Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
地域住民の生活の質を高める移動支援、南花台モビリティ「クルクル」
大阪府河内長野市交通・物流
実施年度
Digi田甲子園 2022夏
取り組み事例キーワード
配車予約、地域コミュニティ機能強化、公共交通ネットワーク整備
デジタルを活用した取組の全体概要
- 地域住民が主体となり、AI運行バスシステムを活用した効率的なデマンド運行と、低速電動ゴルフカート7人乗り(19㎞/h以下)を活用した安全性の高い移動支援を実現。(令和元年12月運行開始)
- 地域住民のラストワンマイルの移動支援による生活利便性向上と、地域住民が主体となった運行チーム(現在約60名が参加、増加中)への参画による新たな生きがい創出、カート内での新たなコミュニティも生まれ、南花台のまちづくり全体にも大きな影響を与えている。
実施に至る経緯・動機
- 南花台モビリティ「クルクル」を運行するまち南花台は開発から約40年が経過する開発団地であり、こうした開発団地の再生モデル構築を目指し、河内長野市・大阪府・関西大学が連携し、平成26年度よりまちづくり事業を実施してきた。
- 地域のスーパー「コノミヤ」の空き店舗を活用し整備したまちづくり拠点「コノミヤテラス」を中心に「みんなの拠点づくり」「健康仲間づくり」「生活応援」「子育て子育ち環境づくり」「まちの情報発信」「事業者の会」の6つのプロジェクトを住民主体で立上げ活動を継続し、これらの取り組みを通じ、把握した地域の真の課題を把握し、課題の具体的な解決を積み上げてきた。
- その一つに、開発から40年が経過し、後期高齢者が急増する中、免許返納や、体調不良により自宅にこもる高齢者が現実的に多く存在することを把握し、高齢者の外出機会を増やし健康的な生活に誘導する取り組みの必要性について地域住民と共通認識を持てたことから、本取り組みをスタートした。
解決する課題の具体的内容
- 急激に人口減少・少子高齢化が進行する開発団地において持つ、根本的な共通の課題となる下記3点を解決する。
- 自宅にこもる高齢者の外出機会の創出
- まちづくりの担い手の創出
- 減少し続ける地域コミュニティ・地域活動の創出
デジタルを活用した取組による成果
地域住民による効率的なデマンド運行の移動支援を実現
複数の予約が入った場合に、それぞれの乗車ポイントと降車ポイントを効率的につなげるAIを活用し最適ルートが運転者に指示され、乗車・降車の確認ができるシステムを活用することで、経験のない地域住民の運行でも地域住民の足となる効率的なデマンド運行を実現した。
利用実績
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|
4月 | - | - | 44人 |
7月 | - | - | 61人 |
10月 | - | 27人 | 48人 |
11月 | - | 52人 | 134人 |
12月 | 142人 | 35人 | 162人 |
1月 | 146人 | 14人 | 132人 |
2月 | 223人 | - | 77人 |
3月 | - | 42人 | 93人 |
合計 | 511人 | 170人 | 751人 |
コロナ禍で2020年度より運休や乗車人数制限しているが、毎年度、利用者アンケートで9割以上の高い満足度評価を受けている
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
地域住民主体の運行
地域住民のボランティアにより移動支援を運行することにより地域の活性化や運行経費の軽減につながり、継続性を高めた。
低速電動ゴルフカートの活用
最高速度19㎞/hの低速車両を活用することにより、運行の安全性を高めるとともに、低床で乗り降りがしやすく、開放的な車両で乗車時の季節を感じることができる気持ちよさが利用促進にもつながっている。
有償化による運行継続性の向上
令和3年1月より1乗車100円の有償化を図った。必要性の高さから、有償後の乗車人数の減少はほぼなく、一定の収益を見込める状況となり、取り組みの継続性が見込めるようになった。
電柱2本に1本を乗降ポイントとしたデマンド運行
地域内にある電柱2本に1本(約300か所)を乗降ポイントとすることでほぼドア・ツー・ドアのデマンド運行が実現できた。
成果をあげるためのポイント
当該事業を実施する前から、地域住民主体で、市や府、民間企業と共に様々な地域課題を解決する「南花台団地再生モデル事業(咲っく南花台プロジェクト)」を推進していることから、実証実験をする際の地域住民の社会受容度が高く、スムーズに事業実施を進められたことが大きいと考える。実際の運行にも地域住民のボランティアが積極的に関わり、コロナ禍での運行方法の検討や飛沫防止シート等の自作など、出来る事を自分たちで実施するという主体性のある地域の皆様のおかげで実装に至ったと認識している。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
地域住民主体の活動をデジタル化するためには、そのデジタル技術を地域住民が自然に、簡便に使用出来る必要がある。そのために、利用者向けの説明会や勉強会を丁寧に行う必要がある。市だけでなく、システムの事業者にも現地に赴いていただき、地域住民と直接会話をしていただくなど、何度も説明会を実施していただいた。その様に、足を運んでもらう事により、企業の方にも地域住民との信頼関係を築いてもらうことで、順調に進めることができた。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
DX化を目的とするのではなく、DXはあくまで手段であることを見失わず、どのような目的でDX化するかを見失わない様にすることが大事だと考える。地域の課題解決に資するとともに、地域に馴染むシステムを導入しないと、実装にまで至らない可能性が高く、実証実験が実験で終わることから、もったいないことになる。当初から実装を想定して事業デザインを進めることが重要であると考える。
- 連携団体
- 大阪府、社会福祉協議会、関西大学、(株)コノミヤ、南花台自治協議会、(株)NTTドコモ、ヤマハ発動機(株)
- 問い合わせ
-
- 部署
- 河内長野市総合政策部政策企画課
- 電話
- 0721-53-1111
- メールアドレス
- kikaku@city.kawachinagano.lg.jp