Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した自治区(自治会、町内会)から居住区民への情報配信
長野県富士見町子育て・防災
実施に至る経緯・動機
現在、自治区の情報配信は、町が構築した告知放送システムのページング機能(電話を利用して録音→専用受信機から放送)を利用して行われているが、様々な課題を抱えている。これらの解決策の一つとして当該取組みを始め、現在、実証実験として効果を測定している。
解決する課題の具体的内容
- 告知放送システムのメーカーサポート終了(告知放送システム事業からの撤退)が数年後に迫っており新たな伝達手段の検討を迫られている。
- 告知放送サービスの加入率が年々低下しており、
- 告知放送だけでは全ての居住区民へ情報が行き渡らない。
- 未加入者へは告知放送以外の手段(文書の配布や個別伝達)での伝達が必要であり、自治会役員の負担となっている。
- 専用の受信機、伝送路(地元のケーブルテレビ事業者から借用)が必要であり、導入設置費用および月々の使用料は加入者が負担している。
- 受信機は固定設置であるため、屋外作業や勤務先での情報取得ができない。
デジタルを活用した取組による成果
- 公式LINE登録者数
1,419人(15歳以上の人口12,652人、世帯数6,137の内) - 利用実績(1回でも利用した自治区)
39地区中12地区が利用
※運用開始(令和4年5月9日)から日が浅いため、効果測定に十分なデータは得られていないが、令和4年9月20日時点での成果。
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- 情報配信ツールは、システム保守の継続性を重視し、メジャーなクラウドサービス(AWS,Kintone)を組み合わせたローコード開発とした。また、自庁もしくはどのベンダーでも保守、機能見直しができるよう、プログラム、開発ドキュメント類一式を全て納品対象とした。
- 他地区への誤配信がないよう自治区ごとの専用アカウントとした。また、必要最低限の入力操作で配信ができるよう簡潔な入力フォームとした。
- 情報を受信するためのプラットフォームは利用者が多いLINEとした。自治区からの情報配信だけでなく、町からのお知らせ(登録者全員への配信)もあわせて行っている。
- 町が運営管理するコワーキングスペースを利用する企業に開発を委託することで産業振興にも配慮した。
成果をあげるためのポイント
デジタル化自体が目的とならないよう特に心掛けた。今回の取組みは既存サービスの入れ替えではなく、働き手世代などが外出先でもサービスを受けられるよう新たな選択肢を追加することを目的としてシステム構築を行ったものである。
「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」のためには、画一的に新しいものへの置き換えを行うだけでなく、年代やライフスタイルにあわせた選択肢を持たせることも重要であると考えている。
また、DX推進部門主体で取組みを進めるとどうしてもデジタル化が目的になってしまいがちなので、問題意識を持っている原課が主体となり、DX推進部門が協力して推進していくような体制の方が、より本質的な問題解決に繋がると感じている。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
既存の情報配信システム(告知放送システム)で自治区から住民へのお知らせを配信する場合は専用ダイヤルを利用して音声を登録するが、LINEを利用して配信を行う際には、このオペレーションに加え、専用アプリを利用してテキストを登録する必要がある。1回のオペレーションで両システムに情報配信を行うことが理想だが、様々な課題があり実現には至らなかった。配信の手間が増えるため、自治区によって利用にばらつきがあり、全ての自治区が積極的に利用しているとは言えない状況にある。実際に情報を受け取る住民は多くの情報をLINEで受け取りたいと考えているため、自治区へ積極的な利用を呼び掛けるとともに操作研修も行ってきた。すぐに効果は得られないもののこのような活動を地道に行っていくことが大切であると感じている。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
住民の利便性向上や事務の効率化など効果が期待できることは理解しているものの、現状の業務で手一杯な部署では、新しい取り組みに対して消極的、否定的になってしまい、DX化がなかなか進まない場合が多い。また、他の自治体でも多かれ少なかれ同じような状況があるとも聞いている。
トップダウンやDX推進部門の創設などで推進を図っている自治体も多いが、デジタル化自体がゴールになってしまったり、業者が提案したシステムを導入するだけになったりと、十分に効果が得られないケースも少なくないようである。まずは、住民や職員が抱える問題を放置、先送りしないような、職場の雰囲気づくりや体質改善を図ることが重要だと考える。
- 連携団体
- アイフォース合同会社、自治区(自治会、町内会)
- 問い合わせ
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- 部署
- 長野県 富士見町 総務課 文書情報係
- 電話
- 0266-62-9321
- メールアドレス
- soumu@town.fujimi.lg.jp