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国土強靱化:私のひとこと special.17

楽しく、無理なく!はじめよう防災コミュニティ!
レジリエンス×コミュニティ

(国土強靱化ワークショップ(第6回))

平成30年1月20日、広島県広島市において、東京(神田)会場に引き続いて、今年度5回目の開催となる平成29年度国土強靱化ワークショップを行いました。
 広島会場でのワークショップは、「楽しく、無理なく!はじめよう防災コミュニティ!」レジリエンス×コミュニティをテーマとし、日頃からの防災活動や、活動自体を継続していくアイデアについて関心が高い学生から社会人など年齢も立場も異なる多様な方々に参加いただきました。


国土強靱化ワークショップ【広島会場】参加者の集合写真

話題提供: まちを元気にする”楽しい防災”とは?お話しからヒントを伺おう!

話題提供として、NPO法人プラス・アーツ理事長の永田宏和氏から「まちを元気にする“楽しい防災”とは」についてお話しいただきました。
 永田氏は、ファミリーが楽しく防災を学ぶプログラム「イザ!カエルキャラバン」を開発され、全国のみならず世界各地で展開しています。阪神・淡路大震災から10年を経た平成17年、こども向け・地域向けの防災イベントの企画に携わった際、ご自身のこれまでの地域まちづくりの支援、店舗のデザインのプロデュースで培ったデザインの経験を踏まえて企画され、防災に関する独自の普及・啓発のスタイルを構築されました。そのようなご経験をもとに、なぜ「イザ!カエルキャラバン」という楽しい防災訓練が出来上がったのかということに力点を置いてお話しされました。

まず、「風」、「水」、「土」、「種」の話について。地域の人々や専門家等は、「風」、「水」、「土」を用いて、それぞれ「風の人」、「水の人」、「土の人」に例えることができます。「土の人」は、その場で動かず、ずっとあり続ける存在であり、地域に暮らす人たちのことです。かつては、地域に暮らす「土の人」だけで地域活動をすべて行っていました。以前は「ムラ意識」と言うほど共同体としての意識が強く、昔は、皆で畑を耕して、みんなでその豊穣を祝って、祭りを行う事で、共通の意識や理解が強かったと言い、「土が肥えていた」という言い方もされていました。「土が肥えている」から、どんな種を植えても芽が生えてくることになります。ここでの「種」は、イベントや地域活動を指しています。地域の餅つき大会やお祭り、防災訓練が該当します。
 「土が肥えている」地域では、「土の人」どうしで、祭りを企画・準備・運営する世界観がありますが、現代は特に都市部では「土が枯れている」傾向があります。「土が枯れている」と、「旧来の種」では芽が出ません。旧来の防災訓練を実施しても参加者が集まらないという具合で、「品種改良の種」が必要となります。「品種改良の種」を「土の人」で開発できれば良いのですが、残念ながら無理なのです。何かを変えようとすると、地域の中にあつれきが起きるなど、いろいろな障害があります。誰が新しい品種改良の種をつくり出すか。その役割が「風の人」です。
 「風の人」は、地域外にいる専門家のことで、種をつくるプロです。種をつくって風に乗せ、「こんなやり方をしてみたらどうですか。こんな感じのやり方もありますよ。」というように種をまきに来るのです。しかしながら、「風の人」は「風」なので、そこに住んでいるわけではなく、すぐに別の場所に行って種をまくので、その場にずっとはいません。
 「風の人」が持ち込んだ「種」がその「土」にそのまま根付くかはわかりません。なかなか根付かないのが実態です。このため、もう一つの役割が必要で、種に水やりをする「水の人」なのです。「水の人」は、すでに地域にいる人の中に隠れていたり、既にいる場合もありますが、要は中間支援を行う世話役なのです。
 永田氏自身は「風の人」ですが、地域に防災活動を根付かせるには「水の人」が欠かせません。世話役の「水の人」といっても、自ら世話をしすぎて「水」をやりすぎると、芽が腐ってしまうこともあり、「土の人」を巻き込んで自立させていくことが大切です。この3つの役割の大切さについてお話しいただきました。

次に、良い「種」、すなわち良い防災活動をつくるポイントは何か?
 一つ目として、「不完全プランニングのすすめ」のノウハウを披露していただきました。防災活動の案は、隙だらけで、穴だらけで、改善の余地がある状態とする。だから、「土の人」みんなが関われる余地があり、みんなで一緒につくりこむプロセスに巻き込める。みんなで企画するから楽しいし、みんなが参加するし、みんなが盛り上がることができる。永田氏自身が開発した防災プログラム「イザ!カエルキャラバン」は「その地域のもの」として根付くそうですが、そもそも誰にでも「いじれる」ように企画しているそうです。
 二つ目は、「プラスクリエイティブ」という手法。つまらないものを人に紹介しても誰も関心をもってもらえないので、魅力化していく努力が必要です。「楽しい」、「美しい」、「感動的」、「非日常」、「わくわくする」、「格好良い」と思わせないと人々は関わってこないものです。神戸市内では「パンじい」という人々がいます。高齢者の男性向け料理教室という一般的な取り組みがありますが、参加者がいくら腕を上げたとしても、せいぜい栄養あるメニューを自宅で食べることしかできません。そこで、パンづくりを学ぶ教室として開催し、高齢者の男性にパンづくりを教えることで、他人に振る舞うことができるという魅力が付加され、男性高齢者のパン職人が増えているのだそうです。また、米国では病院の集中治療室での業務効率の改善にあたり、コンサルタントがF1レースのピットを参考にして機材の配置を検討したそうです。防災活動であれば、防災の世界以外にもヒントがあることを教えていただきました。
 最後に、「イザ!カエルキャラバン」の主な内容や開発過程、各地での展開での工夫の事例を映像で紹介いただきました。地域により想定される災害の種別が変わると、特に教育すべき事項も変わります。キャラクターも、カエルに限らず、様々なキャラクターが登場しています。地域の特徴や人気動物に応じて、クマやウミガメ、子ジカ、ヤモリ、これまでに様々なキャラクターが登場してきました。どの地域でも共通して言えるのは、楽しくローカライズすること、楽しいが伝えるべきことはきちんとまじめに教えること、伝える手段としての楽しさを持たせること、プログラムを常に進化させることが大切です。
 防災活動は重要だとは誰もが分かっているが、きっかけがわからない、活動を継続しているところでもマンネリ化しているなど、参加者それぞれが頭の中でもやもやと感じている課題に対して、今後の取り組みを考える「投げかけ」をいただいたひとときとなりました。

参加者対話: 話題提供を聞いて思ったこと、印象的だったことを話し合おう!

永田氏からの話題提供を受けて、参加者は、「お話しを聞いて思ったことを語り合おう」ということで、グループごとに対話を行いました。
 「私が暮らす広島市は区によって防災意識の差が様々で、地域に応じた対応が必要だ」、「子ども向けの防災活動を行うことで、私たち大人が子どもから教えてもらうこともあるはずだ」、「防災活動のヒントは日常生活に隠れているのではないかと思った」、「被災者から話を聞くことは防災活動の基礎になるのではないか」など、防災を自分ごととしてとらえた真剣な気づきの対話が広がりました。

みんなで企画会議:楽しく、無理なくはじめる防災コミュニティのアイデアを出し合おう!

続いて、「みんなで企画会議」として、防災活動を楽しく、無理なく始めるにはどのようにすれば良いかをグループワークで話し合いました。
 永田氏のお話やグループ内での対話を思い返しながら、

  • ・どんな人たちが参加するコミュニティか?
  • ・コミュニティで大事にしたいことは?
  • ・楽しく始めるアイデアを考えよう
  • ・アイデアを具体化しよう(発表)
の流れで順を追いながら、グループごとに夢を語りながら考えました。
 まずは「どんな人たちが参加するコミュニティか?」について。
参加者は、「防災に特化したコミュニティ」とは言わない、新たなつながりに着眼して対話していました。「5人だけのコミュニティで考えてみよう」、「無理なく、楽しく取り組むものと言えば、『趣味』ではないか」、「まずは参加者を絞って少人数にした方が参加しやすい」、「20歳代を巻き込んでおくことが大切」、「若い世代を巻き込むには『婚活』に防災を交えられないか」。参加者どうしの対話はグラフィックレコーディングの手法で模造紙に「見える化」していきます。ある参加者ひとりのアイデアから次々とアイデアが広がっていきました。

次に「そのコミュニティで大事にしたいことは?」について。防災・減災の大きな目的は「命を守ること」。「自分の命は自分で守れ!」、「隣近所のつながりが大切」、「若者も高齢者も、年齢は関係ない!」、どのグループでも多くの参加者が声を強めて話し、皆で納得していました。
 続いて「楽しく始めるアイデアを考えよう」について。参加者の多くが関心を持ちながらも、具体化が難しかったテーマですが、順を追った話し合いと模造紙に「見える化」された対話をもとに、アイデアが飛び出しました。「小さく始めると良い」、「何だろう、おもしろそうと見せること」、「子どものあこがれのユニフォームを作ろう」、「『防災』は隠して中にもぐらせよう」など、参加者は笑いながら楽しく話し合いました。最後に、これまで話し合ったアイデアをまとめました。

発表: コミュニティを象徴するキャラクターを作って紹介しよう!

グループワークでこれまで考えてきたコミュニティや活動のアイデアを総まとめし、それらが一目でわかる「キャラクター」をグループごとに作り上げ、最後に全グループで共有しました。

  • ・地域と若者をつなぐ「防災に『コイ』」。ワークショップ開催当地のプロ野球球団のキャラクターを真似たユニフォームを作成し、それを着用して地域の様々な施設やイベントにコイ(来い)と。ユニフォーム等のグッズを購入するとポイントがもらえる仕組みを取り入れ、若者の参画を目指すコミュニティを考案しました。
  • ・「秘密結社、助かるんジャー」。「ここに来ればわかるんジャー」の合い言葉で、コミュニティに参加すると様々なことを教えてもらえます。構成員となる住民は、手芸が得意とか、日曜大工が得意だとか、それぞれの得意を使って防災の知恵を教えていくコミュニティとのこと。様々な人々にリーダーとして活躍してもらいたいという思いでまとめられました。
  • ・「もぐりサークル」。江戸時代の広島藩ではぜいたくが禁止され、人々は「もぐりめし」を作ったそうです。見た目は白いごはんの中に様々な具をもぐりこませ、ぜいたくを楽しんだことになぞらえて、スポーツや音楽といった個々の趣味を持つ人々が集まり、様々な体験を共有する中で、同時に防災を学べたという味付けをすればよい。地域通貨が使えるようにもすれば、より多くの人々が「もぐりサークル」に入るのではないか。
など、様々なユニークな未来志向のアイデアで、参加者みんなが考えた防災コミュニティを共有しました。

ワークショップの最後に、参加者ひとりひとりが、ワークショップが始まる前と終えた後の気持ちを振り返りました。その上で、各自が「私が今日から始めようと思ったこと」を用紙に書いて発表し、今後の活動の一歩を参加者みんなで確かめ合いました。

#つながり #コミュニティ

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