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Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

AIを活用した地域防犯パトロール活動の活性化

愛知県名古屋市防災

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

AI活用、スマホアプリ活用、防犯パトロール、安心・安全確保

関連タグ

デジタルを活用した取組の全体概要

  • 防犯パトロールルートを自動で作成するアプリ「Patrol Community」を、地域防犯活動で使用している。利用者がパトロールしたい地点や距離など数項目を同アプリに入力すると、AIが過去の犯罪データや人口密度等の環境データから将来の犯罪発生確率を予測し、犯罪が発生する確率が高い地域を重点的にパトロールするルートを作成。
  • 地域の防犯パトロールで利用できるよう市がアプリの利用料を負担の上、地域団体等に無償で提供し、地域防犯活動の活性化に取り組んでいる。

実施に至る経緯・動機

地域における防犯活動は、犯罪の抑止において非常に重要な役割を担っている。一方で、ボランタリーな活動であることから、担い手の不足や、参加者の固定化などの課題を抱えていた。そのような状況の中で、令和2年度に先進技術社会実証支援事業(Hatch Technology NAGOYA)において、同アプリを地域の防犯パトロールで使用する実証実験を行った。実証実験参加者へのヒアリング調査では「犯罪予測に基づいてパトロールすべきところを案内してもらえるのは良い」、「これまで回ったことのない細かい路地、知らなかったような道を回って新鮮だった」との声があり、防犯活動が抱える課題を解決し、防犯活動の活性化に資することから本格実施に至った。

解決する課題の具体的内容

  • 効果的なパトロールをするためには、事前に犯罪の発生状況を調査する労力のほか、カンや経験が求められる。同アプリを使用することで、ルート作成の省力化による負担の軽減や、経験が浅くても効果的なルートが作成できるため、参加のハードルが下がり新たな担い手の獲得が期待できる。
  • また、同アプリではパトロール結果を地図上に記録しグループ内で共有できるため、パトロール実施状況を簡単に“見える化”することで、活動を改善するなどマンネリ化の解消に活用できる。さらに、第三者に活動を視覚的に伝えることができるようになり、自分達の努力が第三者から評価されることは、モチベーションアップにつながり活動の活性化が期待できる。

デジタルを活用した取組による成果

アウトプット
令和2年度 令和3年度
説明会等の実施 7回/約50名 7回/約200名
アウトカム
令和2年度 令和3年度
新規ユーザー登録者数 未測定 101名
総合的なアウトカム
令和元年度 令和3年度
犯罪被害への不安を感じる市民の割合 70.8% 62.7%

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

  • AIによる犯罪予測を用いたパトロールを、地域防犯活動に取り入れることは世界的にも先進的な取り組みであり、地域防犯活動の活性化により地域防犯力を向上させることは、安全・安心なまちづくりにつながり、地域住民の暮らしの利便性または豊かさの向上に資する取り組みである。
  • 予測に用いた犯罪データは愛知県警察が公開しているオープンデータを利用。同様のデータは全国で公開されており、オープンデータを活用した社会課題解決の取り組みとして他自治体への横展開が期待できる。
  • 既存の活動にデジタルを取り入れることで具体的な利用シーンを設定し、これまでスマートフォンやモバイルアプリを積極的に活用してこなかった層に対する利用の動機づけにつながる。
  • 導入段階では、防犯活動を中心的に担っている高齢者がメインユーザーとなることを意識し、同アプリの操作方法だけではなく、アプリのインストール方法等の初歩的スマートフォンの使用方法などの説明からきめ細かく対応した。デジタルデバイドの解消にもつながり、「誰一人取り残されない」社会の実現に寄与する効果もあったと考えられる。

成果をあげるためのポイント

AIを使うことで、パトロールに関する負担感や未経験者にとってのハードルを下げることができた。Hatch Technology NAGOYAという市役所の事業(市役所の各部署から社会課題などを集め、先進技術を活用した解決策を企業等から広く募集、マッチングをして実証実験を行うもの)を通じて、開発者のSingular Perturbations社とマッチングして、実際に地域のパトロールで使用した実証実験を繰り返したことが、成果を上げられた秘訣であると考える。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

地域防犯の担い手の年齢層が高いこともあり、アプリ事態への拒絶感があるのが難点であった。地域の求めに応じて、操作方法を丁寧に説明したり、簡単なマニュアルを作ったりして、少しでも拒絶感が少なくなるよう工夫して対応した。
また、利用者を、学区連絡協議会または防犯ボランティア協会締結団体に限定していたが、利用者数の伸び悩みが課題であった。そこで、防犯活動をしている民間団体にも門戸を広げることで、より多くの方にご利用いただけるようになった。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

本事業の担い手が高齢層のため、画期的なシステムにもかかわらず、なかなか浸透しないのが本当に歯がゆかった。しかし、市民の利便に資する取り組みであることを確信していたので、丁寧に一つずつ課題を解決していった。
一歩ずつの小さな歩みが、少しずつの浸透につながるのだと思う。AI技術が市民活動を向上させる未来を信じて、あきらめずに歩みを進めてほしい。

連携団体
地域自主防犯団体、防犯ボランティア団体(株)Singular Perturbations
問い合わせ
部署
名古屋市市民生活部地域安全推進課
電話
052-972-3128
メールアドレス
a3128@sportsshimin.city.nagoya.lg.jp
関連サイト
https://www.city.nagoya.jp/sportsshimin/page/0000141627.html