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法令外国語訳・実施推進検討会議(第2回)議事概要



(司法制度改革推進室)
※ 速報のため,事後修正の可能性あり


日 時
平成17年4月19日(火)10:00〜12:00
 
場 所
永田町合同庁舎第1共用会議室
 
出席者
(構成員)柏木昇(座長),アラン・D・スミス,内田晴康,垣貫ジョン,後藤修,布施優子,松浦好治,内閣府,金融庁,警察庁,公正取引委員会,防衛庁,総務省,法務省,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,農林水産省,経済産業省,国土交通省,環境省     ※敬称略
(オブザーバー)人事院,最高裁判所
(事務局)本田守弘審議官(司法制度改革推進室長),小林昭彦参事官,小川新二参事官,中川明子参事官補佐,山本拓参事官補佐
 
議 題
(1)翻訳データの処理状況について
(2)翻訳のための基本原則について
(3)その他
 
配布資料[PDF]
資料2−1翻訳データ提出済法令一覧表
資料2−2法令外国語訳推進のための基盤整備に関する主な検討事項について(論点表−I翻訳のための基本原則
資料2−3提出済組織・部局名英語訳一覧表
 
議事要旨

 冒頭,柏木座長から,新たに当会議の構成員となった布施優子氏の紹介があり,同氏から次のとおりあいさつがなされた。
 「日本テレビに入社以来ずっと報道畑を歩んでおり,海外勤務なども含めて国際ニュースにも関わってきている。テレビ業界の者が,こういった非常に高度に専門的な法律の知識を要する場に出てきて何ができるのか,あるいは何か貢献できることがあるのかと考えたが,製作しているソフトの海外における無断放送のような著作権関係のトラブル処理や,外資の参入問題など,法律と関係する国際的な問題というものはメディアの中でも大きいことから,どちらかというと勉強させていただけるのではないかと考え,参加させていただいた。こういった場に出てくるのは今回初めての経験なので,よろしく御指導をお願いしたい。」

 次に,各府省から提出された法令の翻訳データ等の処理状況について,事務局から説明があった。

 引き続き,事務局から,法令外国語訳をめぐる最近の議論について,次のとおり説明があった。
 「政府の対日投資会議専門部会では,『対日投資促進プログラム及び実施状況』の見直しに関する検討の中で,対日の直接投資を効果的に促進するため更に加速化・強化する必要がある重要項目のリストアップを行っており,法令外国語訳の推進も個別項目の1つとして取り上げられている。先日,同部会の会合において,加速化・強化項目についてのヒアリングが行われ,複数の委員から,『積極的に推進すべきである』,『基本的なルールをつくって翻訳を進めるのはよい考えである』,『政府にがんばってもらう必要があり,各省庁がいつまでに何を翻訳するのかをはっきりさせるアクションプランを作成する必要がある』,『フェイズを分けて段階的・戦略的に取り組むのが重要である』といった指摘を受け,同部会の座長からも個別のヒアリングを実施してはどうかとの示唆を受けた。また,先日,自由民主党政務調査会司法制度調査会においても,多数の議員から,速やかに法令外国語訳を推進すべきとの意見が相次ぎ,『グランドデザインやロードマップが必要である』,『平成の法典整備と位置付けて取り組むべきである』といった指摘がなされた。」

 次に,「翻訳の基本原則」に関する論点について,資料2−2に従い,以下のとおり議論等が行われた。(□座長,○有識者構成員,●関係府省構成員,■事務局)

 資料の2−2の「1.翻訳ルールの策定・位置付けについて」については,司法制度改革推進本部・国際化検討会の法令外国語訳に関するワーキンググループの「取りまとめ」では,「統一的で信頼できる法令の外国語訳を進めるための基本ルールとして,一定の翻訳ルールを定めることとし,そこにおいては,@翻訳の基本スタンスの在り方,A単語・表現等についての訳語ルールを規定することとする。」とされているが,他に翻訳ルールとして定めるべき事項はないか。
 対象言語については,「第一次的に英語訳を進める。」ということで異論のないところではないか。「将来的には,情報技術の活用による作業の効率化,利用者のニーズ等を勘案し,他言語に対応することも検討する。」ということで,中国語などが問題となろうが,当面英語だけで精一杯の状況なので,一段落した後で他言語についても考えるということになるのではないか。
 次に,資料2−2の「(2)翻訳ルールの位置付けについて」については,「翻訳ルールは,基本的には関係府省・民間団体等において翻訳を行う際の参考資料とし,翻訳ルールに基づいて翻訳が行われる場合でも,これを公定訳とはしない。」,「翻訳ルールは,一般に公表して自由な利用に供する。」,「関係府省・民間団体において翻訳を行うに当たっては,翻訳ルールをできる限り尊重するように勧奨する。」,「翻訳に当たっては,翻訳ルールに基づいて翻訳が行われていること,公定訳ではないことを含め,翻訳の位置付けを明確にする。」とされている。民間が翻訳をする場合,これを使えという強制はできないし,適当でもないので,尊重していただくということにならざるを得ないと思うが,この点についてはどうか。他方,少なくとも各府省が法令を翻訳する場合には,翻訳ルールに準拠してもらうこととしてはどうか。
 将来,法令をどの範囲で,どういう組織で取り組んで英文化するかという全体のアクションプランのようなものの中で,ルールの位置付けのようなことも少し触れた方がいいのではないか。他の会議でも政府のアクションプラン的なものを示せという意見があったようだが,実質として法令の英訳を進めるということを考えると,大きなアクションプランのようなものの中に翻訳ルールの位置付けがあって,かつ,将来政府が取り組む場合には,どういう形で取り組んでいくかといった示唆が含められるべきではないか。
 これから翻訳をどういう体制でやっていくのか,さらに,メンテナンスの問題とか,新しい法律ができた場合の問題とか,改正にどう対応するかという問題もあるので,この問題についても,この場で御議論いただくことになるであろう。
 次に,「翻訳ルールに準拠して作成された翻訳の位置付けを明確にするための具体的な方策として,どのようなものが考えられるか。例えば,作成主体に対して定型の情報(文言)を付すよう推奨することではどうか。」。「翻訳が一定のバージョンの翻訳ルールに準拠して作成されたこと」,「翻訳については,原文の意味内容と完全に一致することを保証するものではなく,参考資料として用いられるべきこと」,「正確な意味内容を知るためには,必ず原文を参照すべきこと」というような例示がある。恐らく,これも英語でつくることになると思うが,この点についてはどうか。
 バーションをはっきりと書いておくということは,このルールに対して権威を持たせるという意味でも非常に重要だろうと思うし,使う側から見てどういったルールで翻訳されたものかを検索するためにも,非常によい考えだと思う。また,後の2つのウォーニングも,公定訳でなくても翻訳が悪いというクレームや訴訟が必ずあり得るので,それに対して一定の抑止力を持たせるという意味では,一応入れておいた方がよいだろうと思う。
 内容的にはあまり異論のないところで,具体的にどういう英語の文言とするかの問題であろう。さらに,こういう組織でつくれば,翻訳ルールは放っておいてもデファクト・スタンダードになるとは思うが,例えば民間が訳す場合に勝手にこれに準拠して訳したと看板を掲げても中身が全く準拠していないというようなことがないよう,担保するシステムをつくる必要があるかという点も問題になるかと思うがどうか。
 ルールに間違いがある,あるいは訳に間違いやルールとの乖離があるという場合には,それを積極的にマーケットから吸い上げる仕組みをつくってはどうかと思う。それで時間が経つごとにいいものができていくのではないか。例えば,統一アクセスポイントを将来つくったときに,意見箱のようなものをバーチャルに置いておいて,そこにどんどん意見を書き込めるようにするなどのやり方も一つのアイデアと思う。
 実際問題としては,特に認証システムのようなものを考え出すと組織が大きくなって重いものになってしまうので,とりあえずは事実上,皆さんがフォローしてくれるだろうというところに期待し,今意見があったように,各翻訳についての意見をユーザーから吸い上げるようなシステムを今後考えるということで,この問題は対処できるのではないか。
 認証マークというものが商標法の中にあり,積極的な認証と消極的な認証と2種類ある。今回は当然積極的な認証までするのは不可能だと思うが,消極的に何かの商標みたいなマークを付けることはできるのではないか。苦情等が多く出た場合,あるいは訳があまりにもルールに沿っていない場合は,そういうマークを使ってはいけないというような消極的な認証というルールをつくるべきではないか。
 翻訳のメンテナンス組織をどうするかということとも関連してくると思うので,そこでもう一度御議論いただきたいが,積極的な認証はあまりお勧めではないが,何らかの消極的な認証あるいはスタンダードと翻訳ルールとの乖離を明らかにするようなシステムを考えるということであろうかと思う。
 定型情報としては,何年何月段階の法令かという情報も付けておいた方がいいのではないか。オリジナルに戻れといったときに,何年何月段階の法令の原文に戻るということは,データベース上は一応表示するということにはなっているが,念のためオリジナルにも入れておいた方がいい。
 やはり翻訳の一番前又は最後に付けるべきフォーマットをつくっておくといいのかもしれない。何年の法令を翻訳して,それは翻訳ルールに従った翻訳であり,その翻訳ルールは何年度のバージョンであるというような四角いフォーマットか何かをつくっておくと統一が取れるかもしれない。
 次に,「2.翻訳ルールの内容について」であるが,翻訳の基本スタンスの在り方については,「@基本的な考え方」として,「正確で分かりやすく,全体として統一性が確保された翻訳が継続的に行われることを目指すことを基本とする。」とされており,抽象的には異論のないところだと思う。「A対象者」としては,「日本法と日本語を知らない者を対象に想定する。」。また,「実際のユーザーを考慮し,例えば,英語訳については,英米の法律を理解している内外の法律実務家,企業担当者等を対象に想定する。」とされているが,これは英米の法律を全く知らない素人ではなくて,ある程度英米の法律用語を理解する人を対象とするという意味である。「B正確性と分かりやすさ」は,「翻訳の正確性と分かりやすさの関係については,翻訳の正確性を確保しつつ,分かりやすさを重視し,翻訳先の外国語を母国語とする者にとって分かりやすい訳,すなわち,原文の法令の趣旨に最も近い,読みやすい訳を目指す。」としている。ともすれば,従来の訳の一部は非常に硬いというか,逐語訳的なものが多くて,読んだアメリカ人,イギリス人等が意味を取れないというような文章もあったようで,そういう硬い訳をやめて,分かりやすい訳をするということである。「翻訳の具体的イメージについては,別添2の訳例2のような方向とする。」ということで,「取りまとめ」の別添2を参照していただきたい。この翻訳は,日本語にはない主語を補ったり,目的を補ったり,主語と述語を逆にしたりもしている。逐語訳よりも意味の分かりやすさを優先するという方向を考えたいというのがワーキンググループの意向であった。「C統一性」については,「翻訳は原則として翻訳ルールに従って行うことにより,全体としての統一性を確保することとする。」とされているが,訳語が違うと同じことを言っているのか違うことを言っているのか,例えば,抵当権を一つの法令ではmortgageと訳し,もう一つの法令ではhypothecと訳すと,同じ制度なのか違う制度なのか全く分からなくなるということを排除するという趣旨である。翻訳の正確性と分かりやすさの関係についてどのように考えるかについては,翻訳のイメージについて幾つかのサンプルがあるが,更に具体化する余地はないかというようなことも問題になる。翻訳のスタンスとしてほかに規定すべきことはないかについてはどうか。
 ユーザーの観点から言えば,正確な翻訳をすると,分かりにくくなることがある。それでも正確であるということは非常に重要だ。注意書や説明によって正確な意味をはっきりさせておく方がよいのではないか。正確でないと解釈がいろいろできると思うので,分かりやすいといっても間違って解釈する可能性がある。説明や注意書を加えればいいという意見である。
 これは,司法制度改革推進本部・国際化検討会のワーキンググループでも議論になったところで,日本の法律はコモン・ローと法律体系が違うので,一個一個の単語の対応関係がない上に,条文の翻訳ということで,あまり余計な説明を翻訳の中に付け加えることができない。そうすると,正確な訳を担保しつつ読みやすい訳にしようとすると,どうしても説明書きが必要になるということから,むしろ正確性が担保できないと思ったときには,注釈とか説明でカバーしようという考え方であった。今の御意見と同じである。
 法律の翻訳をしたことのある人の意見を聞けば,人の数ほどの意見が出てくると思うが,どちらかというと意訳よりも直訳に近いものの方がいいと思う。例えば,「何条に規定された」とか,「その限りではない」などの決まり文句が,意訳されたものでは,それぞれの条文で違う訳になっていて,もとの日本語が読めない人は同じ意味だと全く分からないという問題があり,注意しなければいけない。また,同じ英語にもイギリス語と米語とがあるが,どちらかというと大陸法の影響を多く受けているのはアメリカの方だと思う。フランス法の影響を受けているルイジアナ法,スペイン法の影響を受けているカリフォルニア法やテキサス法などがあり,日本法の概念のルーツになっているラテン語の概念がかなり使われている。もともとイギリスではかなりラテン語が使われていて,物を譲渡するときは,transferと言わないでtransfer and assign,人が亡くなったときは,devise and bequeathという2つの動詞を使うことになっているが,それは,もとのイギリス・アングロサクソンのゲルマン語と1066年にノルマンがイギリスに侵入した後のフランス語と両方の影響があったからであるが,イギリスではなるべく元の英語に戻ろうという運動があったのに対し,アメリカにはそれがないので,アメリカ語はどちらかというと日本法に近いと思う。
 今の点は,むしろ次の統一性,訳語ルールに関連してくると思う。「(2)訳語ルール(標準対訳辞書)について」については,「訳語ルールにおいては,別添3のイメージにより法令の形式に関するもの,共通の基本的用語に関するもの,個別的法令用語に関するものについて,それぞれ適切な訳語,訳文等を整理することとする。」とされている。「取りまとめ」別添3の冒頭に「…Law 」と「…法」とあるように,日本の伝統的な翻訳ではlawいう言葉を使うが,アメリカではactというのが多いのではないか。ハーバード大学のラムザイヤー氏が著書の中でそういうことを書いていたので,なるほどという気がしていた。
 日本の翻訳ではlawという方がよく使われているので,それに慣れてきた。
 具体的には作業部会で議論してもらいたいと思うが,こういったルールをつくっておくということが大切と思う。法令の形式,例えば,省令はregulationにするかなど,いろいろあると思うが,更に各府省の組織,部局名等の外国語訳についても整理してはどうかというアイデアがある。これらを整理するとして統一性を確保することが必要か,または可能であるかということで,資料2−3に各府省の英訳名の一覧が出ており,ここまで整理する必要はどうもないのではないかと思うが,どうか。法令の中の用語については,異なる用語を使うと読んだ人が異なったイメージを持ってしまうのが怖いが,府省の名前は,異なったイメージを持っても実害はない。ただ,各府省の中で統一していただければ足り,翻訳ルールとしては,各府省が決めたものをそのまま採用するということでよいのではないか。
 同意見である。各省庁ともそういったタイトルを英語に訳して長い間使ってきたものと思う。それを統一することによって大きなメリットがあるということでもなかろう。特に変更していくとか,統一化を図るという必要はないのではないか。
 弁護士として使う場合,翻訳で省庁が使っている用語に合っているかどうかというのはチェックする必要があり,無駄な手数もかかるので,統一化までは必要ないとしても,例えば,参考で各省庁がこういう形で使っているというデータを出していただけると,安心して使えるという意味ではよいと思う。
 同じことでときどき悩んでおり,資料2−3は非常によい資料だと感じていた。その程度でよいのではないか。
 我々外にいる者から見て,これが役に立つのは,例えば法令の内容とか運用についてコンタクトをする場合である。したがって,名前は使い慣れたもので変える必要はないと思うが,例えば組織図をウェブサイトに載せるというような形で,どこの部局にどういった専門の方がいて,どこへ聞けばいいのかというのが外から分かるようにすると,対日投資の促進には役に立つのではないか。
 肩書は,ある程度省庁に任せなければいけないと思うが,局長や部長のレベルまではある程度の統一性がないと困ることがある。例えば依頼者がfinance bureau chiefと話したというので金融局長かと思ったら,財務部長であったというように,統一性がないと,バック・トランスレーションで困る。
 この会議で名前を変えろということができるのかということも問題になる。資料2−3が各府省に配られると,これを見て周りに合わせるなど,それこそデファクト・スタンダードができ上がってくるのではないかと期待しているが,その程度のことではないか。
 次に,「共通の基本的用語や個別的法令用語のうち,基本法令で共通して多数用いられる基本的用語(例えば能力,時効,法人,代理人,契約,売買,婚姻等)については統一性を確保しつつ信頼できる訳語ルールを策定するため,基本法令の所管府省の知見を活用した上で作業部会で検討することとしてはどうか。」,また,「その他の個別的法令用語については,当該用語の出典法令を翻訳した各府省の知見を活用して整理した上で作業部会で検討することとしてはどうか。」。ある1つの分野に深く結び付いているような用語については,担当府省の意見を聞いた上,作業部会で整理するという趣旨であり,これについてもあまり異論はないかと思う。
 作業部会での作業は,最後まで作業部会の方のみで行われるのか,それとも所轄の官庁に戻して意見を求めるか。
 最終的な決定は作業部会だと思うが,所管の各府省の意見は聞かなければいけないと思う。むしろ各府省とバック・アンド・フォースで何回もやりとりするということになるだろう。
 日弁連の外弁委員会で外弁法の改正法の規定や規則の翻訳作業をやっていて,法務省の外弁法の訳は「外国法共同事業」をgaikokuho joint enterpriseとしていたが,我々の中ではforeign law joint enterpriseにしようという話があり,法務省に問い合わせたところ,「外国法共同事業」は日本法も取扱っているからforeign lawという意味ではなく,外国法事務弁護士との共同事業だから英語ではgaikokuho joint enterpriseの方がいいと言われて納得した。そういったプロセスが必要と思う。
 やはり専門的な知見で,こういうものもカバーしなければいけないというような貴重な意見が出てくることは大いに期待されるので,作業部会と各府省とは密接な協力関係が必要だろうと思う。
 次に,統一性についてであるが,「訳語の整理・統一は,正確で分かりやすく,全体として統一性が確保された翻訳を行うとの見地から,単語,表現について,適切な訳語ルールを策定することにより行う。」,「訳語ルールにおいては,原則として,最も適切な訳語,訳文等を一つ示すこととするが,例外的に複数の選択肢を示すことが適当な場合には,複数の訳語を示すこともできることとする。また,これらのルールの使い分けの基準についても明確にする。」,「翻訳の統一性を確保するとの観点から,原則として同一の単語表現については,同一の訳語,訳文等により翻訳を行うこととする。ただし,法令の趣旨が正確に理解できる翻訳を行う等の観点から合理的理由がある場合には,別個の訳語・表現を使用することもできることとする。訳語ルールでは,これらの場合の使い分けの基準についても明確にする。」ということで,注として,「基本法と別の訳語を使用した方が妥当である可能性のある場合として,民法中の債権・債権者の訳語に関わらず,倒産法関連では債権はclaim ,債権者はcreditorと訳し,債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律では債権はreceivableと訳することが考えられる。」ということが出ている。「訳語ルール(標準対訳辞書)において,最も適切な訳語,訳文等を一つ示すこととして,その選定手順をどのように考えるか。作業の効率化の点から,既存の翻訳において最も多く使用されている訳語,訳文等を原案とした上で,これが適切か否かを実質的に検討することとしてはどうか。また,最終的な決定については,有識者の実質的な議論を前提に,多数決的方式によることも考えられるのではないか。」。先ほど指摘があったように,イギリス語をベースにするかアメリカ語をベースにするかによって時折違いが出るが,これをどうするかという問題がある。例えば,抵当権についてはmortgageよりも,ラテン語系のhypothecの方がよいのではないかといった提案もある。アメリカ語やイギリス語と対応ができないのであれば,誤解を避ける意味で,手あかの付かない単語を使うというやり方もある。例えば,ウィーン統一売買条約では,不可抗力のことをimpedimentと言っているが,これはforce majeureを使うとフランス語の手あかが付いてフランスのイメージが強過ぎ,他方,impossibility of performanceというと,コモン・ローのイメージが強過ぎるので,どっち付かずの誰も分からないimpedimentという言葉を使ったという背景がある。誰も分からないのでは非常に問題かと思うが,考え方としては分かるわけで,それをどうするかという問題がある。米語にするかイギリス語にするかというのは,国際化検討会でも結論が出なかった。
 自分の経験から考えると,よく知らない日本語の法律用語がある場合,日本語の法律用語辞典を見るが,その中によくフランス語とドイツ語が出ており,これらを見れば,それに近い英語の言葉があるので何とか意味は分かる。辞典を見て英語がなければ,分かるフランス語などに近い言葉を使えばいいと思う。例えば,hypothecは,ルイジアナ州の法律を勉強した人なら分かるが,ほとんどのアメリカ人は知らない。読む人は知っている法律ではなくて,全く違う概念だと分かるので,注意書が書いてあって,こういう意味だと分かるなら,よいと思う。
 カリフォルニア州の民法にはhypothecという言葉が出てこない。カリフォルニア法はスペインから来ているので。
 ルイジアナのチュレーン大学に行って日本法を教えたが,ルイジアナの民法を見ると非常に面白かった。民法典を英語で成文としているのはルイジアナだけではないか。ルイジアナ民法典を見ていると,翻訳のサジェスチョンがたくさん入っている。例えば,契約の解除もrescissionとかtermination,cancellationといろんな言葉があるが,ルイジアナ民法典ではdissolutionという言葉を使っているので,そういうものも参考にしながら訳すということになるのだろう。また,アメリカ語とイギリス語が違う場合に,どちらを優先させるかという問題は,好みの問題もあるが,領域の問題にも関係してくると思う。例えば,海運関係であれば,やはりイギリスの影響力がまだ非常に強い。それからバンキングになると,異論があるかもしれないが,やはりイギリスが強いのではないか。例えば独禁法とか破産法などの分野ではアメリカが圧倒的に強い。これは作業部会で個々に検討して決めていただくことであり,統一ルールというのはできないのではないか。
 同じ意見だ。一つひとつ見て一番適当な表現を選ぶべきだと思う。イギリスの言葉を使うかアメリカの言葉を使うかを硬い部分として決めてしまうと,ユーザーの観点から見て分かりにくくなると思う。
 観点としては,ラテン語もよく考えるというのは非常にいいサジェスチョンだろう。
 先ほどのlawとactの話だが,カリフォルニアには日本の民法の仕組みと非常に近い民法があって,第1編から第3編までは,「人」,「債権」というようなネーミングをしているが,これはcodeである。もともと民法はcivil code,民事訴訟法はcode of civil procedureという訳が普及していたが,最近,civil lawとかcivil procedure lawという訳をよく見る。六法の中の1つのような重要な法律は,カリフォルニアでもそうだが,codeと言っているので,lawというのは正しくないと思う。
 独禁,知財などいろいろな業務をやっていると,それぞれの分野で,アメリカ風の用語が割合一般化しているといった共通性があり,それは分野によってかなり違う感じがする。これを無理やり統一するのか,そういう法分野ごとにある程度一般化したものをベースにするかをまず決めなければいけないだろう。そのやり方については,例えば作業部会に各分野の専門家の人に入ってもらって検討し,それを検討会議に反映させて,そこで大所高所から方向性を出すとか,実際のやり方・進め方のイメージがもう少し決まってくると,どこでどういう意見を言って方向性を決めればいいかというのが言いやすい。統一は難しいがあまりばらばらでも困る。ただ,それぞれの法分野で,ある程度慣行化した使い方というのは尊重した方がいい。作業部会がどんな形で作業を進めるかという辺りは後でまた御議論いただければ,もう少し具体的にイメージがわくのではないか。
 今,名古屋大学でやっていただいている訳語の整理により,例えば日本の債権を取ると,それをどう英語に訳しているかが分かる。訳例の中で一番採用数が多いものをまず検討する。その際,ここで議論が出たような,どういう領域の単語で,その領域においては,例えばアメリカ語が支配的なのかイギリス語が支配的なのか,あるいは,むしろ手あかの付かない言葉がいいのか,あるいはラテン系の言葉がいいのかというようなことを考慮していくということになるのだろう。最多使用例をオートマティカリーに採用するのではなくて,最多使用例も1つの考慮材料として考えるけれども,そのほかにも,今出てきたような諸要素を考えて訳語を決定する。甚だ難しいことになるが,そういうイメージでよいか。
 また,有識者の実質的な議論を前提に多数決方式によることも考えられるのではないか。10人翻訳者がいると10人意見が違い,議論をし出すとエンドレスになるので,この訳の方がベターだという意見は差し控えてもらわないと先に進まないだろう。作業部会などでも訳語を決める際には,多数決方式でどんどん決めていく。コンピュータがあるので,もし不都合な訳があれば,ユーザーの指摘を受けて,後から訳語をインプルーブするということでよいのではないか。
 プロセスに関しては,適宜担当省庁には相談しながら作業部会で最終的に決定するという理解でよいか。
 そのとおりである。
 訳語等を定めるに当たり,日本法をそのままローマ字表記したりローマ字表記とその説明を併記したりすることを認めるべきか,あるいは一応の訳語を当てて別途注書き等で説明を加えることとすべきかということについてはどうか。
 使う立場からは,一応の訳をした上で,注記においてローマ字表記プラス若干の説明というのが多分一番扱いやすいだろう。
 日本語が分からない人のために翻訳をするわけで,ローマ字では翻訳したことにならないから,ローマ字表記はできる限り避けるべきであろう。認めるとすれば,ごく例外的な場合であろう。株式会社をローマ字表記した翻訳例があるが,この辺が限界ではないか。株式会社は,例えばbusiness corporationと訳した方がアメリカ人にとっては分かりやすいというようなこともある。基本原則は,とにかく英語に訳してみて誤解が生じるようであれば注記をするというようなことではないか。
 翻訳一本で話が済むことはまずあり得ない。必ず疑問が生じ,具体的には運用はどうなっているのか,解釈はどうなっているのかを突き詰めて考えざるを得ない。そのときに日本の弁護士なり専門家に聞くとすると,この言葉とこの言葉が対になっているという関係が明らかになった方が,その後がやりやすい。先ほど英語・米語の話があったが,ある単語に対応する英語・米語あるいはラテン語というものも書いておくとより分かりやすいと思う。
 確かにその方が正確であろうが,日本語を知らない人は覚えられないのではないか。日本語には同音異義語が多く,例えばコウセイは幾つかの意味があるが,ユーザーにとっては不便であろうし,日本人にも,もとの日本語が分からないのではないか。例えば,今,アメリカでカラオケがはやっているが,クローキなどと発音される。日本人に話をするときに日本語だから当然通じるだろうと思うかもしれないが,発音が間違っていると通じない。発音が分からないため勝手に発音を付けることがあるので,逆に分かりにくくなるのではないか。
 ここでつくる対訳辞書は,日本語から英語,英語から日本語と自由に行き来ができるものになる。例えば,入会権という言葉も何か英語に直しておくと,その英語で引けば,日本語が何かはそのままで出るような形になるので,何を追加するかというのはあまり気にしなくていいのではないかと思う。従来のものは,英語の中に日本語が埋め込まれているから分かりにくいが,対訳辞書が両方向へ行くものであれば,差し当たりその問題はそれほど重大な障害にはならないと思う。
 対訳辞書がそういうものであれば,なるべく英語で書いておいて,日本語は対訳辞書を見れば分かるという原則でよいのかもしれない。そうでなければ,先ほど指摘があったように,アメリカ人、イギリス人が間違った発音で覚えてしまい,かえってコンフューズするというようなことも考えられる。大方の意見は,あまりローマ字表記については賛成ではないという方向であろう。ただ,絶対に禁ずるかというと、そこまでは今考えなくてもいいのではないか。どうしてもこれはローマ字でないとどうにもならないというような単語がもし出てくれば,それはその時点で考えればよい。
 日本法の概念に対応する訳語が存在しない場合や,類似の概念はあるが日本法の概念と完全に一致しない場合にはどうすべきかについては,これも一番近い単語を選ぶということしかないと思うがどうか。例えば,「不可抗力」には対応概念がなく,force majeureというフランス語を使っている。日本語の概念と内容が完全に一致しないというのは,すべての単語がそうであり,程度の問題ではないか。例えば,英語には,chargeとかsecurity interestといった語はあるが,「担保権」のような上位概念はないので,作業部会で頭をひねってもらい,新しい単語を考え出してもらうしかないのかも知れない。
 原則として一つの日本語の法律用語には一つの英語だが,複数の選択肢を示すことが適当な場合があるか。ある程度その類型を明確にしておいた方がいいのではないかということだが,問題は類型化ができるか,誰がやるかということだ。従来から出ているように,「債権」は,一つの単語では収まり切れないので,原則としてclaimと訳す,あるいはルイジアナ民法典では単なる権利というrightという言葉を使っている例が多かったように思うが,そういうスタンダードを一番前に出しておいて,コンテクストから,それでは正確な意味が伝えられないときには,receivableとかchose in actionを使ってもいいというようなことになるのではないか。
 ルイジアナ民法典ではrightを使っているということだが,カリフォルニアの民法の第3編はobligationというタイトルが付いており,債権をobligationと全部訳しているので,やはり1つだけの単語では不十分だと思う。また,熟語は何文字までつくるかという問題もある。例えば,担保権,瑕疵担保責任。担保だけを辞書に載せると,瑕疵担保責任はどういった訳になるか分からない。
 たしかに,瑕疵担保の場合にはwarrantyになるわけで,区別が必要だろう。
 辞書をつくるときに,いろんな選択肢を見せた上で,どれにすればいいかを決めるしかないと思う。
 訳語の使い分けを認める場合,使い分けの基準をどのように示せば,明確かつ分かりやすいものになるか。これもやってみなければ分からない。今の担保にしても,例えばmortgage,hypothec,charge,encumbranceといろいろあり,瑕疵担保だとwarrantyになる。言葉によっても全然違ってくるのではないか。一般原則を立てることは難しいのではないかと思うがどうか。作業部会で個々に対応していくことになろう。
 次に,「検討会議において,作業部会や各府省の検討作業に資するよう訳語等を検討しておくべき用語,言い回し等は考えられるか。」。これもこの会議で細かい訳語と言い回し等までつくるということは無理であろう。作業部会では,基本用語については基本法令を所管している府省の知見を活用した上で整理するということなので,これをなるべく早くつくって各府省に回すということになるのではないか。それから,「訳語ルールにおいては,正確で分かりやすい翻訳を確保するとの観点から,単語レベルで訳語を対応する場合,文全体として訳文に対応する場合などに分けて,適切な訳語,訳文等を整理することとし,これらのルールの使い分けの基準についても明確にする。」ということだが,要するに単語対単語だけでなく,フレーズ対フレーズ,あるいはセンテンス対センテンス,あるいは日本語の1つの単語が英語に表現すると熟語になったりフレーズになったりすることもあり得べしということで,これも,作業部会で,一番分かりやすく正確性も担保できるという訳をどうつくるかということに帰着するのではないか。
 次に,用例,注書き等について,「訳語ルールには,必要があれば適切な用例等を併記する。」,それから,「訳語ルールの内容を明確にするために必要な場合には,注書により補完的な説明を行う。」ということで,どのような場合に用例注意書を併記するのが相当かということだが,そのまま英語を読んだのでは誤解が生ずるとか,英語を読んだ人が深く理解ができない,正確性が担保できないという場合には,用例,注意書を併記するということになろう。
 資料2−1のリストに入っている翻訳を幾つか見てみたが,注意書を使うことによって,かなり翻訳がはっきりしてくると思う。特に統一性を確保し,使い分けを避けるためには,やはり注意書をよく使えばよいと思う。例えば,消費者契約法と景表法を見ると,消費者契約法の第4条は意思表示の取消であるが,意思表示については,アメリカには対応する表現がない。注意書を付け加えて,この法律だけではなく全部の翻訳に同じ表現を使えば,ユーザーにとって非常に分かりやすいと思う。なお,取消はavoidと訳されていたがvoidの方がよい。
 また,景表法では,事業者がentrepreneurと訳されていたが,消費者契約法ではbusinessと訳されていた。entrepreneurと言うと起業家というニュアンスがあるので,注意書によって事業者とはどういうものなのか読む人がよく分かるようにすべきと思う。businessは一般的に使われている言葉で,はっきりした意味がないが,注意書があれば法律用語だと分かる。また,日本でも同じだと思うが,アメリカの契約書では,定義のある語には違う活字を使うか線を引く。翻訳中の法律用語には何か違う字体を使って,それに定義の入っている注意書がどこにあるのか分かるようにするために索引を付け加えればいいのではないか。
 注意や用例というのはできるだけ多い方がいいのではないか。急いでいる人は本文だけ読めばいいし,分からない人は注を読めばいい。
 景表法と同じく公正取引委員会所管の独禁法では,事業者はbusinessではなくentrepreneurにしないと不正確な訳になるので,同じ公取の景表法であれば,独禁法と同じようにすべきだと思う。ところで,景表法でいう表示と不正競争防止法でいう表示とは全然違うものなので,同じ語に訳せばそれは間違いだと思う。熟語で商品等表示というような訳を不正競争防止法用に訳さなければいけないと思う。表示そのものを訳すとすれば,景表法の表示はrepresentationで,不正競争防止法のそれは,どちらかというとindicationという訳が正しいと思う。また,よく見る間違いとして,不正競争防止法のことを言っているか独禁法を言っているか分からなくなるunfair competitionとunfair trade practiceの混同がある。熟語はどこまでの語数でグロサリーをつくるかという質問をしたが,不公正だけ訳せば不公正な取引方法も不正競争もunfairだが,両者は別の概念なので,熟語としてグロサリーをつくらなければならないと思う。さらに,不当な取引制限と不公正な取引方法はルーツが違って,unreasonable restraint of tradeとunfair trade practiceからそれぞれ日本語になったものだが,よく間違って同じ英語に訳されている。このように,6文字までのグロサリーをつくらなければならないこともある。
 見出しをどのように設定するかは,機械的に自由にできるので,unfairのところを入れるのか,unfair restraint of tradeというところまで入れるのかというのは設定すればよいだけだと思う。今ここでいう辞書は,今までのように一定の熟語を入れて,それに対応する英語を当てるというものではなくて,さまざまな表現,一文字でもいいし,一行でもいいが,それに何が当たるかという対応表を見せるというものなので,今のように区別する必要がある場合には区別したものを載せておけばよい。あとは、辞書のつくりの工夫の問題であろう。
 グロサリーの語数がどのぐらいになるのか。5,000 から1万ぐらいが妥当かと思うがどうか。
 作業部会のマンパワーと時間との兼ね合いで語数が決まってくるのではないか。訳文ができてしまえば,あまり数を勘定することには意味がなくなってくる。例えば,ある日本の単語はどういう訳文になっているかは,検索をすれば全部出てくるわけで,単語数自体を最終的な製品について考える意味はないだろう。とりあえず,基本的なものを統一するために幾つ選び出すかということについては後で議論する。
 注意書はたくさん付けた方がよいであろう。特に日本とか大陸法独特の単語,例えば,法律行為などはjuristic actと訳されることが多いが,言葉は英語だが,イギリス人,アメリカ人が読んでも絶対に分からないので,どうしても説明が必要になる。注意書や用例は多ければ多いほどよく,あとはマンパワーとの問題であろう。
 次に,訳語ルールに基づく翻訳については,「翻訳が訳語ルールと異なる場合には,注意書等で説明することにより補完こととする。」,「訳文だけでは正確な理解に支障を来すおそれがある場合には,注意書等に説明することにより補完する。」ということであるが,1番目の点は,基本的な訳語というのは一応決めてそれで統一するにしても,訳をつくるという上で,先ほど指摘があった不正競争の例のように,対訳辞典から乖離しなければ正確な訳ができないというときには乖離を認めるしかなく,ただ,そのときには注意書等で説明を入れてもらわないと原文が同じであるかどうかということが分からなるので,これも異論がないところかと思う。
 それから,「訳語ルールの策定について」では,「訳語のルールにおいては,当面,主要な訳語・訳文についての整理を行うこととする。」,「訳語ルールの作成は,既存の翻訳,訳例等のデータその他の必要な既存データを活用するとともに,一部法令の翻訳も進めながら作業を行う。」,「訳語ルール作成においては,まず民事,刑事,行政の各分野における典型的な実体法・訴訟法やニーズの高い分野の法令等を対象とする。」とされており,基準となるべき訳語については,事務局からは前回4,000 から5,000 という目安を示している。ちなみに,有斐閣の『法律用語辞典』は1万3,600 項目,学陽書房の『法令用語辞典』は2,500 項目,有斐閣の『法律学小辞典』は8,000 項目程度であるが,この中には法令には出てこない学術用語も入っている。これもやってみないと分からないし,ここで抽象的に議論してもあまり意味がないと思うが,有斐閣の『法律学小辞典』が約8,000 項目で,その中には学術用語が入っているということも考えると,とりあえず,4,000 ,5,000 という数字は目標としてはいいところをいっているのではないか。
 今作業として進めているのは,省庁から集まったものをベースにして分析をするということで,これは大変な作業で必要なことだと思うが,例えば民法,刑法,民訴,刑訴などは既存の英訳がないということなので,既存のものだけをベースにすると,主要な用語が抜けてしまわないか。今作業されているものの中に,どうやって主要な法令の主要な用語を取り込むか。そういう主要法令の必須の用語,例えば債権債務などの基本用語は,民法辺りがベースになって,他の法律で同じように使われているのか別な意味なのかといった分析も必要かと思う。
 幸い新民法が去年成立したので,それをベースにやっていくことになると思うが,まだ翻訳がないので,並行して進めざるを得ないと思う。
 親族・相続は後でもいいのかもしれないが,それ以外はすぐに必要であろう。
 現在,標準対訳辞書をつくるために各省庁から提出された既存の翻訳から抽出しているデータをどうやって補充するかについては,基本的な法令の翻訳を進めることによって標準対訳辞書の方にも反映するとともに,作業部会等において,訳はないがこの単語はどうしても必要だというものを拾っていくことになろう。基本法令を所管している府省と事務局において,仮に基本的な法律を全部訳さないまでも,基本的な法律には載っている法律用語の必須のものというのは是非拾っていきたい。また,最初の1年目の作業としてはどうしても限界があるので,2年目以降,ユーザーからの意見や各省庁における翻訳をもとに,更に標準対訳辞書の充実を図っていくことになろう。
 基本法令を訳す場合も,作業効率を念頭に置きながら訳していかなければいけないとすると,民法も,例えば親族相続は後回しにしてしまい,財産法の中でも債権を先にして物権を後にするかとか,あるいは例えば親族相続の前に民事訴訟法の前半部分辺りをやるといったことも考えられる。
 資料2−1にあるもの以外で,経済界で翻訳のプライオリティーを置いてほしいという要請が強い法令としては,租税関係の法律や民事再生法,破産法等の倒産関係の法令,民事執行法関係,それから行政手続法のようなものがある。
 次に,「既存の翻訳データに含まれていない用語等であっても,基本的用語であるなど一定のものについては,訳語ルール(標準対訳辞書)に含めることとしてはどうか。」という点であるが,これも異論がないところであろう。付加すべき用語をどのように選定するかについては,客観的な基準というものはどんな辞書を見てもなく,編集委員の主観的なプライオリティーによらざるを得ない。作業部会で選んだものを,この会議でレビューするということになるのであろう。
 その次に「3.一部法令の翻訳について」で,法令等の翻訳については,「訳語ルール作成過程での一部法令の翻訳を行うとともに,翻訳ルールを含む検討会議の検討結果を踏まえて本格的に行う。」とされている。国際化検討会のワーキンググループで議論したときには,先ほど指摘があったように,民法や民訴など基本的なものを訳さないと基本用語の洗い出しができないではないかという意見があったため,やはり訳語ルールの策定と同時並行的に基本法やプライオリティーの高いものについて翻訳を進めざるを得ないのではないかというような意見があった。そういう趣旨で,「作業過程においてどのような分野のいかなる法令を翻訳すべきか。『取りまとめ』においては,基本法,知的財産法権法,経済関係法,行政手続関係法,労働関係法等のニーズが高いとされている点をどう考えるか。」知的財産権法や労働法関係などは翻訳が進んでいるが,整合が取れているかということについては疑問がないわけではないので,この辺のレビューも必要だろう。
 租税法などは非常にニーズが高いものだと思う。知的財産関係法については,工業所有権関係の法規の訳はよくできているし,著作権法の訳もよくできているが,お互いの整合性がないというのが1つの問題だ。損害賠償や差止についての条文は,日本語としては同じなのに訳が一致していない。そういうところの整合性が重要だと思う。
 基本法については,あまり翻訳が進んでいないが,翻訳のベースを提供するという意味から,作業部会での作業手順については,民法の中でもメリハリを付けて翻訳を進めていくことになろうかと思う。
 次に,作業過程において,どの程度の数の法令を翻訳するべきかであるが,数と言っても法令の本数だけではかれるものではないが,それにしても一定の目安として,せいぜい10本ぐらいの法令がとりあえずは現実的と思うがどうか。
 先ほど名前が挙がったもので法務省所管のものが10本ぐらいになる。ほかの省庁も同じ程度の合わせて10本ぐらいで合計20本が妥当と思う。
 一部法令の翻訳は,対訳辞書を用いればこういうふうになるということを示したいということもあるので,既存の訳のあるものであっても,標準対訳辞書にのっとって修正等を試みてみるということが,標準対訳辞書が役に立つかどうかということを検証する意味でも重要だと考えている。既存の訳があるなしにかかわらず,こういうものの訳があったらいいではないかというところをお示しいただければと思う。
 先ほど言った基本法の部分と独禁法,知財,労働法は既に挙がっているが,その他には,証取法のニーズが高いと思う。
 辞書というものの世間的な評価を考えたときに,基本的な用語が入ってなくて,どちらかと言うと非常に専門分化した領域の先端的なものばかりが入っている辞書というのは,評価としてはそれほど高くならない可能性がある。そういう意味では,ある程度根本的なものも入れるというのは,当然考慮すべきである。これは,単なる翻訳辞書になるわけではなくて,さまざまな注,例えば,この表現はアメリカ法に由来するとか,これはドイツ法のどこから来ているという情報も付加情報として付けることができる。ある種のかなり専門的な情報源という機能を持つと思われるので,その意味でも,是非うまく基本的なものが入るようにお考えいただきたい。
 刑法はどうか。基本法であるが需要があるか。
 名古屋大学は法整備支援ということで,発展途上国にさまざまな法制度の整備の話するが,捜査から刑事手続と刑法のワンセットが,社会的な不正を防止する,人権を擁護するといったような問題で,どうしても要ると言われている。
 日弁連でも法制度整備支援に取り組んでおり,必ずしもビジネスで法律を使うだけではないという観点から言うと,刑法とか刑訴も是非入れてほしい。
 刑法というものは,実際に対日投資促進といった観点で実務的に使われることはあまりないのかなと勝手な想像で感じていたが,やはり日本という国の成り立ちとか,有り様みたいなものを国際社会に示すという意味で,日本を知ろうとしている人たちにとって一つの重要な参考資料になるのではないか。
 発展途上国では,大企業を育てるのではなく,小企業とか中企業の育成体制というものが非常に大事だと考えているようで,それを日本がどうやってサポートしているのかという質問がよくある。しかし,その辺の基本的な法令の翻訳はほとんどなく,口頭でしか説明できない。発展途上国支援からすると,産業育成の基本に関わるような,しかもかなり中小企業のところを視点に置いたものが役に立つし,需要もあると思う。
 ちょうど発展途上国の幾つかの国から弁護士が日本に来て,日弁連を訪問して勉強をしているところだが,法典の訳がないというのは大変なことだ。また,個人的にプロボノで刑事事件のディフェンスを無償でやっているが,訳がなくて困ることはよくある。ビジネス的なところだけではなく,そういったところも考えるべきかと思う。
 ビジネス関係では,特許法,実用新案法,意匠法,商標法,不正競争防止法,著作権法,独禁法,景表法のニーズが高い。
 経済界では,新しい会社法を含めて会社関係法に期待が高い。また,今挙げられた知財関係もすべてニーズが高い。倒産法では,会社更生法,破産法,民事再生法の辺りである。さらに,民事訴訟法,民事執行法,行政手続法,そして労働関係法の中でいわゆる労働三法,それから先ほど指摘された証取法が重要視されている。
 法律ばかりではなくて,その下の省令やガイドラインなども訳してほしいという声もある。多ければ多いにこしたことはないが,切りがないという感じもする。ただ,独占禁止法などの分野では,ガイドラインはかなり重要で,法律分野によってもかなり違ってくる気がする。外国為替管理法関係でも,省令を訳さないと意味がない。
 銀行法や保険業法も,法律だけではなく省令,政令をいつかは翻訳する必要があると思う。
 例えば知的財産では,特許とか商標の審査基準の訳が必要だろう。独禁法や景表法にも,不公正な取引方法や不当な表示・不当景品についてのガイドラインがある。その訳も必要だろう。
 基本法律が済んでからのことになると思うが,やはり分野によって下位法令の重要性というのが違ってくると思う。とりあえず,この1年間については,そこまではとてもカバーできないわけで,随時ニーズをくみ上げながら,下位法令まで翻訳の手を伸ばしていくということになろう。
 基本法の関係でいろいろお話が出たので,所管省としてコメントさせていただきたい。英訳化の話というのは非常に大事な問題だと思っており,当省でも,所管する法令について,一部であるが翻訳をしてきている。ただ,それをやっていく上では労力と時間がかなりかかる。基本法,例えば民法一つとっても大量であり,その中でどれぐらいの量をまず翻訳するのか。とにかく民法はお願いしますと言われても,なかなか大変なところがあるということは御理解いただきたい。省内で法令の英訳化に従事した人の話を聞くと,特別な人員や予算がないという前提になると,お昼休みに集まって弁当を食べながらやると。こういったことをやっているから遅々として進まなかったとも言えるが,そういった努力でこれまでやってきているという面もある。人的体制や財政措置の制約がある中で,とにかくやりなさいと言われても,なかなかしんどいところがあるということは,改めて確認させていただきたい。何をいつまでにやるか,それが今のマンパワーでできるかどうか,あるいは財政的なものの制約がある中でできるかといった点については,我々も意見を言わせていただきたい。
 確かに法務省の負担は大変なもので,特に会社法などは大変な数の条文ができているようなので,マンパワーや予算の関係も考えながらスケジュールを決めていかなければならないだろうということはよく分かる。ただ,あまりそれを考えていると,いつまで経っても進まないというジレンマがあるので,皆様方とよく議論してスケジュールを考えなければいけない。
 最後に,改正の対応状況等の明確化については,「法令等の翻訳に当たっては,その翻訳がいつの時点の法令に対応したものであるか,最新の法令に対応したものであるのか,その法令等が施行されているかなどの情報を明確にする。」ということで,改正の対応状況等を明確にするためには、具体的にどのような記載をすべきかということであるが,翻訳ルールに従って翻訳しているということを表示してもらうとして,そのラベルのフォーマットをつくり,その中に翻訳のベースは何年何月現在の法律であり,それは既に施行されているのかどうかというような情報を入れる欄をつくるということで解決するのではないか。そのフォーマットも作業部会でつくってもらうことになるのではないか。
 ニーズの話に戻るが,電気通信事業法関係も重要だと思う。次に,法務省の負担についてであるが,それなりの予算などを国の方で検討することは可能か。要するに,日常的な業務のほかにやらなければいけないことが出てしまうということなので,下請で人を雇ったりするということも検討した方がいいのではないか。
 来年以降どういう体制で,どういう形で予算を獲得して進めていくかは重要な問題なので,この会議でも議論していただきたい。
 これからこの検討会議で検討すべき非常に重要な事項として,将来どういう体制で翻訳を推進していくべきかということがある。当面の問題は,予算があまりないという問題で,次年度以降はこれをどうするかという問題がある。つまり,各府省に全部丸投げしてしまっていいのか,あるいは民間に全部丸投げしていいのか,あるいは中間のアイデアを何かつくり出すのかということである。中間的な,翻訳を推進する実際の作業を行う機関をつくるのかというような問題については,今後この検討会議で御検討いただくことになるだろう。
 とりあえずの問題としては,実際の予算がないという中でどうやっていくかということであるが,やはり当面は,政府が翻訳を行う場合には,所管の府省のノウハウ,今まで蓄積した知識を利用させていただく上でも,各府省にお願いせざるを得ないのではないかと考えている。また,これは追々この翻訳を将来どういうシステムで継続していくのかと絡んでくるが,議論の対象としては,例えば,3年以内にこういうものを翻訳しようというような,少なくともこの範囲のものは完全な英訳をつくろうというようなプランを立てて翻訳を実行するというようなシステムをつくるということを考えていかなければいけないのではないか。
 第1回のこの会議の直後にタイの方から要請があり,日本のいわゆるワランティ・クレームに関する法制度及び紛争解決制度を説明してほしいと言われ,説明の場をもらった。その際,瑕疵担保責任の話と債務不履行の問題を一応口頭で説明したが,やはり書いたものがなくて,どうやって説明しようかということを行きの飛行機の中で考えながらメモを作ったということがある。特にアジアパシフィックの国々では,日本の法制度を参考にしてやりたいという要請が強い。そういったことを考えるに,やはりかなりのスピードでつくっていくべきものがあるなという感を深めた。
 スピードと予算と人というように,難しい知恵の輪を解かなければいけないことになりそうであるが,何とかがんばって,早く,できるだけたくさんのいい翻訳をつくっていきたいと思う。
 なお,作業部会の作業要領については,前回事務局から案が示されているが,前回及び今回の議論を踏まえ改定の上,次回会議前に皆様にお諮りし,確定したい。
 
今後の予定等
第3回会合は,5月26日(木)午後1時半から開催する予定。