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国土強靱化:私のひとこと vol.16

「明るく、楽しく、真剣に」が参加を促すキーポイント

株式会社ウェザーニューズ減災プロジェクトリーダー 
宇野沢達也氏

株式会社ウェザーニューズで減災プロジェクトリーダーとして、様々な取り組みを行っている宇野沢達也氏に、これまでの取り組みや今後の展望などについて話を伺いました。

目指すところは自然災害による犠牲者ゼロです。
そのためのアプローチとして、最初にあるのは自らの身を自らが守る自助だと思います。次に隣家族や隣近所、同僚、友人などで助け合うなどの共助があり、それらをサポートするために公助があるという考え方で減災・防災に関する取り組みを行っています。
では自ら身を守るためにどうすれば良いのかという点ですが、大切なのは「今何が起きているのか、何が起きようとしているのか。」を知ることだと思います。そして知るために必要なことは情報の共有ではないでしょうか。情報を自らの身を守るために受信し、また誰かのために発信することによりネットやメディアで流通します。そして流通したものがいくつかのカテゴリーに分類され共有されればたくさんのことをそこから読み取ることができ、被害にあわないための最適解を見つけることができるようになるはずです。上意下達型の防災情報の伝達ではなく、情報共有の場に参加しそれが共有されることがこれからの減災・防災情報のあり方とだと思い、様々な取り組みを行っています。

天気や季節のリポートから見えたもの

ウェザーニューズでは、ウェザーリポートという情報発信・共有の場があります。
普段から、空の様子など天気についての情報や、桜や紅葉など季節の情報を送ってもらっています。
ウェザーリポートは、カメラ付き携帯電話がではじめたときに、桜の写真(情報)を送ってくださいと頼んだらたくさん送られて来た、ということがきっかけで始まったものです。
スタートして10年が経ちましたが、運営する中で様々な発見がありました。その中で減災・防災に役立つことも見え始めてきました。

日常は空の様子や体感などのリポートを送ってくれている人が。大雨が降りだすと雨の降りかたに加えて、道路冠水や河川の様子など災害に関するリポートも送ってくれるようになりました。それを位置情報と合わせることによって、どのエリアで何が起きているのかが見えてきたのです。 東日本大震災の時は4日間で約60,000通のリポートが届きエリアごとの被害特性を読み取ることができました。これを「東日本大震災 減災リポートマップ」として公開したのですが、リポートはローカル情報の集合体であるので、マスメディアに報道されないエリアの状況も把握することができました。

・ 東日本大震災減災リポートマップ:http://weathernews.jp/tohoku_quake2011/map/

「明るく、楽しく、真剣に」がポイント

ウェザーリポートが減災・防災に役立つ情報共有のためのコンテンツということは見えたわけですが、ただ「災害」という言葉が前面に出るとそういう場には参加しにくいという人が多いかと思います。多くの人に参加してもらうにはしかけが必要です。そこで、「明るく楽しく真剣に」をコンセプトにコンテンツやコミュニティのネーミングにもこだわったりしています。
たとえば「ゲリラ雷雨防衛隊」というネットコミュニティがあります。防衛隊というネーミングがゲームのようでおもしろそうだ、ということで多くの人の参加があります。きっかけは、2008年の下水道事故などのゲリラ雷雨による被害を未然に防ぐにはどうすれば良いか、予測困難とされているゲリラ雷雨をなんとか予測できないかということでスタートしたものです。具体的には雲の写真を送ってもらいます。1枚ではわからないが、たくさんもらえれば、集合値によって位置がわかり、成長度合いがわかる。画像解析の技術なども使い、他の解析予測技術も加え、ゲリラ雷雨が予測されるエリアにアラームを送っています。隅田川の花火大会が中止になった年がありましたが、この時もゲリラ雷雨発生45分前に花火大会開催エリアにアラームを発信できました。


・ゲリラ雷雨防衛隊 : http://weathernews.jp/s/guerrilla/
・ゲリラ雷雨Ch. : http://weathernews.jp/guerrilla/#//c=0

今の仕事をする前は地方自治体の防災担当職員でした。転職後も減災・防災に対しては「真剣に、真剣に、真剣に」という考え方で多くの人にアプローチしましたが、なかなか浸透しませんでした。そこで頭を切り替えて、まずは明るく、楽しくやってみようじゃないか、そうすればこれまで敬遠していた人たちも参加してくれるのではないか、その中で真剣にやる時もあるという形のほうが人の心に響くのではないかと。流れを変えていこうとしたら、自分が変わらないといけないと思います。
毎月16日の16時16分、ソライロという空の写真を皆から送ってもらうイベントをやっています。たまたま2011年3月16日は、東日本大震災直後でしたがソライロを実施しました。各所から不謹慎という意見もありましたが、実施したところ避難所から、「つながっていることがうれしい」という返事がありました。現地で一番困っている人から「やってくれてありがとう」と言われたとき、やはり「明るく、楽しく、真剣に」は間違っていなかったと確信しました。

普段のつながりが災害時に役立つ

普段のつながりを続けていくと信頼関係ができてきます。ウェザーリポートも日々の予報に活かされているということもあり、リポートを送る事が誰かの役にたっているという意識につながります、お互い日々つながっていることにより時間をかけて信頼関係を築いてきました。この信頼関係がいざというときに抵抗なく普段の延長線上で情報のやり取りや共有を可能にしています。
写真にコメントからスタートしたウェザーリポートですが、通信デバイスの発達によって様々な形での参加が今は可能になっています。たとえばGoogle Hangoutを使ってウェザーリポーターに直接夕陽の様子を天気専門番組SOLiVE24の中で生中継したりしています。 この流れで4月14日の熊本地震発生時には発生直後の現地の様子を伝えてもらえました。
このことは普段のつながりが災害時に役に立つということを端的に表していると思います。

減災プロジェクト

2011年2月2日 千葉市と共に「ちば減災プロジェクト」スタートさせました。ウェザーリポーターと減災情報の共有化を進めてきましたが、このタイミングで「自治体」というプレイヤーが加わる最初のケースとなりました。減災情報を共有する場に自治体が参加することで市民とのコミュニケーションを進めて被害を減らすことを目指して始まったものです。ウェザーリポートや気象情報、自治体からの情報が集約されて「今、何がおきているか」を知ることができ、災害が発生した時はそれが記録される形となっているため、「過去に何が起きたのか」を知ることによりエリアの災害特性を把握し、それに合わせて個々人が備えを実践して被害を減らすというストーリーです。現在は2府4県10市が参加しています。



・ 減災チャンネル:http://weathernews.jp/gensai/

これからの話し

ここまでウェザーリポートを中心に減災情報の共有についてお話ししてきました。最後にこれからについて少し引いた目で話しを進めたいと思います。
今はSNSによって誰もが情報発信者になれる時代になりました。また、通信技術の発達により動画での情報共有が可能となっています。よりリアルに今の状況を伝えること、知ることができるようになっています。また様々な防災情報がネット上に公開されるようになってきました。別の見方をすれば常に流れ続ける情報があふれかえっているとも言えます。
その情報を処理しどういう判断をするのか。これからはそのようなスキルを個々人が身につけるか、情報の交通整理をする役割を担う仕組み、それが人なのか仕組みなのかはわかりませんが必要となってくると思います。実際にそのような取り組みをすでに実践されている個人や団体もあります。これからはそれぞれの枠を超えた連携が必要となってくるはずであり、それを具体的に進めるタイミングにきているのではないでしょうか。
また私自身もその役割を担う一人だと思っています。

宇野沢達也氏 プロフィール
株式会社ウェザーニューズ 減災プロジェクトリーダー 気象予報士
千葉県旭市職員として防災行政無線整備や地域防災計画策定に従事
1993年1月株式会社ウェザーニューズに入社
「明るく、楽しく、真剣に」をコンセプトに参加と共有による新しい防災・減災の仕組み作りを進めている。
また、天気専門番組SOLiVE24(ソライブ24)では防災・減災専門解説を行っている。
HP http://weathernews.jp
twitter https://twitter.com/wni_jp
Facebook https://www.facebook.com/weathernews.inc/

♯情報伝達

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