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国土空間データ基盤の整備及びGISの普及の促進に関する
長期計画



[平成8年12月18日地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議決定]




− 目 次 −

はじめに

I 基盤形成期

1.国土空間データ基盤及びメタデータの標準化
(1)国土空間データ基盤の標準化の内容
(2)メタデータの標準化の内容
(3)標準化の検討方法
(4)標準の作成
(5)標準の周知徹底
2.デジタル画像の整備
3.先行的なクリアリングハウスの構築
4.国土空間データ基盤の整備についての役割分担の明確化
5.国土空間データ基盤の整備計画の策定
6.国土空間データ基盤の整備の推進及び相互利用の促進のための体制整備
7.GISの推進のための環境整備

II 普及期

1.国土空間データ基盤の整備
2.国土空間データ基盤の普及
3.国土空間データ基盤の更新
4.技術支援の実施

III 長期計画のフォローアップ

IV 長期計画のレビュー



はじめに

 地理情報システム(GIS)及び国土空間データ基盤の整備・普及に関しては、平成7年9月に設置された課長級の地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議において、各省庁における取り組み、諸外国における取り組み、今後の課題と方向等について検討を行い、その結果を本年6月「中間とりまとめ」として公表し、今後の政府の取り組みに係る基本的方向を示した。
 その概要は、次のとおりである。

(1) 高度情報通信社会が進展する中で、GISは、今後、各種行政計画の策定をはじめとする社会経済活動の広範な分野において諸活動の効率化、迅速化、確実化、機能の充実、コ ストの削減等多様な効果が得られるものとして、極めて大きな役割をはたすものと期待されている。

(2) GISの整備に必要な我が国土に係る基盤的なデータである国土空間データ基盤(GISの利用を支える地図データ及び位置参照情報(以下、「空間データ基盤」という。)、その上に掲載されるGISに広範に利用される我が国土に係る統計情報等の表形式の空間データ(以下、「基本空間データ」という。)等をいう。)は、道路や上下水道等のハードの社会基盤に匹敵する利益をもたらすものであり、社会基盤として位置づけ、行政が中心となってその整備と相互利用の環境づくりを先導することが適当である。

(3) データの重複投資を避け、相互利用を促進するため、国土空間データ基盤及びそのメタデータ(データの種類、特性、品質、入手方法などを記述した情報)の標準化を行うとともに、クリアリングハウス(情報通信網で利用できる、データの種類、特性、品質、入手方法等に関する情報検索システム)の構築、国と地方公共団体との連携強化をはじめとするGISの推進体制の充実・強化、GISの普及啓発や関連諸制度の見直し等の環境整備等を行う必要がある。

(4) 国は、社会基盤としての国土空間データ基盤の先導的整備を図るとともに、地方公共団体及び民間と連携してGISの整備・普及を進めるに当たっては、人的、技術的支援等所要の支援措置を講じることを検討する。

(5) 関係省庁連絡会議の局長級への格上げを行うとともに、各検討課題について、現在ISO等の国際機関や国内の関係機関において行われている標準化への検討の結果等も活用しつつ、専門的な検討を行うための作業部会を設置する等の体制強化を早急に行う等関係省庁のGISの整備への取り組みの充実強化を図る必要がある。また、国と地方公共団体、民間推進団体等との連携を強化する。

(6) GISの整備・普及を図るため、関係省庁連絡会議において長期計画を策定し、次の段階を踏んで実施する。

 平成8年度から概ね3年間をGIS推進の基盤形成期とし、クリアリングハウスの構築、メタデータの標準化、国土空間データ基盤の標準化を行い、また、データ整備主体の相互の調整を図る組織を設ける。
 その後の概ね3年間を普及期とし、国と地方公共団体が協力して、21世紀当初までにGISの全国的普及を進め、国土空間データ基盤のひととおりの整備を完了する。
 さらに、普及期終了の段階で、中間レビューを行い、その後の推進方針を検討する。
 これを受けて、本年9月、関係省庁連絡会議が局長級に格上げされるとともに、専門的な検討を行うための作業部会が設置されるなど、政府におけるGISの推進体制が強化された。
 近い将来において、新しい技術の開発や規制緩和措置等と相まって、情報通信インフラ等の整備が進展し、行政のみならず、民間においてもGISの導入が進み、新しい産業が創出されるなど、GISが真に豊かな国民生活を実現するために大いに活用される時代が来ることが予想される。
 このような中で、欧米諸国だけでなく、アジア諸国においても、GISへの積極的取り組みが行われているところであり、我が国としては、行政・民間の様々な分野において、これらの諸外国に遅れをとらないよう、GISの整備に積極的に取り組んでいく必要がある。
 このようなことから、今後、GIS及び国土空間データ基盤の整備・普及について、国、地方公共団体及び民間の役割分担を明確化するとともに、相互に調整しつつ連携を強化し、21世紀に向けて、その全国的展開を図っていく体制を整備する一方、今後の情報通信等に関する技術開発の動向や社会条件の変化を十分見極めつつ、これに柔軟に対応し, 必要に応じて関連諸制度を見直すこと等により、我が国のGISの強力かつ着実な発展を図ることが求められている。
 本計画は、以上のような基本的な認識に基づいて、概ね21世紀当初までに実施すべき事項について示したものである。


I 基盤形成期

 今後、平成8年度から概ね3年間の基盤形成期においては、国土空間データ基盤及びメタデータの標準化を行う一方、国、地方公共団体、民間の役割分担の明確化を図り、国土空間データ基盤の着実な整備を進めつつ相互利用の促進を図るための基礎を築く。

1.国土空間データ基盤及びメタデータの標準化
 関係省庁連絡会議において、各作業部会の議論を踏まえて、国土空間データ基盤の標準化を、概ね平成10年度までに実施する。また、国土空間データ基盤のメタデータの標準化を、先行して進める。

(1) 国土空間データ基盤の標準化の内容
ア GISの利用者の立場から国土空間データ基盤に求められる条件を検討するため、今後のGISの適用分野や可能性を予測し、誰がどのようにGISを利用するかというGISの利用者やGISの使われ方の将来像を、広範な分野について展望する。

イ アの検討等を踏まえ、GISに使用される様々なデータを明らかにし、さらに、多様なGISの利用主体のニーズを満たす社会基盤である国土空間データ基盤として整備すべきデータの項目や内容について検討する。
 また、国土空間データ基盤の標準化について、標準を定める項目、標準の形態等、その概念の明確化を行う。

ウ 空間データ基盤の標準化について、概ね次の事項を検討する。
 すなわち、どのようなデータ項目が標準的に必要とされるかについて検討し、データ項目の標準を定める。
 また、データの精度、位置参照等について、地域の特性、データの整備効率等を勘案しつつ、国土空間データ基盤として必要な水準や仕様を検討し、空間データ基盤の標準規格を定める。

エ 基本空間データの標準化について、概ね次の事項を検討する。
 すなわち、どのようなデータ項目が標準的に必要とされるについて検討し、データ項目の標準を定める。
 また、位置参照等について、地域の特性、データの整備効率等を勘案しつつ、国土空間データ基盤として必要な水準や仕様を検討し、標準規格を定める。

(2) メタデータの標準化の内容
 国土空間データ基盤のメタデータについて、現在、ISOをはじめとした国際機関や国内の関係機関において行われている検討の状況も勘案しながら、その標準化(メタデータとしてのデータ項目の範囲とその書式の決定)を行う。

(3) 標準化の検討方法
ア 標準化の検討は、関係省庁連絡会議を中心に、関係省庁連絡会議の作業部会、ワーキンググループを十分に活用して行う。また、必要に応じて、関係省庁においても調査、検討を行う。

イ 検討にあたっては、地方公共団体がGISの利活用及びデータ整備において重要な役割を担うことから、地方公共団体におけるGISの利活用やデータ整備の現況について調査を行うほか、地方公共団体における将来のデータ整備の方法やGISの利活用形態の展望等を踏まえ、地方公共団体関係者との十分な意見調整を行う。

ウ 検討にあたっては、民間企業、関係団体、学識経験者等広範な関係者からのヒアリング調査等により十分に意見を聴取するとともに、GISの利活用やデータの整備に関する技術的課題及び将来の技術開発の見通し等の把握に努める。
 また、ISO等の関連機関における検討状況を十分に考慮し、他分野及び国際的な関連分野との整合に配慮する。

(4) 標準の作成
 検討の結果得られた標準については、関係省庁連絡会議の決定(承認)を行うとともに、どのような位置づけを行うかを検討する。

(5) 標準の周知徹底
ア 決定した標準に基づき国土空間データ基盤が整備されるよう、決定された標準について、地方公共団体、民間への周知徹底を図る。

イ データを整備し、また、利用する地方公共団体や民間が、円滑にデータの整備、利用が行えるよう、国及び関係団体が協力して、地方公共団体、民間への技術支援を実施する体制を整える。

2.デジタル画像の整備
 国土空間データ基盤の構成要素の一つであるデジタル画像について、GISにおける利活用方策及びその整備のあり方を検討する。

3.先行的なクリアリングハウスの構築
 データ整備の重複投資の回避及びデータの相互利用の促進のため、既に提供可能なデータを所有している先行省庁等においては、インターネット等の情報通信網から国土空間データ基盤のメタデータを検索し、アクセスできるクリアリングハウスのパイロットシステムを構築し、運用を行う。
 既に提供可能なデータを所有している先行省庁等においては、当該データに係るメタデータの整備を行う。
 また、パイロットシステムの運用を行う過程でユーザー等の意見を把握し、システムの改良を行う。

4.国土空間データ基盤の整備についての役割分担の明確化
 データの着実で迅速かつ効率的な整備・更新が実施されるよう、国土空間データ基盤の整備・更新についての国、地方公共団体、民間の役割分担について検討し、基盤形成期の終了期までに明確化する。

5.国土空間データ基盤の整備計画の策定
 データ整備が本格化する普及期(基盤形成期終了後概ね3年間)において、着実かつ効率的に国土空間データ基盤の整備・更新が図られるよう、同時期終了時までに国土空間データ基盤のひととおりの整備がなされることを目標として、国土空間データ基盤の具体的な整備計画を策定する。

6.国土空間データ基盤の整備の推進及び相互利用の促進のための体制整備
 各地方公共団体において着実に国土空間データ基盤の整備・更新がなされるよう、国土空間データ基盤の整備について、各地方公共団体に担当部局の明確化を要請するとともに、国、地方公共団体、民間のデータ整備主体の相互の調整を図り、整備を推進するための組織を設ける等の協力体制を整備する。また、国土空間データ基盤の相互利用を促進するための体制を整備する。

7.GISの推進のための環境整備
ア 国土空間データ基盤を効率的に更新するため、関連業務の電子化等によるデータの取得やデータの連携による効率的な既存データ更新のシステム及びこのようなシステムを実現するための新たな制度について検討する。

イ 国土空間データ基盤の普及・相互利用の推進のため、データの取得、収集、整備、提供等について、個人情報の保護に配慮し、個人、法人等に係る秘密保護を図りつつ、関連諸制度の見直しを行う。また、国土空間データ基盤の信頼性や品質の確保のための技術基準等の作成、GISに関連する技術開発、人材育成等の環境整備に着手する。

ウ 地方公共団体等へのGISの普及を促進するため、GISの整備効果のPRをすすめる。また、国土空間データ基盤の整備を促進するため、データ整備に関する地方公共団体等のインセンティブについて検討する。


II 普及期

 基盤形成期終了後概ね3年間の普及期においては、基盤形成期に作成された国土空間データ基盤の標準や、データ整備の役割分担に準じて、国土空間データ基盤の整備・更新を着実に行い、21世紀当初を目標に、データ整備を推進する。

1.国土空間データ基盤の整備
 米国においては、2000年を目標にGISの整備を進めていることを勘案し、21世紀当初までにGISの全国的普及をすすめ、国土空間データ基盤のひととおりの整備を行うことを目標として、国、地方公共団体、民間がそれぞれの役割分担に応じ、基盤形成期に作成した標準に準じて、積極的にデータの整備を行う。
 各データ整備主体は、データの整備にあたって、メタデータを整備するとともに、相互に適切な調整や協力を図る。

2.国土空間データ基盤の普及
ア 整備された国土空間データ基盤が十分に活用され、各種のGISが効率的に構築、利用されるようにするため、官民が協力して、GIS及び国土空間データ基盤の利用の普及・啓発を行う。

イ 国土空間データ基盤となる地図データ、統計データ、台帳データ等の整備主体は、個人、法人等に係る秘密保護を図りつつ、積極的なデータの公開と提供を行い、国土空間データ基盤の整備と相互利用の促進に努める。また、データを利用者に迅速、効率的に提供するため、オンラインまたはオフラインによる円滑なデータ提供手段を整備する。

ウ 国土空間データ基盤の所在や内容の検索を容易にし、国土空間データ基盤の利用を普及するため、クリアリングハウスの構築をすすめる。この際、先行省庁等で構築したパイロットシステムを参考にするとともに、クリアリングハウス相互の連携を図る。
 また、GISを整備する者は、クリアリングハウスを活用し、データの有効利用に努める。

エ 国土空間データ基盤の取得や整備、GISの構築やGISの利用等に必要な、機器、ソフトウェア等に関する技術開発を促進する。

オ 国土空間データ基盤の整備及びGISの利用が進展する過程においても、地方公共団体、民間、学識経験者等のGISに関係する者の意見を随時聴取する。

3.国土空間データ基盤の更新
 基盤形成期に検討された国土空間データ基盤が効率的に更新されるためのシステムや制度について、その確立を図るとともに、これらのシステムや制度等を活用して、国土空間データ基盤の更新を進める。

4.技術支援の実施
 国土空間データ基盤等の整備、普及、更新を推進するため、国及び関係団体が協力して、地方公共団体、民間等への技術支援を実施する。


III 長期計画のフォローアップ

 本計画について逐次フォローアップを行うとともに、GIS及び国土空間データ基盤に関する技術開発や諸制度の変化等に配慮して、必要に応じて、本計画の見直しを行うものとする。


IV 長期計画のレビュー

(1) 普及期終了時に、GIS及び国土空間データ基盤整備を行う過程で明らかになった課題、21世紀当初におけるGIS及び国土空間データ基盤の整備状況及びその整備効果、新技術の動向、社会条件の変化、諸外国の動向等を考慮して本計画のレビューを行う。

(2) レビューの結果を踏まえて、以下の事項について検討を行う。

1 国土空間データ基盤として整備及び更新すべきデータ項目、規格、整備主体及びデータ更新のシステム
2 国土空間データ基盤の整備効果
3 GISの普及に伴う諸制度のあり方
4 その他必要な事項

(3) この検討結果を踏まえ、その後の国土空間データ基盤の整備に関する整備計画を策定する。



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