第1回障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部 議事要旨 p1 (開催要領) 1.開催日時:令和6年7月29日(月曜日)10時00分から10時20分まで 2.場所:総理大臣官邸4階大会議室 3.出席者: 本部長 岸田 文雄 内閣総理大臣 本部長代理 林 芳正 内閣官房長官、加藤 鮎子 内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画) 本部員 小泉 龍司 法務大臣、武見 敬三 厚生労働大臣、伊藤 信太郎 環境大臣、木原 稔 防衛大臣、松村 祥史 国家公安委員会委員長、新藤 義孝 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、自見 はなこ 内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策 消費者及び食品安全 地方創生 アイヌ施策)、矢倉 克夫 財務副大臣、國場 幸之助 国土交通副大臣、土田 慎 デジタル大臣政務官、平沼 正次郎 内閣府大臣政務官、神田 潤一 内閣府大臣政務官、船橋 利実 総務大臣政務官、深澤 陽一 外務大臣政務官、安江 伸夫 文部科学大臣政務官、舞立 昇治 農林水産大臣政務官、吉田 宣弘 経済産業大臣政務官 (議事次第) 1.開会 2.議事 (1)旧優生保護法を巡る経緯等について (2)障害を理由とする差別の解消に向けた取組について p2 3.閉会 (配布資料) 資料1:旧優生保護法を巡る経緯等(こども家庭庁提出資料) 資料2:障害を理由とする差別の解消に向けた取組について(内閣府提出資料) 資料3:障害を理由とする偏見や差別をなくすための取組(法務省提出資料) 資料4:障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた取組(文部科学省提出資料) 参考資料1:障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部の設置について 参考資料2:障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部幹事会の開催について (議事概要)<進行は加藤内閣府特命担当大臣> (加藤内閣府特命担当大臣) 皆さんおはようございます。 ただ今から、「障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部」を開催いたします。 はじめに、総理から御挨拶をお願いいたします。 (岸田内閣総理大臣) 7月17日、私は、旧優生保護法の国家賠償請求訴訟の原告団の方々にお会いし、筆舌に尽くし難い苦難と苦痛に満ちた経験をお伺いするとともに、政府を代表して、心から謝罪を申し上げました。 訴訟については、その場でお約束したとおり、原告団の方々と直ちに協議に入るとともに、除斥期間による権利消滅の主張の撤回についても既に準備書面の提出を終えるなど、早急な解決に向けた取組を進めています。 17日の面会の場では、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現に向けて、最大限の努力を尽くすこともお約束申し上げました。 先週、北海道において、障害のあるお子さんとその御家族をまんなかにして、地域で支えている取組を視察し、今後目指すべき共生社会のモデルケースが根付いていることに感銘を受けました。 同時に、御家族の方から「障害のある子供も、一人ひとり輝ける場所があってどんなところでも大切にされる、そんな国であってほしい」との切実な声をお聴きいたしました。 共生社会の実現に向けては、憲法違反とされた旧優生保護法に基づく施策が、約半世紀もの長きにわたって合憲とされ、数多くの障害者の個人の尊厳を蹂躙し、苦難と苦痛を強いてきた重い事実とその教訓を踏まえなければなりません。 過去において障害者が受けてきた差別、虐待、隔離、暴力、特別視は共生社会においてはあってはならないものです。障害への対処において、その取組の責任を障害者個人に見いだす考え方、そして障害者個人への医学的な働き掛けを常に優先し、それのみを手段とする考え方を過去のものにしなければなりません。 p3 障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であり、社会全体が変わらなければならないと考えるからこそ、障害者・障害児行政を所掌する府省のみならず、全府省庁が参加し、全大臣を構成員とするこの本部を立ち上げました。 障害者に対する偏見差別、優生思想の根絶に向け、政府一丸となって取り組んでまいります。各大臣においては、この本部が持つ重みを御理解の上、御協力をお願いいたします。 (加藤内閣府特命担当大臣) それでは、これから議事に移りますが、その前に、今回が第1回の推進本部となりますので、設置等について申し上げます。 この推進本部は、お手元の参考資料1・2のとおり、旧優生保護法に係る今月3日の最高裁判所判決を受け、総理のご指示により、優生思想及び障害者に対する偏見や差別の根絶に向けて、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めて取組を強化するため設置したものです。 また、関係行政機関相互の連携を図るため、当本部の下に幹事会を設置いたしました。 それでは議事に移ります。 (1) 旧優生保護法をめぐる経緯等について (加藤内閣府特命担当大臣) まず、議題1、旧優生保護法を巡る経緯等につきまして、こども家庭庁を所掌する大臣として、私から説明申し上げます。 資料の1頁目をご覧ください。旧優生保護法は、優生思想の下、不良な子孫の出生を防止するなどを目的として、昭和23年に議員立法により全会一致で成立しました。平成8年に遺伝性精神疾患等を理由とする優生手術等に関する規定が削除されるまでの間、運用され、同法に基づき約2万5千件の優生手術が実施されました。改めまして、旧優生保護法に基づき、あるいは同法の存在を背景として、優生手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けた方々に対し、心より深く謝罪申し上げます。 その後、平成30年1月に、旧優生保護法国家賠償請求訴訟が初めて提訴され、以降各地で提訴がなされました。こうした動きを背景に、平成30年3月に、超党派の「優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟」等が結成され、この超党派議連での検討を経て、平成31年4月24日に旧優生保護法一時金支給法が議員立法により全会一致で成立し、即日公布・施行されました。 一方で、各地の旧優生保護法訴訟はその後も継続し、先行する5件の訴訟について、今月3日最高裁判所において、旧優生保護法の規定を憲法違反とした上で、国の損害賠償責任を認める旨の判決が言い渡されました。 最高裁判決の概要についてご説明いたします。資料2頁目をご覧ください。判決では、旧優生保護法の優生手術に関する規定は、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を保障する憲法13条及び法の下の平等を定める憲法14条1項に違反すること、また、旧優生保護法の優生手術に関する規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法上違法であること、国が原告からの損害賠償請求権の行使に対して除斥期間の主張をすることは信義則に反し、権利濫用として許されないこと等が示され、国の損害賠償責任が認められました。 p4 今月17日に行われた総理と原告団等の方々との面会の際に、総理からご発言がありましたとおり、同法を執行していた立場として、その執行のあり方を含め、政府の責任は極めて重大なものがあり、改めて、原告団等の方々の苦難と苦痛に対しまして、深く謝罪申し上げます。 資料3頁目をご覧ください。先ほど少し触れましたが、本判決を受け、今月17日に行われた面会では、私自身も、原告団等の方々から筆舌に尽くし難いご経験を直接お伺いし、 改めて痛切な気持ちを抱きました。 優生手術は、言うまでもなく、個人の尊厳を蹂躙する、あってはならない人権侵害であります。二度と同じ過ちを繰り返さないよう、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けて、政府一丸となって取組を強化することが重要であり、こども家庭庁としても、政府の一員として、全力で必要な取組を進めてまいります。 旧優生保護法の訴訟を担当している立場からの説明は以上です。 (2)障害を理由とする差別の解消に向けた取組について (加藤内閣府特命担当大臣) 次に、議題2、障害を理由とする差別の解消に向けた取組について、まず、障害者施策を所掌する大臣として、私からご説明いたします。 資料2の2ページをご覧ください。まず、障害者基本法は、全ての国民が障害の有無にかかわらず、人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のため、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策の推進を目的とした法律です。同法では、障害者が受ける日常生活・社会生活上の制限は、心身の機能の障害のみならず、社会における様々な障壁によって生ずるという考え方の下、障害を理由とする差別の禁止等について規定しているところです。 3ページをご覧ください。障害者基本法の差別禁止の理念を具体化するため、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が定められています。この法律では、行政機関等や事業者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止と障害者への必要かつ合理的な配慮の提供を求めています。 具体的には、内閣府では「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」において、1 不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的考え方や具体例のほか、2 行政機関や事業者における相談体制や研修・啓発等について定めています。各府省庁においては、基本方針に即し、職員が適切に対処するために必要な「対応要領」を定め、研修・啓発を行うなどしています。 また、民間企業などの事業者については、各主務大臣が「対応指針」を別に定めることとしており、それぞれの事業を行うに当たって障害を理由とする差別を行わないよう、研修・啓発を行うことを求めています。 4ページ目をご覧ください。内閣府では、地方公共団体職員を対象とする研修の場や差別解消に向けたポータルサイトの設置、政府広報等を通じた啓発等に取り組んでまいりました。 p5 今回の判決を受け、内閣府として、まずは、障害者差別解消法に基づき、各府省庁が、それぞれ策定する「対応要領」に基づき、どのような研修・啓発を行っているかを点検するとともに、障害者の偏見・差別の解消に向けた取組のより一層の強化を目指してまいります。 次に、法務大臣から御発言をお願いいたします。 (小泉法務大臣) 法務省としても、今般の最高裁判決を大変重く受け止めており、障害を理由とした不当な差別はあってはならないとの認識のもと、人権擁護活動をより一層推進していく所存であります。 具体的な取組としましては、法務省の人権擁護機関では、「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を啓発活動強調事項の一つとして掲げ、各種の人権啓発活動を行っております。 例えば、障害のある人の人権問題に関する啓発冊子及び啓発動画を作成し、配布・配信を行っています。また、学校等からの依頼を受けて行う人権教室において、社会福祉協議会などと連携した啓発活動を実施しております。 さらに、毎年、人権シンポジウムを開催しておりますが、本年2月のシンポジウムでは、障害者雇用に積極的な企業の取組を紹介するなどいたしました。 加えて、法務省では施策の立案・実行を担う中央省庁等の職員を対象とした「人権に関する国家公務員等研修会」を毎年開催しております。昨年度は、「障害のある人と人権」をテーマとして取り上げ、約3,000名にオンラインで受講していただきました。 また、法務大臣が委嘱した民間のボランティアであり、全国で人権擁護活動を担っていらっしゃる人権擁護委員に対しても、障害のある人の人権問題について研修を行っております。 そのほか、障害のある方からの人権相談に応じて、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じております。 今月17日の岸田総理と原告の皆様方との面会に同席させていただき、筆舌に尽くしがたい御経験を直接お伺いし、私としても、改めて痛切な気持ちを抱いたところでございます。 このような事態を二度と繰り返すことがないよう、障害を理由とする偏見・差別の解消のため、人権擁護活動にしっかりと取り組んでまいります。以上です。 (加藤内閣府特命担当大臣) ありがとうございます。 次に、文部科学大臣政務官から御発言をお願いします。 (安江文部科学大臣政務官) 障害のある方に対する差別は決してあってはならないものであり、文部科学省では、障害の有無等に関わらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し合える共生社会の実現に向けた取組を進めております。具体的には、1 憲法及び教育基本法の精神に則り、人権教育・啓発推進法や同法の基本計画に基づき、学校教育及び社会教育を通じて、障害のある方の人権を含めた、人権尊重の意識を高める人権教育を推進しており、学校教育においては、人権教育の指導方法等に関する調査研究等による各学校における取組の促進、社会教育においては、社会教育の指導者として中心的な役割を担う社会教育主事の講習や研修等に取り組むとともに、A障害のある子供と障害のない子供が触れあい、共に活動する「交流及び共同学習」を各学校等で推進するためのガイドの作成、授業等で活用できる「心のバリアフリーノート」の作成、公表等を通じて、障害理解教育の促進を図っております。法や同法の基本計画に基づき、学校教育及び社会教育を通じて、障害のある方の人権を含めた、人権尊重の意識を高める人権教育を推進しており、学校教育においては、人権教育の指導方法等に関する調査研究等による各学校における取組の促進、社会教育においては、社会教育の指導者として中心的な役割を担う社会教育主事の講習や研修等に取り組むとともに、2 障害のある子供と障害のない子供が触れあい、共に活動する「交流及び共同学習」を各学校等で推進するためのガイドの作成、授業等で活用できる「心のバリアフリーノート」の作成、公表等を通じて、障害理解教育の促進を図っております。 p6 また、こうした「心のバリアフリー」をはじめとする、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として策定されました「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づく取組が、今も大会のレガシーとして各省庁等においても脈々と受け継がれております。 このたび、総理の下で政府を挙げた取組の強化が図られることとなったことを重く受け止めまして、文部科学省といたしましても、引き続き、関係省庁と連携しながら、優生思想の問題を含めた、障害のある方に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた取組を推進してまいります。 (加藤内閣府特命担当大臣) ありがとうございます。 それでは、総理から御発言を頂きます。 (岸田内閣総理大臣) まず、加藤大臣と小泉大臣においては、旧優生保護法の国家賠償請求訴訟の係属訴訟について、原告が高齢化している現状及び原告団との協議の状況を踏まえ、和解のための合意書の締結等による早期解決を急いでください。 あわせて、新たな補償の仕組みの具体的な内容について、先日の原告団等との面会で述べた基本方針に沿って早急に結論が得られるよう、議員立法の提出に向けて取り組んでいる超党派の議員連盟との検討・調整を加速してください。 当本部においては、冒頭申し上げた、障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、障害者に対する偏見差別、優生思想の根絶に向けて、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めて取組を強化してまいります。 この際、関係大臣に対し、4点指示いたします。 第1に、結婚、出産、子育てを含め、障害者がどのような暮らしを送るかは本人が決めることを前提として、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、希望する生活の実現に向けた支援を行うことが必要です。 このためには、障害者の地域生活の支援と併せて、障害福祉や母子保健・児童福祉の関係機関・事業所が連携し、必要なサービスの活用や見守り等の支援体制を構築していくことが不可欠であり、本年6月に示されている事例集の周知徹底を図るなど、取組を推進してください。 第2に、障害者差別解消法に基づき、各府省庁において、職員が適切に対応するために必要な対応要領や、事業者が適切に対応するために必要な対応指針を策定しています。取組の実効性が上がるよう、まずは各府省庁が対応要領に基づきどのような研修・啓発を行っているかを点検するなど、PDCAサイクルを回し、取組を強化してください。 p7 第3に、本日説明があった、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を機に策定されたユニバーサルデザイン2020行動計画における心のバリアフリーの取組等は、東京大会のレガシーと言えるものです。 旧優生保護法をめぐる今日の状況やパリ大会の開催を踏まえ、心のバリアフリーに係る学校教育・企業等・地域における取組、国民全体に向けた取組、さらには障害者自身による取組等について、その実施状況をフォローアップするとともに、新たな課題も取り込みつつ、取組の強化を図ってください。 第4に、当本部を中心に今申し上げた取組を進めていくに当たっては、障害当事者から意見を伺うことが不可欠です。このため、当本部の下に置かれる幹事会において、有識者の協力を得て、障害当事者の方から御意見を伺った上で、当本部の成果を取りまとめる体制を構築してください。 こうした基本方針に沿って当本部の議論を進め、障害者に対する偏見や差別のない共生社会を実現すべく、必要な対応策を検討し、当本部の成果として新たな行動計画を取りまとめてまいります。各大臣の御協力をお願いいたします。 (加藤内閣府特命担当大臣) ありがとうございました。 以上をもちまして、本日の会議を終了いたします。 (以上)