Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した取組の全体概要
児童相談所では児童虐待通告や子育て相談に関する相談件数が年々増加し、職員の負担も高まっている。この状況を改善するために電話での通話音声をリアルタイムにテキスト化し、相談記録の入力作業負担を軽減するとともに、内容に応じたガイダンスの表示やモニタリング機能の活用により相談業務を支援するシステムを全国の児童相談所で初めて導入した。本システムは民間コールセンターで活用されているAIソリューションシステムをカスタマイズしたもの。導入後、区民への適切な子育て相談やサービスの案内をさらに効率的に行うことができるだけでなく、職員の負担軽減やメンタルヘルスのサポートにも活用でき、より子どもや保護者と向き合う時間を増やすことができている。
実施に至る経緯・動機
本区では2010年に小学1年生の男児が継父からの虐待により死亡するという痛ましい事件が起こった。この事件をきっかけに「区に児童相談所を」という思いで国や都に働きかけ、2020年4月に23区初の区立児童相談所設置に至る。地域に開かれた相談機関として、AIを活用し、充実した子どもと家庭の支援に取り組んでいる。
解決する課題の具体的内容
全国の児童相談所で課題となっている職員の業務過多の状況に対し、AIを活用した本システムを導入して業務効率化及び職員のメンタルヘルス対策を行い、課題解決に向けて取り組んでいる。本システムは他分野業務にも活用できるため、全国の地方自治体から注目され、多くの視察を受けており、導入・導入予定の自治体が多数ある。
デジタルを活用した取組による成果
通話内容から自動でマニュアルや情報が表示でき、的確な情報を得られ、通話時間も短縮される。また通話音声がリアルタイムに文字表示されるため、通話者以外の職員も同時に通話内容を共有でき、対応が難しいケースでは上司や周囲の助言が得られる。導入後は相談から対応・記録作成までの時間が1件あたり約20分削減され、業務効率化の効果があった。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
全職員に本システムを使用してもらうため、導入前から取り組みや効果の説明を行うことでモチベーション向上に努め、導入後も日常業務の中で本システムに対するメリット・デメリットについて現場職員の声を随時聞くことでモチベーションの維持に努めた。また、ベンダーとも定期的な打ち合わせを行い、機能向上の取り組みを行った。
成果をあげるためのポイント
導入にあたり、システムベンダーによる機能の説明や操作研修の機会を多く設けた。また、導入後も遊び感覚でいろいろな機能を活用し、試行錯誤した結果、良い形での業務への活用方法を見出せたため、成果を上げることができたように思う。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
本システムを110名の職員が業務の中で円滑に活用できるよう、操作方法や効果を事前に研修・説明会で説明したが、日々の多忙な業務で十分理解できていない職員がいたため、日常業務(OJT)の中で丁寧に説明を重ねた。また、全国の児童相談所で初めての取り組みのため、予算や個人情報の取扱いなどの運用方法の確立に苦労した。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
児童相談所にとっていちばん重要なのは、「直接、子どもや保護者の方と向き合う」という部分だと思う。このシステムを導入することで、「精神的ゆとりができた」「効率化した」という成果ももちろんあげられるが、何より私たちに「子どもと直接向き合う時間が増える」ということが重要ではないかと考える。効率化は、結果として子どもや保護者の方への良い支援につながっていく。私たちも他の自治体から勉強させていただくことがあるが、本区の取り組みについて何かご質問などあれば、遠慮なくご連絡いただければと思います。
- 問い合わせ
-
- 部署
- 江戸川区子ども家庭部援助課
- 電話
- 03-5678-1810