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現場から知る国家公務員

DISCOVERING NATIONAL PUBLIC EMPLOYEES FROM THE FIELDS

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CULTURE

千年先の未来へ日本の文化を継承していく。長い時間軸を見据えながら、社会の仕組みに変革を。

Yasumaro Haruta

春田 鳩麿

文化庁 文化資源活用課
課長補佐
2008年入省

PROFILE

文化庁の文化資源活用課に所属。
長い歴史の中で受け継がれてきた文化財をどのように引き継いでいくかを考え、保存していくとともに、社会に対し価値を伝える。

歴史を未来に継承するというミッション

現在、私は文化庁の文化資源活用課という部署で勤務しています。日本において、100年・1000年単位の長い歴史の中で受け継がれてきた文化財をどうやって引き継いでいくかといったことに日々向き合っています。

文化財というと、お寺やお城といったものがよく想像できるかと思いますが、他にも古墳に絵画や古文書、文献とかの歴史的な資料というものもありますし、地域の伝統的なお祭りといった形を持たないものもあります。

これらを保存していくとともに、社会に対して価値を伝えていくこと、その二つを両立させるのが仕事です。

伝統を守るための“仕組み”

文化財を守る取り組みというのは、本当に色々な方々が支えることで成り立っています。例えばお寺とか古い神社さんとかで、屋根の葺替え工事というのをたまに目にすることがあるかもしれません。例えば、「檜皮葺」という伝統的な工芸方法で作られる屋根は、ヒノキの皮を剥いで加工して、それを職人さんが工具を使いながら、一つ一つ丁寧に葺替えていく、という仕事になっています。すると、ヒノキを育てる、ヒノキの皮を剥ぐ、それを加工するための道具を作る、そして葺替えを行うところまで、あらゆる過程であらゆる関係者の方々が携わってくださることになります。そういった方々が一体となって一つの文化財を支える、そういったチームワークで成り立っています。

最近では伝統的な工法を使う機会が少なくなってきているので、職人の方々にとっても限られた仕事・作業場しかありませんし、伝承する人も少なくなってきています。そんな中で後継者をどうやって確保していくかというのは非常に大きな問題になっているんです。なので、文科省としては「文化財の匠プロジェクト」というものを進めております。これは、今申し上げたような原材料の生産から職人さんに至るまで、一体的に「文化財」を守るための仕組みづくりです。

文化財修理の仕事を確保することで、職人の雇用が確保され、職人が使用する用具・原材料への需要が生まれるという、川上から川下まで将来にわたって安定的に担い手・後継者を確保していくプロジェクトになっています。

文化財の価値を社会に伝えていくこと

文化財は保存しながらも、その価値をちゃんと社会に還元していくことが重要です。最近では観光やまちづくりの文脈から、例えば少人数を対象として専門家による詳細な解説を提供したり、夜間などの特別な環境の中で使っていたりなど、さまざまな活用方法が試みられています。

文化財の本質的価値を深く体験してもらうための工夫ということですね。

これまでは文化財を守ることに政策の力点が置かれる傾向にありましたし、文化財の活用に関する知見があまり蓄積されていなかった面もあります。

「一般の方々に、分かりやすく魅力的に文化財の価値を伝える」と言ってもどのようにすれば良いのか分からず、なかなか一歩を踏み出せないことも多かったと思われます。このため近年の政策においては、官公庁だけでなく多様な分野の民間の方々の知見を積極的に取り入れ、官民連携により文化財の活用を進めています。

文化財の本質的価値を伝えるという共通の想いの下、異分野の人々が協働することで、新たな付加価値を共創していく。これを社会に還元していくことによって、文化財の価値や意義を共有しながら支え合っていくような、そういった仕組みを作れたらいいなと思っています。

入庁のきっかけ

仕事は人生の大部分を占めることになるので、「何に時間を費やしているときに幸せを感じるだろうか」と考えた際に、「知的好奇心を満たせること」「社会への貢献を目的にできること」が重要な要素として浮かび上がり、結局は「日本という国を対象とする仕事ができないか」という思いに至りました。

当時は大学の研究力や機関としての国際的な競争力が低下しているということが大きな課題になっていて、この課題解決に携わりたいと思ったのが文部科学省を選んだきっかけです。

今の文化庁の仕事は、入省当時には思いもしなかったものですが、日本固有の歴史・文化を今後どう守っていくか、国際社会に対してどう発信していくか、そういったスケールの大きさやチャレンジングな職務は、変わらず充実した人生につながっていると思います。

一つの省と言っても取り扱う分野は多岐にわたりますし、他省庁や他機関への出向などもありますので、入省した時に想定していた分野を問わず、いろんな仕事が経験できることは非常に魅力的ですね。

学生へのメッセージ

過去から何百年、何千年にもわたって受け継がれてきた文化、これに今我々が生きている現代の文化が重なり合わさって新しい文化が紡がれ、未来に継承されていく、そういった本当に長い時間軸を体感しながらの仕事というのは他ではなかなか経験できないですし、非常に魅力的です。

このような文化を支える現場の方々、これから文化を受け継ぐ未来の方々に対して想像力を働かせて政策を考えていくということは、とてもやりがいのある仕事だと思います。