Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
メジカ情報革命
一般社団法人なかとさ観光協会観光・文化・娯楽
取組内容
高知県中土佐町にある久礼大正町市場は、鮮魚店や食堂等約30店舗が集中する商店街である。カツオ一本釣りの町でありメインはカツオ食だが、夏から秋にかけては「メジカの新子」を求める行列で大混雑する。各店舗の入荷状況や営業情報が事前に確認できないため、早朝から並び市場の混雑に繋がっていた。物理的なスペースの限界と圧倒的な情報不足による混乱である。各店舗が入力した情報をもとに、メジカのテイクアウト商品を食べられる施設の開店情報や在庫情報等をサイネージ及びweb等で訪客に提供する。売り切れ情報などもリアルタイムに提供し、域内の他店へ分散などを図りオーバーツーリズムによる弊害や損失を最小限に抑える取組である。
実績や効果
メジカ情報の電話問い合わせ対応人数:取組前2.5人(期間中、平日土日問わず早朝から電話によるメジカ入荷情報の対応)→ 取組後1.0人(ホームページの問い合わせフォームの対応のみ)。メジカを手に入れるまでの最長時間:取組前約3.5時間 → 取組後約1.5時間。
取組全体を通じて訴えたいポイント
地方都市ならまだしも中山間地域でのDXあるいは「×デジタル」の取り組みは、単に仕組みの輸入では不可能であるということ。あらゆる取り組みは、デジタルは単なる媒介としての役割であり、基層にあるのは「課題」と「地域住民の意」のぶつかり合いの末、腹落ちした施策こそがサスティナブルな取組になるのである。
地域の課題解決・魅力向上
中土佐町の約半数が住む久礼地区の人口は約3千人。鮮魚店や食堂の従事者の高齢化は切実である。人手不足のなか、訪客に充実した情報を提供するためには従前の人海戦術ではもはや不可能。高齢者でも扱えるUIと簡便な仕組みで、質の高い情報をリアルタイムに送出できたことは今後の中山間での仕組みづくりの布石になる。
独自性・先進性
今回の仕組みでは、情報の「質と量」「提供の仕方」を再検討・工夫した点にある。DX≠デジタルである。デジタル情報を先進的に扱うのではなく、お客さんが欲する「メジカ情報」とはいったい何か?という原始的・思想的な検討を行ったことだ。観光協会・各店舗・自治体・組合からの十二分なヒアリングが成功の鍵といえる。
持続性・発展性
フルサイズのDX化を導入するにはコストと時間がかかる。今回は、既存の観光協会webサイト(WordPress基準のwebプログラム)の「ブログ投稿機能」をリバイスして、各店舗からの情報をリアルタイムに集計・表示する仕組みを作り上げた。通常運用しているwebサイト故にメンテナンスも簡便である。
他地域への横展開
今回の仕組みづくりは、DXの専用開発でもなければ、ハコありきの取り組みではない。現地の店舗や運営に根づく「不」満や「不」具合・「不」親切な事柄を洗い出し、情報の扱い方を丁寧に検討したまでである。プログラムはwebプログラムの延長線上であり、極小コストと短い開発期間で達成した。
取組を進めるうえで苦労した点
高齢の方やプライベートでスマホを使用していない方へのタブレットの使い方のレクチャーは時間と手間がかかった。スマートデバイス特有の「電源の入れ方」や「スワイプ」概念が特に難しく、練習を重ねた。しかし、あと5年で日常生活デジタルネイティブ世代に代わるため、今後は当該課題が少なくなると思われる。
取組の成果を上げることが出来た秘訣・工夫
一つ目は「デジタルありき」で設計・展開するのではなく、デジタルにしたらより効果的な情報資源は何か、デジタルであると何が助かるのかを基軸に設計することである。二つ目は、デジタル×アナログの掛け算を考えること。人のコミュニケーションや身体性という点でのアナログの有用性も勘案して取り組むことが重要である。
今後の展望
現状、タブレットは手入力であるため、メジカを捌いている最中は更新ができない。このため、音声入力とAIを駆使し、調理中でも更新ができる仕組みを導入する予定である。また、表示項目の再検討もシーズン終了後に、店舗関係者や自治体・外部広域観光事業者などの再ヒアリングを行い、来期に向けてブラッシュアップする。