Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
取組内容
中山間地域の棚田は災害防止など多面的機能を持つ一方、インフラ整備や担い手不足により荒廃の危機に直面している。この課題に対応するため、三ケ村の圃場を対象に、各種スマート技術・土木技術を活用して棚田管理の省力化・合理化・効率化を図り、ソフト技術で棚田の付加価値向上を目指した。LPWA通信基地の合理的配置で情報通信基盤を構築し、建機や農機のスマート技術や管理作業の見える化技術、生産性向上や安全管理技術を展開した。また、棚田整備に際して投資妥当性や有用性を示すため、洪水リスク低減・生物多様性保全・CO2排出削減の価値を見える化した。これにより持続可能な棚田モデルを構築し、国や自治体の実証事業に採用された。
実績や効果
スマート技術・土木技術の組み合わせで、水管理回数の労力を33〜71%削減し、20分で救護に駆け付けられるシステムを構築した。水田の代かき作業時間の26%削減や農業資材の散布作業時間の64%短縮、生産される米の収量の向上にも寄与した。また、棚田の多面的機能を向上させ棚田での新たな収益確保の仕組みを確保した。
取組全体を通じて訴えたいポイント
本対象地のような条件不利地域の棚田でのデジタル化の取組には、費用面や実証効果が出にくいといった課題があり、取り組む事業者が少なく実証事例も少ない。一方、全国各地には同様の棚田が多く存在し、同じような課題を抱えている。だからこそ、デジ田甲子園を通して、さらなる棚田のスマート技術の社会での普及に繋げたい。
地域の課題解決・魅力向上
対象地の圃場は狭小で機械の導入が難しく、作業従事者の高齢化も進んでいる。そこでLPWA通信網やスマート技術を導入して効率と安全性を向上させ、UAVやドローンで作業時間を削減し、洪水緩和や生物多様性保全も科学的に実証した。J-クレジット制度で新たな収益源を確保し、有機農法で高付加価値米の生産も進めた。
独自性・先進性
棚田再生の取組は注目度の高い棚田に限定され、スマート技術の適用は平野部の大区画圃場が中心である。本対象地のような条件不利地域はこのような取組から取り残されがちだが、土木技術を活用し圃場の条件を改善することで、様々なスマート技術の適用可能性を提示した。また、営農に留まらず多面的価値を科学的に把握した。
持続性・発展性
本取組は2019年に開始し、2020・21年度のスマート農業の実証事業に採択され社会実装を完了した。それ以降も地域住民が主体となって課題解決できるよう、ワークショップの開催など地域密着型で事業を展開してきた。また、この取組を新たな収益源の確保に繋げるなど、地域の持続的な社会経済的発展を目指している。
他地域への横展開
全国各地の条件不利地域の棚田での課題解決に向け、本取組の研究・開発成果を土木学会全国大会において6編発表・投稿し、土木学会論文集でも論文掲載に至っている。地元の県や市でのフォーラムやセミナーの開催、JICA主催の講習会のほか、インドネシアでの世界水フォーラムで本取組を紹介し、横展開に繋げている。
取組を進めるうえで苦労した点
条件不利地域の棚田でのデジタル化においては、効率が悪かったり費用がかかることから、地域住民の理解を得るだけでなく、連携できる事業者を探すのに苦労した。また、対象地のような場所での前例がなかったことや、解決手法が曖昧な形で示されてきたため、すべて手探り状態で進めなければならなかったことも苦労した点である。
取組の成果を上げることが出来た秘訣・工夫
これまで曖昧な形で示されていた多面的機能のうち、棚田に期待される重要な機能を科学的手法で定量的に明らかにし、公共投資を策定するうえでの便益算出の重要な知見を得ることで解決に導いた。また、セミナーやワークショップを開催するなど、地域関係者と相互理解を深めたことが、取組の成果を上げることに繋がった。
今後の展望
本取組は、デジタル化に加え、棚田における導入では国内初となるカーボンクレジットの創出も見込んでいる。また、自然共生サイトの登録も進めるなど棚田で作られる米の付加価値を向上させることに尽力している。今後、本取組を軸に全国各地に広げていくことで、他地域の棚田での持続可能な生産の仕組みづくりに貢献したい。