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他国の主張分析

「黙認」による権原移転―主権の放棄は「軽々しく推定されない」

 竹島問題のように、領有権をめぐる紛争は、ある土地に対する権原を複数の国家が主張することによって発生する。このような場合、その土地の地位が明確になるとは限らず、それゆえに先占か時効なのかを決定しがたくなることも多い。このとき、重要な機能を果たすのが、関係国による黙認の有無である。

 黙認は、紛争当事国の一方が、他方当事国による主権者として行った活動や、主権の表示に対し、抗議しなかった場合に成立する。 ペドラ・ブランカ/ブラウ・バツ・プテーに対する主権事件で、国際司法裁判所は、係争島嶼の一つに対して、シンガポールがさまざまの行政権を行使していたにもかかわらず、マレーシアが適時に対応しなかったので、同島に対する主権が移転したと認定した。 同裁判所によれば、「領域主権並びにその安定性及び確実性がもたらす重要性から、当事国の行為にもとづく領域主権の移転は、その行為と関連事実により、明確に一点の疑念も残さず立証されなければならない。当事国の一方が、領域の一部に対する主権を放棄することになる場合には、特にそうである」。 すなわち、主権を放棄したとみなされてもいたしかたないほどに、何もしなかった場合、黙認による権原移転が成立することになる。領域主権、とりわけその安定性と確実性が国際社会の秩序維持にはたしている役割の重要性から、このような効果をもたらす黙認は軽々しく推定されない。国際裁判への付託提案は言うに及ばず、外交経路を通じた抗議を、「適時」行っていれば、黙認とみなされることはなく、黙認による権原移転も生じないのである。

抗議の重要性

 以上のように、韓国による竹島の「不法占拠」がどれだけ長期間続こうとも、日本が外交経路を通じて適時抗議を行っていれば、領域権原が移転することはない。 まして、これまで複数回にわたり、日本は竹島問題を国際司法裁判所に付託することを韓国に「提案」している。このことからも、日本が、韓国による「不法占拠」に同意していないことは明らかであり、時効や黙認が成立する余地はない。国際法上、「不法占拠」が「有効支配」になり、日本はもはや竹島の領有権を争えなくなる、といった事態にはなりえないのである。

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