第3回障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部幹事会 議事次第 令和6年10月21日 15時から16時まで 合同庁舎第8号館8階818会議室 1.開会 2.議事 (1)障害当事者からのヒアリング ・熊谷晋一郎 東京大学先端科学技術研究センター教授 ・佐藤聡 特定非営利活動法人 DPI日本会議事務局長 (2)質疑応答 3.閉会 p1 資料1 障害者に対する差別や偏見のない共生社会の実現に向けた対策推進本部 差別や偏見のない共生社会の条件 日時:2024年10月21日(月曜日) 15時から16時まで 場所:オンライン 熊谷 晋一郎 東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学多様性包摂共創センター副センター長 内閣府障害者政策委員会委員長、日本学術会議会員 p2 講師紹介:熊谷 晋一郎(くまがや しんいちろう) (作業者注・以下図) 熊谷講師が電動車いすに乗っている写真 (作業者注・図終わり) 脳性まひという障害をもっています 電動車いす(Storm 3)に乗っています 幅:63p、高さ:98p、奥行き:110p、重さ:140s 2001年3月 東京大学医学部医学科 卒業 2001年6月 東京大学医学部付属病院小児科研修 2002年6月 千葉西総合病院小児科 2004年8月 埼玉医科大学病院小児心臓科 2009年11月 東京大学先端科学技術研究センター、バリアフリー分野 特任講師 2015年4月 東京大学先端科学技術研究センター、当事者研究分野 准教授 2017年4月 東京大学バリアフリー支援室長 2024年4月 東京大学先端科学技術研究センター、当事者研究分野教授/東京大学多様性包摂共創センター副センター長 [現職] p3 1970年代:健常者に近づかなくては社会で生きていかれない (作業者注・以下図) 熊谷講師の幼少期の写真2枚 (作業者注・図終わり) p4 身体障害者運動によって提唱された「障害の社会モデル」という考え方 (作業者注・以下図) 医学モデル:インペアメント(impairments)→身体障害者 社会モデル:ディスアビリティ(Disabilities)→医学モデル:インペアメント(impairments) 社会モデル:ディスアビリティ(Disabilities)→社会環境(Social Environments) (作業者注・図終わり) p5 神奈川県立津久井やまゆり園入所者殺傷事件 2016年7月26日未明、神奈川県相模原市緑区千木良476番地にある、神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に、元施設職員の男(犯行当時26歳)が侵入し、所持していた刃物で入所者19人を刺殺し、入所者・職員計26人に重軽傷を負わせた大量殺人事件 (作業者注・以下図) 津久井やまゆり園の写真 元施設職員の写真 (作業者注・図終わり) 「障害者はいないほうがいい」 「人間としてではなく、動物として生活を過ごしている」 「車いすに一生縛られている気の毒な利用者も多く存在する」 「障害があって家族や周囲も不幸だと思った。事件を起こしたのは不幸を減らすため。同じように考える人もいるはずだが、自分のようには実行できない」 p6 虐待が起こりやすい施設の条件(Sobsey,1994; Steinberg & Hylton, 1998) ・利用者とサービス提供者との間に、権力とコントロールの不均衡がある ・利用者を人間的に扱わない文化 ・地域との交流の少ない環境 ・虐待の報告とモニタリングが手続き化されていない p7 支援者の差別偏見はどこから来るか 障害者支援施設の職員を対象とした質問紙調査 ・全国の障害者支援施設の職員343名(79拠点の事業所)に対してオンラインで質問紙調査を実施 ・拠点毎で傾向が似通う(独立していない)ため、マルチレベル媒介分析を実施 (作業者注・以下図) 謙虚なリーダーシップ→[.64**]→心理的安全性→[-.14**]→自閉症者への差別・偏見 謙虚なリーダーシップ→[-.10** → -.01]→自閉症者への差別・偏見 (作業者注・図終わり) **p<.01,*p<.05,+p<.10 p8 心理的安全性とは アイデア、質問、懸念、失敗を発言しても、このチームでは罰せられたり辱しめられたりしないだろうという信念 Edmondson, A., and Mortensen, M. (2021-04-19). What Psychological Safety Looks Like in a Hybrid Workplace. Harvard Business Review. 自己イメージ、地位、キャリアを損なうのではないかと恐れることなく、ありのままの自己をオープンにし、自分に正直に行動することができる状態 Kahn, W. A. (1990). Psychological conditions of personal engagement and disengagement at work. Academy of Management Journal, 33, 692-724. p9 謙虚さの三要素:リーダーが率先して自己理解を深める 1 自己を正確に見ようとする((作業者注・強調ここから)当事者研究(作業者注・強調ここまで)) 2 他者の強みや貢献を認める 3 ティーチャビリティ Owens, Johnson, and Mitchel (2013). Expressed Humility in Organizations. Organization Science, 24(5), 1517-1538. p10 支援者の虐待防止当事者研究 新宿区障害者福祉協会 (作業者注・以下図) 支援者の虐待防止当事者研究を行っている写真2枚 (作業者注・図終わり) p11 先行研究で報告されている障害児者の虐待のリスク要因一覧 子ども側の要因 □移動能力 □言語能力 □見えにくい障害 養育者・養育者側の要因 □親密さ □ストレス □喪失と罪 □障害についての知識の不足 環境要因 □社会的排除 □専門的支援への囲い込みと拡大家族の不在 p12 ヒヤリハット事例(1) 聴覚障害 ・(言葉もほとんど発することはできない聴覚障害者への窓口対応) (1)どう感じたか?→ファーストコンタクトをとるまで気付かなかった.心の準備ができていなかった. (2)どう考えたか?→瞬時に「筆談」で対応するしか.コミュニケーションの方法を思い付かなかった. ・聴覚障害者が窓口に来られた際,本人の同意を得た上で手話通訳者を同席させた.本人は手話通訳のみに目を向けてしまい,私とは全く目が合わず,本当に説明の趣旨が通じているか不安だった. ・耳が聞こえない,かつ手話もできない生活保護受給者の方を対応した時,待ち合わせなど困った.家具や必要な物品の購入を手伝った時に「あなたはとても親切だけど,私はあなたが思っているより困ってはいない」と筆談で書かれたとき,ハッとしました.相手の必要なことをみきわめ対応を選択させてあげることが大事だったんだなと思いました. ・窓口でお客様に説明していたら,あまりにも飲み込みが悪い方がいらっしゃったので,ちょっとイラッときたことがあったが,実は耳が遠い(障がい?)をお持ちの方でした. ・窓口に来庁される区民の方で,耳が不自由な方が多い.そのためこちらの伝えようとしたことが,中々伝わらず,お互いに不機嫌になることがある.分かりやすく伝えるため,図や筆談をすることで対応した. 肢体不自由 ・サービス申請時に窓口に来所して欲しいと伝えたところ「自分は下肢不自由(身体障害者)なのに」とお怒りになられてしまった. 重複障害 ・区民ホールで催しした講演会で,車いすを利用しているお客様が多く来場され,会場指定の車いす席がすぐうまってしまい,結果的に客席の一番後ろに入っていただくことになった.しかし,そのお客様は視覚の障害もあり,もっと前の席にして欲しいと申し出があったが,そのホールは階段型のホールで,通路もせまいため,いったんホールの外に出て階段を介助して一番前の方のスペースに移ることを提案したが,大事になるから,もうこのままで良いと言われた. p13 ヒヤリハット事例(2) 精神・知的・発達障害 ・窓口対応の際に何度説明しても理解してもらえず,一方的に話を終えてしまおうとした ・保育施設.発達に遅れがあるのではと考えられる2歳児.スプーンの使い方が充分でなく口もしっかり閉じていないため食べこぼしが多い.保育者は他児と同じようにスプーンを使い食べこぼさず食事ができるようにとこと細かく常に働きかける担当職員がいた. ・知的障害を持つ人との会話が成立しなかった.発音が不明確で何を言っているのかわからなかった.筆談もできないと考えたので,話を聞く姿勢で相手に対して心を開いていることを示すことに努めた. ・知的(軽度)障害をお持ちの方の食事指導.難病があり,塩分制限をする必要のある方.一緒にコンビニへ行き,食べられる食材,1日の塩分量を説明し,紙で絵にかいて説明もしたが,(?判読不能)がむずかしかった. ・窓口でご身分証を提示してもらうのですが,愛の手帳などあることを知らなかったため対応が少し遅れたこと. 視覚障害 ・講演会開催時に資料の点字化を検討したが,できなかった. 同僚との関係 ・なかなか理解してくれない職員に対して,「どうしてできないのか?」と繰り返し伝えていたが,本人の努力とは結びつかず,心理士に相談して,どうしていくことが本人にとって良いのか,対応を考えていくことで,私自身も本人への対応を変えました.他の職員と同じ仕事をしていくことはむづかしいことですが.現在は,その職員にあった仕事ができる様,配慮しています. ・特に実体験として体験したことはありません.ただ,同じ職員(同僚や部下など)でなかなか同じ視点で仕事がしにくい職員がいます.今回の講義はそういった点でも役立ちました. p14 原因分析 職員側の障害についての知識の不足 (作業者注・強調ここから)・精神障害への理解(作業者注・強調ここまで)が足りなかった ・最初から(作業者注・強調ここから)想定していなかった(作業者注・強調ここまで)ことが要因にあげられる.あらゆる可能性を考えて,シュミレーションをしておく必要があった. (作業者注・強調ここから)・知識不足(作業者注・強調ここまで)が挙げられる. ・障害に対する(作業者注・強調ここから)理解の乏しさ(作業者注・強調ここまで)や自分自身の配慮の少なさ. ・どう対応したらよいか,(作業者注・強調ここから)わからない(作業者注・強調ここまで)という不安. ・当時者(ママ)の子を思うがあまり行き過ぎてはいないかとチームからの声があがった.その子の(作業者注・強調ここから)発達段階の理解が不充分(作業者注・強調ここまで)であった事が一つの要因であると職員間で確認する. (作業者注・強調ここから)・初めての経験(作業者注・強調ここまで)だったので対応にこまった. 利用者側の要因 ・もともとしょっぱいもの好き. 環境側の要因 (作業者注・強調ここから)・サポート人員が少ない(作業者注・強調ここまで).労力がかかるため,(作業者注・強調ここから)1人の職員のサポートでは限界あり(作業者注・強調ここまで). (作業者注・強調ここから)・窓口が混雑(作業者注・強調ここまで)していて,一人に時間をとられたくないと思ってしまった ・周囲に(作業者注・強調ここから)補助となる道具が無かった(作業者注・強調ここまで). (作業者注・強調ここから)・点字化技術がない(作業者注・強調ここまで).仕組みもない. ・手話通訳者を本人の隣(私の向かい側)に座らせてしまい,結果本人はずっと横を向いた状態となった. ・エレベーターに乗りこむのに思ったより時間がかかってしまった. 心構え ・職員側も区民側も相手に(作業者注・強調ここから)配慮(作業者注・強調ここまで)する必要がある. (作業者注・強調ここから)・驚かず,一呼吸おいて対応(作業者注・強調ここまで)することが重要 ・普段,慣れているものだと思って,来る時に特に支援しようと思わなかった. ・もしかしたら障がいがあるので伝わらないんじゃないかという可能性を考えながら窓口対応できなかったこと. p15 対応策 知識 ・障害への理解を深め,分かり易い説明を心がける, ・障害の種類がわかっていれば,行動が予測できるので,知識として持っていれば,ジロジロ見る必要もなくなる.どういった身分証があるのか知っておく必要がある. チームワーク ・子の発達段階を今一度チームで考え,どんな支援が必要かを決めて日々の保育を行うこととする.P.D.C.A.サイクルをくり返す. ・一人で行わず複数の目で見る事で,主観の入らない子の姿をとらえていくことを行っていく. ・サポートする人員をふやす等(サポートする人たちでチームをつくる等) ・窓口混雑時には他の職員が窓口の補助に入るようにし,一人一人に適切な応対が出来る体制にする 環境改善 ・補助道具を備えておく. ・(環境改善)ナトリウム量だけでなく,塩分量を広く表示してあるとよい. ・塩分制限の食品:インスタント食品を市場にふやしてほしい. ・事前に連絡をもらい,入場の時間を調整して早めに入っていただくなど,改善できたと思います. ・手話通訳者は窓口の内側に入ってもらい,本人から見て,窓口担当者と通訳者は同じ目線になるようにする. ・相手に分かり易く伝える事ができるように,資料の作成を工夫する. 心構え ・相手に理解されないことも想定に入れておく.障害をもつ方から見える社会というものに関して,もっと想いをよせたいと思います. ・本日の話のように,不安があったら,実際に声をかけることで,課題を見つけられる. ・ささいなことでも,障害になるものと思い,サポートする気持ちを持つ. p16 先行研究で報告されている障害児者の虐待のリスク要因一覧 子ども側の要因 □移動能力 □言語能力 □見えにくい障害 養育者・養育者側の要因 (作業者注・強調ここから)□親密さ(作業者注・強調ここまで) □ストレス (作業者注・強調ここから)□喪失と罪(作業者注・強調ここまで) □障害についての知識の不足 環境要因 □社会的排除 □専門的支援への囲い込みと拡大家族の不在 p17 母よ!殺すな (作業者注・以下図) 書籍「母よ!殺すな」の表紙 (作業者注・図終わり) ・1970年、2人の重度の脳性マヒの子どもを抱えた母親が、2歳の下の子を殺害。 ・「この子はなおらない。こんな姿で生きているよりも死んだ方が幸せなのだ」 ・「なおるかなおらないか、働けるか否かによって決めようとする、この人間に対する価値観が問題なのである。この働かざる者人に非ずという価値観によって、障害者は本来あってはならない存在とされ、日夜抑圧され続けている」(横塚晃一) ・「我々が社会の不当な差別と闘う場合,我々の内部にある赤ん坊性、つまり親のいうままに従うこと、言い換えれば親に代表される常識化した差別意識に対して無批判に従属してしまうことが問題なのである」 ・「泣きながらでも親不孝を詫びながらでも、親の偏愛をけっ飛ばさねばならないのが我々の宿命である。」([2007:27]) p18 障害児を殺した母親への減刑反対運動 「私たちは加害者である母親を責めることよりも、むしろ加害者をそこまで追い込んで行った人々の意識と、それによって生み出された状況をこそ問題にしているのだ。」 「勤君は、母親によって殺されたのではない。地域の人々によって、養護学校によって、路線バスの労働者によって、あらゆる分野のマスコミによって、権力によって殺されていったのである。」 p19 Jim Sinclair.“Don’t Mourn For Us.” Autism Network International Newsletter, Our Voice, Volume 1, Number 3, 1993. “This is important, so take a moment to consider it: Autism is a way of being. It is not possible to separate the person from the autism.” 「これは重要なことなので、少し時間をとって考えてみてください:自閉症は存在の仕方です。自閉症からその人を切り離すことはできないのです。」 “Some amount of grief is natural as parents adjust to the fact that an even and a relationship they’ve been looking forward to isn’t going to materialize. But this grief over a fantasized normal child needs to be separated from the parents’ perceptions of the child they do have: the autistic child who needs the support of adult caretakers and who can form very meaningful relationships with those caretakers if given the opportunity.” 「楽しみにしていた対等な人間関係が実現しないという事実に親が適応するにつれ、ある程度の悲しみが生じるのは自然なことです。しかし、空想上の正常な子どもに対するこの悲しみを、両親が実際に授かった子どもを直視することから切り離す必要があります。つまり、大人の世話人の支援を必要とし、機会が与えられればその世話人と非常に有意義な関係を築くことができる自閉症児を直視することからです。」 “You didn’t lose a child to autism. You lost a child because the child you waited for never came into existence.” 「あなたは自閉症で子どもを失ったのではありません。あなたが子どもを失ったのは、あなたが待ち望んでいた子どもが生まれなかったからです。」 (作業者注・以下図) ジム・シンクレア氏の写真 (作業者注・図終わり) p20 スティグマとは (作業者注・以下図) 沢山の人 (作業者注・図終わり) p21 スティグマとは (作業者注・以下図) ラベリング:沢山の人がいくつかの丸に囲まれている 隔離:丸で囲まれた人たちが仕切りよって分けられている (作業者注・図終わり) p22 スティグマとは (作業者注・以下図) ステレオタイプ:色ごとに丸で囲われて仕切りで区切られている人たち (作業者注・図終わり) p23 スティグマとは (作業者注・以下図) 偏見:色ごとに丸で囲われて仕切りで区切られている人たちの、いくつかのグループに×がついている (作業者注・図終わり) p24 スティグマとは (作業者注・以下図) 差別(同化や排除を強いる言動):色ごとに丸で囲われて仕切りで区切られている人たちの1つのグループからいくつか矢印が出ており、そのグループに×がついている (作業者注・図終わり) p25 スティグマが雇用や健康に与える影響 (作業者注・以下図) スティグマの影響を扱った総説論文等 (作業者注・図終わり) Hatzenbuehler, M.L., Phelan, J.C., and Link, B.G. (2013). Stigma as a fundamental cause of population health inequalities. American Journal of Public Health, 103, 813-821. p26 インクルーシブな教育や共生社会の効果 Allport(1954)の集団間接触理論 異なるグループが以下の4つの条件を満たした接触する機会を持つことで、互いの偏見が減少する Allport GW. The Nature of Prejudice. Doubleday; Garden City, NY: 1954. 1 平等な地位、2 集団間の協力、3 共通の目標、4 制度的・組織的なオーソライズ (作業者注・以下図) Allport(1954)の集団間接触理論のグラフや表 (作業者注・図終わり) 4条件を満たす接触はスティグマを減らすのにとりわけ効果的であるが、こうした条件を満たさない接触でもスティグマを減らす。 Pettigrew, T. F., & Tropp, L. R. (2006). A meta- analytic test of intergroup contact theory. Journal of Personality and Social Psychology, 90 (5), 751. コンピューターを用いた反応時間課題では、接触によって、無意識のバイアスが減少する。 Aberson, C. L., & Haag, S. C. (2007). Contact, perspective taking, and anxiety as predictors of stereotype endorsement, explicit attitudes, and implicit attitudes. Group Processes and Intergroup Relations, 10, 179-201. ポジティブな接触は、外集団のメンバーに対する生理学的脅威反応を減少させる。 Blascovich, J., Mendes, W. B., Hunter, S. B., Lickel, B., & Kowai-Bell, N. (2001). Perceiver threat in social interactions with stigmatized others. Journal of Personality and Social Psychology, 80, 253-267. 接触が脳内での顔の情報処理方法の違いの減少をもたらし、類似性の認識を高める。 Walker, P. M., Silvert, L., Hewstone, M., & Nobre, A. C. (2008). Social contact and other-race face processing in the human brain. Social cognitive and affective neuroscience, 3(1), 16-25. p27 優しい優生思想 ・旧優生思想 集団(人種、民族、国民)の遺伝的質の改善(優良形質の拡張/劣悪形質の淘汰)を目指して、優良な子孫の出生促進/劣悪な子孫の出生防止のため、生殖行為や婚姻をコントロール ・新優生思想 (作業者注・強調ここから)新しい医療技術(作業者注・強調ここまで)によって洗練されつつ(作業者注・強調ここから)「個人の自発的選択」という装い(作業者注・強調ここまで)で登場してきた優生学 p28 新しい優生思想への抵抗 痛いと叫ぶ&(作業者注・強調ここから)所属感を高める(作業者注・強調ここまで)&(作業者注・強調ここから)依存先を増やす(作業者注・強調ここまで)ことで負担感を軽くする (作業者注・以下図) 自殺潜在能力(疼痛に慣れている)の円、所属感の減弱(居場所がない)の円、負担感の知覚(人の迷惑になっている)の円 所属感の減弱(居場所がない)の円、負担感の知覚(人の迷惑になっている)の円が重なっている所:自殺願望 3つの円が重なっている所:致死的もしくは重篤な自殺企図 (作業者注・図終わり) 自殺の対人関係理論 (joiner TE et al. The interpersonal theory of suicide:guidance for working with suicidal clients,2009) 出典URL:https://note.com/unkokangokyoin/n/nf8294a50ffd2 (作業者注・以下図) 書籍「死の自己決定権のゆくえ」の表紙 客の回転率を上げるために堅く作られたファーストフード店の椅子の写真 (作業者注・図終わり) p29 組織への所属感を高める6つのTIPS 帰属感を作り出すことはそれほど難しいことではなく、組織をあげた取り組みや方針の変更を必要とするわけではない。数分の時間とある程度の「弱さ(vulnerability)」があれば、誰かの人生に大きな変化をもたらし、会社の文化にプラスの影響を与え、多様な人々の編成を変えていくことができる ――Pat Wadors 1.紹介する:メンバーを紹介する際に、与えられた役割や責任を超えて、その人の全体に理解を示し、その人ならではのちょっとした話題を加える。また、「こちらはサラ――私たちの研究チームの一員です。」など、帰属意識を表す言葉を使うとチームの一員であることを実感できる。 2.質問する:「気分はどうですか? 今日の調子はどうですか?」など、シンプルで誠実な質問から始め、それから相手の言葉に耳を傾ける。 3.ミーティングで意見を促す:ミーティングでのインクルーシブネスを高めるためは、次の3つの方法を使う。1 相手をミーティングに招待する。2 その人に意見を求め、その人が本当に聞いてもらっていると感じられるような質問を付け加える。3 その人が話しているときは、最後まで聞き、途中で発言を遮らない。 4.任せる:マネージャーがチームの誰かにアジェンダを任せると、本当の責任感、信頼、影響をもつ機会を与えられる。 5.気にかける:ミーティングではパソコンやスマホなどのデバイスをしまってしまおう。同僚との会話にしっかりと集中し、相手に敬意を払おう。 6.物語を共有する:物語を共有することは帰属の感覚を作り出すうえで重要である。物語ること(storytelling)には2つの意味がある。まず、あなたが話し手である場合、聞き手のキャリアの来歴を十分に気にかけ、自分自身の弱さを開示して、失敗も成功も共有することで、私たちはお互いから学ぶことができる。次にあなたが聞き手である場合、私たちは自分自身を他の誰かの立場から見ることができるようになる。また、とくに語り手があなたに似ているとき、相手に対し、「自分もあの人と同じだったかもしれない」という可能性に気付けるようになる。 Pat Wadors, “Diversity Efforts Fall Short Unless Employees Feel That They Belong,” Harvard Business Review, August 2016, https://hbr.org/2016/08/diversity-efforts-fall-short-unless-employees-feel-that-they-belong. p30 自己責任論に陥らないために:自立の反対語とは 依存? 参考文献 1.熊谷晋一郎(2017) 当事者の立場から考える自立とは, リハビリテーション研究, 170:8-10. 2.熊谷晋一郎(2016) 共同性と依存先の分散: 当事者、家族そして教師へのメッセージ, LD研究, 25(2):157-167. 3.熊谷晋一郎(2016) 発達障害当事者の「自立」と「依存」, 藤野博(編). ハンディBookシリーズ発達障害支援・特別支援教育ナビ第7巻「発達障害のある子の社会性とコミュニケーションの支援」,63-73, 東京: 金子書房. 4.熊谷晋一郎(2014) 自己決定論、手足論、自立―概念の行為論的検討, 田島明子(編),「存在を肯定する」作業療法へのまなざし―なぜ「作業は人を元気にする!」のか, 16-35, 東京: 三輪書店. 5.熊谷晋一郎(2013) 依存先の分散としての自立, 村田純一(編), シリーズ「知の生態学的転回:人文科学のフロンティア」第2巻技術:身体を取り囲む人工環境, 109-136, 東京: 東京大学出版会. p31 70年代までの身体障害者 (作業者注・以下図) 男性と女性の写真 老人保健施設の写真 (作業者注・図終わり) p32 (作業者注・以下図) 熊谷講師が運ばれている写真 (作業者注・図終わり) p33 (作業者注・以下図) 階段、ロープ、エレベーターから「健常者」に矢印が伸びている (作業者注・図終わり) p34 (作業者注・以下図) エレベーターから「障害者」に矢印が伸びている(階段、ロープからは矢印なし) (作業者注・図終わり) p35 ×Independence ○Multi-dependence (作業者注・以下図) 「健常者」から階段、ロープ、エレベーターに矢印が伸びている 「障害者」からエレベーターに矢印が伸びている(階段、ロープからは矢印なし) (作業者注・図終わり) 依存先を家族や一部の介助者に集中させる (作業者注・強調ここから)→自立から離れ、虐待のリスクを高める (作業者注・強調ここまで) p36 (作業者注・以下図) 法・制度・権利・義務 青い芝の会→府中療育センター闘争→重度脳性まひ者介護人派遣事業 生活保護他人介護加算特別基準適応→全国公的介護保障要求者組合→自立センター立川 思想 青い芝の会→神奈川青い芝の会→関西青い芝の会連合会、リボン社、グループゴリラ 市場・効率・サービス・消費者 ヒューマンケア協会設立 住民参加のホームヘルプ事業 ILプログラム、ピアカン→自立センター立川 (作業者注・図終わり) p37 地域に依存先を開拓 (作業者注・以下図) 老人保健施設の写真 男性と女性の写真 ↓ 沢山の人が歩いている写真 (作業者注・図終わり) p38 「依存」という概念の変遷 『中断された正義――「ポスト社会主義的」条件をめぐる批判的省察』 Fraser, Nancy1997 Justice Interruptus: Critical Reflections on the "Postsocialist" Condition, Routledge=20031110 仲正 昌樹 監訳,御茶の水書房 1 前産業主義時代 他人のために働くことによって生計を立てることを意味し、逸脱ではなく正常、個人的特徴ではなく社会的関係性を指す言葉 2 民主主義と産業主義の台頭 白人賃労働者の「自立」の対義語で、有色人種や女性にふさわしい状態 3 ポスト産業主義 マイノリティの公民権が認められるにつれ、依存はすべての人にとって望ましくない状態とみなされる。 同時に、依存状態を病理化・個人化させる言説(依存的人格)が流布。 4 ポストアディクション時代 人格ではなくリスク因子に照準した人口的予防 p39 自立とは依存先の分散 (作業者注・以下図) 乳児→家族、様々な職業の人→お葬式 (作業者注・図終わり) p40 差別や偏見のない共生社会の条件 ・障害の社会モデルを実践する学校運営 ・心理的安全性と多様な他者とのやり取りを通じた自己理解 ・対等な接触 ・所属感:人生の物語の共有 ・依存先の分散 ・共同的子育て:障害のある親の子育てから学ぶ虐待予防プログラム p1 資料2 2024年10月21日 障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部ヒアリング DPI日本会議意見 DPI日本会議事務局長 佐藤 聡 1. 優生思想に基づいた障害者差別の根絶 ・旧優生保護法によって、日本社会には優生思想に基づく障害者差別が広まり、社会全体に根付いている。多くの人たちが障害者は可哀想な人、何もできない人、障害は不幸と障害を否定的に捉えている。 ・障害者権利条約では、障害の社会モデル/人権モデルの考え方に立っており、機能障害がある人が不利益を被る原因は社会環境にあるとしている。2011年の障害者基本法の改正で我が国も社会モデルの考えを導入したが、まだ十分には広まっていない。 ・優生思想に基づく差別をなくし、社会全体の環境を整備して、障害のある人も地域で共に学び、暮らし、働けるインクルーシブな社会の実現に向けて、政府においては優生思想に基づいた障害者差別は許さないという姿勢を明確に発信していただきたい。そして、より一層のリーダーシップを発揮して、障害者差別の根絶に向けて取り組んでいただきたい。 ○総括所見で指摘された主な優生思想関係の懸念と勧告 ・9(b) 「主に社会における優生思想及び非障害者優先主義により2016年に相模原市津久井やまゆり園で発生した殺傷事件に対して、包括的な対応がなされていないこと。」 ・10(b) 「優生思想及び非障害者優先主義に基づく考え方に対処する観点から、津久井やまゆり園事件を見直し、社会におけるこうした考え方の助長に対する法的責任を確保すること。 ・19(b) 障害者、知的障害者及び精神障害者に対する差別的な優生思想に基づく態度、否定的な定型化された観念及び偏見。 ・20(a) 策定、実施及び定期的な評価に障害者の緊密な参加を確保しつつ、障害者に対する否定的な定型化された観念、偏見及び有害な慣習を排除するための国家戦略を採用すること。 ・38(b) 障害のある女性への子宮摘出を含む強制不妊手術及び強制的な中絶を明示的に禁止すること、強制的な医療介入が有害な慣習であるという意識を向上させること、また、障害者の事情を知らされた上での同意があらゆる医療及び手術治療の前に行われるように確保すること。 2. 障害者基本法の改正 ・優生思想に基づいた差別を根絶するために、まずは障害者基本法を改正し、新たに優生思想に基づく差別を禁止することを明確に示していただきたい。 ・さらに、総括所見8(b)で指摘されたことを踏まえ、以下の10項目を盛り込んでいただきたい。 p2 「障害認定及び手帳制度を含め、障害の医学モデルの要素を排除するとともに、全ての障害者が、機能障害にかかわらず、社会における平等な機会及び社会に完全に包容され、参加するために必要となる支援を地域社会で享受できることを確保するため、法規制を見直すこと」 1 優生思想を許さない、差別のない社会 ・旧優生保護法の最高裁判決を踏まえ、岸田首相が目指す「障害者に対する偏見差別、優生思想の根絶」を基本法に盛り込むことが必要。 2 地域生活の基盤整備 ・親亡き後も安心して地域で暮らし続けられるために、重度訪問介護の対象拡大、本人の望む生活を応援する支給決定、ヘルパー人材の確保などの基盤整備が必要。 3 地域移行のための居住支援 ・障害者が住める住宅はほとんどない。バリアフリー住宅の推進、自治体借り上げ住宅、家賃補助を含めた居住支援策の創設が必要。 4 住宅や小規模店舗のバリアフリーの推進 ・共同住宅、飲食店等の小規模店舗、高速バス等はバリアフリー化がほとんど進んでいない。障害者基本法に明記し、新たな取り組みが必要。 5 同じ場で共に学ぶインクルーシブ教育の推進 ・権利条約が求めるインクルーシブ教育を実現するために、同じ場でともに学ぶことを原則とすること、合理的配慮の提供を義務化する等を盛り込んでいただきたい。 6 共に働く雇用の場 ・障害者雇用における差別禁止と合理的配慮の提供の義務は障害者基本法に記載されていない。紛争解決を含む相談体制の整備が必要。 7 複合差別の解消 ・障害と女性という複合差別を解消する取り組みが必要。 8 障害者文化芸術のさらなる推進 ・障害者が身近な地域で創作や鑑賞の機会を得られるよう、大阪・関西万博以降も文化芸術における合理的配慮の提供と環境整備等のさらなる推進策が必要。 9 内閣府障害者政策委員会の機能強化 ・障害者権利条約の国内監視機関として、内閣府障害者政策委員会が条約の実施状況を直接監視できるように、機能強化が必要。障害種別や性別等に配慮した委員構成も不可欠。 10 障害当事者の参画による施策の策定 ・東京2020オリンピックパラリンピックで実現した障害当事者参画を次世代に繋いでいくために、施策や大規模施設等の計画段階から当事者が参画する仕組みが必要。 3. インクルーシブ教育への転換をはじめとする教育 ・学校教育で優生保護法を肯定的に取り上げ、優生思想を根づかせてきた歴史の総括と反省が必要。そのことを踏まえて、「優生保護法の歴史とその被害」を学校教育の中で教えていただきたい。 p3 ・その際、障害のある子どもとない子どもが日常的に学び育つことがないと「きれいごと」「建前」になってしまう。優生思想を克服する大前提としてインクルーシブ教育への転換が不可欠。 ・優生保護法に基づく不妊手術等を実施した医師、看護師、そして、推進した教師や施設職員・民生委員など、障害者に関わる専門家が被害を拡大する役割を担った歴史的事実がある。その反省を踏まえて、医療・教育・福祉、さらには司法関係者などの専門職養成課程で、優生保護法の歴史・被害や「社会モデル」についての研修を必須とすること。 4. パリ原則に基づいた政府から独立した国内人権機関の設置 ・人権を保護し、人権状況を監視する国内人権機関は世界120カ国に設置されていると言われており、先進国でないのは日本くらいである。 ・人権侵害からの救済を図り、障害者差別解消法や障害者雇用促進法の運用状況をモニタリングし、人権教育を推進するためにも、パリ原則に基づいた政府から独立した国内人権機関の設置が急務である。 5. 差別事件が起きた時に政府が差別許さないと表明する仕組みの創設 ・重大な差別事件が起きた時に、首相をはじめとする政府が、差別は許さないという考えを表明することが重要である。 ・2016年の津久井やまゆり園事件が起きた時に私はワシントンD.C.に滞在していたのだが、ホワイトハウスの障害関連の担当者から、すぐに会いたいと連絡があった。事件の2日後くらいにホワイトハウスに行くと、この事件に関して日本の障害者団体はどう考えているのか聞かれた。この職員は大統領に対し、障害者関係の問題のアドバイスをする役割だそうで、数日後には大統領やホワイトハウスから声明が出された。 ・国際サッカー連盟(FIFA)は人種差別に対して非常に厳しく、試合やサポーター等が差別的な問題が起きると、すぐに声明を出して厳格な対応を取っている。 ・このようにトップが差別を許さないという姿勢を繰り返し社会に発信することで、社会全体に差別はダメなのだという考えが浸透できる。日本政府においても、差別事件が起きた時に迅速に首相や政府が声明を出す仕組みを創設していただきたい。 6. 雇用分野における改善 雇用の分野でも障害に基づく差別は多く存在しており、以下の取り組みを検討いただきたい。 1 障害者分野を含めたNAP(ビジネスと人権に関する行動計画)上の企業や組織が、障害者雇用を的確に進めるために、目標を達成するための行動指標であるKPI(重要業績評価指標)を設定することが必要。 2 障害者雇用における合理的配慮に関する周知と、労使間の合理的配慮の提供等の認識の齟齬により生じる紛争を解決する機関の創設が必要。 p4 3 除外率制度の縮小に向けた確実な推進と早期廃止 ・除外率制度は2002年の障害者雇用促進法の改正で縮小・廃止する方向が決まっていたが、2019年には除外職員に外務省の在外公館職員を追加した。 ・除外率制度を廃止するために、除外職員の規定を見直すことが必要。 4 障害者雇用代行ビジネスに関する規制 ・障害者権利条約や雇用促進法等の障害者雇用の意義や考え方を踏まえ、障害のある人も同じ職場で共に働くインクルーシブ雇用環境を推進することが必要。 ・障害者雇用代行ビジネス等は雇用主が障害者雇用の理念を守らず、責務を放棄しているおり、規制を実施することが必要と考える。