Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタル活用による患者・来訪者の負担軽減
石川県小松市医療・介護
実施年度
Digi田甲子園 2022夏
取り組み事例キーワード
顔認証、キャッシュレス決済、住民負担軽減、新型コロナウイルス感染症対策
デジタルを活用した取組の全体概要
- 小松市民病院は、石川県の南加賀医療圏(小松市・加賀市・能美市・川北町)の中核医療機関で、小松市が運営する公立病院である。
- コロナ禍においても、医療サービスの質や利用者の満足度を高めるため、非接触方式の丁寧な対応と利便性向上に努めている。
- 来院する患者・来訪者に対し、具体的に提供するデジタルサービスの主なものを列挙。
- 診察券代わりに顔認証で本人確認できる外来受診受付
(令和2年1月に導入。全国2例目、自治体病院では全国初導入) - 患者ごとに最適な問診事項を生成するAI問診
(AIが最適な問診事項をタブレットに自動生成、システムに問診共有) - コロナ禍における最新機器等の積極導入
(分娩監視装置、感染管理システムなど) - 会計窓口キャッシュレス化
(診療料金、診断書の文書料などの医療費支払のキャッシュレス決済や、インターネットバンキングの活用) - 顔認証による手術室の入退室管理
(感染防止及びセキュリティ対策のため顔認証による本人認証) - 通院負担軽減のためのオンライン診療(令和4年7月開始)
(スマートフォン等で時間や場所にこだわらずに受診)
- 診察券代わりに顔認証で本人確認できる外来受診受付
実施に至る経緯・動機
コロナ禍における新しい生活様式の対応、職員の働き方の見直しはもちろん、何よりも患者と利用者の皆様へ、誰1人取り残さず、やさしく安全で高度な医療を提供する不断の努力が常に求められている。
解決する課題の具体的内容
前述のことから、デジタルを活用したサービスを実装することによって、「患者の待ち時間短縮につながるスマート対応、職員の業務効率化、感染対策強化」といった利便性と安全性の向上改善が実現できた。
デジタルを活用した取組による成果
- 顔認証登録患者数:令和5年4月時点:1,039人
- これまでのAI問診実施件数:2065件(令和5年4月10日現在)
※令和4年5月より運用開始 - 患者待ち時間短縮:0.5H/人、診療終了時間短縮:1H/日
※他病院での事例 小松市民病院は令和4年5月より運用開始 - 分娩監視装置使用回数:3~4件/月
これまでの新型コロナ入院患者数:682人(令和5年3月31日現在) - クレジット支払割合:令和4年度:32.26%、令和3年度28.90%、令和2年度27.75%
- 手術室の一日の扉開閉回数:約200~300回
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- 顔認証による外来受診受付機導入により診察券が無くても受付が可能になった。併せてそれ以外に診察券が必要であった採血受付機、自動精算機も診察券が不要となるシステムに更新し、受付から診療、会計まで診察券レスでの運用が可能となるように工夫を行っている。その他、顔認証用に撮影した顔写真は電子カルテ上に表示されるため、外来や救急、検査、手術時等での患者取り違え防止にも効果がある。なお、感染対策として、令和4年4月からマスク着用時の顔認証を可能とした。
- AI問診では問診内容を電子カルテに共有する際に、閉域網の専用線でデータ通信を行うことで、サイバー攻撃を防ぐ対策を行っている。
- 分娩監視装置は胎児の心拍数や妊婦の陣痛周期を遠隔でリアルタイムに確認でき、職員のマンパワーを削減している。 感染管理システムは電子カルテと連携し、リアルタイムな検査結果等の情報を基にウイルス保持者の把握ができ、感染拡大の早期発見や感染経路の調査を行うことができる。また職員のワクチン接種情報や抗体価を把握、管理できるため、抗体価が基準値未満の職員を簡便に確認することができるので、感染拡大防止やワクチン接種率の向上が期待できる。 各出入口には感染発生の早期から非接触方式の体温計を設置、密となる箇所にモニター35基を配置し、CO2濃度の見える化による換気を促進、外来待合に紫外線ウイルス除去装置を20基整備するなど感染対策を行った。また、感染発生・災害時に迅速な緊急連絡体制の構築のため、LineWorksを活用している。
- 平成25年6月から、24時間クレジットカードでの医療費の支払いを可能としたことにより、患者のニーズへの対応と非接触方式による感染症対策に資する。また、令和4年4月から、公金をインターネットバンキングで取り扱っており、リアルタイムでの入出金の管理・確認が可能となり、スムーズな業務実施が可能となっている。
- 顔認証による入退室管理は、なりすましが困難なためセキュアであり、物理的な鍵やICカードを持つことやパスワードの設定が不要であるため、紛失や盗難によるセキュリティリスクがなくなる。また非接触方式で認証できるため感染症対策としての活用ができる。
- オンライン診療の「感染症のリスクを避けられる」「外来診療の待ち時間がない」「インターネットに接続できればどこでも診療を受けられる」といった利点は患者の利便性や通院の負担軽減に資すると思われる。
成果をあげるためのポイント
当病院のデジタル化はデータやデジタル技術の活用により組織全体の大きな変革を目指すことであるが、いきなり大規模に始めるのではなく、まずはスモールスタートで小さいことから始めて成果を出すことがポイントになると考える。スモールスタートで始めることで、失敗してうまくいかないことがあったとしても課題を早期に発見し、改善や修正を行うことができるし、小さく始めて徐々にデジタル化を組織全体に拡大していく際の土台になると考えられる。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
職員の中にはDXによる業務の効率化に対する意識の違いや、パソコンやタブレット等の情報機器の得手不得手があるため「デジタル化を実施することで逆に今までより新たな手間が増えるだけで業務の効率化につながらないのではないか」といった不安な気持ちがハードルとなっているように思われる。そこで院内でICT検討委員会を立ち上げ、できるだけ職員の負担とならないような運用方法の検討やシミュレーションを行ったり、一部の部署にて先行実施することで実際に「今までの運用と比較して大きな負担とならない」とか「デジタル化が業務の効率化につながる」という実感を職員に持って貰ってから、他の部署へも運用を広げて行くという様に時間をかけて丁寧に進めて行った。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
いきなり大規模に始めるのではなく、まずは小さいことからでもDX化に取り組んでみよう。まず結果を出すことが組織全体でDX化を進めていくうえで重要だと思われるからである。小さいことから始めても、うまくいかない可能性はあるが、失敗を許容しながら少しずつでも取り組みを進めて行くことが組織全体のDX化に繋がっていくと考える。
またDXを進めていく上でAIやRPAといった高度なITの知識のみならず、DXの推進により生じるランサムウェア等のサイバー攻撃といったセキュリティリスクに対するセキュリティ強化策の知識を持った人材が必要になっていく。これらの知識を有する新たな人材を採用する必要があるが、優秀なIT人材を新たに雇い入れることが難しいという状況もあるので、組織の中にいるIT関係の学部を出た職員やデジタル技術を得意とする職員が積極的にDX化に携わってもらえるような体制づくりを進めることやIT人材の育成も大切だと考える。
- 連携団体
- 小松市(小松市民病院)
- 問い合わせ
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- 部署
- 小松市民病院総務課
- 電話
- 0761-22-7111
- メールアドレス
- cbsomu@city.komatsu.lg.jp