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新ビジネス/マーケット創出×規制改革へのチャレンジ~超DXサミット2023 Report

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(会場司会)
 それではお時間となりましたので、これより「新ビジネス/マーケット創出 × 規制改革へのチャレンジ」をテーマにパネルディスカッションを行ってまいります。はじめにご出演の皆様をご紹介いたします。
 三菱地所 xTECH運営部 ユニットリーダー 東京医科歯科大学産学連携研究センター クリエイティブマネージャー 堺 美夫様。
 デジタル証券準備 代表取締役 CEO 山本 浩平様。
 内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 企画官 岡田 陽様。
 最後にモデレーターを務めていただきます、EY Japan 金融サービス バンキング アンド キャピタル マーケットリーダー/レグテックリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング パートナー 小川 恵子様。
 それでは、ここからの進行は小川様にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。


(小川様)
 皆様こんにちは。今日はよろしくお願いいたします。今日は「新ビジネス/マーケット創出」ということで、「規制改革へのチャレンジ」をテーマにお送りいたします。また、「ディスカッションの狙い」に書いてございますとおり、今年に入って、いくつか私もイベントをさせていただいていますが、Web3、NFT、昨今はGenerative AIが非常に盛り上がってきています。今までの既成概念とかなり大きく変わった様々な新たな市場が期待されています。また少子高齢化、地方再生といった多くの社会課題に対して、最新のテクノロジーやデジタルデータが解決の糸口になるのではとの期待が日々高まっていると感じています。
 今日は、それぞれの分野で、前線で活躍されているキープレーヤーの皆様をお呼びしております。最初に司会の方からご紹介あった通りですが、今日は内閣官房からも来ていただいています。実は、数年前もパネルディスカッションで規制のサンドボックスを取り上げたことがありますが、それから数年経ち、様々な事例が出てくるものと期待しています。今日は、皆様から色々な生の声をぜひお聞きしたく、楽しみにしております。では、早速自己紹介からお願いします。岡田様、よろしくお願いします。

(岡田企画官)
 内閣官房新しい資本主義実現本部事務局企画官の岡田と申します。よろしくお願いします。規制のサンドボックス制度を運用し、各省庁と調整を行う省庁横断的チームのリーダーをしています。その他、スタートアップ支援策の総合調整等を担当し、新しい技術・ビジネスモデルの社会実装、市場創出を支援しています。
 近年、AIやIoT、ブロックチェーンといった新しい技術が次々と出現する中、既存の法体系がそうした技術を想定して作られておらず、規制を所管する官庁の知見も、技術の最前線でビジネスをしていらっしゃる皆様よりも乏しいケースがある。規制のサンドボックス制度は、そのような場合に、実証実験をまずやってみることを可能にし、集まったデータを踏まえて、規制改革の要否を検討するという、規制の壁を超えるためのアジャイルな手段です。
 政府側もまずやってみるということで、2018年に3年間の時限付きで制度を導入して、20件超の案件を認定し、成功例も出たことから、2021年に制度を恒久化しました。
 この制度では、規制との関係を整理して、期間や参加者等の条件を限定した上で、既存の規制の適用を受けることなく迅速に実証を行い、規制面での問題がなければそのまま事業を展開していただいて結構ですし、問題点があれば、得られたデータを用いて、規制改革に繋げていくことで、社会実装を迅速に推進できます。シンガポールやイギリスにもフィンテック等に限定した規制のサンドボックス制度はありますが、日本の規制のサンドボックス制度は分野を問わず広く適用可能です。これまでにモビリティ、DX、IoT、フィンテック、ヘルスケア等、様々な分野で30件の計画が認定されています。
 また、事業者が規制の壁に困るケースは色々あると思いますが、規制改革に関連する相談を広く一元的に受け付ける一元窓口を内閣官房に設置しています。規制改革に関連する制度として、規制のサンドボックス制度以外にも、グレーゾーン解消制度や国家戦略特区、規制改革推進会議等、様々な規制改革関連制度があります。どの制度を使えば良いか分からない場合でも、とりあえず内閣官房の一元窓口に相談いただければ、最も迅速な課題解決に資する制度を紹介し、シームレスに関係省庁に繋げておりますので、規制に困ったら内閣官房の一元窓口に相談をいただければと思います。本日はよろしくお願いします。

(小川様)
 それでは次に山本様、よろしくお願いします。

(山本様)
 デジタル証券準備の山本と申します。よろしくお願いいたします。私自身、司法試験に合格した後に金融庁に入りまして、約4年間役所で働いておりました。その後、弁護士になり、デジタル証券準備株式会社を創業いたしました。「準備」と言うと、皆さん驚かれるのですが、「第一種金融商品取引業」のライセンス、いわゆる証券会社のライセンスを今登録審査中で、金融庁の登録を得られれば、「準備」が取れて、「デジタル証券株式会社」という会社名になれるというところです。デジタル証券準備の子会社として「オーナーシップ株式会社」を作っておりまして、この会社は「セキュリティトークン」、最近では「デジタル証券」と呼ばれておりますが、デジタル証券の発行管理システムを開発・運用する会社です。今日ここに呼ばれましたのは、この「オーナーシップ株式会社」が本年8月1日に、「新事業活動計画の認定をブロックチェーン技術で取得した。」ということで、本日やってまいりました。
 次のページで、当社グループのセキュリティトークンのビジネスモデルを書かせていただいております。「規制のサンドボックス対象範囲」として赤枠で括っておりますが、「デジタル証券」(セキュリティトークン)をシステム上で投資家間で売買する、この時に民法上の制約があったのですが、「規制のサンドボックス制度」「新事業活動計画」を利用した結果、デジタル証券(セキュリティトークン)の投資家間売買がデジタル完結できるようになりました。その辺の体験も踏まえて、本日お話をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

(小川様)
 ありがとうございます。
 それでは堺様、よろしくお願いいたします。

(堺様)
 三菱地所の堺です。今日はよろしくお願いします。三菱地所のxTECH運営部ですが、xTECHの意味合いとしては、テクノロジーがどんどん産業を変えていくことを、不動産会社として様々なスタートアップの拠点を大手町/丸の内中心に作っていくということを、ずっとやってきまして、今日はスタートアップの話を近場で見ている存在として呼ばれているのかなと思うので、話をさせてください。
 FINOLABやInspired.Lab、TIP(TMDU Innovation Park)、これらは弊社が手がけたスタートアップ拠点です。FINOLABは2014~2015年から検討をして、今大手町ビルの 4階に1,000 坪クラスになっている。FINOLABはスタートアップが40~50 社集まっていて、かなり老舗になっていて、皆さんもどこかで足は運んだりされているかな、とも思います。
 まず産業領域としては、私はフィンテックを皮切りにラボを作りまして、その後AIロボティクスということで、大手町ビルの6階にありますInspired.Labで、ディープテック系のスタートアップが集まって、そこから加速していくというようなことをやっている。
 2021年に、TIP(TMDU Innovation Park)という東京医科歯科大学の中にウェットラボを東京医科歯科大学と共同で運営して、そこにスタートアップに集まってもらうというようなことをやっている。 領域で言うと、フィンテック、ディープテック、ライフサイエンスという感じで、時系列的に進んでいることをやってきています。
 セッションの中でお話しさせていただきますが、結果的にアカデミアとの連携を結構やっていまして、サイエンス系でTIP(TMDU Innovation Park)の東京医科歯科大学と、あと、東京大学とはFoundXを本郷にスタートアップ拠点を作っています。最近では、今年4月に一橋大学がソーシャルデータサイエンス学部を作りましたが、ここの先生方と意気投合して、一橋大学の東館にできる新学部、ここから一緒に産業を作っていこう、というようなことを取り組みとしてやっています。
 スタートアップエコシステムは、アントレプレナーや大学等、色々なステークホルダーがいて、その方々が集まるような仕組みを作って、産業をスタートアップ中心で盛り上げていきたいということをやっています。以上です。

(小川様)
 ありがとうございます。では早速今日のテーマに入っていきたいと思います。
 今日は3つのテーマを準備しています。1番目は、民間企業は、いかに政府の取り組みを経営戦略のなかに取込んでいくか。2つ目は制度設計自身が、わが国にとっての国際的競争力になり得るか、また日本の優位性は何か。3つ目、これらを踏まえて今後への期待ということでよろしくお願いします。
 では、早速一つ目からお話をお伺いしたいと思います。まず、今回この制度をご活用いただいた山本様にお聞きいたします。規制の変更には時間がかかることから、テクノロジーの最先端を行かれているフィンテック企業の中では当時、既存の規制では若干課題があったとしても、規制の変更には時間がかかるので、いったん制裁金を払ってでもスピードを重視するといった会社はあったように思います。「制裁金は営業費だ。制裁金は1週間で回収できる。」と言ったような声も聞いたと記憶しています。その後に社会的な影響も大きくなっていき、「制裁金を払えばいいといった問題ではなく、社会的責任があるだろう。」ということで、業界団体として制度改革の提言をしていくといった動きもありました。さらに、本日の規制のサンドボックスのような政府としての規制改革の新たな取り組みを経営戦略として活用していくという動きもある。
 山本様、今回この制度をご利用された、経営者としての課題意識、それと、経営戦略上の位置付けについて、ざっくばらんにご意見をお聞かせください。

(山本様)
 ありがとうございます。私は元々金融庁の役人なので、なかなか思い切ったこともできないということが、そもそもとしてあります。やはり規制業種、我々は証券会社になることを目指しております。金融事業者ですので、テクノロジーをアピールし過ぎて、当局から指摘を受けることは、我々の株主サイドも含めて経営戦略上はかなりネガティブ、生きるか死ぬかのような話なので、慎重に進めていかなければならない。私の資料3ページにあるとおり、今般、セキュリティトークンというブロックチェーン技術を活用した有価証券と見做せるものができました。もっとも、それをシステム上で投資家間で売買しようとしたところ、民法の第三者対抗要件という問題がありました。これは何かと言うと、例えば内容証明郵便を送ったり、公証役場に行って公証人からハンコをもらうとか、アナログな手続きが残ってしまっているという課題がありました。デジタル完結ができません。せっかくブロックチェーンで有価証券がデジタル化されたにも関わらず、取引はデジタル完結できない。そうしたところを「経済産業省の産業競争力強化法の債権譲渡特例を利用すれば、取引のデジタル完結が出来るかもしれない。」という話が出てまいりまして、まずは「規制のサンドボックス制度」で実証実験をして、その実証実験が成功した結果、今の新事業活動計画の認定に繋がった。現状は、当社の子会社が開発している「OwnerShip」というシステム上で、セキュリティトークンを投資家間でデジタル完結の形で売買できるようになった。これは、ひとえに、内閣官房様、経済産業省様、法務省様のおかげだと思っています。我々の経営戦略上の話で言うと、今ココに辿り着いている企業は、国内初で、我々だけなので、ここはかなりアピールできると思う。また、ベンチャーなので、スピード感をもって事業を展開していける、且つ、自分達にしか出来ないサービスの形があるというのは、非常に強みになっていると感じているところです。

(小川様)
 スタートアップの中には「法的に専門的なことは全然わからない。」という方も多いと思います。次に堺様にこのあたり含めて、ご意見をお聞きいたします。
 堺様は、先ほどお話しいただいたように、FINOLABから始まり、多様な分野でスタートアップをサポートされていますが、2点ほどお伺いします。
 まず、堺様のこうした活動を通しての貴社の企業戦略、なぜご自身の貴重なお時間を投資されているのかといった点と、実際にその活動の中で、各社が今抱えている課題について、どのようにお感じになっているかご意見お聞かせください。

(堺様)
 ありがとうございます。「何故か?」と言われると、自分でも「何故なんだろう?」と思うことはある。自分なりに、この10年間程スタートアップや新しい産業、フィンテックやディープテック、ライフサイエンスの拠点を作ってきました。自分なりに、「何故、自分のモチベーションになっているのか?」と言うと、「少子高齢化で、なんか大変だよね。」って言っているのだが、年取るごとに「自分の子供の世代に幸せになってほしい。」という想いや、親世代の介護も含めて、「ライフサイエンスの領域やりたい。」という理由は、そのような想いがあったから。例えば少子高齢化で子供が親の面倒を見れなくなってくるときに、どうすれば良いかと言うと、テクノロジーがそこを支えていくしかないのではないかと思う。テクノロジーが産業を作って、例えば介護ロボットもそうですしで、人間はもっとハートの部分等、出来ることは凄く多いと思う。なので、自分の子供たちが良くなるようにするためには、新しい産業は早く起こる。それが自分の仕事の中で少しでも力になれればという、「自分でもやらなきゃ。」という使命感でやっている。それが1つ目です。
 2つ目で、スタートアップの方と多く接していて、彼らが何に困っているのかと言うと、2015 年ぐらいのFINOLABを作った時は、「スタートアップ、何それ?」という時代だった。その時、スタートアップ第1号ぐらいの方は、自宅を登記して、自宅を事務所として使っていた。だから金融機関の人や、行政の人は、自宅なので、当然ながら来てくれない。スタートアップは相手にされないので困っていた。ということもあり、僕はFINOLABを作った。「どうせ作るなら、大手町に作ってしまおう。」と考えたのだが、実は社内では「スタートアップはお金が無いじゃないか。」と反対された。ただ明らかにフィンテックの領域も山本様の業務もしかりで、スタートアップが世の中を変えていって、経済のパイは増える。 スタートアップが集まってくると中心に集まってきて、1社が5社10社20社になってくると、逆に投資家や金融機関の方や行政の方が来てくれる。それまでは相手にされなかったところが、集団で集まったら一気に凄いパワーになった。大企業とも連携をすることも起こっているので、拠点を作って皆で集まる。FINOLABですと金融庁様と交流が起こるということが、スタートアップにとっても、規制とお付き合いする良い力になっていると思う。

(小川様)
 ありがとうございます。
 岡田様も「規制のサンドボックス制度」を通して、多くのスタートアップからご相談を受けていると思います。今日のテーマでもありますが、内閣官房として、日本における新規ビジネス、若しくは新規の市場開拓にいかに寄与しているとお考えか、また当該制度がスタートとして何年か経っていますが、過去認識された課題と対応についてお話をお伺いできますでしょうか。

(岡田企画官)
 新規ビジネスに貢献しているという意味では、まさに山本様の会社で、ブロックチェーン技術を利用した情報システムを用いてセキュリティトークンを売買し、第三者対抗要件の具備を含めてシステムが円滑に稼働することを実証で証明されて、次に新事業特例制度を用いて、事業の実施に移られるという段階であり、まさに成功例だと思います。 皆さんが新聞等で目にされる例として、電動キックボードがあります。これは賛否両論ありますが、規制の見直しや新しいビジネスに繋がった事例の代表的なものだと思います。そもそも電動キックボードは、道路交通法や道路運送車両法上、原動付自転車、原付として区分されていて、車道しか走れず、自転車専用レーンは走れませんでした。また、安全のためにヘルメットの着用や運転免許が必要であるほか、道路運送車両法上の保安基準に適合する義務等がありました。それらを全部守ろうとすると、モビリティサービスの提供というのは難しい。これを可能にするために、実証してデータを集めようということで、まず公道ではない大学の構内において、免許無しではあるものの、安全面を考慮してヘルメットを着用して、電動キックボードを走行させてみて、運転した人や歩行者など、色々な人にアンケートを取って、データを収集しました。その上で、そのデータに基づいて、新事業特例制度で規制の特例措置を設けました。例えば、自転車レーンでの走行を可能としたり、ヘルメットの着用を任意化したりして、公道の上で事業を展開できるようにしました。最終的には、それらの結果に基づいて、昨年4月、道路交通法が改正され、電動キックボードに、新たに特定小型原付という区分が作られました。それによって、例えば、自転車レーンでの走行が可能になり、ヘルメットの着用も努力義務ということで任意となり、運転免許に関しても16歳以上は不要ということになる、新たな規制が整備されました。このように、規制のサンドボックス制度を契機として、段階的にデータを集めながら実証を行って、規制の見直しに繋げていくことにより、新しいモビリティサービス事業が生み出され、市場も創出されたと考えています。

(小川様)
 資料の中で、例えば「DX × 不動産」等といった言葉を拝見しました。恐らく、この「×」が増えてくると思っています。例えば「DX × 不動産 × 金融」など、もっと複雑になっていく中で、今仰ったような「省庁横断的」は、非常に重要になってくると思います。ありがとうございました。

 では2つ目のテーマに移りましょう。「規制のサンドボックス制度」を、まだご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。こういった国の制度をより皆様にもご理解いただくために、少し深掘りしてお聞きしたいと思います。
 最初に山本様にお聞きしたいですが、日本の「規制のサンドボックス制度」は、他国がフィンテックのみを対象としているものに対し、フィンテックのみならずすべての規制を対象としているといった特徴があります。山本様は元々金融庁におられたということで、先ほど幾つかの省庁の名前が出てきましたが、実際に活用された感想をご説明いただくと、皆さまの理解が深まると思いますので、お願いします。

(山本様)
 具体的にお話した方が良いと思いまして、私のスライド4枚目に、やり取りを書いてみました。Web 会議や面談は記載しておりませんが、ドラフトベースで何回やり取りしたとか、何があったかということを時系列で書かせていただきました。期間としては、「規制のサンドボックス制度」の認定取得の事前調整開始が2022年3月で、そこから最後の新事業活動計画の認定取得までは1年半ぐらいかかっている。このように見ると、大変な手続きと思われるかもしれませんが、当社の認識だと「早かった。」という認識。「規制のサンドボックス制度」だけで、もっと時間がかかるし、実証実験を行うことも、もっと時間がかかるし、その終了報告を行うことにも、もっと時間がかかると思っていたところ、我々の事業計画上はかなり思っていたよりも早くゴールまでたどり着けたと思います。事業所管の経済産業省のご担当者様にスムーズにやり取りをしていただきましたし、規制所管の法務省のご担当者様も面談にも出てきてくれて、親身に前を向いて、認定取得のゴールに向かって対応いただけた。なので、皆さんもあまり怖がらず、チャレンジしていただく方が良いと思います。
 もう1点だけ、私の元々のキャリアで言うと、我々の事業は、金融庁と国土交通省の2つの事業所管なのですが、実はこの2省庁が出てきていない。ここに出てきているのは、内閣官房様、経済産業省様、法務省様。霞が関にいると、一つのことをやるときに「誰かの所管だ。」ということがあると、「調整コスト」はどうしても発生します。それは致し方ないことですし、私もそれは理解しているので、経済産業省様と法務省様から認定を受けましたが、金融庁様にも国土交通省様にも適切なタイミングで情報共有はしております。このプロセスにおいて金融庁様も国土交通省様も出てきていないというのは、私にとっては例外的なポジティブな話です。やはり「規制のサンドボックス制度」「新事業活動計画」という枠組みを作っていただけたから、だと思っていて、前を向くメンバーが集まって、ゴールまで一緒に伴走していただけるという意味で、我々としては大満足、得られた効果は我々にとっては凄く大きかったというのが感想になります。

(小川様)
 ありがとうございます。これは私も制度の立ち上げ時に少し関わらせていただきましたが、想像以上にびっくりしました。コンサルティング会社のような形で内閣官房様が対応されていました。通常スタートアップが省庁にいきなり質問に行くことは、なかなかハードルが高いところ、全て内閣官房様が一元窓口になり、対応方法もコンサルテーションしてくださる。先ほどのお話の中でその有用性は、「なかなか経験した者にしか分からない。」とのコメントがありましたが、極めて有効な制度であると思います。 一方で、先ほど「電動キックボード」の話がありましたが、「リスク」と規制の関係もしっかり理解して進める必要がある。なので、制度的をしっかりその背景含め理解する必要もあり、応募数が増えてくると、一元窓口での対応は非常に負荷が大きくなってくるのではないかと思っています。大変だと感じる。複雑性、専門性、また関係各省庁とのやり取り含めてどのあたりが難しく、また重要かといった点についてご意見お願いいたします。

(岡田企画官)
 内閣官房では、規制のサンドボックス制度以外の規制改革に関連する制度に関する相談も含めて相談を受け付ける一元窓口を設置しており、事業者の利便性確保を重視しています。一元窓口では、事業者からの事前相談をきめ細やかに受け付けて、様々な助言を行います。それに加えて、関係省庁との必要な調整を間に入って行います。事前相談から実証計画の策定、関係省庁との調整、正式な申請まで、内閣官房の一元窓口が一貫してハンズオンサポートを提供するという形です。この資料には、規制のサンドボックス制度以外の制度も色々載せていますが、こうした制度を適用した方が迅速な課題解決に資するということであれば、そちらにシームレスにお繋ぎすることで、政府横断的に規制改革を推進していく窓口となっています。
 各省庁では、事業者から提出された実証計画を確認し、法令に違反しない場合は認定するというところが中心になってきますが、規制所管官庁はどうしても判断が慎重になりがちです。法律の保護法益をしっかりと守らなければならない、しかもそれが人の生命・身体の安全になると、やはりどうしても慎重になってきます。そこで、仕組みとして、規制所管官庁と事業所管官庁を担当省庁として、一体となって事業者の申請を審査してもらい、事業所管官庁がイノベーションの推進の観点から、しっかりと規制所管官庁をサポートすることとしています。また、規制所管官庁の中でも規制を持っている部局以外にもイノベーションを推進する役割の部局を設けてもらい、そこにもしっかり後押ししてもらうことで、イノベーションを推進する体制を整えています。
 規制のサンドボックス制度を利用する際には、規制法令の保護法益をいかに担保するかが重要です。ここでは、スマートレギュレーションと言い、既存の法律で定められたやり方で保護法益を守るのではなく、新しいやり方でも出来るという仮説を事業者と我々で提示して規制所管官庁に突きつけて、それを実証において証明していくというやり方をしています。したがって、仮説を作って証明すべき論点を特定して、実証の結果をもって証明するというプロセスをしっかり行っていくことが重要になってきます。既存の規制の解釈を行い、データを揃えていく時に、我々もしっかり知恵出しをして、事業者のサポートを実施します。事業者のやりたいビジネスを実現するために、規制のあるべき姿という目標を見据えて、そこからバックキャストでどういう論点を論証する必要があって、それに関してはどういう証拠とデータがあれば証明できるのかということを、実証計画を策定していくときにしっかり考えることが重要になります。我々としても、事業者をしっかりとサポートさせていただきますし、規制所管官庁、事業所管官庁、内閣官房を全て合わせて、事業者をサポートしていくということで、事前相談を受けた段階から、関係者を巻き込んで議論していくことができます。ただ、規制所管官庁は保護法益を守らないといけないこともあり、どうしても少し慎重になってしまうというところがありますので、密接に議論をして、協力や理解を得ていくことが必要ですが、そうした難しい調整は、内閣官房がしっかりと間に立ってやっていきます。
 保護法益と言ってもなかなか難しいですが、例えば、電動キックボードの事例だと、人々の生命・身体の安全を保護する必要がありますが、電動キックボードであれば、自転車類似の考え方で、ヘルメット着用無し、免許携帯無しでも安全を担保できるのではないか、という仮説の下、必要な実証をして、走行スピードや走行する場所、ヘルメット着用の要否といった事項を検討するためのデータを集めて、こういう別の方法でも保護法益を保護できるということを証明するという形でやってきました。
 相談をいただいてから、事業者にも一緒に頭を使って考えていただく必要はありますが、各省の総合調整機能を持つ内閣官房でハンドリングしながら、事業者を強力にサポートしていきます。それに加えて、実証でデータが集まった後は、規制所管官庁が規制を改正する必要があるかどうかを検討するところ、内閣官房がフォローアップとして検討を加速させる仕組みもありますので、政府一体となって事業者の考えているビジネス、イノベーションを推進する体制が整っています。

(小川様)
 ありがとうございます。非常に心強いお言葉でした。
 堺様は大手町・丸の内ということで、先ほど非常に熱い思いを語っていただきましたが、先ほどの映像の中でもありました「ヘルス」分野は厚生労働省等が所管ということで、スタートアップも最新技術でのイノベーションという観点で難しい問題に直線するのではないかと思っています。今回の日本の「規制のサンドボックス制度」をどのように評価、もしくは期待されているか、ご意見お聞かせください。

(堺様)
 東京医科歯科大学様と一緒にやっているTIP(TMDU Innovation Park)では、そもそもライフサイエンスのスタートアップは息が長いので、凄く難しい領域。正直なところ、これまでは、かなり硬い世界でした。「エビデンス」という言葉を私はあまり使っていなかったが、厚生労働省やAMED(Japan Agency for Medical Research and Development:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)での認可は、「命を守る」というところに究極的に繋がっているので、ある程度は致し方無いところかとは思う。ただ、そうは言っても、どうやって産業が新しくなっていくのか、というところで、東京医科歯科大学の田中学長と、リードする飯田先生という産学連携のトップが、我々の施設を見て、「このまま閉鎖的なところではダメで、外に出ないとダメだ。」と言っていた。我々は結構ラボ等の色々なエコシステムを作ってきたので、意気投合した。
 サンドボックスの話が出ているが、例えば「どこにサンドボックスを作れば安心か。」と言うと、何十年も続いている国立大学病院でやるのが多分一番早いと思う。規制を守りながら、厚生労働省や経済産業省と一緒に新しい医療産業の改革をやっていかなければいけない。皆さんは少子高齢化で、「医療がやばい。」と思っているのだとしたら、やはり中心から動いて規制当局を巻き込みながら中心から動いてやっていく。そこで「上手くいきました。」ということで、それこそ介護ロボットを、「エビデンス」を得るための実証を、信頼できる大学病院と規制当局でやっていくと。それで事例ができ、日本全国に広まったら、凄く良いこと。それで介護問題が解決されると。規制当局と一緒にイノベーションを起こして、日本中を幸せにする。親世代や子供世代も幸せになっていければ良いと思うし、地方に広がると過疎化問題にも良い影響が与えられるのではないかと思う。
 サンドボックス的に中心からイノベーション方式を起こしていく。そこに規制当局の一緒に巻き込みながらやっていくというのは良いのではないかと思う。

(小川様)
 「産官学のエコシステム」というようなコメントをいただき、ありがとうございます。
 最後のスライドで、「産官学で新規市場をいかに創出するか。」ということで、色々なステークホルダーが入った形でエコシステムを実現していくということが、新しいイノベーションを創出する鍵だと思いますが、堺様から一言ずつお願いします。

(堺様)
 先ほどのコメントの続きにはなるが、10年後 20 年後の課題を解決するということを、我々は産官学一緒になってやっていく時が来たと思う。クライメートテックを始めとして、誰しも「もうやばいな。」と分かっていることであれば、形だけの産官学ではなく、「やろうよ。」ということで、私も東京医科歯科大学や東京大学ともやっている。そこで本当にイノベーションを起こせたら、それが日本と世界に広がっていって、皆が幸せになると思うので、「10 年20 年先のやばい状況を変えなきゃ。」ということを皆でやっていければ良いかなと思っています。

(小川様)
 ありがとうございます。それでは、岡田様お願いします。

(岡田企画官)
 最近の生成AIのように、新たな技術の実用化が極めて早いペースで出てくる中で、政府として、どういう技術が出てきて、それが市場にどういう影響を及ぼして、課題に対してどう対応すべきか、必要な規制は何かといったことを事前に予測して対応するということが、極めて難しくなっています。したがって、新しいイノベーションや技術が出てきて、課題が出現した時には、走りながら考えて、規制のあり方を考えていかなければなりません。政府もアジャイルなスタイルに政策形成を進化させていくことが重要だと思います。政府も、企業の皆さんと一緒に走りながら考えますし、そのためのステップとして、規制のサンドボックス制度は、非常に強力なツールになります。
 将来の日本を考えると、少子高齢化、気候変動、環境問題等、色々な社会課題があります。これまでは、政府が主体となって解決に取り組んできましたが、これからは民間事業者とも一緒になって解決に取組んでいかなければなりません。その時に、色々な規制やルールがあって、なかなかそうした取組みができないということでは、民間事業者の皆様も社会課題に参入しにくいと思います。規制のサンドボックス制度や他のツールを用いて、規制をデジタル時代に合致したものにアップグレードをしていく、それによって最適な規制環境を整えて、その中で事業者の方々に、世界に類を見ないような新しい商品サービスを開発していただき、市場を創出し、経済のパイを拡大していただくということが、本来のエコシステムの在り方です。そのために、我々も努力をしていきたいと思います。

(小川様)
 ありがとうございます。最後に山本様、お願いします。

(山本様)
 法律は強制的に適用されるものなので、特に最先端のテクノロジーの法律となると、国民一般の納得ということを考えると、どうしても最先端までカバーするということはなかなか難しいのだと思います。それこそがまさに民主主義であるというのは、事業者である私もそう思うし、役所は役所でミッションがあるので、そこは仕方ないと思います。ただ、お互いにそう思っておくということが凄く重要です。法令を所管する役所が当該法令について「この内容が完璧なのだ。」と思っているようでは、事業者となかなか対話は出来ない。国民一般の納得という観点から法令でカバーしきれない、この先っぽに出てしまったところは、例えば「規制のサンドボックス制度」などで、「ここを一緒に解決することこそがイノベーションである。」ということをまず役所と事業者がお互いに分かる、その先っぽ部分を一緒に解決することが、国力を上げ、競争力を高めることであるということを、皆が分かるということが「第一歩」だと思います。

(小川様)
 ちょうど時間になりました。今日のセッションはこれで終わります。本当に貴重なご意見ありがとうございました。

左から、EY Japan 小川 恵子 様、デジタル証券準備 山本 浩平 様、内閣官房 岡田 陽 企画官、三菱地所 堺 美夫 様






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