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国土強靱化:私のひとこと vol.14

市民参加型の減災は、自治体発信とセクター・地域を超えたつながりから

「減災インフォ」 小和田香氏

「災害を防ぐこと(防災)は難しいけれど、災害を減らすこと(減災)はできる」という考えのもと、災害時の情報収集・発信や平時での減災に関する情報収集・発信、勉強会などの活動をしている減災インフォ。小和田香氏に話を伺いました。

私が、この活動を始めたのは、東日本大震災の時に官民連携でのインターネット上の情報発信のリーダーを経験したことがきっかけです。当時は災害支援の経験が全くなく、反省点が多くあります。大規模広域災害直後、全体像を迅速に正確に発信するには、距離やセクターを超えた組織や人が協力し合うこと、平時からの情報整備が必要と痛感しました。経験した人が次の災害に生かす活動をしなければ、また同じ失敗を繰り返し、進歩がない。復興10年の間にカタチにすることを自分の目標にしました。でも、具体的に何から始めるか?サイト開設までは試行錯誤でした。

どんな災害でも、支援者はまず被災地域の把握から着手します。「72時間の壁」と言われるように、発災直後は助けられる命を救う支援が最優先。迅速に日本全体の被災範囲を把握し、特に外部から支援が必要な地域の特定が必要です。先の震災では、TV・新聞等メディアで報道の多い一部の地域に支援が偏りがちで、情報がなかった地域への支援の遅れに課題が残りました。インターネットで情報を網羅的に調べるにも、土地勘が全くない地域は時間がかかり、地方自治体のHPが軒並みアクセス不能に陥っていました。その経験から、まず、平時、日本全国の自治体の基礎情報、防災・減災情報をこつこつ集める作業を個人ではじめました。

次に、大島土砂災害の頃から、災害時の地方自治体の広報と減災に注目して情報収集、SNSで発信を始めました。続けて行く中で、大きな被害のある地域では「地方自治体の情報発信」と「市民の避難行動」のどちらも過去の他地域の教訓を十分に活かしきれていないのではないか?と考えるようになりました。山梨大雪頃から、「IT×災害」コミュニティの有志が協力してくれるようになり、勉強会などを開催する中で確かなニーズを感じ、2015年6月に現在の減災インフォのサイトを開設しました。

 (参考)国土強靱化:私のひとことvol.10
「IT×災害」コミュニティ 運営メンバー 斎藤 昌義氏
「自分たちのこれからの未来を自ら考えるための知恵やつながりを作る場として」

東日本大震災の反省を生かした情報発信-信頼性と網羅性、迅速性-

自治体が運営する災害時Twitterの現状インフォグラフィック(減災インフォHPより)

減災インフォのサイトでは、平時から全国47都道府県別に1741自治体のHPやSNS等の一覧(自治体と地域メディア)を用意しています。自然災害は地域性が高いもの。災害前後、避難行動をとるには地域毎の情報が不可欠。災害後の支援には現地の「信頼できる一次情報」の「網羅的」な収集が必要という観点からです。 そのため、地方自治体の情報に加え、地域を熟知し、現地で被災を体感し取材発信力のある地方新聞社や地方局など地域メディアの情報も掲載。災害時はこれらに加え、地域の市民等による写真付き発信など、SNSの情報も参考にしています。

災害発生後、支援者はまず被災地域の地方自治体の情報発信を確認します。いざという時にはそれぞれの情報発信状況を(情報発信していない市町村のリスク含め)、短時間に把握できるようになりました。これは、救助・救援活動、ボランティア等の支援団体が被災地に行こうとする時にも役立ち、支援活動の初動を早くすることにもつながります。例えば、2014年2月の山梨県の大雪でも、HPにアクセスできない町村がありました。このことは、サーバーが止まる=電気が止まるような状況にあったということが想像できたはずです。

Webサイトに加え、今月、地方自治体の基本情報、防災・減災情報、SNS発信状況のオープンデータでの公開も始めました。私たち少人数ボランティアの活動には限界があるので、多くの方に活用いただきたいです。

「つながり」と「見える化」を強化する一年に。

2016年は、「つながり」と「見える化」を強化していきたいと考えています。

実は、Webサイトを立ち上げる=続けなければ意味がないということで、2年ぐらい迷っていました。全国を網羅的にと考えると基礎自治体は1741と数が膨大。本来、その地域の情報を集め伝えるには、実際に住み、地域の特性を理解した人の方がふさわしい。平時からの全国のつながりが、いざという時に役にたつのではないか?共感してくれた全国の仲間と「TKM47」(地域キーマン47都道府県)と称したネットワークを作り始めています。現在、8つの地方の世話人が決まり、今年は地方ごとに各県に声かけ、47都道府県の仲間をつくることで地域に根ざして持続可能な活動に広げていきたいです。地方のリーダーは、地域内で様々なセクターやテーマコミュニティとのつながりをもつ人たち。その人たちがハブとなり、地域外ともゆるやかにつながるチーム、そこから生まれるものが今から楽しみです。

「見える化」。1つめは災害の種類ごとに異なる大切な情報の明確化。例えば、地震は予測が難しいため、着目すべき情報は津波・火災など2次災害での被害の減災です。一方、台風、土砂災害、大雪など気象災害は、警報や避難勧告等の情報により被害を回避する行動が可能。具体的に行動に落とし込める伝え方の工夫が重要です。2つめは事例の紹介、知らないだけで全国に素晴しい活動をされている方や団体はたくさんあります。3つ目は人の紹介。全国各地の様々な活動を行っている人をサイト等で紹介することで、仲間を見つけやすくし、よきことが点から線へ、面へ各地に広がっていくようドライブをかけたいですね。

前向きな諦めが、変えるチカラに。

減災インフォのサブキャッチ「災害を防ぐこと(防災)は難しいけれど、災害を減らすこと(減災)はできる」は、「前向きな諦め」が前提です。どんなに頑張っても、人が大規模地震を止めることはできません。「レジリエンス」とは、どうにもならない現実、自分の弱さを認め、できることへの行動を徹底的に行うこと。宇多田ヒカルさんの歌にもありますよね。”変えられないものを受け入れるチカラ、受け入れられないものを変えるチカラ”って(笑)

国や地方自治体だけで頑張っても難しいことはみんな気付き始めています。行政職員の方も被災します。公助から、自助、共助へと国・行政は呼びかけていますが、どうしたら市民は自律的に動くのでしょうか?公助を頑張ることと共助は別物ではないはず。「我々だけでは対応できません。一緒に考えましょう。」とよびかけてくだされば、市民も一緒に何とかしていこうという恊働の機運が盛り上がるのではないでしょうか。人から完成品をハイッと渡されると他人ごとで文句を言いがち(笑)。自分もプロセスで一緒になって作ったものは愛着が沸き、「自分ごと」でよくしようと思いますよね。

防災・減災の活動は、それだけを考えたらワクワクするようなことはあまりありません。でも、課題が大きいだけに、市民と行政、いろんな立場の人たちが一丸となって協力しあうきっかけになる。各地で生まれた知恵を全国でシェアし、立場や地域を超えて学びあい、協力しあう環境をつくる。それは、減災だけでなく、地方創生にも人材の流動化にもきっとつながる。レジリエンスのしなやかさとは、ひとりの弱さを認める勇気とセクターや地域を超えたつながりから生まれるのではないでしょうか?

小和田香氏 プロフィール
会社員(IT系)、国家公務員(非常勤)、NPO理事のトライセクター。
東日本大震災時、内閣官房震災ボランティア連携室と官民連携した助けあいジャパンの情報発信リーダー。その後、復興庁復興推進参与、IT×災害コミュニティ運営委員、(社)災害IT支援ネットワーク理事。
2015年6月 IT活用による減災を目的に有志で「減災インフォ」を発足。
同年11月 第10回マニフェスト大賞 優秀復興支援・防災対策賞受賞
減災インフォHP http://www.gensaiinfo.com/
同 Twitter https://twitter.com/gensaiinfo
同 オープンデータ http://ja.idea.linkdata.org/idea/idea1s1493i

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