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プロジェクトから知る
国家公務員

DISCOVERING NATIONAL PUBLIC EMPLOYEES FROM THE PROJECTS

PROJECT
01

紙申請からオンライン申請へ国民の暮らしをより良くする様々なサービスとは。

Overview

国際的な身分証明書として重要な意味を持つパスポート。
旅券窓口に赴く必要があり、手間がかかっていた申請手続が、マイナポータルを利用してオンライン上で行えるようになった。
デジタル化によって、行政のサービスも変化している。
その渦中にいる国家公務員が、その裏側、今後の展望などについて語る。

MEMBERS

  • 山田 祐輔

    山田 祐輔

    外務省
    領事局 旅券課
    デジタルガバメント班

    外務省 領事局 旅券課に所属。
    在ヒューストン日本総領事館等の在外公館勤務を経て現職。
    旅券のオンライン申請のシステム構築に従事。

  • 石原 裕章

    石原 裕章

    外務省
    国際法局海洋法室
    (前・領事局旅券課)

    外務省 国際法局 海洋法室に所属。
    在ポーランド日本大使館等の在外公館勤務を経て2023年の6月まで旅券課に勤務。
    法令関係の仕事に携わりオンライン申請を行うための法制度の構築に従事。

  • 谷島 輝亮

    谷島 輝亮

    デジタル庁
    国民向けサービスグループ

    デジタル庁国民向けサービスグループに所属。
    国税庁に入庁後、留学を挟んで2022年7月にデジタル庁へ出向。
    マイナポータルの機能開発や運用保守に関する業務に従事。

マイナポータルを使用した
オンライン申請とは

石原

旅券(パスポート)は国際的に通用する唯一の身分証明書であるため、本人確認が最も重要です。これまでの旅券申請手続では、紙の申請書と必要書類を旅券窓口に提出していたので、申請者は一般的には申請時と交付時の2回、都道府県や市町村の旅券窓口に行く必要がありました。旅券窓口の受付時間は、基本的に平日の午前9時から午後5時となっており、申請や受け取りの際にはその限られた時間内でまとまった時間を作る必要があったため、利用者にとって不便が生じていました。

山田

2022年に旅券法が改正され、2023年3月27日からオンライン申請が可能となりました。

オンライン申請では、マイナンバーカードの公的個人認証機能を利用することにより本人確認を行います。必要書類もマイナポータル上で提出するため、申請時に窓口に赴く必要がありません。国内においては、原則として、現在有効な旅券を持つ方の切替申請が対象となります。なお、一部の都道府県ではオンライン上で新規申請も受け付けていますが、現時点では、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を旅券窓口に別途郵送する必要があります。

オンラインでの切替申請に必要なものは、現在有効な旅券、マイナンバーカード、マイナポータルアプリ対応のスマートフォンの3つで、これらがあればいつでもどこからでも申請ができます。

申請窓口が混雑している場合でも、長時間並ぶことなく旅券申請ができるほか、今日が旅券の有効期限最終日であることに窓口が閉まってから気づいたとしても、当日中であれば申請ができるなど利用者にとっての利便性が上がりました。

谷島

マイナポータルは、メンテナンス時間を除いて24時間365日稼働していますので、旅券窓口の受付時間に縛られずに、お仕事終わりなどでも申請ができるので非常に便利です。

また、マイナポータルから申請することで、利用者はマイナンバーカードの読み取りにより入力が簡単にできるほか、旅券事務所から事務処理状況に関するメッセージを受け取ることなどもできます。

山田

申請を受け付けた時点で、前回の申請内容との比較や入力エラーの確認が、システム上で自動的に行われます。これにより、これまで人の目で行っていた確認作業などが軽減され、旅券事務所の業務合理化にも繋がると考えています。

複雑なシステム構築を
共同で作り上げるには

石原

私は、システム構築の前提となる法制度の改正を担当しました。旅券は海外において自身の身分を証明する唯一の書類で、信頼性の維持が非常に重要であり、長い期間を経て積み上げられた申請手続には1つ1つ意味があります。近年、様々な行政手続がオンライン化されてきていますが、旅券の申請手続では自署の提出、現有旅券の返納など、複雑な手続が必要となるため、旅券の信頼性を維持しながら、これまで築いてきた旅券制度に相反しないように新しいオンラインでの手続を組み込み、それを法令改正で形にしていく必要がありました。

山田

旅券のオンライン申請はマイナポータルを通じて行うため、デジタル庁と外務省で共通認識を持ってシステム構築を行いました。

具体的には、デジタル庁は申請者が申請データを作成し提出するシステムの構築、外務省はマイナポータルから送られてきた申請データを受け旅券事務所で審査を行い、旅券を作成し申請者に届けるまでのシステムの構築を行いました。

旅券申請手続は規則が多く複雑なため、法令と実務を整理し、申請者が間違いなく申請できるようにシステムに落とし込むのは一苦労でした。

また、高度なセキュリティも必要です。実現まで2年以上にわたり外務省とデジタル庁の間でシステムに必要な機能や課題の確認、進捗状況の共有など綿密なすり合わせを行い、共同でシステムを作り上げてきました。

谷島

デジタル庁では、マイナポータルのサービス提供に関する業務を担っており、国民の皆様にサービスを安定的にご利用いただくための運用保守作業や、各種意見を踏まえた利便性向上に向けた対応を行っています。

マイナポータルへの各種機能の実装や改修に当たっては、制度所管省庁との連携が重要です。旅券のオンライン申請機能については、制度所管省庁である外務省による検討や意思決定が必要になるものが多くあるため、定例会を実施して緊密に連携を行うようにしています。

申請に必要な情報や申請項目を外務省から共有してもらい把握をすることで、申請から審査までをスムーズに行えるよう工夫しています。

山田

オンライン申請の実現は外務省とデジタル庁のみでは完結しません。旅券の審査・作成手続は都道府県の業務なので、都道府県の皆様が働きやすいシステム・制度を構築する必要があります。そのため、都道府県の旅券事務所とは月次で意見交換会を行い、オンライン申請導入後の制度・業務の流れについて説明し、こういう画面があると審査しやすい、などといった現場の意見をシステムに落とし込んでいきました。

利用者数とこれからの動きについて

石原

今後は、法務省との間で戸籍電子証明書の連携が可能となり、全ての都道府県で戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要な新規申請もオンライン申請の対象とすることを予定しているため、現在、外務省とデジタル庁に加えて法務省とも連携してシステム構築を進めています。マイナンバーカードの所有率も増加していくため対象者が増えるのではないかと見込んでいます。

山田

2023年3月から旅券切替のオンライン申請が開始され、10月末時点で、全体におけるオンラインでの切替申請数は約1万3千件、割合は約3割になります。

戸籍謄本がシステム上で連携されれば別途書面で取得する必要はなくなりますので申請者の利便性はさらに向上し、オンライン申請数も増えるのではないかと考えています。

実現にむけては、システム連携のみならず、制度面などこれらを実現するには多くの課題がありますが、外務省、デジタル庁、法務省の三者間で連携し、より便利な申請手続きの実現に向けて努力しています。

谷島

マイナポータルは、2024年度中に法務省が構築する戸籍情報連携システムとの連携を予定しており、当該システムとの連携が実現することで、旅券の新規申請をはじめとした各種申請で戸籍謄本の添付省略が実現予定です。外務省や法務省をはじめとした関係先と連携しながら、実現に向けて開発を進めていきたいと考えています。

国家公務員として働く魅力

山田

今回の旅券のオンライン申請の導入は、省庁の横断的なプロジェクトであり、旅券申請という行政手続を大きく変えるものです。こうした国民全体の生活に直結する行政サービスの大改革に携わることが出来るのは国家公務員の魅力の一つだと思います。

石原

旅券は国際的な身分証明書であり、外国への渡航や滞在をする際に命の次に大切なものと言われ、今や旅券は日本国民の5人に1人が所持しています。旅券発給の手続を行うのは都道府県や市区町村の旅券窓口ですが、大切な旅券を国民に届ける業務に携わる我々はいわば縁の下の力持ちのような存在だと考えています。

国家公務員と聞くと、難しくて日常生活から遠い仕事をしていると思われがちですが、実は国民の皆様の身近な行政サービスを下支えしていることを感じていただければ幸いです。

谷島

国家公務員の仕事は国民生活に与える影響の大きいものが多いです。

日頃考えている様々な課題を解決し、社会全体をより良くするために使命感をもって働けることや年次が低くても大きなプロジェクトに携わることができることが、国家公務員として働くことの魅力だと思います。

多種多様な業種があるので、ぜひ説明会等を通じて自分が何をやりたいのかを模索して欲しいです。