Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
紀伊半島における交通・観光のデジタル化事業
和歌山県橋本市(市町代表)はじめ、和歌山県内全9市町観光・文化・娯楽
実施年度
Digi田甲子園 2022夏
取り組み事例キーワード
観光MaaS、キャッシュレス化推進、新型コロナウイルス感染症対策
デジタルを活用した取組の全体概要
- 「高野山・熊野」という二つの世界遺産エリアにて、共通のシステムにより、交通・観光等の多様なコンテンツを含むMaaSのサービスを提供することで、スマートフォン一つで紀伊半島を周遊観光できるような環境を整備する。
- 具体的には、交通、観光施設及びアクティビティのデジタルチケットをスマートフォンで予約、決済、利用を可能とするWebアプリを構築。チケット購入者には、地域の飲食店や土産物店等で利用可能なデジタルクーポンを付与。交通・施設等での利用時には、スマートフォンの画面上にチケットを表示させ、改札等で読み取り、あるいは受付やレジ等で提示(施設は目視で確認)する。サイト上で、地図アプリ等とも連動させ、各施設等への経路検索を可能とする。
実施に至る経緯・動機
- これまで、「高野山」を中心に交通・観光のデジタル化の実証事業を実施しており、令和2年度には、高野山内におけるバスや観光施設のチケット、飲食店や土産物店等のクーポンをデジタル化し、予約、決済、利用をスマートフォン一つで可能とするWebアプリを構築した。続く令和3年度には、対象エリアを高野山の周辺地域に拡大するとともに、鉄道やレンタサイクル、レンタルEV自動車、観光タクシー等のチケットもデジタル化の対象に加え、MaaSとしての実証実験を行った。
- 令和4年度は、これまでの実証実験における課題を踏まえ、前記システムの改善や機能の向上を図りながら、「高野山」にてMaaSサービスの実装に向けた取組を進めるとともに「熊野」エリアにおいても、地域の交通事業者や観光施設等の参加を募りながら、高野山の事業と共通のシステムを利用する形でMaaS事業を展開する。この際に、高野山と熊野間を結ぶ交通を販売対象に加えることで、2つのエリアで間断なく利用できるようなサービスとし周遊促進を図る。
解決する課題の具体的内容
- 紀伊半島においては、二次交通事業者が数多く存在している状況があるが、各サービスの連携は限定的であり、地域外から来られる観光客にとって、目的地に到達するための適切な交通手段の把握が難しくなっている、また、発売箇所が限定されている商品も多く、現地でしかチケットを購入できないという課題があった。
- 加えて、今後のインバウンド回復後に向けて、対象エリアの交通や観光施設におけるキャッシュレス化の取組を推進させることが必要である。さらに、ウイズコロナ時代においては、安心・安全な旅行・観光を楽しんでいただくために、できる限り接触機会を減少させるような取組が求められている。
- これらの課題に対応するために、地域の関係者にも事業へ参画いただきながら、利便性の高い交通・観光の予約・決済システムの構築・チケットのデジタル化を進めるとともに、事業を通じて、スマートフォン一つで紀伊半島を周遊できるような環境を整備することにより、観光周遊の円滑化・消費の拡大を図る。
デジタルを活用した取組による成果
- チケットの購入数やクーポン等の利用数:3,122件
- 満足度:70.7%(5段階評価で「とても満足」、「満足」との回答)
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- 高野・熊野という2つの世界遺産エリアは、その精神的・歴史的魅力を背景に、ともに欧米豪を中心とする外国人観光客に人気の観光地あったが、複数の交通事業者が存在し、外国人からは利用が難しい状況にあった。このため、令和2年に紀伊半島外国人観光客受入推進協議会を設置し、県、市町、複数の交通事業者等が連携して、二次交通の統一的なインバウンド対応等に取り組んできたところ。今回は、この連携枠組を生かし、広域的なMaaS事業の展開を図ろうとするもの。
- 加えて、交通事業者や観光施設等のサービス参加者と利用状況に関する情報を共有するとともに、サービスの課題を汲み取る場を設けることで、システムの改善につなげていく。
成果をあげるためのポイント
当協議会の役割はあくまでデジタルチケットやクーポンを提供するプラットフォームを用意するまでとなるので、成果等が挙げられているのはサービスに参画いただいている事業者の皆様からの協力によるところが大きい。サービス開始前の調整への対応や窓口や車内等でのチケット等の確認作業、サービスに関する情報発信など、様々なご支援をいただいている。この観点からすると、当協議会がうまく対応できているかは別として、プラットフォームを提供する事業については、参画事業者の皆様との関係性の構築という点が重要となる。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
プラットフォームの構築という業務の性質上、関係者(システム関連事業者、その他業務担当事業者、サービス参画事業者、関係自治体等)が多くなることもあり、とりまとめ作業をしながら、システムを整えていく部分の業務量が大きくなる。前年度までに実施した実証実験においてこの点を把握できていたため、可能な部分は委託業務として発注したり、その他の団体等にも協力いただいたりしながら、できる限り上記業務に集中できるような体制を構築し、事業を進めた。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
外部へサービスを提供するDX化については、いかに多くの方に利用をしてもらうかというところが重要で、当協議会にとっても課題となっている。サービスをアプリとして提供するのか、あるいはダウンロードがハードルとなるのでWEB上で対応するのか。何でもかんでも連携すればいいのか、シンプルさを求めるのか。情報発信はどのような形が適切か等、検討すべき点が多くあるので、ぜひ上手く対応されているサービスを参考としながら取り組んでいただければと思う。
- 連携団体
- 南海電鉄株式会社、南海りんかんバス株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、龍神自動車株式会社、熊野御坊南海バス株式会社、明光バス株式会社
- 問い合わせ
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- 部署
- 紀伊半島外国人観光客受け入れ推進協議会(事務局:和歌山県観光交流課)
- 電話
- 073-441-2785
- メールアドレス
- e0625001@pref.wakayama.lg.jp