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国土強靱化:私のひとこと vol.15

普段の暮らしを豊かにする防災の知恵は、人をつなげ、人を動かす

アウトドア流防災ガイド あんどうりす氏

「必要最小限の道具で自然と仲良くなれる人がアウトドアの本当の意味」と言い、災害時にも活きる自然と共に生きていくアウトドアの知恵・ノウハウを伝える活動をしているあんどうりす氏に話を伺いました。

アウトドアと言うと「バーベキューをする人」と思われがちですが、アウトドアの本当の意味は、たくさんの道具を持って自然の中に入るというより、必要最小限の道具で自然と仲良くなれる人のことです。自然と仲良くなると、日常の暮らしが楽しく豊かになり、結果として、無理していないのに防災のスキルを身に付けられる、そんな、防災はじめの第一歩のお手伝いをしています。私は、阪神・淡路大震災を体験していますが、防災を伝えたいという気持ちでこの講座を始めた訳ではなく、むしろ、辛い事は話したくない気持ちでした。偶然、「アウトドアのスキルを使えば、災害のことばかり毎日考えなくてもいいので、実践できるよ」と2003年、周りのママ友に伝えたところ、聞いてくださった方が、もっと広げたいと奮闘してくださって、ほったらかしのHPにもかかわらず、今では、年間100回くらい講演させていただくようになりました。子育て世代は、防災に関心が薄いと思われがちですが、そんな事はありません。多様な職歴や才能の方が子育てという一点でつながっているので、潜在能力がすごいんです。自分が子供を守るだけでなく、地域で見守ってもらわねば安全にならないからと、防災講座を企画するために園や学校の役員に立候補したという方もいました。すごいパワーですよね!ママパパだけでなく、一人暮らしの方とか、地域の人とか、今では、みなさんがもっと多様に広げてくださっています。


より高いところに手が届くクライミングのテクニック普通に手を伸ばす(左手)のではなく、体の横から腕を回し上に手を挙げる(右手)。

私はひたすら、「これを伝えなければ」ではなく、「こうすると楽しいよ」「防災と意識しないで日常にとりこめるよ」という、身近で具体的な事例をお話している程度なのです。でも、たったそれだけ、最初の一歩のきっかけがあれば、毎日重大事件に対応して、臨機応変にならざるを得ない子育て世代や介護世代には十分なのかなって。情報がたくさんあるけど、何から実行していいかわからない、「やらねば」が多すぎるから実践の糸口が見えないという声を多く聞きます。ニーズにあった後押しが一つあるだけで、あとは、各グループが自主的に活動を広げてくれているのをみると、ニーズや各自のやりたい事をよく聞く事の方が、伝える事よりも求められている事なのかなと思います。

具体的には、普段からおいしい非常食を極め梅干しや味噌作りに励むようになったグループから、防災講座をきっかけにアウトドア部をたちあげ、気軽に外遊びを始めたグループ、抱っこやおんぶのスキルを伝えあうグループ、ブロック塀を行政に頼らず、みんなのお金を集めて実際に撤去したところと様々です。いずれも「共助」という言葉は使いませんでしたが、分類や定義よりも具体例で自分もやりたいと思えるものが見つかると、人は自ら発展的に動き出すのだなとみなさんに日々、教えてもらっています。

実際に私が講演でお話しているのは、こんなことです。

(普段使い)

講演を始めた当初、特別な防災グッズを準備するようなアドバイスが多かったので、毎日持ち歩くカバンに必要最小限の防災グッズを入れておこうと提案しました。普段から使ってないと災害時に使えないことは阪神の時に実感していました。グッズよりも家の耐震、家具の固定や地域の安全が重要なのはもちろんですが、グッズを持っていると人に説明したくなるから実践することが増えるという効果を感じています。 その時、毎日持ち歩くカバンは、リュックがいいよと言いましたが、両手が空くだけでなく、体にフィットするようウエストも胸部もベルトで固定し揺れないことの方が重要です。揺れると慣性の法則が働き、その場に止まろうとする力に反発しなければならないので、荷物が重くなります。だから、毎日リュックでなくても、揺らさないという仕組みがわかれば、レジ袋の代わりに持ち歩くマイバックをリュックタイプにしてみたり、揺らさないために、服の中にカバンを入れれば軽くなるなど、応用できます。仕組みがわかれば、臨機応変になれるので、アドバイス待ちにならずにすみます。

また、自分の重心であるおへそより上に重たいものを持つと、同じ重さなのに、荷物が軽くなります。赤ちゃんを抱っこやおんぶする時も同じです。昔のおんぶのように、布を使うと揺れないし、相手の重心を自分の重心よりも高くできるので軽くなります。どのように普段から使うのかという具体例と、なぜそうするのかを説明すると、実践したくなるとおっしゃってくださいます。古武術で人を救助する技も伝えていますが、朝起きない子を起こすのに役立っているとか、普段から赤ちゃんの抱っこやおんぶが軽いなら毎日実践したいものなので、結果として災害時にもすばやく動けますよね!

(スマホ 携帯)

緊急地震速報を受信した際、抜き打ちの避難訓練にしてしまったり、きんちゃんとかピロリンとか地震速報に親しみやすい名前をつける遊びを伝えています。雨雲レーダーや防災アプリ、家族と連絡をとるGPSアプリや災害伝言板など、すごいツールがあるのに、使われていないのがもったいないです。

(懐中電灯)

行政のパンフレットなどには、熱に転換してから光に転換するタイプの懐中電灯が書かれています。このタイプは電池が長持ちしないので、LEDのものをお勧めしています。また、懐中電灯をヘッドランプにすることも。なぜなら、懐中電灯で片手がふさがっていては、赤ちゃんを抱っこや、夜のトイレで支障があります。ヘッドランプにすれば、両手が使えるし、例えば日常で子供の耳垢取りに使えたりもします。影絵をして子供と遊ぶのも楽しいので、普段から大活躍です。

(寒さ対策)

普段から寒がりな人は災害時にも寒いです。寒さ対策の基本は、水と風と空気をどうコントロールするかがポイントです。
濡れたまま、いくら保温してみても、水分が蒸発する時の気化熱で体温が奪われるので、体温はどんどん下がります。濡れたら必ず着替えなければいけないという冬山の常識はまだ一般常識ではないようで、ともかく厚着をすればよいと思っていたという感想もあります。冬山でコットンの下着でいると、汗をかいただけで吸水性のよさが仇となり、保水した状態を維持してしまい、低体温症になり死に直結する事態になるので、吸汗拡散性のポリエステルとかシルク、ウール、ウールと同じ繊維構造の発熱素材といった素材を選んでいます。決してコットンがだめだという話ではありません。夏にコットンは涼しくてとても気持ちがいいです。着物の時代には、絽や紗は夏にと、素材や織り方まで選んでいました。素材を選べる知恵を持っていたら普段も災害時も寒くない方法がみつかるよという暮らしの知恵の話です。 また、風速1m/秒の風が吹くと体感温度が1℃下がります。春先の風の強い日は、風を防ぐ恰好をするだけでいいのに、朝少し肌寒いからダッフルコートやダウンコートを着ている人も多いですよね。それだと暑すぎたり、風を通す素材だと、厚着してもやっぱり寒いので悲しいです。風とも仲良くなってほしいです。
薄い服を重ね着すれば暖かいと言うのは、服の中に動かない空気層ができるからです。動かない空気は断熱機能があるので、暖かくなります。ダウンが暖かいのは、体温で羽を膨らませ、その羽が空気を掴むから暖かくなるのです。だから肌の近くに着て体温を伝えるほうが暖かいです。また、避難所では床が冷気を伝えやすいため、断熱素材の段ボールを敷くと暖かいですが、箱にした段ボールを敷くとさらに動かない空気層ができるので、もっと暖かいのです。段ボールがなくても断熱素材を探してください。他には、気泡緩衝材(空気緩衝材とも言う。)も空気をためているので断熱素材です。座布団型の断熱素材を持っていると、赤ちゃんのオムツ替えにも使えます。普段から使っていれば災害時も使えます。水と風と空気を意識してもらえれば、最小限の衣類や道具で最も寒くない方法がその場にある素材で応用できます。

(オムツや生理用品、トイレ)

オムツはレジ袋と布でも作ることができますが、これはオムツの仕組みが吸水素材と防水素材の組合せだからです。生理用品も同様です。それさえ分かっていれば、例えば、ガムテープと呼ばれるクラフト粘着テープは防水素材のものもあって、ガムテープを敷いて布を置けば生理用品もできます。トイレも防水素材と吸水素材と仕組みで覚えるほうが、アイデア覚えた人よりも、その場で作りだすこともできる人になります。

(星座アプリ)

小学4年生で星座の授業を受けますが、名前を覚えたらそれで終わり。でも、星が見えれば、逃げる方角が分かるし、昔の人は星だけを頼りに航海もできました。今は星座アプリがあるから、普段からちょっと遊びに行った時にそれを使って、どちらの方角にどの星座があるか分かっていれば、災害時に避難する時にも役に立つし、何より、夜空を見るのが楽しくなるのでおすすめしています。

(ライフジャケット)

川の事故の90%は、ライフジャケットを付けていれば助かるものばかりです。ハイパーレスキュー隊でも必ずライフジャケットを着用して川の中に入ります。なぜかと言うと、川では水中の空気が多く、比重が軽くなって、人間の浮力だけで浮かないところがあるためです。泳ぎの上手い下手は関係ありません。膝に流水圧がかかると、ライフジャケットがあっても簡単に人が流されます。その怖さがわかっていると、避難勧告がでていなくても、早めの避難行動をしやすくなります。

(改善が必要な事例)

川の事故対策として、子供と自分の体をロープで結ぶと言うものがありますが、アウトドアではカラビナを使って外せる状態でしか結びません。外せないと、障害物があったら全員流されてしまうからです。
似たような例で、自分と木をロープで結んで川に飛び込んで助けるシーンがアニメなどに出てくることがあります。でも、ロープがピンと張った瞬間に、体がくの字に曲がり、頭が水圧を受けて顔を上げられなくなります。時代考証と同じように災害考証などもあるとよいのかもと思います。

津波避難訓練でかぶるヘルメットが、穴の開いていないものであることがあります。でも、川や水流の中に入るヘルメットは穴が開いていないと、水流を受けて中に水が溜まって首が閉まります。防災といえばどんな災害でもヘルメットという発想ではなく、なぜ使うのか考えないと逆効果になります。

園や小学校で火災避難訓練の時に防災頭巾を被っているところもありますが、頭が小さいので、走ると前が見えなくなったり、被らせるのに手間取るという声を現場の先生たちから聞きます。学校等の建物は難燃性素材で作られているので、難燃素材の頭巾を被るより、煙対策としてすばやく逃げることを重視してもいいのではないでしょうか。

家具の固定は地震時の対策としてとても重要です。でも、賃貸物件だと原状回復義務が生じるため、ネジ止めによる建物への固定が行われていないのが現状です。もちろん、ネジ止めしないタイプのグッズがあるので、多くの家具はそれで固定できますが、冷蔵庫固定グッズは高額になりがちです。冷蔵庫は置く場所が決まっている場合が多いので、せめて公営住宅だけでも冷蔵庫の固定をネジ止めできませんかと東京都にお話してきたところです。弁護士の先生によると法改正は不要で、ガイダンスの変更で済むとのことなので、まずは東京防災を作った東京都から実践してくれないかなと思って。実は、クーラーの穴は原状回復義務を負いません。穴あけているというのに、クーラーは必需品だからいいのですって。災害大国なのだから、冷蔵庫のネジ止めも必需品といえるのでは?都市部では人口が多く、災害時の食料確保は個人に頼らなければならないのが現状です。冷蔵庫が固定され倒れていなければ、冷蔵庫内の食料が非常食にもなり、行政の備蓄の足りない分を補えます。アンケートでも固定できず困っているという声が集まってきているので、東京に限らず率先してくれる自治体を大募集中です。またアンケートでは、持ち家の方でも転売時、原状回復義務と同様の判断からネジ穴は減額されるため、家具の固定は絶対にしないという声もあり、賃貸物件だけでなくすべての人の家具の固定を阻んでいます。家具は固定されて当たり前になるように、常識を変えたいと思っています。

将来に希望が持てる子育て環境の変化

防災は世代間がつながることができるテーマです。素早いおんぶの仕方や折り紙、おもちゃを使わない遊びなど年配の方はよくご存知です。若者はアプリの使い方を詳しく説明できます。お互いの強みを生かし、地域・世代を楽しくつなげる力になるのが防災だということに気付いた地域は、教える方も教わる方も楽しそうに活動されています。
また、この活動を始めた時、参加者はママがほとんどでした。ところが最近では、ママが聞きやすいようにパパが子供を抱っこしている光景が普通に見られます。まるで、ママたちが生き生きしていることが、パパたちにとっても嬉しいような感じで。もしかしたら「イクメン」というのが流行ってきたのもあるのかもしれませんね。そして、同じ人が何度も私の講演に来るというよりは、一度来た人たちが次の世代の人を引っ張ってきてくれています。そういう子育て環境、パパとママが尊重し合って子育てできる時代になってきたことが、防災についても同様であり、私は将来に希望を持てるのではないかと感じています。

あんどうりす氏 プロフィール
阪神大震災被災体験とアウトドアの知識を生かし、2003年より全国で講演活動を展開。
そなエリア(東京臨海広域防災公園)にて定期的に乳幼児の親むけ講座や保育園、幼稚園、学校での先生対象の講座を実施。その他、小学校、中学校、高校での講演や地域の自治体、弁護士会、助産師会、女性消防団、企業研修などでも講演。
主な著書に「自然災害最新サバイバルBOOK」(枻出版社 共著)、「ちいさないのちをまもるママのためのナチュラル防災講座」(自然育児友の会)など
HP http://andorisu.jimdo.com/
Facebook https://www.facebook.com/andorisu/

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