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国土強靱化:私のひとこと vol.2

「防災」は、自分の夢をかなえるために必要なもの

危機管理教育研究所代表 国崎信江氏

 肩に力を入れず、生活になじむものにならないだろうかとの独自の視点で防災に取り組まれている国崎信江氏(危機管理教育研究所代表)に話を伺いました。

 現在、私たちの生活の中の様々なものがユーザーを意識して開発され、更に進化しています。また、我が国には、科学の知見がたくさん蓄積されています。
 でも、防災について言えば、それらが反映されていないように感じています。例えば、E-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)の実験により把握できている地震のときの家具の挙動を、より実践的で効果の高い家具止めの方法に反映したり、テーブルは固定しないと動くという実験映像から「地震の時にはテーブルの下に逃げる」という偏った指導を見直し、状況に応じた身の守り方やテーブルを固定する対策に結び付けたりすることが重要です。人間工学や行動心理なども含む科学の知見を集め、いざという時に、そして今後一層進展する高齢化社会において、本当に扱いやすいものなのかという視点でものづくりをしていくことが必要だと強く感じます。


超高層建物における非構造家具什器等の加震実験映像
((独)防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センターHPにリンク)

 防災は「はやり廃(すた)り」ではない、いかに生活に根付かせていくかが課題

 ご家庭ですぐにできる防災対策は、物をなくす=凶器を減らすこととその配置を見直すことです。これらはお金をかけずにできますが、最も効果が高く生きる確率はグッと上がりますよね。
 でも、自然災害というすさまじい敵から、家族の命と家という財産を守ることは、それだけでできるとは思っていません。健康は、今健康であればいい訳ではなくて、将来を見据えて今から何をすべきか、例えば生活習慣を見直すというように、一生考え続けるものです。その健康への意識や行動と同じように、防災も生涯ずっと関わり続け、終わりなき道を歩むものだと思います。そういう意識を持たなければ、非常持出袋を用意するだけで満足してしまいます。
 また、命を守ることにある程度関心があっても、震災から財産を守るという視点が十分ではないと感じています。今、東日本大震災で生き残った被災地の多くの方々が、財産を失って苦しい生活を送っています。やはり、震災から命と財産をどのようにして守るかが重要で、このことは国土強靱化の考え方でもあると思います。
 防災教育によって、子供のころからそういう意識をはぐくみ、年齢を重ねてもその意識を持ち続けるためには、防災に触れる機会を多様に創出していくことが重要です。防災訓練や防災講演会などイベントに頼るだけではなく、生活に根差した取組も必要です。例えば、免許取得時や更新時の講習で学ぶ災害時の対応を現在よりも充実させたり、街に転居してきた際に役所がハザードマップを紹介し、「あなたの家から近い避難所はここですよ」と説明したり。また、妊婦さんに母子手帳を渡すときに「安全な環境で新しい命を迎えてくださいね」と伝えて防災の冊子を渡すことも考えられます。ゆりかごから墓場まで様々な段階で防災に触れるように国・地方自治体・地域それぞれが連携して機会を作り、気が付いたら特別な勉強をしていなくても、一定の防災の知識を持つ人が育つような社会システムが必要だと思います。

 コミュニティは、今の社会を反映した在り方や個人の関わり方を考えることが必要

 現在の社会や暮らし方はとても多種多様であり、昔のやり方をそのまま適用することは無理があります。そのため、これらに対応できるような新しいコミュニティの在り方を考えていかなければいけないと思います。夜や休日に働いている人たちが、他の人たちとは違う曜日や時間に一人でもコミュニティのためにできることは何か。例えば、SNSを使って「あなたの住むコミュニティで防災上気になる場所について書いてください。」というアンケートを実施すれば、深夜に帰宅する方は、日中に見回る方とは違う場所に新たに危険を発見するかもしれません。組織として動くことができなくても、個人としてコミュニティのためにできる活動の在り方、個人でしていることがコミュニティのためにつながる取組の在り方が提示されれば、コミュニティに参加する人が増えると思います。

 日本は自然災害が発生しやすい国なんだということを受け止めて暮らすことが必要

 我が国は、世界から「災害の百貨店」と称されるぐらい自然災害が発生しやすく、そもそも自然災害が起きない場所は存在しません。我が国で生きる宿命として、そのことを受け止めて暮らすことが必要です。
 その上で、防災は何のためにするのかというと、自分の夢をかなえるためですよね。自分の夢をかなえるためには、当然命がないとかなえられません。二十歳未満の子供であれば、親を失うことで人生が変わることもあります。貯蓄や保障がない人は住んでいる家を失えば人生が変わる可能性が十分にあります。
 輝かしい未来をイメージするときに最悪の事態を想定することは難しいかもしれません。でも、人生を歩む際に安全な基盤をしっかり作らなければ、足をすくわれることになりかねません。日ごろからリスクに備えた上で、豊かな生活あるいは自分が希望する未来を考える必要があります。

 自然災害のリスクが、企業の飛躍につながるようなしたたかさを持ってもらいたい

 我が国の科学的知見から、どこでどのような自然災害がどのぐらいの確率で起きるか分かっています。そうであれば、企業はBCP(緊急時企業存続計画又は事業継続計画)に取り組むだけではなく、それより一歩進んで災害が起きたときにより企業を成長させるようなことを考えてほしいと思います。特に、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した時に、何とか現状を維持しようとするBCPのレベルでは世界に追い抜かれ、我が国の経済が成り立たなくなってしまいます。災害時にどのようなことが起き、社会はどのようなことに困り、どのようなニーズが生まれるのかを平時から考え、いかなる自然災害が発生しても成長できる、打たれ強い企業になってもらいたいと思っています。

国崎信江氏 プロフィール
  危機管理教育研究所代表
防災教育・防犯対策等
1991年、外資系航空会社の機内通訳を経験した後結婚を機に退職。主婦となる。
1997年、阪神・淡路大震災のような自然災害から小さな子供を守るための研究を始める。
文部科学省「中央教育審議会 スポーツ・青少年分科会学校安全部会」のほか各種審議会等の委員
主な著書に『地震からわが子を守る防災の本』(リベルタ出版)、『地震から子どもを守る50の方法』(ブロンズ新社)など
HP  http://www.kunizakinobue.com/

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