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Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

燕版共用受発注システム「SFTC(Smart Factory Tsubame Cloud)」構築・導入促進事業

新潟県燕市生産性向上

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

クラウドサービス、生産性向上、事業者負担軽減

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デジタルを活用した取組の全体概要

産学官金連携によるコンソーシアム「燕市IoT推進ラボ」は、受発注情報や製造進捗状況、設備稼働状況等を取引企業間で共有するクラウドサービス「SFTC」を3年間かけて構築し、令和4年度から本稼働を開始した。企業間でリアルタイムに必要な情報を共有できる本システムの活用により、燕産地全体の生産性向上が期待され、今後、地元企業への導入拡大を進めていく。

実施に至る経緯・動機

燕市には、金属加工を中心とした製造業を営む中小企業が約1,700社集積しており、複数の企業が協力しながら1つの製品を作り上げるサプライチェーンを形成している。この分業によるものづくりは、変化に強く、各社の技術を特殊化・高度化できる一方、受発注内容や出荷状況、請求書などの様々な取引情報のやり取りが発生する。また製造工程の進捗状況や他社の設備稼働状況の把握も難しく、生産性向上のボトルネックとなっていた。これらの課題を解決するには企業単体では限界があることから、産学官金が連携して「燕市IoT推進ラボ」を設立し、本システムの構築、DXによる課題解決を目指すこととなった。

解決する課題の具体的内容

燕市の企業は、一部の先進企業を除き、バックオフィスのデジタル化が遅れている傾向にある。これまで1つの製品を作る際、見積や受発注、出荷や請求など、業務プロセス毎に帳票を作成し、FAXや電話等のアナログな方法でやり取りすることが慣習となっていた。従業員は帳票作成に膨大な労力を費やすほか、作成した帳票は紙に出力して保管しており、問合せがあれば探すといった現状であった。本システムを活用することにより、取引に必要な情報はすべてクラウド上でデータ管理され、企業間でリアルタイムに情報共有できるため、帳票作成、管理、問合せの時間を削減できるほか、誤入力やそれに付随する確認業務を減らすことも可能である。また、注文状況・製造状況の見える化による業務の無駄・ムラを防ぐとともに、データ蓄積が可能となったことで、容易にデータ検索可能なほか、需要予測や生産計画策定にも活用することができる。

デジタルを活用した取組による成果

取組のアウトプット
  • 導入済企業数:5社(製造業)※応募時点
  • 導入準備企業数:26社(製造業、卸売業ほか)※応募時点
取組のアウトカム
  • 実証段階における参加企業の対象業務時間の平均短縮割合:約70%
  • 併せて、属人化していた事務作業の進め方や様式が社内で統一されることによるミス削減や、ペーパーレス化による効率化、コスト削減効果を実感しているなどの声を聞いている。本稼働後も引き続き効果検証を行っていく。
  • システムの導入により、導入企業の生産性向上が図られるとともに、導入企業が増えるほどシステム全体の運用コストが下がるなど、後続企業の導入メリットが増大し、好循環が生まれることが見込まれる。

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

  • 本システムは産学官金の連携により実現しており、システム構築にあたっては、燕市IoT推進ラボ会員企業の実際の取引情報を用いた実証実験により、生の声を拾い上げながら機能検討を行った。
  • システム導入に必要なものは、インターネットへの接続環境とシステムを運用するためのPC・タブレット等のデバイス、アカウントに設定するメールアドレスのみで、テレワークにも対応可能である。
  • 本システムの運用経費については、ユーザー企業からの利用料金で賄っており、事業の自走を実現している。利用料金は利用内容や企業規模に合わせた段階的な設定とすることで、企業負担を最小限に抑える工夫をしている。

    <月額利用料金>

    • 受発注機能:3万円
    • 発注機能のみ:2万円
    • 受注機能のみ:1万円
    • 受注機能のみで従業員10人以下:5千円
  • 本システムは、中小企業共通EDIの標準仕様に基づいた取引項目を管理しており、取引項目のマッピング機能により、企業毎に異なる取引情報のやり取りにも対応できる。また、各企業は出力項目を選んでデータ出力(csv、json)可能。各企業の基幹システムへスムーズに連携できるようにした。
  • 本システムでやり取りされる情報は、直接関わりのある企業間にのみ共有される仕組みであり、関わりのない企業に情報が公開されることはない。

成果をあげるためのポイント

大きなポイントとしては、システムと当市の産業構造がマッチしていることが挙げられる。共用受発注システムは、地域の企業間取引をクラウドで行うものであるが、燕市では地域内でサプライチェーンが構築されていることが多く、発注者側が主体となって取引先を巻き込んで導入することができればメリットが非常に大きいと言える。
また、課題把握やシステムの仕様の検討を進めていく上で、中心となる協力企業があったことも大きなポイントではないかと考える。実際の取引情報を使用した実証実験を通して、生の声を拾い上げながら機能検討を行うことができた。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

企業DXを官民連携で推進していくにあたり課題となるのが、システムの運用を自走させていくことである。本システムの運用経費については、ユーザー企業からの利用料金で賄っており、事業の自走を実現している。利用料金は利用内容や企業規模に合わせた段階的な設定とすることで、企業負担を最小限に抑える工夫をしている。また、現在も同様であるが、導入企業をいかに広げていくかが課題であると考える。
紙の取り扱いに慣れてしまっている企業も多いため、本受発注システムだけでなく、幅広く企業DXを支援していく必要があると考えている。
DX関連の補助事業のほか、セミナーの開催や、産業団体との定期的な意見交換など、継続的に企業DXを支援する体制を維持していくことが大事だと思っている。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

DXに必要なことは、課題把握を正確に行うこと、ユーザビリティを考慮することだと考える。どれだけ高機能なシステムを導入しても、課題解決に繋がらなければ、そして使われなければ意味がない。そのためには、担当者レベルでの課題抽出やユーザビリティの確認等を行っていくことが大事ではないかと考える。また、AIなど先端技術が目まぐるしく進歩しているので、常に新しい技術にアンテナを貼り、関係者と情報共有を図っていくことも必要だと考える。

連携団体
燕市IoT推進ラボ(燕市、ユーザー企業〔市内中小企業〕、ITベンダー企業、燕商工会議所、吉田商工会、分水商工会、燕三条地場産業振興センター、第四北越銀行、協栄信用組合、新潟大学、長岡技術科学大学、新潟工科大学)
問い合わせ
部署
燕市産業振興部商工振興課
電話
0256-77-8232
メールアドレス
shoko@city.tsubame.lg.jp
関連サイト
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/12004.html