地域の力で乗りこえる -離れていても、ともにつながる防災-
令和8年2月11日に三重県紀宝町で開催した第3回ワークショップでは、「支援の現場から見えた課題と備え」をテーマに、平時の仕組みが災害時にも生かされたフードバンク活動の事例などについて話題提供をしていただいた後、参加者がグループワークなどを行いました。
話題提供:支援の現場から見えた課題と備え
認定NPO法人セカンドハーベスト・ジャパンの松本健一氏は、災害時における「食」の重要性について、団体が取り組んできたフードバンク活動の経験をもとに語りました。フードバンクは、平時には食品ロスの削減と生活困窮者支援に取り組み、集めた食品を必要な人へ届ける活動です。松本氏は、この平時の仕組みが災害時にも生かせるとし、「食を届ける流れを平時からつくっておくこと」が、被災者の健康維持や生活の下支えにつながると話しました。
これまで東日本大震災や熊本地震などで支援を行ってきた経験から、災害時の成否を左右する要素は「平常時からの連携、顔の見える関係」であると強調しました。遠方から物資を運ぶ支援には限界があり、現地の状況把握や行政・協力団体との連携が十分でないまま支援を行うと、かえって現地の活動に支障が生じることもあるといいます。こうした経験を踏まえ、松本氏らは中国地方や九州地方で勉強会を重ね、発災から24時間以内に活動を始められることを目指した災害支援のタイムラインを作成してきました。
その成果は、能登半島地震の際にも表れました。地震発生直後から、過去の勉強会でつながっていた関係者同士で連絡が始まり、岡山の団体が中心になって呼びかけた結果、北陸をはじめ、全国からのボランティアが石川へ向けて動き出したといいます。松本氏は、「助けたい」という思いを実際の行動につなげるには、普段からの信頼関係が不可欠だと話しました。
また、災害時の食は、日常を取り戻す力にもなると指摘しました。被災直後にはおにぎりや菓子パンなどが中心となり、それ自体は大きな助けになる一方、1か月、2か月と続く中では、食生活の偏りや体調悪化への懸念も大きくなります。そのため、炊き出しなどの温かい食事に加え、「いつもの家庭の食事」に近いものを届けることが、心身の回復や生活再建の支えになると話しました。
これらに加えて、仮設住宅などで孤立しがちな人々が一緒に食事をすることにより、コミュニティ再生のきっかけを作る効果も期待されます。災害時の食の支援はこのような多面的な効果に着目すべきと語りました。
さらに、災害対応を考える上では、自助・共助・公助を単純に分けて捉えるのではなく、それぞれの重なりや相互関係を見ることが重要だといいます。遠方から入る支援、町内会や自治会による地域の共助、普段の近所付き合いの中での助け合いは性質が異なりますが、災害時にはそれぞれが補い合う関係にあります。だからこそ、平時からワークショップなどで話し合い、地域で何ができるかを共有しておくことが、いざという時の行動を変えると呼びかけました。
参加者によるグループワーク
講演後、参加者はグループに分かれ、「支援が来ない状況が続いた場合に困ること」と「個人や地域でできること」について意見を出し合いました。その内容について、代表して三つの班から発表がありました。
- 支援が来ない状況が続いた場合に困ることとして、電気、食料、衣類、寝る場所や住まい、燃料、車、お風呂、交通インフラ、医療、薬、情報などがある。
- 電気については、ポータブル電源や発電機を用意しておくことが必要である。
- 水については、飲料水の確保に加え、山水や川の水の活用、簡易浄水器の準備が有効である。
- 交通インフラについては、過去の大水害で道路が寸断された経験を踏まえ、流木対策を含めた道路整備や復旧体制の強化が必要である。
- 食料、トイレ、ガソリン、電気、高齢者への対応などが課題である。
- ガスについては、カセットコンロやボンベを活用することが必要である。
- 食料については、炊き出しを行うことや、日頃から食料品を多めに備蓄しておくことが大切。
- 孤立しがちな住宅では、日頃からコミュニケーションを取り、声かけをしておくことが重要である。
- 断水時の風呂については、川の水を利用することが考えられる。
- 外国人への対応としては、会社の同僚などを通じて連絡を取り合うことや、宗教・文化の違いに配慮する必要がある。
- 持病のある方については、救急体制の確保や必要な薬の備蓄支援が必要ではないか。
- 備蓄や運営体制についても、あらかじめ整えておくことが重要である。
- 支援が来ない状態が続いた場合に困ることとして、道路、水、薬や医療、電気、食料、燃料、人手不足、避難場所の確保などがある。特に、高齢者や子どもの避難場所の確保が重要であるとの意見。
- 道路については、土砂災害などで主要道路が寸断され、物資が届かなくなることが懸念される。
- 水については、飲料水や風呂の水の確保が課題である。
- 薬については、服薬している方への支援や医療体制の確保が必要である。
- 電気については、停電により暖房や調理ができなくなることが問題になる。
- 食料については、物資支援に加え、赤ちゃんのミルクなどへの対応も考えなければならない。
- 連絡手段については、災害時に通信が途絶する不安がある。
- 燃料については、ガソリンやストーブ用燃料が不足すると困る。
- 個人や地域でできることとして、道路の簡易な整備や点検、水の確保、地域での安否確認がある。
- 電気については発電機の活用、食料については地域で作物を作って補い合うことができるのではないかと。
- 外部とつながる必要があることとして、道路状況の確認、医薬品の確保、行政無線の活用などが考えられる。
- 自助・共助・公助の三つを意識し、日頃から防災訓練や情報共有を通じて防災意識を高めていくことが大切である。
講評
参加者によるグループワークの発表を受け、有識者の池上氏から総括としての講評がありました。
池上氏は、トイレや食料の備えとして山や畑を活用する発想や、米や野菜を多めに作って備蓄する意見が出たことに触れ、この地域には災害に強い基盤があると述べました。その上で、こうした力を生かすには、災害が起きてからではなく、日頃から助け合える関係をつくっておくことが重要だと述べました。
また、どの班でも水について議論されていた点を挙げ、飲料水、生活用水、消火用水といった役割を意識して備える必要があると指摘しました。さらに、大規模災害時には電気の確保が命に関わる場合もあるとして、車など身近な資源の活用や複合災害への備えの重要性を示し、日頃からの備えを呼びかけました。
停電対策の一つの方法として自動車のバッテリーの活用可能性についても紹介しました。自動車のバッテリーにインバーターを接続することで、家庭用電源と同様の電気を得ることができ電話やFAX、パソコン、炊飯器などの電気機器が使用できるといいます。
まちの灯りの確保については、自家用車のヘッドライトを玄関に向けて照らすことで、出入りする人の安全確保や屋内からの確認につながり、安心感を高める効果があると話しました。この際、エンジンを稼働させることで、ガソリンがある限り照明を維持でき、各家庭が同様にヘッドライトを活用することで、地域全体の明るさを確保することも可能であると紹介しました。
そのほか、自動車はラジオによる情報収集手段として活用できるほか、電話や時計、エアコン、室内灯といった機能を備えており、物資の保管場所としても利用でき、施錠や移動が可能な点でも有用であると話しました。
また、過去の事例として、河川敷での宿泊体験訓練において、多くの車両を並べてヘッドライトで足元を照らした結果、暗所での移動の安全確保に大きく寄与し、歩行者から喜ばれたことが紹介されました。
今回のワークショップでは、災害時の「食」が単なる物資ではなく、命をつなぎ、日常を支え、地域の再建にもつながる重要な要素であることが共有されました。あわせて、遠方からの支援には限界がある中で、平時からの顔の見える関係や地域内の助け合いが、災害時の大きな力になることも改めて確認されました。
グループワークでは、水、電気、道路、医療、食料など多様な課題が挙げられましたが、その対応の多くは、地域にある資源をどう生かすか、そして日頃からどうつながっておくかに関わるものでした。日常の備えと地域の関係づくりを積み重ね、自助・共助・公助が重なり合う形で地域の力を高めていくことが、国土強靱化の取組につながることが示されました。
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