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与謝野社会保障・税一体改革担当大臣
第1回社会保障改革に関する集中検討会議後記者会見要旨

平成23年2月5日(土)
15:25〜16:08
於:中央合同庁舎第4号館共用408会議室


1.発言要旨

 本日、幹事委員である政府・与党関係者、有識者にご参集いただきまして、社会保障改革に関する集中検討会議の第1回会合を開催いたしました。
 冒頭、本会議設置の趣旨、役割、構成、運営要領についてご了承をいただきました。
 次に、これまでの検討過程や本会議の当面の進め方について事務局からご説明をし、ご討議をいただきました。
 また、例えば社会保障・税一体改革とマクロ経済、ミクロ経済との関係などの論点について、これまでの行政の知見や学識経験者の見解をリサーチペーパーとしてまとめる作業を本会議と並行して行うことをご紹介申し上げました。さらに、各有識者から社会保障、税一体改革に係るご意見をいただき、それを踏まえて討議をいたしました。
 なお、次回は19日土曜日の予定でございます。現在のところ、経済団体、労働団体からヒアリングをしたいと思っております。
 また、お手元に新たに委嘱する委員のメンバー表が配付されていると思いますけれども、仙谷先生から女性の数を増やすべき、また現場で実際に社会保障に当たっている方の数を増やすべきというお話がございましたので、それに沿ってメンバーを選定いたしました。
 討議の内容から申し上げますと、まず総理が冒頭ごあいさつされまして、本集中検討会議は2つの意味があると。50年前にスタートした皆保険、皆年金について、ちょうど50年たった今日、今後どうするのか。少子化、高齢化の中で国民の安心をどうするのかというのが最大の課題となっていると。集中という意味は、ある意味ではこれらの問題はぎりぎりまで来ているというのが現状である。集中的にこれらの部分をご議論いただき、これを国民的な議論につなげたいというお話がありました。
 会議の議事要旨は3日後に配付いたしますが、議論の本当の概略だけご紹介します。
 まず、堀田委員からは、これまでの議論は、国民の立場から言えば難し過ぎたのではないか。国民は将来どれだけ払うのか、どのような福祉をやってもらえるのかということしか興味がないと。ですから、どのような負担だとどのような福祉になるのかという選択肢を示すことも大変大事である。また、今の年金・医療等が持続できないこともあり得るという選択肢も説明すべきだ。やはり国民に問うていくという作業も必要である。
 次に、柳澤委員からは、国民にとってのわかりやすさ、胸に響くような整理が大事であると。これまでの経験から申し上げると、選択肢の提示はこれまで何回もやった。しかし、国民に余り響かなかった。形式論になる。やはりこの会議が信ずるものを出して、これがベストなものだというものを提案して、そこからスタートして各界からご批判を浴びると、そういう進め方がいいのではないか。
 次に、吉川委員からは、後期高齢者医療の顛末は政治の反省材料になると。考え方は間違っていなかったと自分は思っているけれども、国民との対話が欠けていたと自分は思っていると。それから、改革の大もととなる考え方をわかりやすく示すべきであって、案を書くベースとしてのフィロソフィーというものが大事であると自分は考えている。
 次に、清家委員からは、わかりやすいということは大変大事なんだけれども、見たものが真実であるとは限らないと。であるから、「国民目線」ということを言い過ぎて真実が隠れてしまうということは避けなければならないと。
 渡辺委員からは、10年後の姿と現実の姿のギャップをどう埋めるかということを考えるべきだ。
 宮本委員からは、現状は支えるべき立場にある人々が力を発揮できなくなっている。こうした世代を支えないと持続可能性は担保できない。社会保障に求められる機能を若い方の視点から示す、これが必要であると。また、社会保障への信頼回復をどうするのかという点が大事だ。
 宮島委員からは、若い人たちの困難にどこまで本気でこたえていくのかと。高齢者への給付をどう負担するかという問題に終わってはいけないと。少子化、若い人へのセーフティネットが大事である。年金がどこまで支えるものかという点の認識で若い世代と高齢世代に差はあると。
 成田委員からは、危機感はもう既に国民に共有されていると思うと。であるから、やはりわかりやすく国民にコミュニケートしていく必要があるだろうと。党を超えた協力を進めてほしい。
 峰崎委員からは、無駄を省いた程度では高齢化費用増は賄えないと、けたが違うと。そういうことも国民に説明すべきである。対応が遅れれば遅れるほど物事が困難になる。社会保障改革をすることで経済を強くするというメッセージが重要である。
 亀井委員からは、社会保障にどこまで含めるのかということから選択肢を示してほしいと。
 仙谷委員からは、損か得かというような議論に入っていくと、政治家はポピュリズムに走ってしまうという傾向があったと。税と言うことを恐れてもきたと。医療・介護など、ある種の産業群として位置づける考え方が必要であると。
 吉川委員が再び、社会保障の原点は保険であること。ビッグリスクは皆で支えるけれども、中程度以下のリスクはお金のある人は自分でやる、こういう考え方が必要だ。
 清家委員は、社会保障制度はこれまで大成功してきた。そのために高齢化が進み、さらに持続可能とするための改革が必要だということが現実であると。こうした基本認識を総理が共有しておられることに感銘を受けた。年金保険は、そもそもは予想外に長生きしたリスクへの対応であった。平均寿命が変われば、支給年齢も変わる。本当に年をとって病気になるというのはリスクではなく、すべての人が直面する現実である。ここには税財源をもっと入れるべきである。保険で対応できるリスクは保険でやって、貴重な税財源は本当に必要なところに投入すべきである。また、女性の就労を高めたり、若い人が能力を高める方向に制度全体を変えていただきたい。
 堀田委員から、子ども、雇用の問題は議論の対象に入れるべき。
 吉川委員から、社会保障制度の持続可能性と財政の持続可能性は同じコインの裏表であると。債務残高の対GDP比を発散させないためにどうするかを政府は示すべきである。また、その説明は国民の胸に届くような説明であるべきだ。
 峰崎委員からは、中福祉でいっても高負担にならざるを得ないと。時間が経つにしたがって財政再建に必要となる部分がどんどん増えていく。
 宮本委員からは、自公政権以来、相当程度まで理念も議論も共有されてきた。蓄積もある。しかし、これらは国民によく伝わっていない。やはり考え方としては、一人でも多く支えられる側から支える側に回ることが基本になる。これが戦後日本の提言の蓄積であると。それを実現するための政策を選択として示すことが重要である。
 最後、総理からのご発言がありました。これは、記者の皆様方の前でお話しされましたので、省略をいたします。
 以上です。

2.質疑応答

(問)最後の総理のご発言の中で、これまでいろいろ社会保障の議論をしてきたんだけれども、できなかったのは政治の責任もあるというようなご発言があったかと思うんですが、今回、この議論をした結果、それを実現するだけの政治の力というのがどこまで現在あると思っているのか。実現するために何が必要なのかということを改めてお伺いしたいと思います。
(答)税制改革とか社会保障制度改革というのは、法案として国会に出しますと政党間で大変な対立を生むというのは、今までの現実でございました。しかし、日本の財政の持続可能性、あるいはそれに関連した社会保障制度の持続可能性ということを考えますと、ぎりぎりのところまで来ていると。これは、やはり自民党の黄金時代もなかなか税制改正、社会保障制度改革というのは困難に直面することが多かったわけですが、恐らくこの問題は一党では支え切れない。どの党が政権にあっても、一つの党では支え切れないほど大きな問題だと。したがって、改革に当たっては、まず政府が案を示して、そして国民のご批判を仰ぎ、各界各層の方々のご批判を仰ぎ、なおかつ政府の示した案、国会を構成する各党にもご議論をいただくと。そうでなければ、実現の可能性は確保できないと、そういうお気持ちを言われたんだと思います。
(問)今日新たに委嘱する委員の方を発表されまして、女性の方とか現場の方は確かに多いと思うんですけれども、実際そのサービスを提供する側、あるいはサービスを受ける側、どういうところに力点を置くのか。もう少し人選された意味合いというのを教えていただけますでしょうか。
(答)意味合いというのは、だんだんわかっていただけると思うんですけれども、生水裕美さんは野洲市市民部市民生活相談室主査で多重債務者対策とかいろいろなことをやってこられた方です。湯浅誠さんは内閣府の参与でありますけれども、むしろ反貧困ネットワーク事務局長としてのご活躍がよく知られております。この2名は、貧困、格差問題に当たられている委員です。  次に、細野真宏さん。この方は、株式会社アーク・プロモーションの代表取締役でいらっしゃいます。鈴木晶子さん、NPO法人ユースポート横濱の理事で臨床心理士でもあられます。このお二人は若者支援の現場経験が豊富な委員でございます。
 次に、赤石千衣子さん、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事。小川泰子さん、社会福祉法人いきいき福祉会専務理事、ラポール藤沢施設長。駒崎弘樹さん、NPO法人フローレンス代表理事、これは病児保育をやっておられる方です。中橋恵美子さん、NPO法人わははネット理事長でございます。安藤哲也さん、NPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事ということで、この方々は福祉、医療の現場経験が豊富な委員でございます。
 そのほか、やはり医療の現場をよく知っておられるのは、矢ア義雄さん、独立行政法人国立病院機構理事長。亀田信介さん、医療法人亀田総合病院病院長。藤本晴枝さん、NPO法人地域医療を育てる会理事長。丹生裕子さん、県立柏原病院の小児科を守る会代表。濱田邦美さん、これは徳島県那賀町日野谷診療所長、こういう方々です。
 その他の委員は、日本商工会議所の会頭の岡村正さん、内閣特別顧問で連合の会長をやられた笹森清さん、甲南大学教授の前田正子さん、放送大学教授の宮本みち子さんということで、現場とか提供する側、提供を受ける側、それぞれ代表が入っておられると思います。
(問)今日の初会合の中で先ほどの委員の方のご発言にもあったんですが、この集中検討会議で議論する社会保障の対象について確認させていただきたいんですが、この年金・医療・介護に加え、子育てとか雇用というものについてまで領域を広げて今後議論していくのかということについて、初会合なので、この機会に確認させていただきます。
(答)年金、医療が恐らくまずは主旋律になると思いますけれども、介護も避けて通れないということ。それから、税法104条には「子育て」ということが書いてあります。それから、雇用は本来は経済の分野ですけれども、雇用の問題をセーフティネットの面からとらえると社会保障の一部であろうと、そう思っております。
(問)今日のこの資料4にあります今後の進め方の中で4月末から6月の集中討議の第2フェーズの中で、この@からBのものをまとめるというふうになっております。最後に工程表(実施時期)というものがございますけれども、この工程表というものがどのようなイメージのものなのか。税制抜本改革の実施時期とか、年金・医療などの新しい制度に移行するための時期的なものを盛り込んでいくお考えなのか。この工程表のイメージにつきまして、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
(答)期限は来年の3月31日でありまして、税法附則104条が命ずるところは平成23年度中に法的整備を行うということです。国会で法律等が提案され、国会のご了承を得て法的整備が行われるということを法が命じているわけですから、内閣は法が示している期限内に物事を済ますという責任と義務があると思っております。
(問)政府案の示し方について今日も多少議論があったようですが、改めて今日の議論も踏まえてどうされるのか。例えば、政府としてはA案がいいというふうに明示するのか。それとも、A、B、Cの選択肢を示した上でBが最も有力であるとか、どんな形をイメージされていますでしょうか。
(答)いずれにしても、どんな案が示されようとも、やはりその案に至った基本的な思想とか哲学というのが大事。少し大げさな言い方しましたけれども、基本的なベースとなる考え方というものが非常に大事だと思います。しかし、案というのは、やはり枝葉の部分になれば多少のバリエーションはあるわけで、そのバリエーションはいわば選択肢として呼んでいいものだろうと思います。
(問)社会保障の改革ということで機能強化というのは大事だと思うんですけれども、一方で国民の税負担とのバランスもとても大事だと思うのですけれども、今回、取りまとめに当たって与謝野大臣が一番難しいと思われる点はどこでしょうか。
(答)やはり財政の健全性を確保する一つのメルクマールである基礎的財政収支の黒字化、これを達成することと、あわせて社会保障制度の持続可能性も確保していく。プラス世代間公平も確保していく、プラス子育ても確保していく。こう言っていくと、どんどん方程式が難しくなるわけですが、提示された課題については、できるだけのことはしたいと思っております。
(問)今の話に関連してなんですけれども、政府は去年6月に財政運営戦略ということで、2020年までにプライマリーバランスを黒字化する目標を掲げているんですけれども、今回の社会保障と税の具体設計をするに当たって、その目標と整合性をとらないといけないと思うんですが、場合によって財政再建目標のほうを変えるという可能性はあり得るんでしょうか。それとも、そっちは厳守してやるということなんでしょうか。
(答)宿題が難しいからといって提出期限をどんどん変えることは宿題をやらないことになりますので、一度決めた目標に向かって進むのが正しいんじゃないかと思います。
(問)それと、峰崎委員の発言の中で増税をしても財政再建に回す分と社会保障の機能強化に回す分というのがあったとして、後になればなるほど財政再建に回さなきゃいけないというようなご発言があったということなんですけれども、現時点で仮に税収を増やすことに成功したとして、どの程度を機能強化に充てる、どの程度を財政再建に充てるというようなお考えというのがもしあれば伺いたいんですけれども。
(答)ないです。
(問)今後の当面の進め方のところのヒアリングの対象として「各政党、超党派有志議員」というような文言も入っているんですが、これは与野党の、今菅さんが呼びかけている国会での与野党協議とは別に、この集中会議の中で各党に呼びかけるというような形をとるんでしょうか。
(答)もう既に各党とも、コンセプトとしての社会保障改革の構想を持っておられるので、できればお見えいただいてお伺いしたいところでございますけれども、まず政府案をつくれと、こういう野党のご主張ももっともですから、当然各党の発表されたものは我々勉強しますけれども、なかなかお出ましいただくところまでいけるかどうかというのは、今この場所で確たることは申し上げられないです。
(問)少なくとも民主党はご出席されるのではないかと思いますが、与党としてのポジションから話を聞く機会はありそうですか。
(答)民主党は政調会長が閣僚でもあって常時出席されておられますし、また仙谷前官房長官も藤井調査会の後を継いでおられますので、民主党の考え方はそこでお二人から聞けるという状況です。
(問)今日の皆さんのご発言の中で、私の印象としては、やはり若い人に対する手当てというものをしっかりやってもらいたいという声が従前に比べると非常に強くなっているのかなという印象があるんですが、与謝野さんは前回私がお聞きしたときも年金と医療、ここが軸になるということで、今日も同じご発言をされましたけれども、その若い人に対する手当てみたいなものは、どの程度の時間を割くべきだとか、あるいはどういうことに絞ってご議論をしていくべきだというふうにお考えなのか、この辺をお聞かせください。
(答)社会保障と若い方という話になりますと、子育て支援とか児童手当とか子ども手当とかという現金給付のもありますし、その他教育とかそういう現物給付の部分もあります。それから、若い方で学校を出たけれども就職できないというような雇用との関係でのセーフティネットも社会保障の分野に入るわけです。それで、文科省に聞けば、困窮世帯の勉強したい子供に対する奨学金はどうするんだとか。それは議論すれば広がっていきますけれども、若い世代に対する支援というのは一体どういうものかというのは、少しカテゴリガルに整理しないといけないと思っています。
(問)進め方というか、この会議の持ち分について二点お伺いしたいんですが、一点は発表される成果物についてなんですけれども、わかりやすいものにしなければいけないとか、考えが伝わるものにしなければいけないという意見は今日も出たようですが、この一連の会議の成果物として、社会保障のあるべき姿以前の、例えば安心社会実現会議にあったようなあるべき社会像、哲学とか理念を示すようなものというのを出すことをお考えになっているのか、お伺いできますか。
(答)難しくともきちんとしたものを出すと。それを易しく説明するという、そういうことだと思います。
(問)あともう一点、税と財政再建との関係で、この会議がどこまでのマンデートを持っているかというのを確認させていただきたいんですが、社会保障のあるべき姿を示して、それに対応する税の姿を示すということになると、非社会保障分野の財政再建の話はここに載ってこないのか。あるいはそれとも、最終的にはそこも視野に入れて消費税以外の分野の税制についても一定程度のあるべき姿というのを示すというものが視野に入ってくるのか、この点確認できますか。
(答)私の仕事は官房長官の権限を一部いただいてやっている仕事でして、税、社会保障の一体改革の企画立案、それから各省庁との調整ということですので、そういう範囲で私は仕事をしていきたいと思っています。当然、社会保障の議論をしていくうちに、それじゃあ、お金はどうするんだと、財源はどうするんだという話になりますし、附則104条の求めている消費税を含む税制の抜本改革もやらねばならないので、これはあわせて一本でやるということです。
(問)先ほど与謝野さんが税や社会保障の大きな改革をやるには党では支え切れないというお話をされました。もちろん、今回の与党案が仮にできたとしても、野党の賛同や協力がないと、これは全く前に進まない。いくら美しい言葉で語られても、恐らくそれは紙だけで終わってしまうと思うんですけれども、この会議がどういうことをなし遂げられれば、野党は超党派の協議に乗ってこざるを得ない、あるいは乗ってくる気分になるのかというか、雰囲気づくりができるのかということをどういうふうにイメージされているのか。つまり、この会議が6月にどういうことを達成できれば、この与党案づくりというものを通して何を達成できれば成功だというふうに与謝野さんはお考えになっているんでしょうか。
(答)少なくとも、誰が見ても持続可能性のある案が出てきたというのであれば、一つの目標に達成できる。ただ、それだけでは不十分で、当然それをテーブルの上にのせて、国会内で、各党で協議をしていただくと。各党協議という思想は、いくつもの報告書の中に入っています。安心社会実現会議の中にも入っておりますし、自民党の今出し直される財政健全化責任法の中にも国会の中での各党協議というのは書いてありますし、これはどの党も一党ではできないという自覚はみんな持っておられる。ただ、気持ちよく各党協議が始まるかどうかというのは、そのときの国会情勢とか、そういう案とは別の要素で決まってくると私は思っています。
(問)気持ちよく各党協議をするということで、結局、民主党の政権公約が壁になっているような感じも受けているんですけれども、そこら辺の修正というのはどういうふうに、いま一度教えていただけますでしょうか。
(答)私は、民主党のマニフェストについて語る資格はないんで何とも申し上げようがありませんけれども、やはり国民のために案をつくるわけですから、それが国民の批判や期待に十分応えられる案であれば、すべてを超越していくのではないかと思っています。

(以    上)