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Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

日本で初めてスマホ普及率100%を目指す「村まるごとデジタル化事業」

高知県日高村誰一人

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

スマホ教室、高齢者に向けたデジタル活用支援、地域通貨、デジタルデバイド対策

関連タグ

デジタルを活用した取組の全体概要

  • DX化の前提条件の達成と住民自身をエンパワメントする取組として、令和3年5月に株式会社チェンジおよび株式会社KDDIと包括協定を締結し、日本で初めてスマホ普及率100%を目指す自治体宣言を行い「村まるごとデジタル化事業」を開始しました。
  • 事業概要の柱として、「スマホ普及事業」及び「住民生活の質向上事業」を展開。また、当該事業を学術的に研究する動きにも繋がり、KDDI総合研究所と高知県立大学とで3者共同研究事業を並行して実施した。
  • その他、お買い物支援のデジタル化実証事業や職員向けITリテラシー向上事業、住民同士の共助による操作支援や困りごと解決の仕組みの構築など複数の関係者や住民を巻き込みながら派生した取組も実施している。
  • 加えて、当該事業を今年度も事業継続しつつマイナンバーカードの普及も目的に追加した「デジタル化促進キャンペーン」を並行して実施している。

実施に至る経緯・動機

人口減少や少子高齢化の中で、行政サービスを維持改善していくことが困難になる将来に向けて、「住民のエンパワメント」をキーワードに、デジタルを活用した住民の生活の質向上を目指した。DX化も含めてその前提条件としてスマートフォンを取得し、日常的に使うことができる状態になることが必要と考え、令和2年5月にスマホ普及率の全量調査を行い、調査結果から、事業骨子を作成した上で、プロポーザルを実施した。また、プロポーザルの全体像の1つとして「他自治体のロールモデルとなる事例を創出」することも掲げており、他自治体への情報提供や視察の受入も積極的に行い、社会のDX化に貢献できる村になることを目指している。

解決する課題の具体的内容

  • ミッション:DX化の前提条件を整え、住民のエンパワメントを促進することで、ソサエティ5.0社会に向けた準備を完了する。
  • フェーズ0:スマートフォンの普及率100%およびアクティブ率100%
    • スマートフォンの普及率100%に関して(アンケート調査結果より)
      1位:必要ない、2位:使い方がわからない、3位:価格が高い
      1位については、スマートフォン未普及層は「デジタルディバイト層」であり、そもそも情報弱者の方が多く、ガラケーが無くなることすら知らないため日高村を小さく分割(自治会単位)し、説明会やスマホ体験会を実施。2位については、よろず相談所を設置し、いつでも困りごとが相談できるようにするとともに、毎月3回程度スマホ教室を実施。令和3年度は総務省のデジ活支援推進事業も活用し、住民の日常生活の導線上で教室や相談会を並行して実施した。3位は「購入費用」と「ランニングコスト」に分けることができるため、KDDI株式会社の自社努力及び購入にかかる自己負担額を緩和するため地域通貨で購入費支援を行い、ランニングコストは健康活動ポイントに応じて地域通貨に還元できる仕組みを導入し、それぞれの課題に対応した。
    • スマートフォンのアクティブ率100%
      生活の質向上事業として、「健康」「防災」「情報」の3分野に関してスマホを活用した取組を展開。単に、スマホを使えるための施策ではなく、必ず必要な機能として自分自身で命を守るための取組を促進するものを選定。特に、健康事業では株式会社トラストバンクの地域通貨サービスを利用し、健康活動を促進。各アプリの活用は、説明会や体験会を開催している。

デジタルを活用した取組による成果

スマートフォン普及率
年代 令和2年5月時点 令和3年10月時点 令和4年6月時点
全体 65.4% 75.7% 79.7%
年代別 60代 69.4% 84.2% 89.5%
70代 40.4% 68.1% 69.9%
80代 10.9% 28.1% 33.1%

事業実施期間約12ヶ月の成果として、普及率が15%以上向上。国のスマホ普及率の向上が年1~3%(引用:情報通信白書)と比較しても成果があった。

  • 実質普及率 86.0%(実質普及率とは、上記普及率については、分析時の分母に全住民(0~最高齢)を対象にしており、物理的に保有が難しいと考えられる方々も含んで分析しているため、0〜9歳までの子どもや障害や介護状態を鑑み、分母から除いて再分析した結果の値になる)
スマホよろず相談所
相談件数 100件程度/月
スマホ教室参加者 10人~15人程度/回
スマホの高普及率を基盤にした日高村と連携希望企業
事前登録件数 26件

令和5年3月末時点

健康事業への参加住民
健康事業の利用者数 600人以上(ほぼデジタルデバイド層)

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

事業においては、企業版ふるさと納税を主な財源に、連携として地方創生推進交付金事業、デジタル活用支援推進事業、集落支援員制度、地域おこし協力隊制度などを活用し、住民(特にデジタルディバイト層)のフォロー体制をどの自治体でも活用することのできる制度を中心に構築した。また、日々起きる問題に都度対処できるようにアジャイル型で事業運営を行っている。

成果をあげるためのポイント

村まるごとデジタル化事業に関しては、3者包括連携協定を締結して事業に取組んできた。デジタルディバイト層の解消という社会課題の解消にも寄与できるが、誰もが本格的に取り組んでいない中で、高い目標値の設定と課題にぶつかった際に、柔軟な官民連携の関係性と仕組みの中で、アジャイル型で課題解決できた点がポイントと考える。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

スマホ普及に関して、表出されたニーズから本質的なインサイトを仮説設定して、さまざまな取組みを実施し、実施しながら事業内容を改善していった。その間、行政だけでなく、プロジェクトメンバーの意識や情報の共有を行い、課題に取組むための前提条件を整えた上で、考えに共感いただいて、それぞれの役割を足並み揃えて実施する。その調整こそが調整する・される側の両方にとっても大変だったところだと感じる。また、本質的な課題の突き詰めには、多くのバイアスがあった。バイアスの歌唱には主に、認知の転換が必要になるため、バイアスに気づき、行動に移すための事業導線の設計と設計どおりに事業実施が困難な場合のチューニングは大変だったように記憶している。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

村まるごとデジタル化事業において一定のノウハウが蓄積したプロジェクトメンバーにおいて、横展開の組織の設立に向けて取組みを進めている。
単に、企業のサービスやソリューションを導入するだけでは、DX化の取組には繋がりにくく、いかに、導入したサービス等を住民やユーザーに利用いただいて、人口減少およびそれに伴う緊縮経済下において、いかに行政サービスを維持し、住民の福祉の増進に寄与できるかが取組むべきポイントと考えている。
企業版ふるさと納税を活用させていただいた経過もあり、ノウハウを社会に還元していくことは社会亭な責任と認識しているので、自治体においては相談いただければと思う。また、企業に関しても、単に既存のサービスやソリューションの売り切り型の関係性ではなく、自社のコンピタンスを活かし異業種間の連携のもと、地域課題にしっかりとコミットできるようにしていくことで、長期的に自治体・企業の両者にとって有益な関係を構築していける、そのような横展開の組織を検討してまいりたいと考えている。

連携団体
KDDI株式会社、株式会社チェンジ、株式会社トラストバンク、KDDI総合研究所、高知県立大学、その他
問い合わせ
部署
高知県日高村役場 企画課
電話
0889-24-5126
メールアドレス
kikaku@vill.hidaka.lg.jp
関連サイト
https://www.vill.hidaka.kochi.jp/kurashi/child_category_page.cgi?RANK=3&CATEGORY_ID=6&CATEGORY_ID2=16&CATEGORY_ID3=5