Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
いねばん×いねタク~行政情報配信システムを活用したドアツードアのオンデマンド交通~
京都府 伊根町交通・物流
デジタルを活用した取組の全体概要
伊根町では、防災関連・暮らしの情報など暮らしに必要な情報を誰もが等しく取得できる行政情報配信システム(いねばん)を導入し、府内で唯一、町内の全世帯にタブレット端末を配備している。このいねばんを活用した、ドアツードアのオンデマンド交通(いねタク)を実施している。
実施に至る経緯・動機
- 少子高齢化が進行したことにより、町内における地域交通を維持することが困難となっている。
- コミュニティバスを運行することで、地域内の移動手段の確保に努めたが、伊根町は集落が点在しており、運転手の確保や経費面の問題等によりすべてのエリアをカバーするには至らなかった。また、運行本数も制限せざるを得ず、利用者目線に立った運用が出来ていなかった。
- コミュニティバスの無料乗車券の配布等の工夫も試みたが、利用者数や利用頻度は低調で、コミュニティバスの運行のみでは、地域住民の移動手段確保が十分に図れず、地域公共交通の再編が必要となっている。
- 同時に生じた課題であるアナログ行政防災無線のデジタル化(令和4年度までに対応が必要)に対応するため、音声放送のみかつ電波干渉の危険性も高い行政防災無線に代わり、携帯電話の電波を使用して音声と文字情報等を配信し、受信履歴から何度でも内容を確認することができる「いねばん」を導入。住民情報を符号化した世帯管理システムと連携し、端末の世帯配備の状況も把握できる取組は全国初であり、対象者を絞ったアンケート実施、自治会、小中学校のPTAなど配信先を限定した配信も可能となっていた。
- このような状況を踏まえ、町内に整備されたデジタル基盤(いねばん)を活用し、乗車場所にとらわれない、プル型サービスで誰もが利用できる新たな地域公共交通システムを構築することとした。
解決する課題の具体的内容
- 地域公共交通の主な利用者である高齢者においては、自宅からバス停までが離れており、移動や外出が困難な状況となっていたが、このシステムを通じて自宅から目的地に送迎できるドアツードアの運行体制を構築した。
- 毎日7:45~21:00まで運行され、利用の1週間前から当日30分前まで予約受付を可能とすることで、利便性の高い地域公共交通を実現した。
- 幅広い年代の方が簡単に予約操作をできるオンデマンド交通の予約アプリを開発するとともに、いねばん以外(個人のスマートフォン等)からでも予約可能とすることで、更に利便性を高めた。
- 加えて、幹線交通を利用して伊根町を訪れた人にも利用してもらうことにより「ラストワンマイル」の移動手段の確保も実現した。
デジタルを活用した取組による成果
取組が目指すアウトプット
- いねタクの予約件数
令和4年度の予約件数が7,065件で目標としていた7,000件を達成することができた。
取組が目指すアウトカム
- いねタクの利用者数
令和4年度の利用者数が10,227人と目標としていた8,300人を大きく上回る結果となった。
取組が目指す総合的なアウトカム
- 町内を走る公共交通利用者数(幹線バスを含む)
令和4年度の利用者が42,283人と目標としていた46,000人には届かなかったものの、約9%増となり一定の成果が上がったと言える。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- いねばんは世帯管理システムと連携しており、予約システムに世帯員を登録しているため、いねばん端末からいねタクの利用予約する際に、利用する人を指定して予約申込みをすることができる先進的な取組となっている。
- いねタクを利用する世帯の自宅の位置情報をシステムに登録しており、「自宅」を乗降場所に登録しているため、ドアツードアのサービスを提供できる。
- 予約があった際には効率的な乗合運行が可能となるように設定されている。
- 高齢者が簡単に予約申込みできるよう、いねタクの予約画面や操作方法など、数タップで完結するよう工夫している。
- 予約した内容は、予約操作の30分後と利用前日17時に確認メッセージがいねばん端末に自動送信され(Webアプリからの予約は除く)、予約を忘れることもないような工夫もしている。
- 観光客向けにWebアプリも整備し、個人端末から利用申込みをすることで、いねタクの利用(予約)ができるようにしている。
- 運行に必要な情報を有する予約システムは、万全なセキュリティ体制のデータセンタで管理している。
成果をあげるためのポイント
地域の実情にあった地域公共交通システムを構築したことがポイントと考える。住民情報と連携し、配備しているタブレット端末と世帯が把握できる「行政情報配信システム(いねばん)」を活用することで、”自宅”を乗降場所に指定することができること、また利用予約が利用したい日の1週間前から当日30分前までの間でできることなど、ドアツードア輸送や利用者目線の利便性が高い運行を実現した。また個人端末(スマホ等)からも利用予約ができるようWebアプリを開発し、観光等で当町を訪れた方のラストワンマイル利用などに対応したこともポイントであったと考える。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
当町は高齢化率が50%に迫っており、高齢単身世帯や高齢者のみ世帯も多いため、デジタルデバイドを発生させないようにする必要があった。そのため本地域公共交通システムの運用開始にあたり、地区老人会等に赴いて操作説明会等を開催した。
この高齢者を対象とした操作説明会の取組みは、グループや団体等に対して継続実施し参加者間の支えあいを促すとともに、「自分は利用経験者であるから操作を教えることができる」「○○さんができて、自分ができないはずがない」等のグループ内での競争原理が働くよう促した。また単発では効果が薄いため継続して行っていくことが重要と考える。
- 連携団体
- 株式会社デンソー、順風路株式会社、一般社団法人伊根町ふるさと振興公社
- 問い合わせ
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- 部署
- 伊根町 企画観光課
- 電話
- 0772-32-0502
- メールアドレス
- info@town.ine.lg.jp