Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した取組の全体概要
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深度も含めた空間的広がりにおける海水温の常時リアルタイム情報を漁業者に提供する仕組みの構築を目指し、観測センサー開発から、センサネットワークの構築、データ変換を含むデータ集約蓄積サーバの構築、利用者視点の情報可視化表示を実現。
- 多深度海水温観測装置とそのランニングコストの低価格化(1/5以下)
- 南北約65kmにわたるセンサーネットワークの構築
- 既存の観測装置からの情報を変換し、独自開発観測装置の情報と共に集約するデータ集積サーバの構築
- 海水温や溶存酸素量等の環境情報の毎時観測の実現と即時公開の実現
- 漁業者に分かりやすい海水温多深度時系列変化表示
- 海水温三次元分布アニメーションの実現
デジタルを活用した取組による成果
アウトプットベース
- 多深度観測地点を倍増し、16箇所に拡大。観測地点における、一時間毎の多深度(推進1m、5m、10mから60mは10m刻み)情報の提供を実現。
- 漁業者へのリアルタイム情報提供を実現。
- 海水温の補間に特化したアルゴリズムの検討により、多深度海水温情報提供地点を「点」から、宇和海海域全域に拡大。海水温観測装置の価格を150万円以上から30万円以下に低減。
アウトカムベース
- 以前は、漁業者は海水温の情報をリアルタイムに得ることができなかったが、常時多深度の情報を何時でも、どこでも得る事が可能となり、給餌量の決定判断、魚病や赤潮対策の準備、実施、中止をデータに基づき判断可能となった。
- 宇和海全域の海水の入れ替えを引き起こす「急潮現象」の発生や、その規模、速さを、可視化された海水温分布から、容易に知ることが可能となり、赤潮の発生危険性の増減予測が可能となった。また、急潮による生け簀等の破損への事前対策が容易となった。
- 漁船漁業においては、海域の温度分布情報は、魚群の存在域の推定に活かすことができ、漁獲量の向上、移動に必要となる燃料費の削減、CO2排出の低減に繋がる。
- 装置とランニングコストの低価格化によって、補修部品の事前配備が可能となり、専門技術者を必要とせずに設置や保守交換が可能となった。
取組実施前後の数値比較
取組前 | 取組後 | |
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多深度海水温観測装置の価格 | 150万円以上 | 30万円以下 |
海水温の漁業者への提供時間 | 数日単位の事後提供 | 毎時更新かつ、測定後数秒 |
海水温情報の提供地点 | 観測地点のみ10箇所未満 | 観測地点16箇所、及び、補間により温度情報は宇和海全域 |
利用状況 | - | 養殖業者数881軒に対し、有効アクセス数は平均約600件/日、赤潮発生期は約1000件/日 |
取組の成果をあげることが出来たポイント・工夫
●学術的な研究に留まらず、情報通信技術(ICT)を用いたシステム開発・実装を行える研究者が、水産の現場に足を運び、海洋物理や水産学の研究者のみならず、水産業の人々との会話の中から、課題を見いだし、その課題を解決する方法を考案、実現したことが、現場で評価される成果をもたらした。取組を進めるうえで苦労した点
●現場に足を運び、そこにいる人がどのような事をやっているのかを観察し、話を聞き、その人達の現状と理想を明らかにする。その後、その現実と理想のギャップをどのように埋めるのかを、ICTを活用した実現可能な方法を考案し、実現するというプロセスを実直に行った。苦労というほどのものではなく、当然と言えるプロセスを律儀に行っただけとも言える。今後、デジタルの活用に取り組もうとしている企業や自治体へのアドバイス
●「最新技術」といった言葉に踊らされることなく、現場を起点とし、問題(理想と現実のギャップ)の明確化から始めることが重要。「技術」から考えると、使わなくてもよい技術を使うだけで、「喜び」はもたらされない。問題解決には、多くの「技術」を引出に持っている設計者が参画し、有効な技術の選択、組合せ・活用の工夫をすることが重要。- 連携団体
- 愛媛県漁業協同組合、宇和海漁業協議会、 愛媛県魚類養殖協議会、愛媛県真珠養殖漁業協議会、愛媛県真珠貝養殖漁業協議会、伊方町、八幡浜市、西予市、宇和島市、愛南町、愛媛大学、愛媛県
- 問い合わせ
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- 部署
- 愛媛大学大学院理工学研究科分散処理システム研究室
- 電話番号
- 089-927-8540
- メールアドレス
- digi-den@koblab.cs.ehime-u.ac.jp