識をしっかり伝えていけるように心がけています。メールやウェブ会議での伝達に加えて、感染防止に配慮しつつ対面でのミーティングも行うなど、より良い環境づくりのためにチームで取り組んでいます。

チームのメンバーが個々を尊重する
環境の構築を目指して

 子育てとの両立のために以前からテレワークを利用していましたが、コロナ禍で組織全体として出勤回避が求められるようになったことは、大きな変化でした。テレワークと出勤を組み合わせて働くことが定着しつつあり、そのバランスも人それぞれ。多くの方がフレックスタイム制も利用し、ライフスタイルに合わせて勤務時間を選択するなど、多様な働き方が当たり前になってきているという実感があります。チームのメンバーが互いの状況に配慮し、個々のスタイルを尊重しあえる環境の構築が必要です。そして、一人ひとりの選択や異なる働き方を当たり前のものとして受け入れ、それぞれの得意分野を活かしてチームに貢献できるように、管理職として心を配っていくことが、今後とも重要な課題です。

これまでの経験を後輩たちに還元、
多様な働き方の支援へ

 これまで私が3回の産休・育休を取得し、夫は育休を利用したほか、実母や祖母の介護の経験もあります。そのため、これからお子さんを迎える職員や子育て中の職員からアドバイスを求められることがありますし、時には「夫婦での経験談を聞かせてほしい」と声をかけられることもあります。ここに至るまで多くの方にサポートいただいた分、私たちの経験で役に立つものがあれば喜んで還元していきたいです。

 その際に意識しているのは、自分の経験談を一般化しないということ。家庭のあり方や仕事のスタイルはそれぞれ違いますから、「これが普通」、「こうするべき」という押し付けをしないよう心がけています。私たち管理職も育児や介護をめぐる状況について最新の情報を学ぶなど、自らの認識をアップデートしていく必要性も感じます。最近、チームのメンバーで育休を取得した方がいますので、現在の制度の使いやすさや復帰後の状況などをヒアリングし、今後の環境改善につなげていきたいです。

 また、人事院主催の研修で知り合った他省庁の女性職員の方々と、10年以上にわたってメールなどで交流を重ね、仕事や子育ての悩みを共有しています。子どもたちが成長するに連れ、日々の送迎といったタスクは少なくなってきましたが、集団生活や友人関係でのトラブルなど、心のケアが必要な困りごとは増えているように思います。ゲームや動画との付き合い方についても、自分が子どもの頃とは状況が異なるので、対応が難しいと感じています。そういったときも、参考になる良い本があったとか、こんなやり方を試してみたとか、皆さんとの情報交換でヒントを得られることが多いです。子育ての相談やアドバイスだけでなく、他省庁で活用している便利なシステムなどの情報も得られて、視野も広がりました。プライベートでも仕事でも、自分にはなかったアイデアを取り入れて日々の試行錯誤ができ、省庁の枠を超えた研修によって職員同士の交流が生まれることの有り難さを実感しています。周りの皆さんにも、そのような研修の機会があれば是非活用するよう、積極的に声掛けをしています。

 私も含めメンバーそれぞれが、制度を活用しながら自分のやりたいことを実現できる環境を選び、人に任せられることは任せていく。そしてみんなが他者のバックグラウンドを尊重した多様な働き方が当たり前となる環境を作っていくために、力を注いでいきたいです。

女性国家公務員の皆さんへ

 近年、国家公務員の世界でも、ワーク・ライフ・バランスを意識した働き方を大切にする職員が増え、多様な人材を活かしていこうという流れが大きくなっています。様々な作業のデジタル化が進み、テレワークと出勤を併用した勤務が可能となるなど、職場環境も大きく変わってきました。そのような中、一人ひとりがさらに自分の適性を活かせる環境の整備のため、私も管理職として日々悩みながら頑張っています。異なる世代、異なる専門性を持つ人、みんながのびのび働き、選択肢の多い豊かな世の中を一緒に目指していきましょう。私自身、今後とも皆さんと一緒に学びアップデートしながら、その時々にできることを精一杯やっていく、そんなスタンスであり続けたいと思います。

人事担当者からのメッセージ
働き方改革、女性活躍促進への
取組について
深町 正徳さん
公正取引委員会 人事課 課長
アコーディオンを開く
※掲載記事は、2021年12月にインタビュー等により作成したものです。

職員が目指す職員像の実現に向けて支援

 私たち人事担当をはじめバックオフィス業務を担う部門は、表舞台に立って活躍する職員たちが気持ちよく仕事ができるよう、その環境を整える立場です。いわば黒子のような存在ともいえます。公正取引委員会の役割の中心である、独占禁止法の運用を行う部署では、情報の共有や意見のすり合わせが必要とされ、人間関係が業務の円滑な遂行を大きく左右します。そのため、800人ほど所属している職員たちをどのように配置すればより業務が効率的に進み、また、快適な職場環境となっていくのかということを常に意識しつつ人事業務を行っています。
 入局直後は満遍なく業務を経験できるように配属し、その経験を通じて本人の気づきや適性を引き出していくことも大切です。さらに管理職との面談、人事評価、身上申告書によるキャリアパスの希望などを踏まえ、最終的に本人が公正取引委員会において目指す職員像を実現できるような支援を重視しています。
 現在、新規で採用を行う職員における女性比率は50%。政府の目標とする35%を大きく上回り、男女の分け隔てなく採用を行っています。男性だからこの業務、女性だからこの業務、というような考えはありませんが、これまでの経験からは、一般に、女性の方が報告書などの作成を緻密に行う傾向があると感じています。法律を運用する職場ですので、データを細部まで確認し、しっかりと記録に残すことが得意な方は、より活躍できる環境といえるのではないでしょうか。
 女性職員が増え始めたのはここ20年ほどのことです。採用人数が少なかったころに入局した女性たちが勤務を続け、出産や育児の場面に向き合うことになる過程で、組織としても女性が活躍できる働き方とはどういうことなのかを議論し、改善を続けてきました。

 私自身も人事を担当する前は、企業結合課などの現場で多くの案件の審査を行っていました。タイムマネジメントがしやすい業務を担当していたこともあり、案件を上手く振り分けることで時短勤務の女性職員が働きやすい部門だったと思います。また、相手ありきの業務や出張を伴う業務については、資料分析の業務を任せたり、日時を調整しながら出張するなど、様々な工夫を重ねてきました。
 転勤は大きな課題の一つです。公正取引委員会で採用された一般職の職員は、若いうちに2年間ほど地方勤務を経験し、本局では経験できない幅広い業務を学ぶことが基本的なキャリアの流れとなっています。しかし結婚や出産のタイミングによっては転勤のタイミングをずらす、もしくは本人の地元への転勤とするなどの配慮も行っています。
 このような今までの試行錯誤や取組があって、現在の制度が少しずつ整備されてきたのです。数多くの先輩たちの経験を踏まえ、ライフステージが変化した職員が引き続き活躍できるよう知見を蓄えてきました。

 現在は職員たちがワークライフバランスに対する理解を深めていけるよう、様々な研修が行われています。若手からベテランの職員までが参加し、キャリアに関わらずそれぞれの立場に応じた啓発を受けることで、組織全体としての意識も変化していることを実感しますね。過去には残業をする職員が「一生懸命仕事をしている」と思われていた傾向がありましたが、現在ではその考え方も大きく変わってきました。いかに効率よく仕事をし、スマートに業務を進めていくかが評価される環境になってきているのです。プライベートの時間を大切にできるからこそ、いい仕事ができる、そのような意識が定着しつつあります。
 また、その他男女問わずキャリアアップ、スキルアップの研修も多数実施しています。当委員会で行っているのは、公正取引委員会としての業務を行う上で求められる専門的な知識を磨くもの。それに加えて、人事院などが主催して行うコミュニケーションやマネジメントなど業種を問わず身につけるべきスキルを習得する研修を活用するなど、職員の業務やポジションに応じて、受けるべき研修への参加を促すのも人事担当の役割の一つといえるでしょう。

 女性活躍促進に向けての研修や支援も多数実施しています。本局では、これまでライフステージの変化を経験してきた先輩女性職員たちの声を受け、同じような立場を経験した人からの部署をこえた情報共有の機会が必要だと考え、出産や子育てに対して必要な情報が得られるサポートも用意しました。
 妊娠のピアサポートとして、出産経験の職員を紹介し、相談できる支援も始まっています。「後輩たちのためなら!」と快くサポートに参加してくれる先輩が多いだけでなく、支援を受けた側も「次は私もサポートしていけるようになりたい」と考えているようで、いい相乗効果が生まれています。
 さらに情報交換の場として、部署が異なり面識はないけれど、同じような出産や育児の悩みを持つ職員を集め、気軽にコミュニケーションを取れる機会も設けました。共通の悩みを話し合うことで、お互いにいいヒントを得ていってほしいですね。
 『女性のキャリア支援研修』として、出産や育児を経験しつつキャリアップをした職員を講師とした研修も行っています。キャリア形成のモデルとなる姿を提示することで、自分の将来のキャリアに不安を持つ若手女性職員の支援になればと思っています。
 私たちは「やれることはやっていく」という考え方で、様々な取組を行っています。もちろん公務員独自のルールもありますので、その制限の中でどう時代にあった支援を実施していくか、それは今後の課題でもありますね。

女性国家公務員の皆さんへ

 女性の国家公務員が増え、その活躍とワークライフバランスへの対応が求められていますが、私たち各省庁の人事担当や人事院による制度設計が行われるなど、職場環境の整備が進んでいます。一人ひとりライフスタイルが異なり、また、キャリア形成の目標が異なる中で、各個人が考える理想の実現に向けて種々の制度を活用して、ますますの活躍を目指してほしいと思っています。
 今後は仕事と家庭、そして自分の理想とする姿との間で葛藤する職員の心のケアにも力を入れていく予定です。キャリアアップしたいけれど時間的な制約がある、多様な業務を経験したいけれど現状では難しい、そんな悩みに対するアドバイスや提案もしていきたいですね。
 私たち公正取引委員会は組織としての規模が大きくはないため、各職員に目が行き届く環境ではあります。そのため、きめ細やかな取組や対策が実施しやすいのも特徴です。常に様々な挑戦を繰り返し、職員の皆さんの意見を聞きながら、良いと思えるものはどんどん取り入れていく体制を取っています。
 公正取引委員会はもちろん、他の省庁でも、モチベーションが高く、優秀な女性職員の皆さんが、時間をうまくやりくりしながら活躍しています。仕事もプライベートも充実させながら、日本の発展に寄与してほしい、それが皆さんをバックオフィスから支援している私たちの願いです。そのために私たちは時代にあった働く環境を整え、制度を用意していきます。

過去の事例集等

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