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国家公務員

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PROJECT
02

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?近年問題となっている地球温暖化や気候変動問題の解決を目指す。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?近年問題となっている地球温暖化や気候変動問題の解決を目指す。

Overview

近年、世界各国で異常気象・自然災害が発生する中、気候変動問題への対応は今や人類共通の課題となっている。この大きな課題を前に、日本では、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指し、クリーンエネルギーへの転換による経済システムの変革に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)関連の施策が動き始めている。

MEMBERS

  • 荒井 次郎

    荒井 次郎

    経済産業省
    産業技術環境局 GX投資促進室
    総括補佐

    プロジェクトでは大きな目標に向けて、研究開発のための2兆円規模のグリーンイノベーション基金を立ち上げることや、民間企業の投資を促進し、経済成長につながるための支援策や制度を設計。

  • 岸 雅明

    岸 雅明

    環境省(現在民間企業に出向中)
    日本製鉄株式会社
    薄板事業部薄板企画室

    プロジェクトではCO2の削減だけではなく、国民の豊かな暮らしに繋げていくかも考えて経産省と連携を行う。気候変動対策と産業をどう繋げて強化するかを検討。

GX(Green Transformation:
グリーントランスフォーメーション)とは

荒井

「GX」は「グリーン」、つまり気候変動問題への対応を、どのように経済成長や発展につなげていくかを重視しています。グリーン(環境)に向けて経済社会を変革し発展させる、大きな運動を表す言葉として、「グリーントランスフォーメーション」と名付けられました。

気候変動対策は、いまや世界全体で産業競争力と大きく関係してきています。そこで、GXの旗印の下、気候変動対策を担当する環境省と産業政策を担当する経済産業省が一体となって、脱炭素を日本の競争力に繋げるべく取り組んでいます。

荒井

例えばこれまではCO2を多く排出しながら生産してきたけど、今後は脱炭素への取組をしないと、世界ではビジネスが出来なくなるかもしれない。逆に言えば、世界に先んじてそういった取組ができれば、新しいビジネスチャンスになる。グリーンへの対応を、成長の機会としてポジティブに捉えるというメッセージも込められています。

具体的に取り組んでいる課題

荒井

例えば、炭素に価格を付けることで、企業や消費者の行動変容を促す「カーボンプライシング」という手法について、経済成長・投資促進につながる制度設計を担当しています。

また、GXではエネルギー源を化石燃料から電気に変える「電化」も有効ですが、電力消費を抑えるための性能の良い半導体が戦略物資となります。世界各国が、企業誘致の競争をしている中、制度や支援策を組み合わせることで、国内でGX投資が促進される環境整備に取り組んでいます。

僕はいま企業に出向していますが、海外の気候変動関係の政策動向も見ながらビジネスが動いている実感がありますね。この先、気候変動関係の投資が、できるだけ国内でしっかり回り、日本の経済成長に繋がるような取組が必要ですね。

荒井

貿易のトレンドも変わりつつあり、「あなたの国の製品は CO2を多く排出しながら作っているから、いわゆる関税を高くします」という動きも出始めています。

こうした変化に対応するためにも、日本では実効性の高い制度が整備されていること、日本企業はCO2排出を減らしながら生産していることを、アピールできるようにする必要があると思います。

それをやるためにも、まずはしっかりとした国内市場がないといけません。

日本で作られたものが日本で使われて、技術が磨かれて、世界にも売っていけるようになる。供給側も需要側も、両サイドの取組をGXに向けてドライブさせていかなきゃいけないですね。

GXに携わる中で、それぞれの省庁の
役割について

GXは「脱炭素×経済成長」ということで、それぞれを主たる任務とする環境省と経済産業省の連携が、その推進の中核を担っていると思います。

その中で、環境省はCO2の削減だけではなくて、その取組を私たちの豊かな暮らしにどう繋げていくかも考えていますし、経済産業省も気候変動対策と産業競争力をどうやって繋げて強化するかを考えながらやっています。

荒井

政府全体では、内閣官房に「GX実行推進室」という組織を立ち上げて、経済産業省や環境省に加え、関連する施策に携わっている財務省、外務省、金融庁などの関係省庁とも連携しています。

世界全体に関わる分野なので、外国がどのような取組をしているかをよく視るとともに、民間企業や教育機関、シンクタンクなどからも情報を集めます。こうした情報や、いくつかのアイデアを集めて、「僕らがGXで実現したいのはどういう世界なのだろう」ということをベースに、「こういう段取りで政策を進めていってはどうか」と考えていきます。色々な人と話す中で、仲間や応援団にもなってもらい、政策の中身を磨きあげ、実現に繋げていきます。

GXの施策一つ一つは、アイデアとしてはあったものですが、CO2削減に加え競争力強化やエネルギー確保など、気候変動に関連する諸課題の解決に向けた機運が高まる中、それぞれの観点からストックしてきた施策が一気にテーブルに乗って、どう組み合わせればそれらの課題をクリアできるのかという議論に繋がっていきました。

GXに限りませんが、ある日突然施策が湧いてくるわけではなくて、各省庁において日々施策アイデアを大事に温めながら、タイミングを見計らって軌道に乗せていくものだと思います。

課題を解決するために、人を動かす仕事

GXの少し前に、我が国として「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」という大きな方針が宣言されました。僕はその頃は地球温暖化対策課にいましたが、当時、この新たな方針の実現に向けて、地球温暖化対策に関する法制度や計画をアップデートするという仕事をしていました。
その後、GXの動きとともに、環境省内でGXを担当する部署に異動し、環境省の立場からGXをしっかり推進できるよう、省内の様々な部署とともにGXに貢献する施策を取りまとめたり、これらを環境省の施策パッケージとして大臣から政府内外に発信していただいたり、という業務をしていました。また、経済産業省始め様々な省庁との連携プロジェクトであり、その調整役も担当していました。

荒井

大変だったのが省庁間、省庁と企業間で目線を合わせていくことです。

今では当たり前のように「2050年までにカーボンニュートラルを目指すためには…」という議論をしていますが、最初からカウンターパート同士で認識が共通していた訳ではなく、それぞれが腹落ちするまでは「なぜ今やる必要があるのか?」「取組のための資金繰りをどうするのか?」などといった議論がありました。

また、同じ思いを持っていたとしても、スピード感がずれて周囲がついてこられないと、絵に描いた餅になってしまう。例えば、官民力を合わせて、GX実現を目指すための「GXリーグ」という枠組みを作りましたが、多くの企業の皆様に参加してもらうために、企業の方と粘り強く話し合いを行いました。

環境省は、気候変動問題についてしっかりと主張し、その解決に向けて皆さんの行動を変えてもらわなければいけない立場です。

気候変動対策を講じないと、我々の世代や将来の世代がこの地球で暮らしづらくなっていく。しかし、それが分かっていても、理念だけでは問題解決は進まない。このため、例えば、気候変動関連製品の市場をつくることで、企業のビジネスチャンスを拡大したり、再エネ・省エネの導入により、災害時のエネルギー確保や快適な住環境をあわせて実現することで、地域や暮らしを豊かにしたり、といった、気候変動対策をいわば手段として世の中をより良くするアプローチで政策を打っていかなければなりません。

企業、消費者、自治体など様々なプレイヤーがいて、関心事も行動原理も違います。それぞれの立場を深く理解し、行動を変える動機づけをしていくことが大事かなと思っています。

国家公務員として働く魅力

仕事が国内・国際にまたがるスケール感・フィールドの広さは国家公務員共通の魅力ですね。また、出向・留学含めキャリアパスに多様性があることや、ローテーションが早く様々な部署を経験できることも共通の特徴です。

僕の場合は、今は民間企業に出向する機会を頂いていますが、これまで、経済産業省への出向や海外留学も経験させてもらっています。省内でも、気候変動関係が長いものの、アスベストによる健康被害者の救済制度や、福島第1原発事故後の除染の仕事なども担当してきました。

環境省は、「環境」という軸を持ちつつ、様々なフィールドで幅広い経験ができます。最近では、成長を実感できる職場環境にあるか、という点も重要視されるようになってきていますが、うちは相当鍛えられる機会のある職場だと思います。

荒井

「この問題の本質はなんだろう」だとか、「どうありたいんだろう」という疑問を持ち、論文を読んでみたり、色々な人と議論したりする中で政策をつくり、実行すること。それが日々の仕事になる、というのは結構贅沢なことだなと思います。

最初は自分の頭の中の「妄想」でしかなかった施策が、政府の「構想」になって、それが具体化され、法律にもなり、実際に社会の動きが変わる。社会の均衡点を時代に合わせてアップデート出来るというのは、やりがいを感じますし、面白いですね。

2050年って、僕らの世代は元気でいれば普通に生きていますよね。GXに関わった以上、その時に日本が「脱炭素×経済成長」を実現できたか見届ける責任もあると思っています。この先、本当に政策がうまくいっているかどうか定点観測しながら、目標を達成していかなきゃいけない。

自分ひとりでは何もできませんが、自分がいるうちに成果を出さなきゃいけないという当事者意識は常に持つようにしています。