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現場から知る国家公務員

DISCOVERING NATIONAL PUBLIC EMPLOYEES FROM THE FIELDS

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COMMUNITY-BASED

持続的な食料・農林水産業の実現。新たなチャレンジに向け、あなたをお待ちしています!

Takuro Hyotani

表谷 拓郎

農林水産省 大臣官房 環境バイオマス政策課
みどりの食料システム戦略グループ 課長補佐
2010年入省

PROFILE

農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課みどりの食料システム戦略グループに所属。農林水産業や地域の将来も見据えた持続可能な食料システムの構築に向け、食料・農林水産業の生産力の向上と持続性の両立をイノベーションで実現することを目指す、「みどりの食料システム戦略(以下、みどり戦略)」や、その推進法である「みどりの食料システム法(以下、みどり法)」の運用を担当。
農産物を生産するだけではなく、例えば肥料や資源の調達から、生産、流通、消費の一連の流れのことを「食料システム」という。

農林水産省で得た多くの知識と経験

2010年に農林水産省に入省しましたが、入省してしばらくは原課や局総務課の総括ラインの在籍が長く、予算や国会の総括的業務を長く経験しました。

環境という観点では、総括ラインを経験する中で、有機農業や環境保全型農業を推進する課にも在籍したことがあり、その時に業務の中で学んだ環境政策の知識は、現在のポストでも役に立っています。

その後、大臣官房政策課企画官として、スマート農業技術等を有するベンチャー企業をはじめとする民間企業の皆さんと生産現場のニーズを繋ぐ仕事をさせていただき、この間、様々な分野の企業経営者さんや、生産者さんと交流させていただく機会を得られました。省外の方とのディスカッションでは、役所の中では得られない多くの知見に触れることができ視野が大きく広がりました。

相手の気持ちに寄り添いながら
認定促進を進める

現在の具体的な業務内容は、「みどり法」に規定されている環境負荷低減に係る生産活動を行う農林漁業者の活動計画(環境負荷低減事業活動実施計画)や、生産者だけでは解決できない環境負荷低減に係る技術開発や市場拡大等の取組を行う民間事業者の実施計画(基盤確立事業実施計画)の認定促進を地方農政局や地方自治体の皆さんと連携して進めることがミッションです。

さらに、「みどり戦略」においては、政策手法のグリーン化を推進することを掲げていますが、これを踏まえ、補助・投融資・税・制度等の政策誘導の手法に環境の観点を盛り込むことで、環境負荷低減の取組を促すことや、新たな政策の検討等、企画的な議論も進めています。

これまで生産活動を主とし、収穫量などの増加を目指すところとしていた生産現場においては、環境負荷低減の取組を推進することは、余分なコスト負担や労力が求められることから、政策手法として受け入れられることが難しいものでした。現在は国際情勢の変化による資源輸入のコスト上昇や、環境やSDGsへの関心の高まりなどがあり、少しずつ潮目が変わりつつあるものの、現場は急な変化には対応しづらいものです。

そのため地方出向中には、このような状況を見てきた経験を踏まえつつ、現場の皆さんが受け入れやすく、一方で確実に環境という視点を取り込めるような施策の展開、常に丁寧な現場説明を行うことを意識して、業務にあたっています。

地方勤務の現場での経験が
実現性の高い政策を作る

千葉市に出向した時は経済農政局農政部長兼農業委員会事務局長として着任しました。千葉市への農水省からの出向は初めてであり、しかも部全体を取りまとめる部長という責務を突然負うことになったため、身が引き締まる思いでした。

出向する前は千葉市で農業が盛んに行われているイメージはなかったのですが、千葉県全体では農業産出額が国内で6位(2021年)に位置しているほど、農業が盛んです。

千葉市での大きなミッションは、今後の千葉市農政の方向性を描く、「千葉市農業基本計画」の策定、市の農業技術の普及拠点であるものの、老朽化や人材不足から廃止論もあった「千葉市農政センター」のリニューアル、SDGsを背景に持続性や地域性に観点を当てた新たな食の地域ブランドである「千」の推進などを主導して進めることとなりました。

地方勤務の経験では、まちづくりや地方創生という視点を踏まえて、農政という枠にとらわれず、多くの部局と連携をしながら、幅広い仕事ができる点に魅力を感じました。

地方勤務というと、現場目線をより強くもって仕事をすることが大事だと思いますが、当方の場合、部長としての着任だったこともあり、農水省勤務の中で経験した、俯瞰的にものをみて企画する視点を求められるシーンがあり、意味がないと言われがちな机上の空論(理想論)を現場でしっかりと機能できるようにすることに強くやりがいを感じました。

霞が関での勤務との違いは、自らも千葉県在住なのもあり、出向にも関わらず自宅から通勤していたので生活面での変化はありませんでした。

一方で、当然市役所勤務ということで現場が近いので、公用車で走ればすぐに現場の農業者さんとコミュニケーションをとれることや、部長という立場として市議会での答弁などもある中で、地元の議員さんとの距離感が、国と違って非常に近いことにカルチャーショックを受けました。

地方勤務の経験を経て、現在の霞が関での仕事で役に立ったのは、何よりも、現場目線です。地方勤務で得た「意味がないと言われがちな机上の空論(理想論)を現場でしっかり機能できるようにする」という考え方は霞が関でも同じだと思います。霞が関の机の上で練り上げている施策が、本当に現場で機能するのか?受けいれてもらえるのか?を考えるとき、現場で見て、聞いて、触れてきた経験があることで、より実現性が高くなると思います。

国家公務員として働く魅力

農林水産省の仕事は非常に幅が広いことが魅力です。農業と一口に言っても生産面だけで、水田、畑、ハウス、畜産なら牛、豚、鶏等と多岐にわたる品目がありますし、経営的な観点、農地という生産基盤の整備、さらには食品産業や消費者政策等もあり、ここに当方が携わっている環境という観点も、昨今は重要なファクターとして加わっています。まさに、誰もが必要な食にまつわる全ての仕事を経験できるのが農水省であり、食が好きなら、やりたいことが必ずあるのが魅力です。

近年は、その幅の広さから多くの知見が必要になっている分野でもあり、農学部に限らず、様々な学部の方や農業分野でも環境貢献は重要施策なので、環境に興味がある人など多くの人に是非興味を持っていただきたいと思います。