Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。
デジタルを活用した取組の全体概要
- 港区が、子育て世代の区民に対して、以下のような機能を有するアプリを提供する取組。
- 乳幼児健診や乳幼児一時預かり、区の子育て応援事業などの予約
- 保育園入園申し込み時に家庭状況によってパーソナライズ化される必要書類や空き状況の確認
- 保育サービスの専門相談員「保育コンシェルジュ」の予約
- 予防接種のスケジュール立案、AI管理 など
- 今後、実装予定の機能
- 予防接種予診票等発行の申込機能
- 母子手帳に記載された各種記録のOCR読み取り機能
- 出産・子育て応援交付金に対応した妊娠8か月アンケートをはじめ、区からのアンケート等の配信及び回答機能
- 産後母子デイサービス及び乳房ケア事業で活用するデジタルクーポンの発行
解決する課題の具体的内容
- 低出生体重児の成長記録を作成する場合、通常想定される成長曲線から乖離するために記載がしづらい、わかりづらいという課題があったが、アプリを修正月齢へ対応した仕様にしたことで、低出生体重児でも成長曲線の確認ができた。
- 母子健康手帳を紛失すると、保護者が管理する母子記録のほとんどを失い、就学段階が上がった際などに記録の提出が困難になる等の課題があったが、母子健康手帳の記録をアプリにも保存(入力または写真)しておくことで、データを港区独自データベースに保管管理し、母子健康手帳を紛失した際でも過去の記録を確認可能とした。
- 種類の増加等の理由により複雑化し、接種率の低下や間違い接種の増加などの課題があった子ども予防接種について、AIを搭載した予防接種スケジューラーの機能をアプリに搭載することで、個々の子どもに合わせたスケジュール作成や変更時の自動調整(通知)等を行い、適切な時期に必要な接種を案内可能とした。このことにより保護者が複雑な予防接種スケジュールを立案する必要がなくなり、適切なタイミングで通知(メールやスマートフォンへのプッシュ通知)を行うことで接種率が向上した。また、誤った接種間隔等で接種を受けに行く可能性が減少し、結果として不適切な間違い接種が減少した。
⇒予防接種や健康診査の情報を確実に届け、接種率を向上させるとともに、接種間隔ミス、間違い接種を防止することができた。 - 保健所で実施される乳幼児の健康診断や、乳幼児一時預かり事業は、予約を受け付けての実施であり、開庁時間内に予約手続きを行う必要があったため共働きの家庭などは、利用に障壁があったが、24時間申し込み可能な予約システムをアプリに搭載したことにより解決した。
- 保護者が必要とする子育て情報や、子育てイベント情報、予防接種、及び健康診断等の子育て支援情報は、多くの場合に、必要とする対象者が能動的に調べるなどして情報を取りに行く必要があったが、アプリ上に登録可能な生年月日情報から対象者を抽出して、子どもの年齢や性質に応じた情報提供を区が積極的に行うことを可能にした。
- 保育園入園を検討する世帯は、区が公表する園の一覧と個別の地図情報を見比べて自宅からの登園可能性等を検討する必要があったが、アプリ上にマップ機能を搭載することで、現在地や自宅周辺から保育園までの所要時間や、定員・入園可能月齢といった詳細情報を検索することを可能にし、直感的な情報の検索・取得を可能にした。この機能は予防接種や健診の受診可能医療機関を検索する際にも同様の課題解決に役立っており、ワンタッチで予約の電話をかけることも可能にしている。
- 保育園入園申請時や入園後に必要となる書類は、家庭の状況、例えば「入園希望の理由」や「配偶者やお子さんの状況」により異なり、書類不備や提出漏れがあったが、上記の家庭の状況を詳細にアプリ上で回答することで、必要となる書類を検索することができ、書類不備や提出漏れを防ぐことができた。
- 保育コンシェルジュ(相談者の個々の家庭状況等から、きめ細やかな保育サービスを提案する専門の相談員)の予約申し込みの受付に、区職員の業務が圧迫されていたが、アプリ内へ24時間申し込み可能な予約システムをアプリに搭載したことにより解決した。
デジタルを活用した取組による成果
- 令和2年半ばの導入から定期予防接種における年間の間違い接種件数が44.1%減少した。
(令和元年度:74件/年、令和2年度:68件/年、令和3年度:38件/年) - 小児(ここでは7歳半未満)の予防接種率が前年度比3.9%、前々年度比2.5%上昇した。
- 保育コンシェルジュの予約を24時間可能にしたことで、電話での予約数が半分以下になった。
(アプリ実装前は8:30-17:15までの予約時間であったため、申込締切り前には多くの予約電話がかかってきていた) - 子育てのスタートから間もなく、多くの予防接種をスケジュール立てて受けていかなくてはならない0歳児段階の登録率が85.7%に到達した。
(0歳区民:2,428人、0歳登録子ども数:2,080人、令和4年3月1日時点)
本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点
- 下記の子育て世帯向けサービスを一つのアプリ(Webまたは、スマートフォン上から利用可能。)に搭載し、高い利用率を実現した。
- 予防接種AIスケジューラー
- 母子健康手帳の記録内容のデジタル保存機能
- 乳幼児健診の24時間予約機能
- 母子保健健康教育(両親学級)等の24時間予約機能
- 子育てひろば事業の空き状況確認、及び24時間予約機能
- 乳幼児一時預かりの空き状況確認及び24時間予約機能
- プレママ応援事業の面接24時間予約機能
- 保育コンシェルジュの24時間予約機能
- 近隣保育園の位置・詳細の確認機能
- 入園関連書類の検索機能
成果をあげるためのポイント
- 母子手帳を紛失した際も、過去の予防接種履歴が確認できるため、様々な間違いが防げている。
- AIスケジューラー機能で、個々の子どもに合わせたスケジュールの生成等ができることで、予防接種の接種間隔等の間違いが防げるようになった。
- 妊娠期からの子育てイベント、予防接種、健康診断等の子育て支援情報を年齢に応じて提供できているため、それらに関連する問い合わせが少なくなっている。
- 子育て関連の情報プッシュ通知、保育園申し込みをはじめとする電子申請、相談予約・施設利用予約・一時保育予約などの受付ポータルとして、24時間対応が可能となった。
デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法
応募用の動画、資料作成を仕事の合間にするのが大変だった。取材形式で、プロの方が作ってくれる仕組みがあれば、もっと応募しやすいと思った。
また、最初に母子手帳アプリを導入した予防接種担当でシステムの管理、委託契約や支払い事務を行っているが、現在では健康推進課、保育課、子ども家庭課をはじめとする子ども関連の多くの部署が利用するものとなっているため、子ども関連のDXに特化した管理部門が必要と認識している。今後はそうした部門での管理に移行していきたい。
今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス
DXは、BRRなしには成り立たないし進まない。このことを意識するとともに、現行業務をシステムに置き換えるのではなく、現行業務の問題点を洗い出して改善のためにシステムを利用するように心がけてほしい。ただシステム化することが目的となったDXは、必ず失敗する。
- 連携団体
- 株式会社ミラボ
- 問い合わせ
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- 部署
- 港区みなと保健所 保健予防課 保健予防係
- 電話
- 03-6400-0081