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人身取引対策行動計画の進捗状況

平成20年10月
T 人身取引対策の重要性
 
U 人身取引の実態把握の徹底

1 被害者の実態把握

2 ブローカーの実態把握
 
V 総合的・包括的な人身取引対策

1 人身取引議定書の締結

2 人身取引を防止するための諸対策の推進

3 人身取引を撲滅するための諸対策の推進

4 人身取引被害者の保護

5 人身取引対策推進に際しての留意事項
 



 

人身取引対策行動計画の進捗状況

T 人身取引対策の重要性

U 人身取引の実態把握の徹底
1 被害者の実態把握
平成20年1月から関係機関において確認した被害者は、警察においては19名(9月末)、入国管理局においては10名(9月末)、婦人相談所においては12名(8月末)である。
地方においては、関係機関の確実な連絡体制を確立するために、仙台入国管理局,東京入国管理局,東京入国管理局横浜支局,名古屋入国管理局、福岡入国管理局那覇支局が中心となって管轄地区の連絡会議が設置されている。
2 ブローカーの実態把握
警察では、本年9月末までに、19名の人身取引事犯被疑者を検挙し、そのうちブローカーは4名(引率ブローカー)であった。
 
V 総合的・包括的な人身取引対策
1 人身取引議定書の締結
 (1)人身取引議定書締結
平成17年6月、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し、抑止し及び処罰するための議定書」(人身取引議定書)の締結について、国会の承認を得た。
 ※ただし、人身取引議定書の親条約である「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(国際組織犯罪防止条約)が未締結のため、人身取引議定書も未締結。
 
 (2)人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備
平成17年刑法改正により、「人身売買罪」新設、「生命・身体加害目的」による略取行為等の犯罪化、被略取者の輸送、引渡し、蔵匿行為の犯罪化を実現。
平成17年刑法改正により、逮捕・監禁罪及び未成年者略取・誘拐罪については法定刑の上限を懲役5年→7年に引き上げた。
 
 (3)出入国管理及び難民認定法の改正及び諸手続の柔軟な運用
人身取引等の被害者に在留特別許可を付与することができることのほか、人身取引等の加害者について新たに退去強制事由に加えることなどを内容とする「出入国管理及び難民認定法の一部改正案」を含む「刑法等の一部改正案」は、平成17年6月16日に可決・成立。人身取引等に係る規定については同年7月12日から施行。
 
 (4)婦人相談所等における被害者に対する援助
婦人相談所・児童相談所(以下「婦人相談所等」という。)では、保護を求めてきた被害者については全員を保護した。(平成13年度1名、14年度2名、15年度6名、16年度24名、平成17年度117名、平成18年度36名、平成19年度36名、本年度8月末現在8名)
 
2 人身取引を防止するための諸対策の推進
 (1)出入国管理の強化
 (イ)空海港における厳格な上陸審査の実施
平成17年4月から、タイにおいて偽変造文書鑑識を行うリエゾン・オフィサーの派遣を開始し、本年度においても、引き続き派遣している。さらに、厳格な上陸審査を実施している。
 
 (ロ)人身取引事案に係る情報の共有
外務省では、平成16年11月から紛失・盗難旅券情報(旅券番号等)を警察庁を通じ、国際刑事警察機構(ICPO)に提供している。
「出入国管理及び難民認定法」が改正され、外国入国管理局に対し、人身取引に関する情報等出入国管理情報を提供することができる旨の規定が新設された。
 
 (ハ)水際における監視、取締りの推進
不法残留者が多く発生している出身国別にデータを分析し,上陸審査を強化するとともに,空港の直行通過区域(トランジットエリア)におけるパトロール活動を行い,不審者の監視・摘発に努めている。
 
 (2)旅行関係文書のセキュリティ確保
 (イ)IC旅券の導入
外務省では、偽変造や成りすましによる不正使用の防止強化のため、平成18年3月20日申請受理分から、所持人の国籍、氏名、旅券番号等の情報の他、顔写真をICチップに掲載したIC旅券を発行している。
(外務省ホームページ)
 
 (ロ)査証に係る偽変造対策
外務省では、ほぼすべての在外公館において、偽変造防止技術を施した顔写真付きMRV(機械読取り式査証)を発給できるシステムを整備した(平成18年11月に偽造防止技術を改良)。
 
 (ハ)偽変造文書対策の強化
平成15年度より外務省主催で「アジア旅券政策協議」を開催し、アジア各国との旅券の偽変造防止対策や不正取得防止の強化につき情報・意見交換を行うなど、偽変造文書所持者出発地・経由地における対策強化を図っている。
法務省入国管理局では、全国の空海港に鑑識機器を配備し、厳格な文書鑑識を実施している。
 
 (3)「興行」の在留資格・査証の見直し
 (イ)在留資格「興行」に係る上陸許可基準の見直し・上陸審査及び在留審査の厳格化
法務省では、平成17年3月及び平成18年6月の二度にわたり「興行」の在留資格についての基準省令の改正を実施した。
平成17年の基準省令改正においては、外国人芸能人の芸歴要件の明確化を行った。
平成18年の基準省令改正においては、契約機関の経営者等に係る適格要件の厳格化を行った。
「興行」の在留資格で入国した外国人数は、平成18年は約4万8千人であったところ、同19年は約3万9千人となり、前年に比べ半減した(人身取引行動計画が策定された平成16年の約13万5千人と比較すると約71%減)。
警察が本年9月末までに保護した被害者19名のうち、在留資格が「興行」の者は3名である。
 
 (ロ)適正な査証審査の実施
外務省では、「興行」を含む在留資格認定証明書取得済みの申請案件について、在外公館の審査で本人性の確認を徹底するよう在外公館に指示した(平成17年4月)。
「興行」査証審査の厳格化に伴い、知人・婚約者訪問等目的を偽装して「短期滞在」査証を申請する者もあることから、在外公館においては、短期滞在査証(一部在外公館においては通過(トランジット)査証を含む)についても厳格な審査を行っている。
外務省では、平成16年2月から実施しているコロンビア人に対する「査証取得勧奨措置」が、同国人の日本における人身取引被害防止に効果を上げていることから、平成19年2月同措置の無期限延長を決定した。
(外務省ホームページ)
 
 (ハ)在留資格「興行」を悪用した人身取引事犯の取締りの強化
入国管理局では、「興行」の在留資格で入国し、事前の契約ではダンサーとしての稼働であったところ、入国後、雇用主等から旅券を取り上げられ、ホステスとしての役務を強いられていたタイ人女性3名の被害者(9月末)を保護した(なお、平成17年から平成19年の3年間で同様に「興行」で在留していた被害者108名を保護)。
 
 (4)偽装結婚対策
警視庁と東京入国管理局において、偽装結婚を始めとする合法滞在を装う者等への取締りを徹底するための連携強化を推進中である。
入国管理局、あるいは警察との合同による摘発に際し、特に人身取引の温床と思われる酒類提供飲食店等で「日本人配偶者等」の在留資格を有しホステス等として稼動している外国人に対しては、婚姻の実態を追跡調査した上で、適正な在留資格審査を実施し、入管法第22条の4の要件に該当する場合には、在留資格取消しの手続きを行う。
 
 (5)不法就労防止の取組み
 (イ)不法就労事案の厳正な取締り
警察が本年9月末までに検挙した被疑者19名のうち、入管法の不法就労助長罪を適用して検挙した被疑者は5名である。
 
 (ロ)不法就労防止に係る総合的な広報・啓発の推進
厚生労働省では、毎年6月に実施している外国人労働者問題啓発月間に向けて関係機関に通達を発出した(本年6月)。また、事業主向けリーフレットの作成・配布、及び外国人雇用管理セミナーの開催等を引き続き実施している。
法務省入国管理局は、毎年6月に「不法就労外国人対策キャンペーン」を行っている。
 
 (ハ)性風俗関連特殊営業等への不法就労の防止
警察庁では、毎年6月に「来日外国人犯罪対策及び不法滞在・不法就労防止のための活動強化月間」、11月に「風俗関係事犯等取締り強化期間」を設け、取締りの強化等を行っている。
 
 (ニ)性風俗関連特殊営業の規制の在り方の検討
刑法に新設された人身売買罪等を風俗営業の欠格事由とするとともに、風俗営業等を営む者に、外国人を接客従業者として雇用する場合には、在留資格等の確認義務を課す規定を盛り込んだ「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」が平成18年5月1日に施行。
 
 (6)売買春防止対策の推進
 (イ)売買春事犯の取締り
警察では、売春事犯に重点をおいた取締りと、改正児童買春・児童ポルノ禁止改正児童福祉法に基づいた児童の商業的・性的搾取の取締りを推進している。
 
 (ロ)売春防止法に基づく被害者の保護
婦人相談所では、保護を求めてきた被害者については全員を保護した。
 
 (ハ)学校教育・家庭教育等における取組
独立行政法人国立女性教育会館においては、平成17〜18年度の調査研究において「アジア太平洋地域の人身取引問題と日本の国際貢献」として、人身取引被害者送り出し国の現状、受入国日本における需要等について調査・分析を行った。
 平成19〜20年度においては、「人身取引の多面的防止・教育・啓発に関する調査研究」において、平成17〜18年度に行われた人身取引に関する基礎的調査で得られたデータの再分析を進めながら、調査研究成果の提供を行い、研究成果の普及を図った。
 
3 人身取引を撲滅するための諸対策の推進
 (1)刑事法制の整備
 (イ)人身の自由を侵害する行為の処罰に関する罰則の整備
人身売買罪の創設を内容とする「刑法等の一部改正案」は、平成17年6月16日に可決・成立。同年7月12日から施行。

警察では、人身売買罪が施行された平成17年7月から本年9月までの間に、10事件で人身売買罪を適用して被疑者を検挙した。
 
 (2)取締りの徹底
 (イ)悪質な雇用主、ブローカー等の取締りの徹底
警察が、本年9月末までに検挙した被疑者19名の内訳は、経営者等が15名で、ブローカーが4名である。また、被疑者に適用した法律・罪名は、刑法の人身売買罪、入管法の不法就労助長罪、売春防止法違反、風営法違反等である。
 
 (ロ)関係罰則の積極的な活用
検察では、人身取引事犯に対しては、関係罰則を積極的に活用し、厳正な科刑の実現に努めており、本年9月末までに人身売買罪を適用して起訴した件数は36件であり、一審判決を言い渡された31名のうち20名が実刑判決を受けている。
 
 (ハ)労働基準法等関連法令履行確保
人身取引に付随して労働基準法、売春防止法等関係法令違反が認められる場合、検察においても、積極的にこれらの法令を適用して、厳正な科刑の実現に努めている。
 
 (3)旅行文書等に関する情報交換の推進
 (イ)紛失・盗難旅券に係る情報の国際共有
外務省では、紛失・盗難により失効処理した旅券情報(旅券番号等)を警察庁を通じてICPOに提供している。(平成16年11月提供開始)
 
 (ロ)査証広域ネットワーク(査証WAN)の整備強化
外務省では、外務本省と在外公館、関係省庁との間の査証関連情報の共有化を図るためのネットワークシステム(査証WAN)の整備を進めており、これまでに209公館に設置した。
 
 (4)諸外国の捜査機関等との連携強化及び情報交換の推進
 (イ)外国関係機関との連携強化
外務省では、平成15年度から「アジア旅券政策協議」を開催し、アジア各国と旅券の偽変造防止対策や不正取得防止の強化につき情報・意見交換を行っており、本年度も11月29〜30日に開催予定である。
平成18年5月、日タイ間で人身取引の防止、法執行、保護の3分野で協力を行うため、人身取引対策に関する日タイ共同タスクフォースを立ち上げることで一致し、平成19年9月には第2回会合を東京で開催した。
 
 (ロ)情報交換の推進
警察では、関係省庁、関係国大使館等との間でコンタクトポイント連絡会議を開催し情報交換を積極的に推進している。
 
 (ハ)国際捜査共助の充実化と条約締結の検討
我が国は、米国(平成18年7月発効)及び韓国(平成19年1月発効)との間で刑事共助条約を締結しているほか,中国,香港 との間で条約に署名し、ロシアとの間の条約についても締結に向けた手続を行っている。
(外務省ホームページ)
日米刑事共助条約
日韓刑事共助条約
日中刑事共助条約
日港刑事共助協定
日露刑事共助条約
 
4 人身取引被害者の保護
 (1)被害者の認知
 (イ)各種相談窓口における対応
警察庁を始め関係省庁、NGO及び関係在京大使館等と協力して、警察等に保護を求めるよう9か国語で被害者に呼び掛けるリーフレット(名刺サイズ)を作成し、被害者の手に届くように配布している(タイ、タガログ、スペイン、ロシア、中国、インドネシア、韓国、台湾、英語)。
警察は、平成19年10月1日から、潜在化しやすい人身取引事犯等を対象として、一般の方から匿名での情報提供を受ける「匿名通報ダイヤル」の運用を開始した。(本年9月末までの受理件数62件(人身取引事犯関係))
 
 (ロ)取締りにおける被害者の認知
被害者への対応については、警察、入国管理局、婦人相談所等の関係機関は適切に対応するよう通達している。
 
 (ハ)警察における被害者の取扱い
警察が本年本年9月末までに保護した被害者19名のうち、警察署等に保護を求めた被害者は8名である。これらの被害者に対しては、当該外国人女性の母国語を解する職員や女性職員を当てるなどして事情聴取に努めるとともに、大使館等と速やかに連絡をとるなどして婦人相談所等での保護を実施した。
 
 (2)シェルターの提供
 (イ)婦人相談所等の活用
婦人相談所等では、保護を求めてきた被害者については全員を保護した。(平成13年度1名、14年度2名、15年度6名、16年度24名、平成17年度117名、平成18年度36名、平成19年度36名、本年度8月末現在8名)
 具体的事案
インドネシア人3名が成田空港が入国後、某県内の飲食店で働くが、そこで売春を強要される。夜、アパートにいるところを入国管理局と警察に助け出され、人身取引被害者として婦人相談所が保護。その後、婦人相談所、警察、入国管理局、大使館、IOMが緊密な連携を図り、被害女性の支援に当たって身体的・心理的負担に十分配慮し、被害女性は捜査協力の後、安全に帰国した。(本年2月)
 
 (ロ)被害者の希望に沿った対応と民間シェルターとの連携
婦人相談所等が保護した被害者のほとんどが帰国希望であり、関係機関と連携しながら被害者の状況に合わせて適切に保護できるよう支援している。被害者が児童である場合には、必要に応じて児童相談所が保護する。
法務省入国管理局では、被害者が不法滞在者の場合は、関係機関と連携して、可及的速やかに手続を進めるよう配慮しており、在留特別許可の手続に当たって、出頭回数を必要最小限にとどめることとしている。
 
 (ハ)民間シェルター等への一時保護委託
厚生労働省では、平成17年度より、人身取引被害者の一時保護を婦人相談所から民間シェルター等へ委託するために、1000万円の予算措置を行っている(平成17年4月〜本年8月末:78名)。
 
 (3)カウンセリング・相談活動等の実施
 (イ)医療の支援
厚生労働省では、人身取引被害者が無料低額診療事業の対象となる旨を都道府県等に周知した。(平成17年3月)また、平成18年度から、婦人相談所が一時保護した人身取引被害者について、他法他制度が利用できない場合の医療費を予算措置した。これらに基づき、婦人相談所等は、嘱託医による診察を含めて、一時保護した人身取引被害者に対して、全額公費による医療支援を行っている。
 
 (ロ)法的手続の十分な説明
法務省入国管理局においては、強制退去手続の対象者を含む人身取引被害者について同手続等の説明を行っている。
 
 (ハ)人身取引被害者の支援に関する体制の整備
法務省では、全国の法務局・地方法務局及びその支局等における人権相談の窓口において、人身取引被害者等からの相談にも応じているほか、東京、大阪、神戸、名古屋、広島、福岡、高松、松山の各法務局・地方法務局においては、英語や中国語等の通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を開設し、相談に応じている。
 
 (ニ)就労可能な在留資格を有する人身取引被害者に対する職業相談等
婦人相談所においては、我が国において就労可能な在留資格を有しており、支援が必要であると認められる被害者については、職業相談等を実施することとなっているが、就労可能な在留資格を有している被害者の殆どが帰国希望であり、就職相談を必要とする者はいなかった。
 
 (ホ)婦人相談所等への心理療法担当職員の配置等
婦人相談所等で保護された人身取引被害者には、本人の希望に応じて、心理職による援助を行っている。厚生労働省は、一時保護した人身取引被害者のために、通訳雇上費を予算措置している。
 
 (4)交番等に駆け込んだ被害者の取り扱い
 (イ)保護要請があった場合の措置
交番、警察署等に保護を求めた被害者に対しては、当該外国人女性の母国語を解する職員や女性職員を当てるなどして事情聴取に努めるとともに、大使館等と速やかに連絡をとるなどして婦人相談所等での保護を実施した。
 
 (ロ)婦人相談所等における保護
交番等に保護を求めた外国人女性等が人身取引被害者であると認められ、警察署等から婦人相談所等に対し人身取引被害者の保護の依頼がなされた場合には、民間シェルターや入国管理局、大使館等と連携を図りつつ被害者の保護を行った。(実績:平成13年から本年10月末迄に保護した208名中、警察からの依頼は100名)
 
 (5)被害者の在留資格の取り扱い
 (イ)入国管理関係手続の弾力的な運用
入国管理局は,平成17年から平成19年に不法残留等入管法違反者であった87名全員に対し、在留特別許可を付与した。また、本年も同様に3名(9月末現在)全員に在留特別許可を付与している。
 
 (ロ)在留特別許可による被害者の救済
「出入国管理及び難民認定法」が改正され、人身取引等の被害者に在留特別許可を与えることができる規定を整備。平成17年7月施行。
 
 (6)被害者の安全の確保
 (イ)被害者の安全確保
被害者の安全確保については、警察、入国管理局、婦人相談所等、IOM等が連携して被害者の認定、保護、帰国支援等にかかわっており、人身取引被害者の立場や心情に配慮した手続の実現に努めている。
 
 (ロ)婦人相談所における夜間警備の実施
婦人相談所に警備員の配置等を行い、警備体制の強化を進めるとともに、適宜、最寄りの警察署等に相談し、警護等を要請するなど、被害者の安全確保を行っている。
 
 (7)被害者の帰国支援
 (イ)関係機関との連携による緊密な帰国支援
被害者の帰国支援については、警察、入国管理局、婦人相談所等の関係機関が緊密に連携し、平成17年5月から平成20年6月末までにフィリピン人女性57名、インドネシア人女性48名、タイ人女性18名、台湾人女性8名、コロンビア人女性1名、韓国人女性3名の合計135名の帰国支援に関与。帰国支援においては、国際移住機関(IOM)が、被害者の本国への移送及び帰還後の社会復帰支援等を実施した。
 
 (ロ)IOM(国際移住機関)を通じた人身取引被害者の帰国支援事業
外務省では、平成19年度においても、引き続き人身取引被害者の帰国支援のために、IOMに対して約3600万円を拠出した。
 
 (ハ)国費送還による帰国支援
人身取引被害者については全て合法滞在者として出国させており、帰国支援については上記(ロ)等で対応している。
 
 (ニ)帰国用渡航文書の速やかな発給のための関係各国との情報交換
警察庁が進めるコンタクトポイント連絡会議などの場を活用して、在京関係国大使館との情報交換・意思疎通を図っている。
 
 (ホ)人身取引被害者の帰国後の受入先の安全に対する配慮
人身取引の被害者に対して在留特別許可をする際には、その事情に応じて在留期間を柔軟に設定するとともに、被害者の帰国の際には、IOMと連携を図り帰国のための支援を行っている。
 
5 人身取引対策推進に際しての留意事項
 (1)内外の関係機関等との連携
 (イ)国内の関係機関との連携確保
NGOと関係省庁連絡会議幹事会との意見交換会をこれまで4回行っており、最近は本年5月に実施した。
 
 (ロ)外国の関係機関との情報共有・捜査協力の推進
我が国は、平成12年以降、延べ14か国に政府協議調査団を派遣し、政府関係機関、NGO、国際機関と意見交換を実施した。
タイとの間では、日タイ共同タスクフォースを正式に立ち上げることで一致し、人身取引の防止、法執行、保護の3分野で協力を行うこととなった。本年9月には、人身取引に関する日タイ共同タスクフォース第2回会合を東京で開催し、両国の人身取引関係省庁の他、JICA、IOM東京事務所が参加した。
外務省は、平成19年3月にバンコク及びマニラにおいて、「第1回日タイ領事当局間協議」および「第4回日比領事当局間協議」をそれぞれ開催した。両国外務省領事当局及び関係省庁が参加したこの協議においては、人身取引対策が主要議題として取り上げられ、悪質な組織の取締りや意識啓発について意見交換を行った。また、本年6月には、東京において「第2回日タイ領事当局間協議」を開催し、タイにおける偽造旅券製造組織の摘発等、人身取引対策に関連する取組の進展について確認した。
 
 (ハ)国際的な支援
人間の安全保障基金等国際機関への拠出や無償資金協力を通じて人身取引対策を積極的に支援している。
【支援例】
人間の安全保障基金について、2007年4月に、国際労働機関(ILO)及び国連開発計画(UNDP)がタジキスタン共和国において実施する「紛争後のタジキスタンにおける雇用創出及び移住管理改善を通じたコミュニティ開発」に対し、約1億2702万円の支援を行うことを決定。
 また、2006年3月には、国際労働機関(ILO)が実施する「タイ・フィリピンに於ける帰還したトラフィッキング犠牲者のエンパワーメント事業」に対し、約2億1,155万円の支援を行うことを決定。
2006年10月にUNICEFが中央アジアで実施する人身取引対策への支援(20万ドル)を決定。
2005年2月に、国際NGO「バンコクキリスト教青年会財団」がタイにおいて実施する「パヤオ県人身取引防止及び被害者支援計画」に対し、約985万円の草の根・人間の安全保障無償資金協力を実施。
 
 (ニ)シンポジウムの実施
「人身取引問題に関する国際シンポジウム」を外務省、国立女性教育会館(NWEC)、国際移住機関(IOM)の共催で2006年2月に開催。関係省庁、都道府県行政職員、都道府県及び市区町村の国際交流担当、NGO関係者、研究者、一般市民等約300名が参加した。
(外務省ホームページ)
(独立行政法人国立女性教育会館ホームページ)
独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)では、平成20年2月に実施した「人身取引対策における人材育成と研修関係者会合」において、国内外の関係諸機関による調査成果を発表するとともに、関係機関との連携を深め、関係職員等の人材育成について検討を行った。
警察では、コンタクトポイント連絡会議に加え、児童の商業的・性的搾取に関わる人身取引対策の一環として、NGOとの協力関係を含めた東南アジアにおける国外犯の捜査協力を拡充・強化するため、「東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナー 」を開催し、インドネシア・タイ・フィリピン・カンボジアの捜査機関、国内外のNGO等との意見交換・情報交換を実施している。
外務省では、人身取引に関する国連関係機関調整会合をUNODCと共催した。IOM,ILO,UNICEF、UNIFEM、UNDAW、UNHCRが出席し、各国際機関が協力して人身取引対策に当たっていく上での問題点、関係機関共通のデータベースの作成等の計画等につき議論された。(平成18年年9月)
 
 (ホ)東南アジア諸国入国管理当局とのセミナーの実施
法務省では、毎年「東南アジア諸国出入国管理セミナー」を開催しており、東南アジア入国管理局当局等との連携を図っている。
 
 (2)社会啓発・広報の実施
 (イ)総合的な啓発・広報活動
テレビ(2番組)、ラジオ(1番組)、新聞(広告)、雑誌(時の動き、あかれんが、外交フォーラム等)等あらゆる広報媒体を活用して、人身取引対策についての広報を実施した。
外務省では、内閣官房、警察庁、法務省、厚生労働省と編集協力し、「日本の人身取引 対策」パンフレット(5千部)を作成配布した(本年2月)。
法務省の人権擁護機関では、我が国の人身取引対策についても言及している人権啓発冊子を作成・配布している。
 
 (ロ)警察における社会啓発・広報
警察は、毎年6月に「来日外国人犯罪対策及び不法滞在・不法就労防止のための活動強化月間」を設定し、広報啓発活動を行っている。
 
 (ハ)入国管理局における広報
入国管理局では毎年6月の外国人労働者問題啓発月間に合わせて「不法就労外国人対策キャンペーン」を実施している。
 
 (ニ)婦人相談所における対応についての広報
都道府県は、婦人相談所が国籍を問わず、各般の問題を抱えた女性の相談・保護に応ずる機関であることについて、リーフレットやパンフレットを作成・配布するなどして広報・周知を図っており、厚生労働省は当該事業に対して補助を行っている。
 
 (ホ)女性に対する暴力の視点からの広報
内閣府では、人身取引対策の啓発用ポスター(2万8千枚)及びリーフレット(5万枚)を作成配布した(本年3月)。
 
 (ヘ)在外公館を通じた広報
外務省では、日本へ渡航する外国人及び外国人を招聘する日本人双方の意識啓発を図るため、「人身取引対策に伴う査証審査厳格化措置」についての広報を外務省ホームページに掲載(日・英語)するとともに、被害者出身地域を中心とする在外公館のホームページ、査証申請窓口、及び現地旅行代理店等に広報資料(現地語)を掲載・配布した(本年8月)。
(外務省・在外公館ホームページ)
日本語
English
Thai
Indonesian
Russian
Spanish
 
 (ト)バリ・プロセス・ウェブサイトを通じた広報・啓発活動
人身取引対策に関するアジア大洋州の地域協力の枠組みであるバリ・プロセスにも積極的に取り組んできており、本年度も引き続きバリ・プロセスのウェブサイト維持費として1万ドル拠出した。
 
 (3)人身取引対策に関係する職員に対する研修・訓練
 (イ)警察職員に対する研修・訓練
警察庁は、人身取引対策にかかわる職員に対し、人身取引事犯の捜査要領や被害者保護の重要性、手続等について教養を実施している。
 
 (ロ)検察職員に対する研修
検察職員に対しては、その経験年数等に応じた各種研修において、被害者の保護・支援、児童および女性に対する配慮等に関する講義を実施するなどして、被害者の立場、心情等に配慮するよう努めている。
 
 (ハ)入国管理局職員に対する研修
入国管理局においては、入国審査官、入国警備官等の職員に対し、IOM等の関係各機関から講師を招き、人身取引事案に対する意識向上、知識習得のための研修を毎年実施している。
 
 (ニ)海上保安庁職員に対する研修
海上保安庁では、毎年実施している国際組織犯罪実務者研修の中で、人身取引被害者保護の重要性及び水際対策等についての講義を行い、関係職員の知識の習得を図っている。
 
 (ホ)査証官に対する訓練
「人身取引防止対策と査証の役割」について研修資料を作成し、全在外公館の査証官に配布するとともに、同資料に基づく研修を適宜実施。
 
 (ヘ)婦人相談所等職員に対する研修
本年11月:全国婦人相談員・心理判定員研究協議会を実施し、その中の分科会で外国人女性支援の実績のあるNGO職員を助言者として、人身取引被害者を含む外国人に対する支援について協議。
都道府県において独自に研修を実施するために、厚生労働省は予算措置を行っている。
 
 (4)行動計画の検証・見直し
人身取引対策関係省庁連絡会議幹事会を開催し、施策の進捗状況について、確認を行っている。
以上



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