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法令外国語訳・実施推進検討会議(第6回)議事概要

(司法制度改革推進室)
※ 速報のため,事後修正の可能性あり


日 時
平成17年11月4日(金)15:00〜17:00
 
場 所
永田町合同庁舎第1共用会議室
 
出席者
(構成員)柏木昇(座長),アラン・D・スミス,内田晴康,垣貫ジョン,後藤修,布施優子,松浦好治,内閣府,金融庁,警察庁,公正取引委員会,防衛庁,総務省,法務省,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,環境省     ※敬称略
(オブザーバー)人事院
(事務局)本田守弘審議官(司法制度改革推進室長),小林昭彦参事官,小川新二参事官,中川明子参事官補佐,山本拓参事官補佐
 
議 題
(1)法令の翻訳の利用(アクセス)を容易にする体制の整備について
(2)法改正への対応等継続的作業(メンテナンス)を行う体制の整備について
(3)その他
配布資料
資料6−1法令外国語訳推進のための基盤整備に関する主な検討事項について(論点表)
資料6−2−1韓国における法令の外国語訳の推進体制等(概要)
資料6−2−2フランスにおける法令の外国語訳の推進体制等(概要)
 
議事要旨
 冒頭,事務局から,自由民主党政務調査会司法制度調査会「国際化社会に対応する司法・法務のあり方に関する小委員会」における議論状況の報告がされた。
 その後,論点について,資料6−1に従い,以下のとおり議論等が行われた。(□座長,○有識者構成員,●関係府省構成員,■事務局)
 資料6−1の「1.法令の翻訳の利用(アクセス)を容易する体制の整備」の「基本的な考え方」は,「法令の翻訳を可能な限り一元的に検索・利用できるようにし,法改正への対応状況など必要な情報を確認できる仕組みを設けるなど,利用者の立場に立ったアクセス体制を整備することを検討すべき」ということで,これについては問題ないだろう。「インターネットの活用等によるアクセス体制の整備」については,「当面は、例えば翻訳ルールに準拠した関係府省等による翻訳(法令自体のデータを含む対訳データ)を政府機関のホームページに集積し(関係府省等からホームページの管理主体に対して対訳データを提供するためのルール作りが必要となる。),法改正への対応状況等を明らかにした上で,翻訳ルールとともに無償で公開することが考えられる」ということである。管理主体をどうするかということは一つの問題であるが,対訳データを提供するためのルールづくりが必要となろう。
 一つの論点は,とりあえず無償ということでいいかどうかということである。いったん無償にすると,その後の継続的体制で有償に転換することが難しいかもしれない。継続的体制を民間でやることになった場合は有償にしないとどうにもならないだろうが,それとの絡みをどう考えるべきか。「民間にできることは民間に」ということで,全部公的資金でこういう作業を行うことには異論もあるだろう。反対に,法律を知らしめるということは国の基本的なインフラストラクチャーとして当然無償でやるべきだという考え方もあろう。その後の継続的体制の在り方にも影響してくると思われるが,いかがか。
 基本的に無償で公開ということになれば,その後有償化というのは難しくなるのではないか。無償となると商業ベースに乗らないという可能性が高く,そうなれば,やはり政府が関与して,一定の予算措置を講じた上で,基本的かつ重要な法令については積極的に翻訳を進めていくことにすべきではないか。法令全般に関して民でというのは,商業ベースで実際に考えると非常に難しい。翻訳を作成する場合,韓国の例にもあるように,翻訳者を決めて下訳をさせ,専門家がレビューしてメンテナンスしていくという形になると,相当な時間と労力と,公益性を踏まえたボランティア的な活動が入らないとなかなか実現できず,商業化は非常に難しいだろう。この論点に絞った話ではなく,メンテナンスも含めて政府が関与した形で積極的に行っていくという考え方で整理をすべきではないか。
 有償・無償については,基本的には,国の法律について国際化に対応するために英文で知らしめるという以上,国が無償で提供するという方向でやるべきではないか。
 座長が指摘した国の基盤整備の一環という考え方からすれば,国が定めている法律の翻訳というのは,やはり本来国がやるべきことではないか。
 どこが運営主体になるにせよ,どこまでやるのか。インターネットを使うということになれば,当然サーバーのメンテナンスが必要になるし,ある程度アップデートもしていかなければならない。使い方についても,フランスのように検索機能がないのではユーザーフレンドリーでないということになるので,いろいろ改善をしていく必要があるだろう。従来の法令外国語訳の状況からすれば,コマーシャルベースには全然乗っていないということで,やはり政府主導というのが一番座りがよく,かつ納得が得られやすいのではないか。当然そうすると無償ということになるのではないか。
 民間への移管という部分は,余り意識しなくてもいいのではないか。何か必要になれば民間はビジネスで考え出すであろう。比較表を作ったり解説を入れたりするというような形で付加価値をつけることでビジネスとして成り立っていくのであればそういうことをやっていくと思う。法令だけということであれば,政府主導というのが一番わかりやすいと思う。
 政府主導でやるのか,政府の役割がどこまでなのかという議論と,有償・無償の話とは切り離すことができると思う。無償でやるということにするのか,利用者・受益者にもある程度負担させるのかというような,根本的なポリシーの問題があるのではないか。
 法改正の対応状況等については,政府が一番情報を持っているであろうし,翻訳ルールも政府が責任を持ってある程度見ていく必要がある。そうすると,やはり無償にすべきではないか。
 無償・有償の問題よりも,どこで政府の役割を切るのかという問題が重要だと思う。基盤整備の観点から考えると,やはり基盤を築くのが政府の役割で,あと民間ができることは民間に任せる方がいいと思う。インフラストラクチャーを築くのは政府の役割で,アクセスと標準用語集の維持などメンテナンスは政府が統一して行うべきで,あとの翻訳は,民間の出版社や他の企業が商売にできるのであれば,そういう企業に任せる方がいいと思う。今でも,特に外資系企業は,何か新しい法案が出た場合には,法律事務所に依頼して翻訳している。例えば,米国商工会議所経由で幾つかの会社が組んでお金を出している。新規の立法がなされた場合に政府が翻訳するべきかどうかという議論があるが,省庁は非常に忙しくて限られた時間ではできないと思うので,そういう需要がある場合は民間の企業に任せる方ができると思う。ただ,政府がどのように主導できるかというのが問題である。
 でき上がった製品については,例えば,インターネットで内容のボリュームに応じて利用料をチャージしてもいいと思うか。
 例えば,民法・商法なら翻訳がいろいろあり,そういう法律を直す話であれば,幾つかの会社が組んで翻訳を依頼するであろう。政府がそのアクセスを与える場合でも,当然払う価値があると判断するなら企業は払う。法律によるであろう。例えば,個人情報保護法が最近できたが,非常に企業の関心が高く,よく翻訳されていた。そういう法律であれば,政府がアクセスを与える場合でも払うであろう。その意味でも,どの法令を翻訳するのかよく選ばなければならない。特に外国の企業,外国から日本に投資をする企業にとって重要だと思われる法律であれば,企業はその翻訳に金を払うだろう。
 要するに,特に企業の需要が多いような法令の翻訳であれば,その受益者にチャージしても構わないということか。需要の中には,外国法整備支援のようなボランティア活動もあると思うので,対象によって大分違ってくるだろう。
 そうである。ただ,企業は,相当品質が高く,十分なアクセスがなければ払わないであろう。
 法令外国語訳の推進の目的は,翻訳業の促進ではなく,対内直接投資(FTI)の促進であり,今まで民間任せの状態で信用できるものができなかったという問題がある。
 私自身,ボランティア的な仕事をかなりよく頼まれるが,法令や法案の信用できる翻訳をボランティアベースでやる人は多くない。他方,企業がきちんと翻訳を作るのは大体法律が立法された数年後であり,早期に正確な信用できる翻訳を必要とする人のニーズには間に合わない。まずインターネットで掲載したものはすべて無償にすべきだと思う。検索機能も付けるべきである。アメリカや日本の有償のホームページをかなり使っているが,それらのビジネスモデルも少しずつ変わってきている。最近は無料で手に入る情報がインターネット上で増えているので,法律や判例の紹介そのものでは余りペイせず,付加価値を付けた附帯的な業務でもうけようとする企業が増えていると思う。政府が紙ベースで法律の訳文を提供する場合は当然有償にすべきだが,インターネットに載せるものは無償にするべきだと思う。民間の企業が提供する場合は,注釈を付けるなどして有償で提供するべきだと思うが,法律そのものについては,利用者がアクセスしやすいインターネットに載せる場合は無償とすべきと考える。
 無償にするとした場合,気になるのは無限にコストがかさむということであろう。コストが無限に増えないようにしなければならない。一定の基盤整備については政府がやるということにして,主要な法令については翻訳を続けられるようにすべきと思う。ビジネスの話もたくさん出たが,例えば,外国から日本へ来て働いている人たちの人権に関するような部分というのは,やはり無償で提供しなければ意味がない。そういうことを考えた上でコストを抑える方法を考えたらどうか。
 例えば,今までにビジネスでつくられた翻訳は,将来の翻訳のベースになり得るので,大きな付加価値がなくなった段階で翻訳したデータを政府に提供するというアレンジメントをすれば,全体のコストはかなり減るであろう。また,需要調査に基づいて限られた予算を順次割り振っていくことを考えればいいのではないか。それでカバーできない,少数の人だが非常に需要が高いものについては,商業ベースで翻訳がされていくのではないか。
 他の論点としては,どういうホームページをつくるかという問題がある。論点表には原典と英訳を対訳的に載せるということも書いてあるが,フランスのlegifranceなどを見ると英語しかない。技術的に可能であれば対訳形式で出ているに越したことはないだろう。
 作業部会などで意見を聞けば具体的な案が出るかもしれないが,少なくともキーワードで検索ができ,更に今言われたような対訳表示などユーザーが利用しやすいようにはすべきであろう。また,どういうものを,どの時期までに立ち上げて,その後のメンテナンスはどうやってするかといった提言もすべきではないか。例えば,平成20年度を目途に本格的なホームページを立ち上げるというような意見も入れば,より具体性が増すのではないか。
 予定では今年度中には14本の翻訳ができることになっているので,暫定的なホームページについては,これに合わせて立ち上げ作業も始めることになると考えていたが,この会議で具体的にいつごろから本格的なホームページを立ち上げるという時期の問題も検討しなければいけないだろう。
 その点は,少し名古屋大学でも検討しているが,1か所のサーバーにすべてのデータが集まるという形にはしなくてもよいという意見もある。実際,検索エンジンを使えば,どういう翻訳データがあるかはほぼ網羅的にリストアップされてくる。翻訳された日本法令もさまざまなサイトで提供されるということでよいのではないか。翻訳するときに,そのホームページがどういう機能を持たなければならないかというミニマムな事柄を決めてはどうか。少なくとも法令名で検索できなければならないだろうし,特定の用語とか領域とかいろんな希望がある。
 ホームページ設計というものは,一度設計すると変更は難しいとよく言われるので,事前にどういう機能を持つサイトが望ましいのかということを,翻訳辞書を出すのと同様に,決めて公表すべきである。その後コマーシャルベースでやることになれば,それ以上の機能を付けて有料になるというイメージである。ホームページが最低限持つべき機能のリストを早い段階で意見をまとめたらどうかと思う。大体どのぐらいの利用頻度と利用の量か,データベース自身の能力その他にも関係するが,この辺は専門家に頼めば今ある程度のスタンダードのものは言ってくれると思う。逆に,非常に細かい技術的なことよりは,こういう機能でこのぐらいのスピードでないといけないという利用者側が必要とする機能を明示すれば,それに合った機器構成その他設計がされるというのが私の理解である。余り専門家の細かい話を聞くよりは,利用者側でこれとこれの機能が必要だということを議論して、それをリストアップすればいいのではないかと思う。
 技術的なことはよく分からないが,いろいろなサイトを見ながら,こういう機能は使いづらいとか、こういう機能が欲しいということをある程度検討する必要があるのではないか。ユーザーサイドの要求というのをまず確定しなければならない。
 対訳辞書が非常に重要である。特に外国のユーザーは日本法を知らず日本語もわからないから,自分の知っている言葉から始めることになる。その言葉が,どの法律でどういう意味で使われているのか,どこに行けばその法律があるのか説明がないとそれほど役に立たないと思う。
 要するに,利用するサイドから見て,どのような情報が必要で,その情報にどうやってアクセスできるようにすべきかを整理してみないといけない。その法令自体の条文,キーワードからの検索,法令用語の意味の検索,そういうものがどういう画面で,どういう具合に情報に対するアクセスが可能なのかということの検討が必要だという御指摘と思う。
 キーワードのアクセスの方法については,最近は,かなり簡単なホームページでも民間の検索エンジンを使ってそのホームページ内の情報を検索することができる。このような検索エンジンの技術は今でも無償で(会社の宣伝をしなければいけないが),それほど難しくないと思う。どの単語が近くに出ているということだけではなく,もうちょっとファジーシンキングをするような検索エンジンだと,もっと工夫が必要となるが。
 先ほど,一つの場所からリンクや検索でという話もあったが,例えば民間のホームページに行くような場合,政府のサーバーから民間のサーバーに直接リンクを張るのは,政府がある会社を他の翻訳会社よりいいと認めたという印象を与えてしまい,適切ではないと思う。独立行政法人等を間に入れ,そこから検索して,ある株式会社が翻訳した何々法のところに行くというようなやり方がよいのではないか。
 確かに,政府から直接リンクを張ると認証を与えたというような印象を与えるという難しさがある。
 今のような話は余り難しくないと思っている。どこにどういう情報があるかといういわゆるリンクリストを提供すればいいだけのことであり,おそらく研究機関や大学,JETROなどでも,いい情報を出そうということになるだろうから,政府が入口のところで情報提供すれば,その後は他のところの方がもっときめ細やかな情報提供することができるようになると思う。民間等の翻訳の所在情報などは余り政府で心配する必要はないと思う。
 ある程度ビジュアライズしないと有効な議論ができない。広くリンクを張るということは誰も反対しないであろうが,それをどう技術的に組み立てていくかが問題である。こういう研究をもう少し進めなければいけないという御指摘だろう。民間等による翻訳の中には有償のものがあるだろうし,翻訳ルールにも準拠していないものもあるだろう。これらも大いに利用する必要がある。この点,経済産業省でいろいろ工夫を試みたと聞いているがどうか。
 民間ベースで既に英訳を行っており,その質自体も比較的高いと思われるものを活用できないかということで,英訳を行ったところと交渉している。法律は商品取引法で,条文数も多く,通常の英訳を行うと数百万円から場合によっては1,000 万円近くかかるものである。英訳を行ったところと交渉しているのは,それを半額以下のかなり安い金額で,ただ,著作権を政府の方で買い上げるのではなく,政府統一のウェブに掲載する限度で許諾を得るようにするというものである。翻訳した方には著作権が残るので,別途そちらでウェブでも有償で公開し,ペーパーでも売ることができる。それらに影響が出なければ政府のインターネットに載せることはかなり安い価格でOKという話にはなっている。
 ただ,先方からもいろいろな要望があり,例えば,先ほど議論にもあったように,リンクを張ってほしいという要望があったが,これについては直接のリンクは張りたくないという形で回答している。その他,どこが訳したかを明示してほしいとか,例えばPDFのような形できれいに仕上げて簡単に印刷できるとなるとペーパーの売上げにも響くので,その辺を工夫してもらえないかということを言われている。
 また,著作権が先方に残るので,既にある先方の成果物を作業部会で精査したときにどれぐらい内容が変わるのか,それによっては自分たちの著作権に響いてくるということを言われている。
 さらに,これは契約の問題かもしれないが,著作権が先方にあるので先方の承諾がない限り好きには変えられないと思われ,そうすると,今後改正があるたびにずっとそこでやっていき,例えば価格や翻訳能力の問題で永続性が確保できるのかという点に不安がある。
 このように,既存のものを活用する上では,いろいろと詰めなければならない点もあるが,国の予算の活用という観点からは,新たにやるよりかなり安く済む。この商品取引法の翻訳の内容については,役所は全然見ていないが,実際のユーザーである連合会という団体がその内容をかなり精査し,それなりのものになっているということなので,我々としては,できれば安く既存のものを活用したいということで,引き続き交渉をしている。
 印刷できないような状態にしても検索はしていいということか。
 検索そのものには反対はしていない。完全に印刷できないようなウェブ掲載というのは今の技術では不可能だが,印刷したときに手元に置いておくには不十分に思われるような余りきれいでない印刷であれば可ということである。
 私はインターネットのユーザーとしてはかなり古い方であるが,中年になるともう画面では見たくない,印刷したものが見たいと思う。紙媒体については,ある程度そういうニーズがあるのではないか。
 直接リンクを張るのを嫌った理由は何か。
 先ほどの議論にもあったが,一種の認証を与えたように見える,単なる情報提供とはいえ,世の中から見るとなぜこの業者だけということになりかねない。我々もすべての翻訳を把握しているわけではない。また,リンクを張る場合には一定の基準を満たしている,あるいは作業部会で検討されたものであることが前提になるのではないか。単なる情報提供で,その内容については知りませんというわけにはいかないのではないかと思っている。
 内容を精査し,政府としてリンクを張っていいという判断ができればリンクを張り,ただ,これは民間ベースでつくられた翻訳であるという注意書きを付けるということはあり得るかもしれないが,何でも頼まれたらリンクを張るというのは,なかなか政府としてはできないことだろう。
 また,仕事で資料を使うに当たっては,どうしても紙にして手元に置いてメモを書いたり,蛍光ペンで色を着けたりしたいということがあるので,民間等の翻訳が有償で提供されている場合でも,それがウェブ上に出ているということでかえってビジネスチャンスが広がるという考えもあると思う。
 リンクを張るというのは,簡単なようで面倒臭い問題を含んでいる。広くリンクを張れば張るほどユーザーは便利になるが,認証を与えたようなことになるというマイナス面もある。リンクを張るべきかどうか中身を精査しなければならなくなってしまう。そうすると,民間が英訳した法令を全部読んで審査しなければいけなくなり,審査体制が必要になってくるということで,重くなるという問題があるのではないか。
 翻訳提供の主体が国なのか民間なのかという問題とは一応切り離した上で,でき上がった翻訳データについて,例えば,すべて無償で見られる状態でなければ基盤整備としての意味がないと考えるのか,そうではなくて,ある程度コストはかかるがアクセスは確保されているという状態でもよしとするのかという点についてはいかがか。基盤となる法律について,民間等により有償で翻訳が提供されている場合に,取組としてはそれで足りるとするか,無償で提供されるように政府としてコストを負担するなどしなければならないかという方針の問題である。
 無償で提供すべきとの意見が多かったが,どうか。韓国では,ユーザーが企業であるような法律については無償で提供し,それ以外のものについて有償でやっているが,人権に関する問題や日本に住んでいる外国人の生活に関するような問題,あるいは外国の法整備支援に直接関係するようなものについては,無償で提供すべきではないか。 また,有償にするとしても,例えばアカデミックディスカウントということで、学者は無償にするとか,あるいは法整備支援に使う場合には無償にするなどいろいろ考えられるのではないかと思う。無償でなければアクセスとして足りないという強い意見はなかったような気がするがいかがか。
 コスト的なものであれば,それを持たせてもいいという議論もあると思う。ただ,商業ベースに乗るという意味で有償ということになると,これは政府がやるべきか,民に任せていいかという話になる。絶対無償ということではなく,ただ有償という場合は値段が問題となり,また,座長がおっしゃったように,一定の場合は無償といった考慮はあり得ると思う。ただ,有償でいい,民に任せてやればいいということになると,相当高い有償になってしまい,一般の利用は困難となり,アクセスの提供として十分とはいえないのではないか。
 法律を守らせる政府は,遵守を求める対象に当然内容を知らせる必要がある。我々は六法にお金を払うが,あれは非常にコンパクトに手元に置けるようにまとめてあるからであって,何か付加価値の付いた形にしたものを有償にすることは問題ないと思うが,法律のテキストそのものを有償とすることには抵抗がある。
 英語にすること自体,付加価値とは考えられないか。
 言葉を変えるだけでは大きな付加価値とはいえない。
 インターネットで有償というのは,常に最新の情報を提供するという責任を引き受けていると考えた方がいい。翻訳が遅れるような場合には,その辺も有償・無償の重要な考慮要素になるのではないか。
 何を有償にするか,有償にしたとして幾らチャージするのかということで,技術的問題とは別に,ものの考え方として,国の当然の責務として無料であるべきという考え方を取るのか,あるいは,金を払ってもいいという会社がたくさんあるのに取らない手はないではないかという考え方で,一定の場合には有償でもよいと考えるかという問題だと思う。
 インターネットに載っている限りは無償にすべきだと思う。印刷物については,付加価値があるのだから,コストベースではなく利益のマージンを付けて売ってもよい。いいものがあれば実際に売れると思う。民間にリンクを張るのが適切かどうかということについて,注意書きをつければいいという話があり納得したが,民間のインセンティブを考えると,やはりそういうリンクを張った方がよいのではないかと思い直した。リンクを張った上で,インターネットに載っているものは無償,印刷物は有償と割り切るのがよい。例えば,独禁法が有償で会社法が無償だとすれば,ユーザーとしては両方とも経済法なのになぜ一方は無償で他方は有償なのかということになるので,どれを有償にするか、どれを無償にするかという基準は非常に作りにくいと思う。
 次に,継続的作業を行う体制の整備の問題に移りたい。3年間は,とりあえず翻訳整備計画に従って相当数の法令を英訳することになるが,その後についてはどうしたらよいか。放置しておくと改正には多分対応されないだろうし,新しい法律ができても,今まで同様,民間だけに頼っても取組は進まないのではないか。
 先ほどから,政府が責任を持ってやれという意見が有識者から出ていたが,具体的にどのような作業が必要なのかということを頭に置いて考えなければならない。例えば,先ほど民間の翻訳についてもリンクを張った方がいいとの意見があったが,そのためにはやはりリンクを張った先が一応信頼の置けるものであるかどうかということをチェックしなければならず,そうすると翻訳を全部検討しなければならなくなってしまい,これは大変である。
 これだけは絶対やらなければいけないというのは翻訳辞書のメンテナンスであろう。今作っている翻訳辞書は大体4千ワードくらいであるが,これではとても足りないのではないかと考えている。恐らくは数千から数万語が必要ではないか。もちろん一挙にはできないので,インターネットを利用しながら,いろんな人の意見を聞いて少しずつ増やしていくということになろう。また,現在検討中のものについては,私も時間がないので完全に満足しているわけではなく,しかも能力の不足の問題もある。今後,海外などからもいろいろ意見が出てくるだろう。そういった翻訳辞書の改良と拡大の仕事がある。
 また,法改正への対応という問題があり,これは原則としてオリジナルの法律を翻訳した各府省にお願いするということにならざるを得ないのではないか。さらに,翻訳整備計画からニーズのある法令の翻訳が漏れ落ちてしまうとすれば,これをどうするかという問題もある。また,新しい法令も加速度的に増えているといわれており,これに対する作業も必要だろうと思われる。
 翻訳業者をどう使うかという問題もある。各府省にそれぞれやってもらうのがいいのか,あるいは中核的な組織をつくってやった方がいいのか。また,翻訳業者に投げっぱなしでいいか。一般入札でやると「安かろう悪かろう」という製品が出てくるおそれがあり,これをどうチェックするか。フランスでもEUでも翻訳当局がしきりに強調していたのは,いい翻訳者を発掘し教育することが必要であるということであった。こういういい翻訳者の発掘と翻訳者のメンテナンス,でき上がった製品の品質管理をどうするか,さらに,先ほどのリンクを張るということであれば、リンク先の品質管理をどうするか,著作権交渉などを誰がどうやるのか等々の問題が出てくると思う。これらの作業は,ボランティアだけでは間に合わず,組織的に行う必要があるのではないか。ホームページについてもメンテナンスと改良の問題がある。
 これらの仕事をどういう体制でやっていくのがいいのか。どうしてもどこか一つでまとめなければいけないところだけをどこかの府省にやってもらい,あとはそれぞれの府省がやっていくという体制がいいのか。あるいは独立の組織か何かをつくってやるのがいいのかどうか。
 また,民間がやるならば民間にまずやってもらい,それでできないところを政府がやるという考え方も非常に強いと思うが,このシステムをどうするのか。例えば,政府がやってくれるということであれば民間はもうやらないという傾向が出てくるのではないか。せっかく民間でやろうとしているものを政府でやってしまっていいのかという官民の役割分担というような問題がある。非常に難しい問題であり,特に今は小さな政府という動きが主流になっているので,新しい仕事を政府が抱え込むということに対する抵抗もあるだろう。できればすべて政府がやってしまうというのが民間としては非常にありがたいが,なかなかそうもいかないだろう。
 官民の役割分担については,例えば本にするのは民間に任せるが翻訳自体は政府主導でやるべきだという考え方があり得るがいかがか。
 必ずしも政府が翻訳しなければならないものではないが,提供については政府が無償ですべきと考える。民間に委託して翻訳させるものが多くなると思うが,インフラの整備については永続性が重要であって,それは民間に任せていては保証できないので,少なくとも政府が何らかの関与をするという前提で,民間と一緒にやるというのがよい。印刷物も民間が販売するだけでなく,民間に製本させて政府が販売することも可能ではないか。
 翻訳が売れそうな立法がなされたときは,とりあえず民間ベースで翻訳がなされないかというマーケットリサーチをし,民間が翻訳するということであれば,例えば,3年間は政府では翻訳しないことにし,その後,3年経つと古くなるので,民間がやった翻訳を政府で利用させてもらうという考え方はどうか。
 そういうやり方も十分考えられると思う。
 民間でやった場合,投下した資本を回収するという前提であるが,ユーザーの数で見るとそれほど多くないだろうから,かなり高額のコストがかかるのではないか。一定の期間は政府がやらず民間独占ということになると,コストを負担できないユーザーはアクセスができないということになってしまう。国民の中の平等性を完全に無視したような形は,かなり問題があるのではないか。そこで,ある程度合理的コストでということになると,民間主導というのはいろいろ工夫しても難しいのではないか。そうであればやはりメンテナンスについても政府が関与し,法律の選別や翻訳体制をどうするかなどをしっかりコントロールしてやらざるを得ないのではないか。
 法律は国がつくって国民に守らせるものだということを考えると,国が本来的にそれに関わる仕事に責任を持ち続けるということになるのではないか。小さな政府を目指すという流れがあり,公務員の数も増えないとか,なかなか予算も付きにくいという中ではあるが,3年の計画が終わった後は政府は全く手を引いてしまい民間に全部お任せしますということになると,せっかく始まった仕事が荒れてしまうということになる。やはり永続的に国が何らかの関与をするというスタンスは崩せないのではないかと思う。
 確かに,民間でやるとかなり高い金額にならざるを得ない。
 やはり政府がリーダーシップを取るべきだと思う。法令の所管府省が翻訳を担当するべきだし,どこか政府機関が,統一性を保つために翻訳ルールや辞書をちゃんと使って翻訳を行っているか全体を管理しなければならないと思う。そのコストを政府が払うかユーザーが払うかという問題が次に出てくる。
 一番気になるのは,間に合うかどうかという問題である。最近はパブリック・コメントの時代になってきて早い段階で民間会社が法案を検討することが多くなっているし(これは日本企業だけではなく,日本に進出して来た外国の企業も同じ),本社・本店に新しい法律を見せたいこともよくある。それに間に合わせるためにはある程度民間の翻訳業者を用いる必要があると思う。そのコストを政府が負担をするかユーザーが負担するかという問題が出てくるが,政府が入札を行って翻訳を外注し,それをインターネットで公開・提供すれば,幅広いユーザーが出てきて,それぞれの負担する手数料は低くなるのではないか。
 政府がやるべきだという意見が強いようである。特に,早く欲しいということになると,民間のオファを待っていたのではいつになるかわからないという問題も確かにあるのではないか。ただ,新規の法令をすべて訳すわけにはいかないので,結局ニーズや予算規模を考えながら翻訳すべき法令の取捨選択をするシステムが必要になってくる。韓国やフランスでも全部訳しているわけではなく,特にフランスは翻訳の規模が小さい。
 政府内でどう進めるかについては,中央でやるのか,各府省がばらばらでやるのかということが問題になるかと思う。また,個人的に重要だと思っているのは,でき上がった翻訳の品質管理である。非常に品質の悪い製品がどんどん生産されても使われない。そういうものを量産してもしようがない。そういう品質管理をどうするか。下訳が非常によければ品質管理のための体制は非常に小さくて済む。この点,単純に入札に出すと,要するに安いものを原則選ばなければいけないことになり,製品の品質には不安が生じる。その辺について,これも経済産業省でいろいろ工夫されているとのことなので,御紹介いただきたい。
 当会議で本年度先行的に英訳をするということで,当省では,特許法,商標法,不正競争防止法の英訳を行っているところである。大前提として,国の会計法上,今では100 万円を超えると競争入札ということになり,ある程度以上の法律になるとこれに引っかかることになる。当省でも,当初随意契約でできないかとは思ったが,検討の結果,いずれも競争入札とすることにした。
 特許庁で行った特許法と商標法については,既に入札・開札も済んでいるが,その関係では,まず,競争入札に際してはその条件を決めなければならず,その条件としてどのようなものがいいのかという問題がある。いろいろ悩んだが,結果的には,日米の法曹資格を持っている人が校閲することとか,知財関係の英訳に実績があることとか,そういった形で幾つか条件を付け,その上で,トライアルとして2〜3条を実際に訳して提出させ,それに合格した者が札を入れられるという形で入札を行った。トライアルに応じたのは2〜3社であったが,あらかじめトライアルの評価基準を設けていたところ,1〜2社はそれに通らず,競争入札とはいえ,結果的には一方の法律に関しては札を入れられたのは1社だけということになった。その過程では,我々も不慣れだったこともあり,トライアルで合格しなかったところから,なぜ不合格だったのか説明を求められた。結果的には,トライアルの条件についての双方の理解にずれがあったことがわかったが,事前の説明会をきちっとやっておくべきであったと思っている。競争入札の結果については,思った以上に高くも安くもない,こんな感じかなと思っている。
 不正競争防止法については,つい先日説明会を行ったが,応札しようとしている事業者との関係で問題になったのは入札資格であった。これについては国の統一基準があり,普通の翻訳業者などは入札資格を得ているが,弁護士事務所だと組合ということで,そもそも入札の資格を持っていない。新しく得ようとすると,いろいろ売上げとかパートナーの納税証明とかそういうものを提出しなければならないということで,そういうことを聞いて,もうそれならいいという事務所もあった。説明会には十数社が来ており,同じような条件でこれからトライアルを行うが,十数社がそのままトライアルで試訳を出してくると,それをチェックする担当課室の負担もそれなりに重くなるなという気がしている。
 業者が翻訳した後のチェックはどのように行われるのか。
 チェックについては,全体の納期は来年だが,できたところから,例えば10条ずつぐらいで出してもらい,内部で検討する体制をつくっていろいろと注目を付けることにしている。請負契約ではあるが,完成してから全部まとめて出すのではなく,入札の条件として,途中の過程でいろいろとやりとりや注文に応じられる体制をつくってもらうことにしている。
 特許法の訳文で特許庁のホームページに載っていたものやAIPPIが出版していたものは比較的よくできていたと思うが,翻訳をする業者は既存の訳文を参考にしながら翻訳するのか。
 参考にはしていると思うが,トライアルの際も,既存のものと全く同じもので出してきているところははねる形にしている。
 弁護士事務所で受けるところはあるのか。ペイしないのではないか。会社法の翻訳の話を聞いたら,全部で4,500 時間かかったということであった。これを1時間万何円で単純計算しては,どうにもならない。受けるところがあるのが不思議である。
 不正競争防止法の場合,条文の数がそんなに多くないということはあるが,さらに,事務所にとってみるとかなり宣伝になるということで,幾つかの弁護士事務所に事前に声をかけて見積りを出してもらったところでは,普通にやると例えば数百万円だがこの機会だから数十万円,ところによってはほとんどただに近くても何としてもやりたいというところまであった。宣伝になると思えば,コストとの見合いではなく,プラスαでむしろ積極的にやりたいという声が多かった。
 数十万では多分できないと思うので,これがベースになって数十万でできると思われては困る。また,4,500 時間というのは,ものすごく丁寧にしっかり弁護士が関与してやったケースであろうが,これも逆に非常に極端な例で,実際には翻訳スタッフや外注によって下訳を行い,それをベースにすることで弁護士の時間をできるだけ減らし,最後の品質管理のところを中心にやるなどしてある程度リーズナブルな金額でできるようにすると思う。中間ぐらいのところで妥当な線があるのではないか。弁護士も引き受けることは可能である。入札の条件などがうまくフィットするのか,その辺は研究させていただければ可能であるとは思う。
 非常に問題なのは,こういう翻訳の体制である。平成18年度からの3年間について言えば,翻訳辞書の改良と,ホームページの立ち上げとメンテナンス,そして,各府省で行う翻訳の品質管理ということになる。今の経済産業省のようなやり方でやっていただければ,かなりクォリティーの高いものが出てくるのではないかということで大変安心したが,出てきてみないとわからない面もある。
 また,全体的な整合性の問題がある。翻訳辞書を一応使うということにはなっているが,それだけで果たして本当に整合性のあるものができるかどうか、これも製品を見てみないとわからない。そういう調整の仕事も非常に負担が多くなる。そういう受け皿をどういう体制でやるのか、これはやはり政府の中にある組織を設けてやるべきなのか,あるいは独立行政法人をつくるというのは今ほとんど不可能だと思うが,そういうところをつくるのか,あるいは既存の独立行政法人の中でやるのか。あるいは民間,具体的には公益法人ということになるだろうと思うが,これにやらせるのかということがあると思う。この辺についてはいかがか。
 3年間の翻訳整備計画の前と後とで区切る必要性はないのではないか。3年間かけてせっかく各府省が時間をかけて訳したものを改正に対応させ,あるいは各府省担当の新しい法律ができたときは,やはり自分たちでやりたいと思われるのではないか。新規立法であろうと改正への対応であろうと,各府省がやっていくのが一番スムーズな感じがするし,3年の間にいろいろノウハウも蓄積されるであろうから,クォリティーも確保できるのではないか。それをどうやって全体でとりまとめていくかについては,何か横串を刺すような組織,これはそんなに大きなものでなくていいと思うが,あればいいのではないか。品質管理についても各府省がそれぞれのものについてやれば足り,あえて別な組織にチェックさせることが本当に必要かどうか疑問である。
 私も基本的に今の意見に賛成で,府省がある程度継続性を持ってやることが必要だと思うが,ただ全体のとりまとめと,さらに品質管理もやはり完全に任せ切りではなく,全体の質のレベルを維持するためには,一定の受け皿があって,そこで調整していかなければならないのではないか。
 その受け皿については,政府の中に置くか,公益法人のような民間に出してしまうのか,あるいはその中間の独立行政法人や国立大学法人のようなところに置くのか,例えば,フランスではポワチエ大学に置いているが,そういう方式がいいのか。
 どういうところに置くかについては具体的な意見があるわけではないが,民間では非常に難しいのではないか。過去の実績と採算性という面で,特にメンテナンスを中心に置いて採算性の合うような事業が成り立つかというと非常に疑問を感じるので,民間というのは非常に選択肢としては難しいのではないかと思う。
 政府関係か独立行政法人等かについては,方向性を示せば具体的なところはある程度裁量の範囲はあるのではないか。今の時点で,具体的にこの機関でというのはなかなか言いにくいが,方向性はある程度示したがいいのではないか。
 私もそれほど具体的なことを考えているわけではないが,ある種のコンソーシアムのようなものが必要なのではないか。それぞれの省庁で翻訳された分については各府省が一番よく分かっているだろうし,産業界からいろいろ意見を伺うことも当然必要だから,そういうチャンネルも必要だろう。翻訳をするのは翻訳者であるから,なるべく翻訳者が楽に仕事ができるような環境をつくり,継続的にメンテナンスしなければいけない。その仕事の中には,辞書を更新するだけではなくて,実際に今までの翻訳されたすべての英訳の日本法令を参照できるような仕組みを作らなければならない。また,何々法の何条の翻訳はいいけれども何条の翻訳はひどいといったクレーム情報をちゃんと伝達するような形も必要になろう。また,法令の改正に合わせてすべての翻訳が行われるという保証はなく,何回も改正が行われたときに,1回目と5回目と7回目ぐらいの翻訳があるが間の改正についての翻訳がないという可能性は十分ある。そうすると,改正経過を見ないと法令の運用についてはミスがあるといけないという場合には,どの部分が翻訳されて,どの部分がないかという詳細な情報も利用者に提供する必要があろう。そういった情報を継続的に提供するという仕事も必要なのではないか。それは研究機関などの方が向いているのかなという気もする。特定のところへ投げて、あとはよろしくというのは大抵よろしくないと思う。
 要するに,各方面からいろいろな情報をもらわないと,どういう翻訳をしなければいけないかについての判断ができない。需要についての情報を提供するための何らかの連絡組織みたいなものが要る。民間と政府とが必要な範囲で協力し合う緩やかな組織みたいなものを考えておく必要があると思う。
 その緩やかな組織というのは,こういう会議をやるとか,あるいはネットで情報をすい上げるということで何とかできるのではないか。
 頭が痛い問題は,例えば常駐のスタッフが何人ぐらい必要で,それをどこに置くのがよいかということである。今御指摘のあったとおり,アップデートされた英訳がどのバージョンを翻訳したものかということをここではっきりさせなければいけないが,翻訳された英訳のフォーマットが各府省で全然違うということでは困る。そういうコントロールも必要だろう。また,でき上がった翻訳をため込んでおいて,それを新しいデータベースとして次の翻訳のとき品質管理に利用しようということになると,それと各府省が行う翻訳とリンクする組織も必要になるかも知れない。
 そういう翻訳支援のための情報はインターネットで管理できるので,入札で落とされたところが使えるようにしておけばよい。入札条件のところに使うという条件を入れておけば,使わないと言われる心配もない。
 中間報告では,大きな命題として,官と民との役割分担という話があり,かつ基本的には税金を使って翻訳を進めていくのであれば,どこまでやるのがいいのかという話もあったところであり,3年間の翻訳整備計画でまず基盤的な翻訳をしてというのは,一応そこを区切りに役割分担を考えていこうという考え方もあったのだろうと思う。3年間の基盤整備後も全く同じように政府が主体となって引き続き翻訳を推進し,品質管理も含めて継続的な作業を全部行っていくということではないと思う。また,民間の取組みがどこまで進むかは,ふたを開けてみなければわからないもあるが,例えば,基礎的な法令については政府がやれば,後の各論部分についてはもう少し翻訳が容易になるだろうから,民間の取組にも期待できるのではないかという考え方もあったと思う。その辺の役割分担を具体化するには,3年後に政府がやるべきことについての基準,政府が引き続きある程度の役割を果たしていくべきであるとして具体的にどういったことをやっていくべきなのかという基準が必要ではないか。その辺についての御意見をうかがいたい。
 また,辞書の改訂等の継続的な作業の必要性の程度も業務によって違うのではないか。優先順位を考えて,これは不可欠,あればベター,これはあればあった方がいいぐらいといったランク分けが必要ではないか。
 官と民との役割分担については,基本的な考え方として,民ができることを民がやるというのはだれも否定しないだろう。どこで切り分けるかが問題で,今日の議論は官がやれという議論が割と強かったように思うが,官がやれと言っても,改正への対応を全部官がやるとか,新しい立法についても全部官がやるというのはとても不可能である。フランスにおいても,非常に限定された法律しか翻訳されてないということから,何らかの仕事を継続的に官でやるべきとしても,その範囲は限定されなければいけないだろう。いずれにしても,どういう仕事が残っているのかということをもう少し具体化しないと議論が抽象化してしまう。品質管理についても,いろんなレベルがあるわけで,もうちょっと具体的な作業内容を洗い出してみないといけない。また,今年度翻訳を実施する14本の法律について,どの程度のレベルの翻訳が出てくるのか,それに対して作業部会のワークロードがどのぐらいになるのかということも見てみないとわからない。
 この点については,事務局の方で議論のベースを具体化して皆さんにお諮りする必要があるのではないか。作業をお願いしたい。
 民にどこまで委ねることができるのかというのは民間がどのぐらい積極的に取り組んでくれるのかということにも関係する。政府が翻訳する場合,著作権は発生しないので出版社でも出版することができ,例えば省令とか分野によってはその下の通達まで載せるなどして付加価値を付けて売り出すことも十分考えられる。民間に任せるといっても民間の方がどういう対応をするかを十分見極める必要がある。3年間のうちに相当数が翻訳されれば具体的な事業として成り立つ可能性は十分にあり,そういう状況も見ていかなければいけないと思う。
 当会議の第7回会合は,12月9日金曜日の午後3時から開催したい。



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