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国土強靱化:私のひとこと vol.4

あなたとあなたの大切な人のために育てる「よき避難者」

Community Crossing Japan オーガナイザー 荒昌史氏
研修ディレクター 吉高美帆氏

 「人間関係が希薄な大都市において人々は助け合うことができるだろうか」という危機感から、「よき避難者」を育てる共助のための防災減災研修を行っているCommunity Crossing Japan。荒昌史氏(オーガナイザー)と吉高美帆氏(研修ディレクター)に話を伺いました。

荒昌史氏(以下「荒」) 私は、2007年から住宅会社でマンションのコミュニティ作りをしていましたが、環境問題に比べ、住民の防災への関心や防災訓練への参加率は低く、どうにかできないだろうかと思っていました。この点については、東日本大震災後に改善されてきたものの、自分たちが対策するのではなく、どのような対策をしてくれるのかという受け身の住民がまだまだ多いのが実情ですね。
 また、私たちもそうでしたが、避難訓練では机の下に潜り、揺れが収まってから外に避難するという指導を受けてきました。その後の避難生活は、行政や消防、町内会が何とかしてくれると考えている方が多いと思います。このあたりは過去の教育のミスリードもあったのではないでしょうか。

吉高美帆氏(以下「吉高」) 私たちが東日本大震災の被災地においてヒアリングを繰り返す中で、「してもらう」という意識の強さがクレームにつながり、避難所運営を難しくさせてしまうケースが起こることを知りました。これは、避難者が受け身で支援を待っている姿勢だからこその出来事ではないかと思います。災害時は行政も被災する側となるので、避難生活のリテラシーを高めていく必要があると考え「よき避難者」を育てることに取り組み始めました。

 防災・減災の行動を時系列で見れば、私たちも発災直後の一部しか知らなかったという反省がありました。大震災が起きた後の避難生活、復旧・復興まで見据えたリテラシーを持つ人が多ければ多いほど、防災・減災につながっていくと思います。



フェーズに応じた防災減災教育

 「時間」を作ることは無理でも「きっかけ」を作ることであればお手伝いできる

吉高 研修では、目新しい防災の知識よりも「こういうケースが考えられますよね」という事例を多様な切り口からお話しします。例えば、持病の薬のこと、乳幼児用のおむつやミルクのこと。こうしたスペシャルなニーズのものは支援物資として届きにくいことを伝えると、「なるほど、そうですよね」とうなずかれる方が結構いらっしゃいます。また、駅や大型商業施設、集合住宅、病院などには、指定避難所でなくとも多くの方の避難が想定されますが、それらに対応するための訓練や備蓄などは整っているでしょうか。このように実際の事例である「大震災のリアル」をお話しするだけで、防災意識は高まるのです。

 都市部の指定避難所はキャパシティの問題もあって、マンション住民の受入れまで想定されていないケースが多く見られます。そのため、住民同士で備蓄品を分け合うことや、親の不在時であれば子供の安否確認などをマンション単位で行うことも必要です。高層マンションが林立しているような地区では、マンション一棟だけでなく、横のつながり(複数棟)も欠かせません。専門家に答えを教えてもらうだけではなく、自分たちで考え臨機応変に判断し行動する力が最も重要だと思います。また、訓練そのものを住民主体で準備することこそが、一番の防災訓練になるのではないかとも感じています。
 新築マンションであっても防災訓練への参加率は、居住年数とともに右肩下がりの傾向にあります。防災訓練では消防署を呼び消火訓練をするのみ、という単調な訓練を繰り返している場合が散見されることも。それだと参加率は下がりますよね。内容を住民主体の実践的訓練に変えるだけで、参加率も効果も差が出るだろうと感じています。
 また特に、初年度の防災訓練において、今後も参加することの動機付けをすることが必要です。以前、防災訓練に参加しない理由についてアンケートを採ったところ、興味・関心がない人は1~2割で、時間がない・きっかけがないという人が大部分でした。時間がないことを私たちが変えることは難しいと思いますが、きっかけを作ることであればお手伝いできます。私たちが、そういった役割を担いたいと思っています。


 情報を発信することが避難生活の鍵となる自主避難所

吉高 現在関わっている新築60階建て高層マンションのプロジェクトでは、およそ10階ごとに備蓄倉庫を設置するなどハード面の整備とともに、約950世帯の中にどのようにしてコミュニティを作り「よき避難者」を育てていくかという、ソフト面についての検討をしています。阪神・淡路大震災の事例でも、とある街の人命救助を行った方の多くが近所の方々でした。隣近所が顔見知りであること、平時からコミュニティが形成できていることが、人命救助において非常に大切だと思います。

 震災時に都市部で乱立するであろう自主避難所について、行政がすべてを把握し支援物資を配給することは難しいと思われます。だとすれば、いかに自分たちで声をあげて、広域から支援物資を集めるかが避難生活の鍵となってきます。この事例を知っているだけで平時の備えも変わるでしょうし、仮に不足するものがあったとしても、こちらから発信すれば届くかもしれないという安心感にもつながります。

 オールジャパンで大震災により亡くなる人を一人でも多く減らす

 先日二十年の節目を迎えた阪神・淡路大震災。新聞に掲載されていた、二十歳となった震災孤児の記事がとても印象に残っています。彼女たちの中には、両親の顔をご存じではない方もいるんですよね。これは「被災」というものの影響の大きさを表していると思います。たとえ一人亡くなっただけでもとても大きな影響を及ぼすのだなと。現在、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被害想定が公表されていますが、それをいかに減らしていくか。私たちも頑張りますが、これはオールジャパンで取り組まなければならないことだと思います。

吉高 私たちが掲げる「よき避難者」の育成は、防災減災研修を受けてくださるマンションや商業施設だけが対象ではありません。発災時、あなたにとって大切なご家族や友人と一緒に遭遇し被災するとは限りません。むしろ、離れて被災する可能性の方が高いと考えると、「よき避難者」を全国に増やすことは、自分が直接助けることはできなくとも、どこかであなたの大切な人が助かる可能性を広げることにつながるのです。起こりうる大地震は、残念ながら待ってくれません。


荒昌史氏 プロフィール
  Community Crossing Japan オーガナイザー
2004年住宅デベロッパー入社。2006年新規事業コンペ最優秀賞を受賞し、CSR専門部署を設立。
2010年HITOTOWA INC.を創設。国際交流基金・2012年度日印社会起業家交流事業に選出。
吉高美帆氏 プロフィール
  Community Crossing Japan 研修ディレクター
福島県出身。産業廃棄物業者での営業・研修担当、イベント企画・運営業務、コーディネート経験を重ね、現在は独立。
2011年環境省「今後の環境教育・普及啓発の在り方を考える検討チーム」有識者。
東日本大震災後に「Community Crossing Japan」の立ち上げに参画。

HP http://communitycrossing.net/
Twitter https://twitter.com/commu_cross
Facebook https://www.facebook.com/CommunityCrossingJapan


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