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国土強靱化:私のひとこと vol.13

ガレキの中から使えそうな部材を探し出し、自分の家をつくる。
格好いいじゃないですか。

中宏文建築設計事務所代表 中宏文氏

 自分でスモールハウスが建てられれば、災害時にも快適に過ごせる家を確保できるのではないかとの問題意識から、そのための知識・技術を学ぶ「いえづくり教習所」を開校した中宏文氏(中宏文建築設計事務所代表)に話を伺いました。

 僕は建築士として家づくりに携わってきました。家は高い買い物なのに、大地震が起きると壊れたり、インフラが機能しなくなったりしてすぐに使い物にならなくなるとても弱いものだなあと以前から感じていて、災害に左右されない強い家づくりを意識して取り組んできました。また、東日本大震災で、避難所でひしめき合って辛そうにしている被災者の方々をテレビで拝見し、自分の家族にはそのような想いをさせたくないとの想いから、ソーラーパネルや貯水槽などを利用した、災害が起きても2週間ぐらいは暮らしていけるような家を造りたいと考えていました。さらに、アメリカで流行り始めたトレーラーの台車の上に家を建てるタイニーハウスのワークショップに平成26年に参加したところ、家をセルフビルドしたい方や既にしている方が全国に結構いることを知りました。

 そこで考えたのが、スモールハウスぐらいであれば、プロでなくてもちゃんとした建築知識と大工技術を学べば、法的にも問題のない家がつくれるはずで、その家ではインフラに左右されないようにソーラーパネルや貯水槽なども利用する。すなわち、自分でつくることができるオフグリッド・ハウス。例えば、二拠点居住のように普段の週末をその家で過ごしていれば、仮に大地震が起きても、その家でいつもの週末ライフと同じ生活ができます。こうした家づくりを広めたいというのが、「いえづくり教習所」を始めた一つのきっかけです。

 僕は、建築士としての家の設計に加え、過去に職業訓練所で大工技術を学び、大工技能士2級の資格を持っています。ある程度の知識と技術を身に付ければ誰にでも小さな家づくりができることを身を持って経験しているのです。そして約5年間、職業訓練所で講師もしたので、ひと月ぐらいあれば家づくりを学ぶカリキュラムを組むことができる見込みはありました。

 一方、本当に参加申込があるのか、すごく不安でしたね。でも、「いえづくり教習所」の告知(その時には内容の詳細は示していない!)段階から問い合わせがあるなど、とても反響が大きかったです。もちろん、若い人は楽しくないと参加しない傾向があるので、参加者を男女同数にすることを明記したり、イメージ動画を作ったりするなどの工夫をしました。それらに加えて、プロブロガーのイケダハヤトさんが共感してくれ発信していただけたことも大きかったですね。

 大人になって運転免許を取って車に乗るように、みんなが家づくりを普通にできるようになれば

 初めての「いえづくり教習所」には、17名の方が参加しました。8月の1か月間で、建築知識を学び、小さな家をみんなで建てました。完成には至りませんでしたが、かなりのところまで出来上がりました。現在、4名が高知県に移住し、そのうち2名が大工見習いとして住宅の耐震改修に携わっています。また、徳島で空き家を購入して自分で改修している人もいます。その他にも自分で改修したりする方もいらっしゃいます。

 各自治体で移住者用の住宅を用意したりしますが、どこにでもありそうな家ですよね。自分でDIYすることとセットにすれば、取得時の費用もそれほどかかりません。それに加えて、デザイン性を高め、家庭菜園などのライフスタイルとセットにすれば、若い人たちの目に留まり、移住する人が増えると思います。そもそも、若い人たちはお金に余裕がない方が多いですし、35年ローンとかを否定する人も出始めていますよね。小さな家で賢く暮らすことがいいと。これに大地震の時にも役に立つことを知れば、より興味を持っていただけるのではないでしょうか。

 また、家づくりができたり、のこぎりやインパクトドライバーなどが使えたりすると、大災害の時にもガレキの中から使えそうな部材を探し出し、自分の家をつくることもできますし、格好いいじゃないですか。そういう人が何人かいたら、その人たち同士で助け合って家をつくる。まさに、自助と共助ができる人が増えることになります。そして、防災倉庫にのこぎりなどの工具を並べておけば、みんなでつくることができますよね。

 このように、大人になって運転免許を取って車に乗るように、みんなが家づくりを普通にできるようになればとの想いを込めて、「教習所」と名付けました。

 いざという時にできることがあるということは、自分自身の自信にもつながる

 移住した人もいる「いえづくり教習所」の評判を聞いて、高知県内の地域おこし協力隊からうちのまちでやって欲しいという話が来ています。よくお聞きすると、一般のお客さんが住む家をつくって欲しいというリクエストだったのです。残念ながら、教習所の実習としてお客さんの家をつくることは困難です。お客さんのリクエストや想い入れもありますし、様々な設備も付けなければいけません。教習所の実習としては、やはり練習のためにつくるような家、仮設のような家じゃないと。可能性として考えられるのは、お客さんが責任を持って自ら家を建て、そこにいえづくり教習所の卒業生がボランティアとして手伝いに行く。また、自分で建てる時に他の卒業生などに手伝ってもらう。いわゆるコミュニティ・ビルドと呼ばれるような流れが全国いろんな所で出てくると面白いかなあと思いますね。また、そういうニーズに対応できるような教習所の講習内容も新たに考えていきたいと思っています。

 家づくりは難しいイメージがありますが、具体的な作業に分解していくと、実は自分でできることの積み重ねです。その家づくりの知識や技術は、災害時にも役立ちます。のこぎりが使えることで、人の命を救える状況に遭遇する可能性も無いわけではないです。いざという時にできることがあるということは、自分自身の自信にもつながります。ぜひ読者の皆さまにも、家づくりや大工技術をマスターして欲しいと思いますね。

中宏文氏 プロフィール
中宏文建築設計事務所代表
組織設計事務所、建設会社設計部を経て、平成20年に中宏文建築設計事務所を開業。
平成27年夏にいえづくり教習所を開校。
いえづくり教習所HP http://iedukurischool.strikingly.com/
同 Facebook https://www.facebook.com/iedukuri.trainingschool/
同 所長のブログ http://blog.livedoor.jp/iedukurischool-2015/

#家づくり #コミュニティ・ビルド

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