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プロジェクトから知る
国家公務員

DISCOVERING NATIONAL PUBLIC EMPLOYEES FROM THE PROJECTS

PROJECT
03

これからの少子化対策~人口減少を食い止めるため、2030年までがラストチャンス~

Overview

2023年4月1日こども家庭庁が新設され、こども関連政策がますます重要性・注目度を高めています。
2022年に生まれたこどもの数は77万759人で、統計を開始した1899年以降最低の数値となっており、少子化・人口減少が加速化しているのが現状です。
霞が関における少子化対策に携わる4名の若手職員から、その実態を探りました。

MEMBERS

  • 北條 俊一

    北條 俊一

    こども家庭庁
    成育局 保育政策課
    保育政策推進官

    2019年度、厚生労働省入省。2023年4月よりこども家庭庁に出向、保育政策全般を担当し、実際に現場に足を運び自治体や保育現場の意見を聞きながら、現在は特に「こども誰でも通園制度」の企画立案に尽力している。

  • 大田 和哉

    大田 和哉

    こども家庭庁
    成育局 成育環境課
    児童手当管理室
    企画法令係長

    2021年度、厚生労働省入省。2023年4月よりこども家庭庁に出向し、児童手当管理室で児童手当施策に携わる。「こども未来戦略」策定にあたっての調整に関わるなど、児童手当制度の抜本的拡充に向けて奮闘している。

  • 金谷 美奈

    金谷 美奈

    厚生労働省
    雇用環境・均等局
    職業生活両立課
    法規係長

    2018年度、厚生労働省入省。自身の子育て経験を活かしながら、子育て世代が安心して、仕事と育児・介護の両立ができるような環境整備に携わり、「共働き・共育ての推進」の具体的な仕組みづくりに取り組んでいる。

  • 越田 真奈美

    越田 真奈美

    文部科学省
    高等教育局
    学生支援課
    法規係長

    2017年度、文部科学省入省。奨学金制度や学生支援に関する政策に携わる。「こども未来戦略」策定にあたっての調整に関わるなど、多子世帯の大学等授業料等の無償化をはじめとして、高等教育費の負担軽減の実現に向けた企画立案や総合調整に尽力している。

今後の少子化対策の方針

2023年4月1日にこども家庭庁が新設され、こども関連政策がますます重要性・注目度を高めています。2022年に生まれたこどもの数は77万759人で、統計を開始した1899年以降最低の数値となっており、少子化・人口減少が加速化しているのが現状です。霞が関における少子化対策に携わる4名の若手職員から、その実態を探りました。

政府における少子化対策に係る直近の動き

2023年 4月
政府全体で司令塔機能を担う、
「こども家庭庁」の創設
2023年 6月
「こども未来戦略方針」の閣議決定
2023年 12月
「こども未来戦略」の閣議決定
2024年以降
「こども未来戦略」で決定した
各種政策を実行
北條

現在の最重要課題の1つが少子化対策です。

2023年の年明けから、こども政策の強化に向けて、目指すべき姿と当面加速化して進めるべき政策について、関係府省会議等において集中的な検討が進められるなど、少子化対策には特に力を入れて政府全体で検討を進めてきました。2030年までがラストチャンスという強い危機感の下、少子化対策の加速化プランを立てており、様々な政策を進めていきながら、各省庁と協力して少子化の歯止めを目指しています。

私は2023年3月まで厚生労働省の子ども家庭局で、保育園に関する施策を担当していたのですが、待機児童対策などは厚生労働省、保育士さんの給与の改善や認定こども園については内閣府、幼稚園は文部科学省が担当するなど、各府省に担当がまたがっていて、各府省の足並みが揃っていないと感じる場面もありました。こうした中、2023年4月にできたこども家庭庁は、少子化対策、こども政策の司令塔としての役割を果たしており、保育政策についてはこども家庭庁で一元的に担当することとされました。また、文部科学省や厚生労働省、内閣府から、こども家庭庁に出向という形で職員が集まっているので、こども政策をこども家庭庁が司令塔となって、政府全体で進めていけるようになり、政策立案にあたって、調整や相談がしやすくなったと実感しています。

大田

私も厚生労働省の出身ですが、自分が厚生労働省にいた時と比べても、こども家庭庁の設立後は子ども関連の政策が注目されているなと感じます。例えば、私の部署が所管する児童手当は、非常に注目度が高く、報道されることもしばしばあります。それだけ国民の皆さまが、こども家庭庁や子ども関連の政策に期待をしてくださっているということでもあると思うので、皆さまのご期待に応えられるよう頑張らないといけないなと身が引き締まる思いです。

こども未来戦略に盛り込まれた加速化プランにおいても、児童手当制度の抜本的拡充は目玉の一つだと考えています。家庭等における生活の安定の寄与、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資するという2つの目的のため、支給要件を満たす児童を養育している方に現金を支給する政策になります。現在は、所得制限以下の場合、3歳未満は月1万5千円、3歳から中学生までは月1万円、(小学生の第3子以降については月1万5千円)を支給しており、また、所得制限を超える場合でも一定の所得以下の方については、特例給付として、中学生以下の児童について月5千円を支給しています。

今回の加速化プランにおいては、次代を担う全てのこどもの育ちを支える基礎的な経済的支援という児童手当の位置づけを明確化し、所得制限を撤廃し、支給対象を中学生までから高校生年代まで延長することを検討しています。
さらに、こどもが3人以上いる多子世帯の場合、第3子以降については、3万円支給となり、そのカウント方法も見直す予定です。また、併せて年3回の支給を年6回の偶数月に拡充することも検討しており、抜本的な拡充を検討しています。

児童手当は現金給付政策ということもあり、子ども関連の政策の中でも、特に注目度が高い政策だと考えています。様々なご意見をいただきましたので、未来戦略でお示しした形になるまでにも様々な調整が必要でした。そういった苦労はありますが、実施主体の自治体の方々などのご意見なども参考にしながら、世間的にも注目度が高い政策を形づくっていくことに非常にやりがいを感じています。

越田

理想のこどもの数を持てない大きな理由の一つとして、大学や専門学校などの高等教育に係る教育費の負担が指摘されており、この負担軽減が喫緊の課題です。このため、政府では、低所得世帯を対象に給付型奨学金の支給と授業料・入学金の減免を併せて行う制度をこれまで行ってきましたが、2024年度から、年収600万円程度の多子世帯等の中間層に対象を拡大する予定です。

さらに、2025年度には扶養しているこどもの数が3人以上の多子世帯について、所得制限をなくして、国が定める一定の額まで、大学等の授業料や入学金を無償にするという措置を講じる予定です。

この施策は、理想のこどもの数を断念する理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎる」との答えが1位となっており、3人以上のこどもを希望する方においてこれが顕著であることや、3人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが、3人同時に扶養している期間であることなどから設定したものです。これにより、高等教育費の負担により理想のこどもの数を断念するというようなことが少しでも無くなることを期待しています。

また、貸与型奨学金の返還の負担が、結婚や子育てをためらう要因の1つになっているという指摘があります。現在でも、返還が大変な方については、月々の返還額を減らして返還できる制度がありますが、2024年度から利用できる年収上限を325万円から400万円に引き上げ、更に、お子さんが2人の世帯では500万円以下、3人以上の世帯では、600万円以下まで引き上げます。こどもを持つことにより返還が困難な場合でも柔軟に返還していけるように制度改正をする予定です。

育児や介護と仕事の両立ができる環境へ

北條

子育てと仕事を両立できる環境面での整備も当然重要です。
現在、こども家庭庁では「こども誰でも通園制度」という新しい制度の創設を企画しています。
全てのこどもや子育て家庭への支援の充実という観点で、これまでにない全く新しい抜本的な制度作りになっています。現状では保育園に通う場合、両親は基本的には働いていて、ご家庭でお子さんの子育てができないような家庭の方が通うような仕組みになっているのですが、今新しく考えている制度は、働いていることは問わずに、保育園に通って、保育士さんと関わる機会や実際に通ってそこにいる他のお子さんたちと関わるような機会を保障していくような制度です。

保育制度はずっと前からありましたが、それを抜本的に改正し、新しい保育のあり方を作ろうとしています。この取り組みの背景としては、昔のように、家族や地域全体で子育てをするような環境ではなくなってきているなど、社会との関係の希薄化もあり、お母さんが子育ての過程の中で「孤立した育児」をして悩みを抱えているようなことも考えられ、不安や悩みを抱えているご家庭は自らSOSを発することが難しいことも考えると、そうした世帯やこどもへの支援をより適切に、きめ細かく行っていくことが重要だと考えています。こうした中、国として、すべてのこどもの育ちを応援し、全ての子育て家庭に対する支援を強化するため、保護者が安心して育児ができる環境を整え、孤立した育児となっている現状を変え、家庭から一歩出ていくようなきっかけ作りになる制度を作っていこうという政策です。

金谷

私が所属している部署では、育児休業や介護休業など、仕事と育児・介護を両立できるようにするための制度を所管しています。現在は、共働きをするご家庭が増えてきている中で、希望に応じてよりフルタイムに近い働き方ができるような制度づくりについて考えています。具体的には、3歳以降小学校に入学するまでの子を持つ労働者に対して、企業がフレックスタイムやテレワークなどの柔軟に働ける選択肢を整備し、労働者が選択をするという新たな仕組みを検討しています。

さらに、こどもが病気になった時にとれる看護休暇について、小学3年生までに延長するとともに、取得事由を拡大することを考えております。実際に私も2歳のこどもがいるのですが、1歳の時は1か月に1回ぐらい呼び出された経験があり、看護休暇を活用することで通院に一緒に行くことが可能になりましたが、子の年齢に応じてニーズも変化する中で、取得可能期間の延長や取得事由の拡大により、少しでも子をもつご家庭を支援できるのではないかと思います。

また、私も復職後すぐは短時間勤務をしていましたが、女性だけではなく男女ともに時短勤務が選択しやすくなるように、新たな給付を創設し、こどもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合にその賃金の10パーセントを支給するということも検討しています。

私自身の経験でいうと、こどもが生まれてから1年1か月、育休を取得したのですが、やっぱりそれまでは、これほど長い期間仕事と離れる経験がなかったので、どういった働き方をしようかと悩みましたが、育休期間中に、どういう風に働くかを職場とすり合わせができたのは良かったなと思います。男性の育休取得が促進され、育休中の体制整備を行う中小企業に対する助成措置の強化等がされており、育休をとる男性も増えていますが、職場と働き方の希望をすりあわせることも重要ではないかと思っています。

国家公務員として働く魅力

越田

今回の少子化対策のように、国民一人一人にとって影響力が大きい政策に携わることができるのは国家公務員ならではの仕事であり、大きなやりがいを感じます。国民の関心も高いことから、厳しい御意見をいただく時もあり、やりがいと大変さは表裏一体ですが、そういった様々な御意見を踏まえながら、「何のために行い、この政策を通じてどのような効果をもたらしたいのか」、データをもとに議論・検証を重ねて、丁寧に説明を尽くし、影響力のある政策を実現していく、という政策立案の難しさと面白さを、今回改めて感じました。

一つの政策が、国民一人一人の大事な判断材料の一つとなっていくので、政策効果をはじめとして様々な観点から御指摘をいただきます。政策を形にするのは難しさもありますが、こういったダイナミックな課題に面白さややりがいを感じてくれる学生に興味を持っていただけると嬉しいです。

北條

国家公務員として働く魅力は2つあります。

1つ目は現場目線の政策ができることです。元々保育園を経営していた人や大学で働いていた学識のある方など様々な人の意見を聞きながら政策に結びつけることができます。また、保育園などの現場に足を運んでみて、新しい制度について現場を生で見ながら考えて、現状の制度では隙間に落ちてしまっているけれど支援が必要ではないかと思うこと、ニーズを見つけるような機会もあります。

2つ目は注目度の高い仕事に就けることです。

何年後かには自分自身が使うかもしれない身近な政策ですし、身近ということは注目度が高いものでもあると考えています。そうした大切な政策について、しっかりと考えて、作っていくことは責任感とともにやりがいがとてもあります。政策立案の中では、自分が考えていることが本当に正しいのか、責任の重さと日々隣り合わせですが、注目度の高い仕事に就けることはとても魅力的であり、やりがいを感じます。

金谷

仕事と育児・介護の両立に関する政策については、自分自身も当事者として政策に関わることができるため、他人事ではなく自分事として捉えて仕事ができるのは国家公務員でしかできない魅力かなと思います。

育児はこどもの年齢に応じた大変さがありますが、その中で仕事を両立できなくなってしまうことはとても勿体無いと思います。仕事を続けることによって社会との繋がりができますし、自分自身のモチベーションになっているので、自分の経験を元に悩んでいる皆さんの手助けができたらと思います。これから働きやすい環境を作っていくために一緒に考えてくれる人に興味を持っていただきたいです。

大田

一番の魅力は、国の政策に携わることで、世の中を動かす一助になることができることだと考えています。その中でも、厚生労働省や文部科学省もそうですが、こども家庭庁は、子ども関係の政策という、国民全員にとって関係する政策に携わることができる特徴があります。自分や家族が現在もしくは将来、対象となりうるような身近な政策を自分たちの手で形づくっていくことができるという、こども関係の政策の面白さの一つであり、こども家庭庁で働く面白さなのではないかと思っています。