Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した取組の全体概要
養殖業では餌代がコストの70%以上を占め、餌の節約は生産性の向上や環境保全にもつながる重要な課題である。従来の給餌方法は、人手か機械による経験と勘に頼る方法であったが、労力が大きかったり、餌の適切な量や給餌タイミングが分からず、無駄が多くなるという問題があった。そこで、持続可能な養殖の実現を目指して、餌ロボを開発した。餌ロボは搭載したAIで魚の状況に合わせて給餌量を自動調整し、無駄な餌を削減する。また、超音波センサーが海中を可視化し、魚の食欲や海水温などの多彩な情報が確認でき、データはクラウドにノウハウとして蓄積される。餌ロボは全国で稼働しており、養殖の効率化に大きく貢献している。
実施に至る経緯・動機
日本の海面養殖は小規模な事業者が多く、長らくデジタル化が進んでいなかった。一方で、食料安全保障の観点から、海面養殖の役割はますます重要になっている。私たちは、海面養殖で労力やコストの負担が大きい給餌作業にデジタル技術を活用することで、養殖の効率化を実現し、持続可能な養殖経営を目指す。
解決する課題の具体的内容
日本では各地域で独自の海面養殖が営まれているが、労働力の不足は深刻な課題である。餌ロボを活用すれば、負担の大きい給餌作業を省力化できる。また、事業者が給餌方法を柔軟に変更したり、新たな方法を試すこともできるため、地域の特色ある魚を育てることにも役立つ。これにより、地域の養殖の活性化に貢献する。
デジタルを活用した取組による成果
成長速度を重視する複数の事業者から、餌ロボの導入により給餌方法を隔日給餌から毎日給餌に切り替えた所、出荷時期が1~3か月早まり、付加価値の高い商品を作りやすいとの評価を得られた。また、成長効率を重視する複数の生産者からは、無駄な餌を削減できたことで餌代が10~15%程度改善したと評価を頂いた。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
当社は超音波の技術は保有するものの養殖に関するノウハウがなく、単独では開発期間が長くなると想定した。そこで養殖に関するノウハウを持つ会社と共同開発することで、一気に開発期間を短縮した。また、初期に導入した事業者から様々なアドバイスを頂くことができ、速やかに改良を重ねることで品質を向上させた。
成果をあげるためのポイント
技術の汎用化が進む現代において、アイデアの構想から製品化までのスピードと、自社独自のオリジナリティの両立が求められている。餌ロボの開発では、他社との共同開発により開発スピードを加速させるとともに、当社の強みである超音波技術を融合することで、従来の市場にはない画期的な製品を短期間で実現した。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
超音波を用いて生簀内の魚群分布を正しく把握することが、最も苦労した点である。従来の魚群探知機をそのまま利用するだけでは、生簀内の魚群全体の情報を得ることはできない。そこで、生簀の中での魚群の行動に着目し、超音波のエコー波形を信号処理と波形解析することで、魚群分布を正しく把握できるように工夫した。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
水産業は、日本の食料供給や地域経済において重要な役割を担っている。しかし、多くの分野でデジタル化が進む中、水産業は依然としてデジタル化が遅れているのが現状である。
全てを一度にデジタル化するのではなく、まずは小さな一歩から始め、長期的な視点を持って段階的に取り組むことをお勧めする。
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