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【イベントレポート】
WeWork 規制の壁を超える会 ~そうだ、政府に相談してみよう!~
規制のサンドボックス制度 内閣官房&スタートアップ トークセッション

APRIL 13, 2023

左からWeWork Japan 有我氏、内閣官房 岡田企画官、サスメド 上野氏、mobby ride 安宅氏


開催日時 / 場所
 2023年4月13日(木)19:00-20:00 / WeWork 麹町


登壇者
・WeWork Japan 有我 武紘 マーケティングマネージャー
・サスメド 上野 太郎 代表取締役
・mobby ride 安宅 秀一 代表取締役
・内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 岡田 陽 企画官


 WeWork主催の規制のサンドボックス制度に関するイベントについてレポートします。

<オープニングトーク 内閣官房×WeWork Japan>
 WeWork麹町で開催されたイベントでは、WeWorkの司会で、規制のサンドボックス制度について内閣官房とスタートアップ2社が参加し、規制のサンドボックス制度の概要や実際の利用感想などを語り、イベント後は交流の時間も設けられました。

【規制のサンドボックス制度の概要】
 初めに、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 岡田企画官より、規制のサンドボックス制度の概要について説明がありました。

 AIやIoT、ブロックチェーンといった新しい技術が次々と出てきている一方、既存の法体系はそうした技術を前提として作られておらず、規制が法文上該当するように見えても当該技術が想定されていなかったり、規制が存在しないためどういう扱いになるか分からなかったりするケースがあります。規制のサンドボックス制度は、そうした場合に、新しい技術やビジネスモデルについて、規制との関係を整理し、条件を限定した上で、既存の法制度の枠内で、実証実験をまずやってみることを可能とし、そこで集まったデータや資料を踏まえて規制所管官庁が規制改革の要否を検討するという、規制の壁を超えるためのアジャイルな手段です。政府もまずやってみるということで、2018年に3年間の時限付きでこの制度を導入し、20件を超える案件を認定し、具体的な法改正に繋がる成功例も出たことから、2021年に恒久化しました。

 この制度では、期間や参加者等を限定し、コントロールされた状況下で、既存の規制の適用を受けることなく迅速に実証を行い、得られたデータを用いて検討し、規制面の問題がなければそのまま円滑に事業化し、問題点があれば規制改革につなげていくことで、社会実装を迅速に推進していくことができます。日本の規制のサンドボックスは、シンガポールやイギリスなど、他国の金融・フィンテック等に限定された制度とは異なり、分野を問わず適用可能です。これまでに、モビリティ、IoT、フィンテック、ヘルスケアなどの分野で29件の計画が認定されています。

 また、事業者が規制の壁に困った時に、規制改革に関連する相談を広く受け付ける一元窓口が内閣官房に設けられています。規制改革に関する制度には、規制のサンドボックス以外にも、グレーゾーン解消制度や国家戦略特区、規制改革推進会議などがあります。どの制度を使ったらいいか分からないことがあることを踏まえて、事業者がどの制度を利用すべきか判断する必要はなく、規制に困ったらとりあえず内閣官房の一元窓口に相談してもらえれば、適切な制度を紹介しています。これにより、事業者は迅速に規制改革を進めることができます。

<トークセッション>
【規制のサンドボックス制度を実際に利用した2社の登壇】
 規制サンドボックス制度を活用する2つのスタートアップ、サスメド 上野代表取締役とmobby ride 安宅代表取締役が登壇しました。
 サスメドは2015年設立のスタートアップで、デジタル技術を医療に活用することを目指しています。具体的には、治療用アプリを医療機器として開発しており、治験の取組みでブロックチェーン技術を使用し、規制のサンドボックス制度を活用しました。
 一方mobby rideは、元々、フィンテック系スタートアップであり、新規事業を検討している際に、当時アメリカで盛り上がりを見せていた電動キックボードシェアリングサービスを日本で展開しようと考えていました。しかし、検討の過程で日本の規制が厳しいことがわかり、規制のサンドボックス制度を活用することになりました。

 サスメド 上野代表取締役は、日本の医薬品メーカーについて、新薬開発の立ち位置が低下していると考えています。また、海外で承認されているが日本では使用できない医薬品が増えており、その一因として治験に関するハードルの高さがあるのではないか、と考えています。
 そもそも医薬品や医療機器は、治験をクリアして承認されないと、医療現場では使えません。その治験データが正しく、改ざんされていないことを証明するために、これまでは人がチェックするということで信頼性を担保していたそうです。具体的には、厚生労働省に提出した治験データと、病院の電子カルテのデータが一致しているかを、人間の目で確認していて、非常に労働集約的な作業となっていました。
 そこで、サスメドは、ブロックチェーン技術を用いて、治験データの信頼性を担保できる方法を検討してきました。その中で、経済産業省のNEDOのサポートを受けていたことがきっかけで、規制のサンドボック制度を経済産業省からご紹介いただき、規制のサンドボックス制度の認定を受け、国立がん研究センターにおいて、限定された形での臨床試験を行い、製薬メーカーの治験に関する効率化を目指しました。
 日本では、治験データの信頼性を100%保証することが求められていますが、海外ではコアになる部分についてはしっかりやるのですが、それ以外はリスクベースで信頼性を担保する方法が取られています。サスメドは、信頼性を担保しつつ、コストをかけずにシステムで代替できる方法を目指しました。

 一方mobby rideは、日本における電動キックボードのシェアリングサービスを検討し始めた当初から様々な方法を探していく中で、偶然にも規制のサンドボックス制度を見つけたとのことです。内閣官房の担当者と相談する中で、法律の読み方やどこに課題があるのか、まさにイチから相談しながら進めていったとのことでした。

 内閣官房 岡田企画官からの説明では、内閣官房は、「とりあえず相談したい」という状況からの相談を歓迎しており、約30件の認定案件の裏には多くの相談案件があり、そのほとんどはビジネスモデルや関連法律がはっきりしていないことが多い状況です。ハンズオン支援型の制度であるため、相談者と一緒にビジネスモデルを具体化しながら関連法律を教えることでサポートしており、相談を受ける側にも、相談しやすい環境が整っています。

【内閣官房一元窓口】
 内閣官房 岡田企画官から、規制のサンドボックス制度を担当している内閣官房の一元窓口についての説明がありました。
 一元窓口に寄せられた相談に対しては、規制のサンドボックス制度のみならず、他の規制改革手段も包括的に案内しています。実証してデータを集めた上で規制改革を検討すべき案件については規制のサンドボックス制度、それ以外の手段が最も迅速な解決に資する案件については、それぞれに最適な手段を紹介しています。例えば、グレーゾーン解消制度で法律の解釈や適合性を判断する方が早いケースなどはそちらを紹介しています。また、ビジネスモデルが固まっているわけでもなければ、関係する規制も分からないけれど、とりあえず相談に来ましたというような方も結構いらっしゃいます。こうした方に対して、しっかりとハンズオン支援を行い、ビジネスモデルや規制面の具体化を一緒に行っていく中で、そもそも規制に該当しないとか、ピボットして他の事業に進むといったように、相談者が自己解決するケースも多くあります。利用者にはスタートアップも多く、法務などの対応のリソースがなかったり、省庁と直接議論することが難しかったりするということもよく理解しているので、一元窓口が包括的に相談を受け付けて、最も迅速に解決できる方策を案内しています。

 内閣官房の規制のサンドボックスチームは現在6名で構成されており、相談時には複数の担当者が参加して事業者に寄り添い、解決方法を一緒に考えます。内閣官房のホームページからフォームに必要事項を記入して申請すると、通知がチームに届くので、すぐに内閣官房側から連絡を取り、担当者との面談を設定します。面談はオンラインでも可能で、物理的に内閣官房まで足を運ぶ必要はありません。

 また、内閣官房は、省庁横断的な橋渡し役をしています。規制のサンドボックス制度自体は経済産業省が所管していますが、相談窓口は総合調整機能を有する内閣官房に置かれており、内閣官房が他省庁との調整を円滑に実施しています。こうした調整が上手く機能するためには、関係省庁と日々コミュニケーションを取りながら信頼関係を築いていくことが重要であり、そうした関係性を通じて、各案件を進めています。

【内閣官房の省庁横断的な役割】
 mobby rideは、内閣官房の規制のサンドボックス制度を活用し、国土交通省や警察庁など複数の省庁と連携して、電動キックボードの実証実験を行いました。最初は道路交通法改正を考えていましたが、実際には多くの省庁が関与していることが分かり、規制のサンドボックス制度を利用することで規制所管の省庁が実験に参加し、議論の場に引っ張り出せることが最大の成果でした。

 実証実験は大学構内で行われ、法律上は道路ではなかったため、道路交通法の適用外で自由に実験ができました。もし、規制のサンドボックス制度を利用せずに実証実験を行った場合、道路交通法適用外のデータであるため警察や国土交通省が関知しない可能性がありましたが、規制のサンドボックス制度を利用することで、警察・国土交通省が規制見直しのためにアクションを起こさなければならない状況が作られ、結果的に次のステップにつながりました。

 mobby rideの成功例を見てみましても、規制のサンドボックス制度を利用することで、規制改革に取り組む企業が規制所管の省庁と連携し、より効果的な議論や実証実験を行い、最終的には規制緩和に繋げることができるというメリットがあることが分かります。

【サスメド・mobby rideから見た規制のサンドボックス制度】
 サスメドは、厚生労働省所管の薬機法におけるGCP省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)において規制のサンドボックス制度を活用して、ブロックチェーン技術を用いた信頼性担保の実証が認められました。規制のサンドボックス制度を活用した実証結果により、治験の効率化につながる動きになりました。
 このように、サスメドは規制のサンドボックス制度自体には問題は無いと感じていますが、規制のサンドボックス制度と、他の取組との連携に関して改善の余地があると考えます。例えば、政府のスタートアップ支援やSBIR等の新技術の社会実装支援策などと連携することで、社会実装へのスピードが欧米に引けを取らないペースで進めるべきではないか、と考えています。

 一方、mobby rideも規制のサンドボックス制度自体には不満はないものの、法律上の決まり等によるスケジュールの制約に苦慮しました。また、規制のサンドボックス制度と他制度間の連携や、他制度に移行した際の担当者の変更も課題としてあります。

 内閣官房 岡田企画官からの説明では、内閣官房は、実証実験から事業実施への移行を円滑に進めるため、規制改革を所管する官庁と連携しており、スタートアップ施策全体を取りまとめる役割も担っていることもあり、制度間のスムーズな連携を促進するために各省と協力して取り組んでいます。担当者の交代による継続性の喪失に関しては、省庁の人事制度上の制約があるものの、規制のサンドボックスチームとして情報共有を徹底し、各制度を所管する部署や省庁が異なってもシームレスに相談できるよう努めています。内閣官房は、これらの課題を克服し、規制のサンドボックス制度をより効果的に活用できるよう取組んでいきます。

<質疑>
【藪蛇リスク】
 会場から、「藪蛇リスク(相談したことにより、返って良くない結果となってしまったこと)をどの程度受け入れるべきか」という質問がありました。この質問に対し、内閣官房 岡田企画官からの説明では、藪蛇リスクが存在しているような場合とは、例えば、グレーゾーン解消制度において現行法の解釈としては黒と言わざるを得ない蓋然性が高いケースなどが考えられるが、このようなケースにおいては、規制を所管している官庁と事前に相談し、論点や問題の落としどころをしっかりと確認することが重要です。その上で、必要に応じて規制のサンドボックス制度を利用して、実証によってデータを収集し、問題ない証拠や規制改革に向けた証拠を提示するなどして、問題の解決に努めています。

 また、「規制の範囲内で独自に実証できる場合に制度を利用する必要があるか」との質問に対する説明では、法令等の解釈で対応できる場合でも、規制のサンドボックス制度を利用することで、規制関係官庁の関与により後から解釈がひっくり返されないことに価値があります。

 なお、規制のサンドボックス制度の実証後の最終報告書は、企業秘密が多く含まれていることから、政府側からの公開はございませんが、事業者側にて自主的に公開することに関しては、事業者側の判断により可能です。

【登壇2社の、事業に対する想いとビジョン】
 続いて、サスメド上野代表取締役とmobby ride安宅代表取締役へ、事業に対する想いとビジョンについての質問がありました。

 サスメド 上野代表取締役からは、サスメドは会社名の元となるSustainable Medicine(持続可能な医療)を目指しており、日本の社会保障制度の永続性に疑問を感じています。ドラッグラグやドラッグロスと呼ばれる問題を解決し、日本の治験のハードルを下げることを目指しており、法規制に対してもチャレンジしていく姿勢です。また、社会課題解決への当方の強い意識が、経済産業省をはじめとした官僚の方々にも伝わり、交渉を進めることが出来ました。

 一方、mobby ride 安宅代表取締役は、日本のモビリティ分野の規制が強いことから、新しい移動方法の実現が難しいと感じています。電動キックボードに関しては、道路交通法改正を成し遂げたものの、電動キックボードだけでなく、新しいビジネスモデルへの挑戦は引き続き続けていく考えです。

 両社の話から、様々な困難を乗り越えてきた経験が伺えると共に、それぞれの事業に対する熱意と将来のビジョンが強く感じられました。

【事前相談にかかる時間】
 続いて、事前相談にかかる期間について内閣官房 岡田企画官へ質問がありました。
 岡田企画官は、案件によって期間が異なり、短いものでは数ヶ月、長いものでは半年以上かかることもあると説明しました。内閣官房のレスポンスは短くするように努力しているものの、事業者側が迅速に対応できない場合が多く、それが課題です。特にスタートアップにおいては、法的論点の整理はハードルが高く、弁護士に相談することも簡単にはできないため、昨年からスタートアップ新市場創出タスクフォースを設立し、規制改革に関心のある弁護士が無料で法律相談を行っています。

 他方、規制所管官庁が検討に時間がかかる場合もありますが、その点も内閣官房がしっかりサポートし、案件を進めるように支援しています。その他、事業者側でのシステムや機材の開発が進まない場合や、規制改革のサイクルに合わせて出口を検討する必要がある場合などにも時間がかかりうるものの、内閣官房としては、案件が可能な限りスムーズに進むよう取り組んでいます。
最終的には、事業者の目標を実現するために、解釈の変更や法改正が必要な場合には、どういう証拠・データを集めたらいいかという点を見極めながら、ゴールからバックキャストして実証計画を作成していくことが重要です。

【助成金関連】
 最後の質問として、助成金が利用できるかについて、内閣官房 岡田企画官に質問がありました。
 岡田企画官からは、内閣官房は、規制のサンドボックス自体は助成金等の支援策と直接紐づいていないものの、他の様々な支援措置が存在しており、使えるものがあれば紹介しているとの説明がありました。

<最後に>
 最後に登壇2社からのメッセージがありました。
 サスメド 上野代表取締役は、新しい取組を行うスタートアップにとって法制度が壁になることはあるが、そこで諦めてしまうのではなく、規制のサンドボックス制度担当者はサポーターとして活用できるのではないか、というメッセージがございました。
 mobby ride 安宅代表取締役からは、まずは内閣官房へ相談してみることの大切さを強調されまして、相談を通じて理解が深まり前進できたと述べられました。
 なお、イベント終了後も、内閣官房の関係者が残り、イベント参加者への相談を受け付けており、活発な相談が行われました。ビジネスを実施するにあたって規制が課題となりうる方は、ぜひ一度、内閣官房にご相談ください。

以上






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