Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した取組の全体概要
AIと超音波エコーを組み合わせ、魚に当てるだけで雌雄を判別する装置がSmart Echo。例えばマダラは白子を持つオス、サケはいくらを持つメスが高価だが、判別には熟練者が必要である。先端IT技術の活用で「誰でも・簡単に・衛生的に」雌雄を判別し、高齢化、担い手不足、技術伝承の困難などの課題を解決する。
実施に至る経緯・動機
東日本大震災後、大きな被害を受けた三陸沿岸各地を東北大学IIS研究センターと共に回り、震災によって熟練者・担い手不足の加速を訴える漁業関係者の声を知るに至り、「地元企業として課題を解決したい」との想いから開発を始めた。
解決する課題の具体的内容
津波で漁船や漁具が流されるなど大打撃を受けた被災地の水産業。内陸部への自宅再建を契機に海の仕事をやめた漁業者も多く、水産業の衰退が危惧される。被災地域に限らず日本の水産業が抱える高齢化、担い手不足、技術伝承の困難などの課題を解決することで、地域の社会と経済を支える産業のひとつである水産業の持続的発展に貢献し、地域経済の活性化を図る。
デジタルを活用した取組による成果
鳥取県のユーザーがマフグを対象に行った実験では、雌雄混在で出荷した場合のキロ単価は200〜267円であったのに対し、雌雄を分けた場合のキロ単価はオスが600〜700円と明らかな価格向上、メスが200~217円と若干の価格低下はあったものの、平均キロ単価は向上し、雌雄を選別して出荷した効果が見られた。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
魚というアナログな対象物を超音波エコー技術によりデジタルデータ化し、熟練の技術を先端IT技術であるAIを駆使することで自動化する取り組みである。取り組みにあたっては、単に既存作業の一部をデジタル化、自動化するのではなく、現場から聞き取った知見やノウハウを取り入れ、活用現場に即したものとすることを意識した。
成果をあげるためのポイント
長期に渡るデータ収集と実証実験の粘り強い継続が第一であるが、その機会と場、魚を提供してくださる漁業関係者との人脈づくり、取り組みに対する理解、協力を得ることが不可欠であった。東北大学IIS研究センターがコーディネーターとなることで漁業関係者並びに東北大学各研究室との繋がりを得て、漁業関係者からは困りごとや課題の共有、実証実験の機会や取り組みへのフィードバックを、大学各研究室からは課題解決に向けた技術協力が得られたことが大きなポイントであった。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
単純に魚を超音波エコーによりデジタルデータ化しAIにより雌雄を判別するだけでは、漁獲地域や時期、水揚げからの経過時間の違いで判別精度が安定せず。特定の時期・地域で漁獲、水揚げされた魚では高い判別精度を実現する一方、時期や地域などの条件が変わるだけで判別精度が大きく低下した。漁獲地域や時期の違いを考慮し、各地で長期に渡り大量のデータ収集と実証実験を繰り返すことで、様々な条件下での高い判別精度を実現した。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
DX化により恩恵を受けるべき人々が本当に望んだカタチとなるのかを常に意識した取り組みが重要である。DX化そのものが目的化した場合、改悪・形骸化したものとなりかねない。DX化を推進する側、利用する側、恩恵を受ける側それぞれが共通のビジョンと当事者意識を強く持つ体制・環境・意識づくりこそが重要である。
- 問い合わせ
-
- 部署
- 東杜シーテック株式会社 Fish & Robo Base
- 電話
- 050-3734-4327
- メールアドレス
- fa_robot@tctec.co.jp