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世界各国の企業・政策担当者に対する日本の規制のサンドボックス制度の活用方法案内(シンガポール・フィンテック・フェスティバルにおけるパネルディスカッション・概要)

NOVEMBER 16, 2023

左から鬼頭武嗣 Elevandi Japan Co-founder兼CEO、岡田陽 内閣官房 企画官


 2023年11月16日、シンガポール・フィンテック・フェスティバルにおいて、日本の規制のサンドボックス制度に関するパネルディスカッションが開催されました。鬼頭武嗣Elevandi Japan Co-founder兼CEOがモデレーターとして質問し、岡田陽内閣官房新しい資本主義実現本部事務局企画官がそれに答える形で進められたところ、その概要は以下のとおりです。


1.日本の規制のサンドボックス制度の概要

  • 近年、AI、IoT、ブロックチェーンといった技術進歩が次々と出現している一方、規制所管官庁は技術進歩についての知見が不十分な場合があり、既存の法体系は新規技術を前提として作られていない場合も見られます。規制のサンドボックス制度は、そうした課題に対応するために創設された、規制の壁を乗り越えるためのアジャイルな解決手段です。
  • 同制度は、あらゆる分野で、規制との関係を整理し、実証の期間や参加者など条件を限定した上で、既存の規制の適用を受けることなく、新しい技術を用いた実証を迅速に実施することを可能にします。実証によって得られたデータは、事業化や規制改革の推進に活用することが可能です。実証後、規制面の問題がなければ、そのまま事業化に進むことができ、課題があれば、実証で集めたデータが規制改革の触媒として機能し、規制所管官庁は法令の見直しを含めた規制改革を検討することになります。
  • 同制度は2018年に3年間の時限付きで導入され、20件を超える実証案件が認定され、2021年に恒久化されました。これまでに、フィンテック、モビリティ、AI、IoT、ヘルステック等の幅広い分野において30件の実証案件が認定されています。
  • 内閣官房には、規制改革に関連する相談を広く受け付ける一元窓口を設置しており、事業者の事前相談を受け付け、情報提供や伴走支援等を提供しています。


2.日本の規制のサンドボックスの特徴と国際比較

  • 多くの国に、「規制のサンドボックス」と称する制度はありますが、対象範囲や機能が様々な点で異なります。日本の制度の特徴は、金融サービスに限らず、あらゆる分野に適用可能な点です。
  • 日本の制度では、内閣官房に設けられた一元窓口に相談することが可能です。正式申請前の事前相談を受け付けており、どの法規制が自社のビジネスモデルに関係するのか分からなかったり、新規ビジネスの妨げとなり得る特定の規制を懸念されたりする場合には、内閣官房の一元窓口に相談をいただければ、規制上の課題を精査し、規制所管省庁と議論をするための調整を行い、実証の設計や実施を支援する伴走支援を提供します。


3.日本の規制のサンドボックスのプロセス

  • まず、内閣官房の一元窓口に問合わせをいただければ、実証の設計についての事前相談や伴走支援を提供します。実証内容が具体化した段階で、規制を所管する主務大臣へ正式申請を行います。
  • 主務大臣は、1か月以内に申請に対する見解を新技術等効果評価委員会に提出します。評価委員会は、独立した第三者委員会であり、申請内容や大臣の決定を評価し意見を述べることができます。主務大臣は、評価委員会の意見を踏まえてその決定を再考し、最終決定を行うこととなります。
  • 実証計画が認定された場合、実証の実施が可能となり、実証後にデータ等を含めた実証結果を主務大臣に報告します。規制に関する課題がない場合は、すぐに事業化に移ることが可能です。課題がある場合には、規制所管省庁が既存の法規制を見直すことになります。
  • 規制所管省庁の対応が遅い場合には、内閣官房から規制所管大臣に対して規制改革に向けた検討の加速を迫る仕組みもあります。


4.規制改革関連制度

  • 規制改革は、民間セクターでの経済成長を促す重要な政策課題です。規制改革に関しては規制のサンドボックスの他にも制度があり、例えば、グレーゾーン解消制度は、事業を始める前に法規制の解釈や適合性を確認したい場合に利用できます。また、新事業特例制度は、事業化のための特別措置を求める場合に利用できます。
  • 自社のビジネスに適切な政策手段を判別することが大変な場合には、内閣官房の一元窓口に相談いただければ、御社の課題を精査し、規制のサンドボックス制度のみならず、規制改革関連制度から最も迅速で問題解決に適した制度を紹介することができます。


5.日本の規制のサンドボックスの成功事例

  • 規制のサンドボックス制度における代表的な成功例として、電動キックボードのシェアリング事業に関する実証があります。当時の規制枠組みでは、公道において電動キックボードを運転する際には、ヘルメットの着用や運転免許証の所持等が求められました。そのため、私有地である大学構内での実証を計画し、大学構内の道路は公道ではないことから、運転免許証の所持等がなくても、電動キックボードを走行させ、データを収集することが可能となりました。
  • 実証から得られたデータ等を基に段階的に規制が緩和され、2022年4月の道路交通法改正に繋がりました。ヘルメットの着用は努力義務となり、16歳以上であれば、運転免許証を所持せずに、車道のみならず自転車専用レーンで電動キックボードを運転することが可能となりました。
  • この規制の見直しは、新しいモビリティサービス市場を創出するとともに、日本経済に大きなインパクト与えるものとなりました。




6.グローバル企業へのアプローチ

  • 外国企業やスタートアップを日本市場に誘致し、日本でイノベーションを起こしてもらうことは極めて重要です。他方で、外国企業は、日本市場参入の際に規制の問題に直面することがあり、規制上の障害が外国企業による日本市場への参入を妨げている可能性があります。
  • こうした規制の問題を乗り越えるため、日本政府は、規制のサンドボックス制度やグレーゾーン解消制度を含む規制改革関連制度を整備しています。また、内閣官房に一元窓口を設けて、外国企業に対して事前相談や伴走支援を提供しています。こうした実質的な支援措置は、日本市場への進出を考えている外国企業への実質的なメリットになり得ます。


7.外国企業による日本の規制のサンドボックス制度の利用

  • 日本の規制のサンドボックス制度は、外国企業にも活用されており、本社が海外にある外国企業によって直接活用されるようなモデルケースを創出したいと考えています。シンガポールや東南アジア諸国での事業展開だけではなく、日本でも同時に事業展開を実施したい外国企業を想定しています。挑戦していただける企業をお待ちしています。


8.国際連携の重要性

  • 他国政府の政策担当者との国際連携は重要です。国際的な意見交換は、我々の規制のサンドボックス制度を理解し改善するために必要です。各国の規制のサンドボックス制度に関する差異や共通点を理解し、その機能や審査プロセスの迅速化について知見を共有することは出来ます。また、他国のベストプラクティスに基づき、制度全体のプロセスを絶え間なく改善する方法を学ぶことも有意義です。
  • 個人的には、国境を越えた協力が必要な政策分野はあると思いますが、国際連携の必要性の程度は分野に異なります。フィンテックのような分野には、国境を越えて共通する多くの要素があるのではないでしょうか。


9.外国企業・各国政策担当者へのメッセージ

  • 外国企業による日本の規制のサンドボックス制度のフル活用をお待ちしています。事前相談から正式申請に至るまでの伴走支援として、規制所管省庁との議論や実証計画の設計に関して支援を提供しています。また、こうした伴走支援に加えて、規制改革に詳しい弁護士による無料の法律相談を提供する制度もあります。
  • 我々は、外国企業が日本市場に進出する際のあらゆる懸念を緩和し、払拭したいと考えています。最先端の技術を活用した新しいビジネスアイデアをお持ちの方は、どの分野でも、またどの国籍であっても、お気軽にお問い合わせください。
  • 各国の政策担当者に対しては、あなた方と協力できることを期待していることをお伝えします。規制のサンドボックス制度等に関する意見交換や国際連携の可能性についての議論を行いたいと考えています。
  • 本パネルディスカッションは、日本の規制のサンドボックス制度が如何に多様な分野で利用されており、国内外の企業や政策担当者にどのように役立つかを示す貴重な機会となりました。規制に柔軟に対応しつつ技術革新を推進するこの制度は、日本における経済成長とイノベーションを推進する重要な要素となっています。


※なお、本パネルディスカッションの詳細は、こちらに掲載しております。






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