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国土強靱化:私のひとこと vol.6

20~30代の女性にライフステージが変わる前にもっと知ってもらいたい

防災ガール代表 田中 美咲氏

 最も防災意識の低い20~30代の若者をターゲットに、「防災」をもっとおしゃれでわかりやすく伝えることを目的に活動している防災ガール。代表の田中美咲氏に話を伺いました。

 私は2011年度入社の年代で、卒業式と入社式という、通常であればみんなからお祝いされる一番ハッピーな時期を間近に控えた2011年3月11日に東日本大震災が発生し、すべて自粛となってしまいました。そのような状況でソーシャルゲームの会社での社会人生活をスタートすることになったのですが、私が担当しているゲームを日本のどこかで楽しんでくださっている人たちがいるということと、今まさに東北で助けを求める人たちがいるということのギャップにすごくモヤモヤしていました。そのうちに、「今」はゲームを作ることよりもやっぱり東北に行ってやるべきことをしたいという思いが上回るようになり、会社を辞めて福島に引っ越し、復興支援に携わることにしました。

 そして震災から3年、4年経つにつれて、一般の女の子でできることが少なくなると実感するフェーズになってきました。そうした時に、私がこれからの日本のためにできることは何かを考えると、同じことを繰り返さないためにも周りの人に防災を広めることや、南海トラフ巨大地震や首都直下地震に人の目を向けることが必要ではないかと考えました。私自身は、それまで学校や会社で積極的には避難訓練に参加しなかったですし、なぜか「私だけは被災しないだろう」という根拠のない自信を持っていました。それが東日本大震災を経て、一気に変わりました。私がやろうという気にならなかった今までの防災ではなく、私がやりたくなるような防災をとことんやろうというところから、「防災ガール」がスタートしました。

「翻訳」が得意なこと、それが防災ガールの強み

 「防災ガール」という団体を立ち上げた理由は、一人でやれることは限られていることと、これまでに以上に社会的なインパクトがないと防災に取り組もうとする人は増えないだろうと考えたからです。一日に一人の気持ちを変えたとしても、私一人では一年に365人しか変えられません。災害は明日来るかもしれないのだから、一日で何千人とアクセスできるようなチームであったり、メディアを活用した方がいいのではないかと。

 防災ガールが知られるようになったのは、いくつかの要因が重なり合っているからだと感じています。一つ目は、「防災」とつながりにくい単語「ガール」や考え方としての「おしゃれ」を一緒にしたことで、なんだこの子たちはと思われたことがきっかけで、まずは話を聞いてみようという具合に最初のハードルが一気に低くなったこと。

 二つ目は、その時の環境として、ボランティアをしていた学生は社会人になり、自分の生活もあることから、被災地である東北にいかなくてもできることが少なくなって、「やりたい想いはあるけどやることがない」という若者が一気に増えた時期に、あなたのいるところでもできる復興と防災のアクションを提示したような形になったからこそ、それなら私にもできる、緩く続けられるというのが良かったんだと思います。

 三つ目は、全員がプロフェッショナルではない、防災意識の高い若者の集まりだったということ。このことが、防災業界の全員と仲間になることや協業することにつながっています。「防災ガールです。」とあいさつすると、「そんなことをやっている若い子がいるの?」と消防団や行政などの皆さんが言ってくださることに象徴されるように、プロの皆さんの中である面自由な私たちの立ち位置がちょうどよかったんだと思います。

 防災ガールの強みは、同じ情報でも難しい言葉を一切使わない表現方法等に換える「翻訳」が得意なことだと思っています。例えば、一般の若者からすると、南海トラフ巨大地震の発生確率や被害想定などを言われても、何を言っているのか分からないし、何を伝えたいのかも分からない。もちろん、私も、今では既に防災オタクなので分かりますが、初めて聞いたときは何語をしゃべっているのか分からなくて。「あー、それは大変だ。」と実感が沸いてくるような、自分への影響が分かる、より自分事にできる単語にしないと人には伝わらないですよね。

防災のアクションをしている人が2年以内に16万人を超えること

 防災ガールでは、防災ガールを通して防災のアクションをしている人が、2年以内に16万人を超えることを目標にしています。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、特に全国の若者の10人に一人は何かあった時に誰かを助けられるようになっていたり、最低限意識が高まった状態にしたいと思っていて、そのために2年以内に16万人という野心的に数値目標をおいています。アクションを起こすという最初のハードルを越えればあとは継続性の問題なので、まずはFacebookページのいいね!というワンアクションでもOKにしています。ちなみに16万人は全国の消防職員数で、消防署は何かあった時に6~8分以内に駆けつけられる距離にあると記憶しています。その消防職員と同じぐらい防災ガールや防災ガールを通してアクションを起こした人がいるだけで違うと思ったんです。

 防災を全く意識していない人にいきなりアクションを起こさせるのはハードルが高いため、段階的にやっていくしかないと思っています。まず意識させる。次に意識して言われれば行動できる。そして意識しながら言われなくても行動できる。最終的には無意識でも行動でき、防災という単語を特に意識、考えなくても当たり前の状態になっている。そこまで持っていきたいと思っています。

 効果的にアクションにつなげるためには、モチベーションが上がった瞬間に、アクションの起こし方をインプットしたり、アクションをする状態に持って行ったりすることが必要だと思っています。例えば、ウェブサイトを見た瞬間は一番モチベーションが上がっているタイミングなので、防災グッズ購入のリンクを用意するとか、無料で開催できるイベントでも参加費を徴収して、防災グッズをプレゼントするとか。もう一つ、接触回数を増やすことも効果的だと考えています。例えば、一日一回防災に関することに接触していれば、これまで接触回数が少なかった時と比べると自然と意識が変わります。これらの一回集中型と接触回数の多い型の両方を連動してやっていくことが必要です。

家族や友達など身近な人に伝えてほしい

 私たち防災ガールがメインターゲットにしている20~30代の女性って、ちょうど生活のフェーズが変わる瞬間です。ただの女の子から、彼氏ができ、結婚、出産、家庭を持つという一気にライフステージが変わる世代。子供がいる人をターゲットにすることもありますが、その前の女の子たちに防災のことを知ってもらうことが大事だと思っています。

 そして、防災に対する意識を持たれている人には、周りの人に広める役割を担ってほしいです。家族や友達など身近な人に伝えることをしてもらえたらなあと思っています。そして、意識が高いからこそ無理なく、楽しみながらできることを自分たちで考え、自分の生活に取り入れてほしいと思います。

田中美咲氏 プロフィール
  ソーシャルゲームプランナーを経て、東北復興支援を行う公益社団法人に転職、フリーランスのプランナーとして独立
2013年 防災ガール設立
2015年 一般社団法人化に伴い代表理事に就任
世界防災ジュニア会議(減災産業振興会主催/第3回世界防災会議パブリックフォーラム)グッド減災賞優秀賞
HP http://bosai-girl.com/
Twitter  https://twitter.com/bosai_girl
Facebook  https://www.facebook.com/bosaigirl

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