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国土強靱化:私のひとこと vol.5

実際に起きてからでは何をするにも遅い。だから、備えておくことが必要。

アクサ生命保険株式会社 執行役 小笠原 隆裕氏

 東日本大震災をきっかけとして、危機管理・事業継続の観点での2本社体制の構築やCSR(企業の社会的責任)の観点での減災教育プログラムに取り組まれているアクサ生命保険株式会社。それらを担当されている小笠原隆裕氏(アクサ生命保険株式会社執行役)に話を伺いました。

 やはり東日本大震災がきっかけです。

 東日本大震災発生後、私たちは、被災地である東北をサポートする担当、東京本社を守る担当、そして福岡でバックアップオフィスを立ち上げオペレーションをする担当の3つにチームを分けて対応しました。バックアップオフィスを立ち上げたことは、取引先の企業から高く評価されましたが、実際には苦労の連続でした。突貫工事でいきなり200人規模のサイトを作ることには大きな負荷がかかりましたし、また東京本社が本当に機能しなくなった状態でこのオペレーションができるかという不安は残りました。

 大手の金融機関はバックアップ体制がしっかりできていると思いますが、私たちの規模の金融機関では、オペレーションが一か所に集中していたり、近接していたりするケースがあります。弊社の場合、オペレーションが東京に集中しているにも関わらず、東京から退避しなければならない事態は想定していませんでした。もちろん、このことが最大のリスクであることは分かっていましたが、その解決は後回しになっていました。

 震災の教訓を活かし、まず、社長直轄の危機管理・事業継続部門を立ち上げ、その解決に向けた検討を開始しました。一つの解決策として、人がいない状態でサイトという箱を置くだけのコールドサイトも考えられます。ただ、これは災害時に迅速な立ち上げを行えるかという不安が残りますし、人員を東京からそのコールドサイトに派遣できない可能性もあります。そもそも、バックアップが有効となるのは何も大きな災害だけとは限りません。例えば、アメリカのアクサでは、ハリケーン・サンディの時には、ニューヨークのミッドタウンにあったオフィスを閉じて、シラキュースをメインサイトに変更してオペレーションを行いましたが、そういうことは、大震災レベルではない自然災害でも考えられることです。そのため、経営会議で本社を二つに分ける決断をしました。


 企業にとって助成金の有無が決断する上での唯一の要因ではない

 まず、オペレーションが東京に集中している会社が、バックアップ拠点として他の都市を選ぶとしたらどこがよいのかという視点でいつくかの候補となる都市を選定しました。最後の都市を決める時には、自然災害リスク、社会インフラ、人材の供給力を重視しました。人材の供給力については、コールセンターなどを小規模の都市が複数誘致を行った結果、需給関係が悪化し結果的にコストが高くなるケースがあります。このことを念頭におきますと、弊社の場合は本社機能ですので、人材の供給力というのは非常に重要となります。札幌の場合、高等教育機関が複数あり、卒業後に北海道に残ることを希望する人材が多いということが判断の上で好材料となりました。

 それらに加えて、行政側の支援がきめ細やかでした。実は、企業にとって助成金の有無が決断する上での最大の要因ではありません。なぜなら、今回のようなサイトチェンジは、継続的なコストが永遠に続くため、当初の数年の期間の助成金はどんなに多額でもコストを補てんできるものにはならないからです。会社側の視点から申し上げますと、進出を果たして以降も継続的に行政と接点があり困ったことがあった時には相談ができる状態になっているということは非常に大きな安心感となります。「バックアップ拠点構想」を進められている北海道とは、話がしやすかったですね。危機管理や事業継続の世界は、マニアックと言いますか一般の方々にはすっと理解されにくい面があります。例えば、私たちが作る本社は、バックアップを目的としているため、災害時に一定の業務遂行能力を確保できますが、それを平常時と同じ100%にするためには、東京から人員を送り込む必要があります。このための交通手段をどうするかといったことも相談することができました。

 ソフト的な支援も心強いものがありました。札幌市は、転勤予定者向けに子育てや学校、生活関連の情報等をメールマガジンで配信してくれました。このような支援は転勤予定者の不安を取り除くことにもつながりました。

 これらの要素を総合的に勘案して、私たちは札幌に本社を設立することにしたのです。

 都市の魅力には、ものがおいしいだとか、空気がきれいだとかという観点もあります。でも、企業にとっては長い目で投資して拠点を作るため、一度作ったらわずかな期間で撤退するなどという訳にはいきません。それだけに行政を含む地域の方々とお互いにより良い関係を築いておくことが重要です。かつては、東京から飛行機での移動となる距離にあり雪も多いというイメージの札幌でしたが、私たちの事業継続のための第2本社設立という観点ですと大変魅力的な都市になります。違う見方をすると、九州が魅力的になることもあるかもしれません。行政側もそれぞれの地域が特性を活かしてそれぞれの考えを発信していくことが必要だと思います。


 長く続けることで将来誰かの命が救われる

 東日本大震災を受けて、私たちが取り組んでいることがもう一つあります。先ほどの2本社体制の構築は、私たちの会社自身のことですが、もう一つは地域社会に対する貢献です。

 私たちアクサ生命は外資系ですが、その前身は全国各地域に拠点を持つ日本団体生命でした。そして、最も多くの拠点があるのが東北地方であることもあって、東日本大震災直後から被災地支援を継続しています。最初はライフライン復旧のための義援金や心のケアなどを、その後日本ユネスコ協会連盟と連携して子供たちへの就学支援(奨学金)を行っており、これは現在も継続して行っています。こういった支援を行いつつ、パリのアクサグループのトップを始めとして、私たち自身も被災地に赴き、被災者の皆様の声をお伺いしました。訪問地で耳にした皆様のお話や各地域の逸話によれば、津波の難を逃れたケースでは、「逃げよう」と言った人や行動した人が周囲にいたことが鍵になっていると感じました。そして、そういう行動ができる人を育てるための教育が大事なのではないかと考えました。実際に東北沿岸部の商工会議所を訪問した際にはこの教育へのサポートを要請されました。そこで、日本ユネスコ協会連盟と連携して「減災教育プログラム」を発起することにしました。

 この減災教育プログラムは、児童への教育ではなく、学校の先生への研修であるというところが特徴です。皆様にも、記憶に残っていたり、影響を受けたりした先生が一人はいるのではないでしょうか。その先生の言葉も鮮明に覚えているはずです。この減災教育プログラムから一人でも多くのリスク意識の高い先生を増やすことで、その20倍30倍の数の生徒が減災の精神を受け継ぐことになります。その子供たちが例えば津波の発生前に「逃げよう」と周囲を促したり、それ以外の自然災害においても正しい減災の行動をとることができたりすれば、周囲に居る何百人もの人も被害を免れることができるのではないかと考えました。本プログラムでは、全国20-30校の小中高の先生が気仙沼を訪問し、震災の体験や減災教育、地域との連携を現場で学びます。その精神を各自が学校に持ち帰り、地域の特性に応じた自然災害に対する減災教育を授業に落とし込み、実施します。研修を受ける先生の人数は1年間に数十名と少ないですが、このプログラムを長く続けることで将来一人でも多くの命が救われることにつながるのではないかという想いを持っています。

 震災の記憶は年々薄れていきます。私たち保険会社は、困難な時に地域社会にどれだけ寄り添えるかが保険事業の使命を果たす上で重要であり、将来的な価値の源泉もここにあると思っています。また、私たちにとっても、就学支援や減災教育はチャリティではなく、企業として被災地の復興の状況を直視し、防災・減災に取り組む姿勢を学び、今後の事業の在り方を見つめなおす機会になりました。そういった点からも被災地に対する支援は今後も継続していきたいと考えています。


小笠原隆裕氏 プロフィール
  アクサ生命保険株式会社執行役、広報部門長兼チーフコーポレートレスポンシビリティオフィサー、危機管理・事業継続部門長兼札幌本社長
第一勧業銀行、みずほ銀行を経て、2005年アクサ生命保険株式会社へ
2011年 執行役員戦略企画本部長
2012年 執行役広報部門長兼危機管理・事業継続部門長
2014年 札幌本社長を兼務

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