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Digi田甲子園の事例を中心に、
デジタルを活用した地域の
課題解決や魅力向上の優れた
取組をご紹介します。

オートコールソリューション等を活用した災害発生時の避難誘導

埼玉県上里町防災

実施年度

Digi田甲子園 2022夏

取り組み事例キーワード

デジタルを活用した情報伝達、安心・安全確保、デジタルデバイド対策、職員負担軽減

関連タグ

デジタルを活用した取組の全体概要

高齢者世帯やスマートフォンなどを持たない住民に対しても必要な情報を即時に届けるなど、デジタルデバイド対策を意識した災害発生時における住民向け情報発信と避難所運営等の災害対策業務における職員間の情報伝達の効率化を目的とし、予め登録した固定電話に音声ガイダンスによる案内を一斉架電する「オートコールソリューション」、避難者が避難所に到着したことを検知する「省電力IoTセンサーと地図情報」、「ビジネスチャット」などを活用した、発災時における避難誘導等を実施した。(避難訓練にて試験運用)

実施に至る経緯・動機

  • 令和元年東日本台風(台風19号)の豪雨によって、一時、町の半分を囲む2つの一級河川(烏川・神流川)の氾濫危険性が高まり、町内9ヶ所の避難所を開設、約800人の町民が避難を行うとともに役場職員のほとんどが避難所運営等の災害対策業務にあたった。そうした中、各避難所の状況把握や避難所運営にあたる職員間の情報連携手段が不十分であったことや、(防災メール等の通知はあるものの、スマホ等を持たない方への対応として)防災無線等による避難指示などを実施したが強風・豪雨等により放送がかき消されてしまい聞こえなかった(避難できなかった)等の課題が見えてきた。特に2つ目の課題については、高齢者世帯やスマートフォンなどを持たない住民に対しても必要な情報を即時に届ける情報提供手段を確保していく必要があることを強く認識した。
  • 全国的に高齢化・人口減少が進み、本町を含め多くの自治体で若年労働力の絶対量が不足し、経営資源が大きく制約されることが予想されるなか、デジタル技術を活用し、既存の制度・業務を大胆に再構築することで、多様な地域課題に対応しながら住民サービスを継続的かつ安定的に提供していくことを目的としNTT東日本と連携協定を締結した。(令和2年1月17日締結)

解決する課題の具体的内容

これまでの災害時の避難誘導では、住民への情報伝達や職員間の情報伝達に時間を要していたが、予め登録した固定電話に合成音声による案内を一斉架電する「オートコールソリューション」や避難者が避難所に到着したことを検知する「省電力IoTセンサーや地図情報」を活用し、避難行動要支援者等への電話音声による一斉プッシュ型情報発信や、対象者の避難状況を可視化、「ビジネスチャット」で職員間の情報伝達と救助等の迅速な応援要請をすることが可能となった。

デジタルを活用した取組による成果

  • 避難誘導対象者への架電時間
    【対応後】45.081秒で52名の対象者に一斉架電
    【従来】職員が1件1件架電、1件につき15~30秒程の時間を要する。(22.5秒×52名とした場合、1,170秒→約20分)
  • 避難状況の確認の速度
    【対応後】センサーと地図情報の連携により52名の避難状況を一斉に把握(地図情報システムの画面遷移に約20秒で一覧表記)
    【従来】職員が1件1件電話確認を行い、避難状況を確認、登録管理。1世帯2分程度(電話応対時間含まず)(2分×52人=104分)
  • 電話応対率や支援希望者の把握
    【対応後】ビジネスチャットに「状況教えて」と投げることで即座に現状把握と支援希望者の認識が可能(1秒~)
    【従来】1事案ごとの電話応対を管理し、データベースにて登録管理。1世帯1分程度(電話応対時間含まず)(1分×52人=52分)

本取組の特徴的な点やデジタルの活用において工夫した点

今までも情報を一斉配信する仕組みはあったが、「省電力IoTセンサーや地図情報」や「ビジネスチャット」など様々なサービスを組み合わせることで、一層のデジタル化による業務効率化や住民サービスの向上を実現した。また、音声ガイダンスの内容や運用時におけるフローなどを、現場目線で検討し、アジャイルに設計・構築したことで、本町の現状にマッチし、導入後も継続して活用しやすい仕組にした。これに伴い、業務効率化の達成により、職員はパーティション設置といったコロナ禍特有の避難所開設についても今までと同様の時間で準備することができた。(試験運用においては、NTT東日本の提供するソリューションの技術実証の観点により費用負担なし。)

成果をあげるためのポイント

デジタル活用に対してかねてより職員等から「難しい」「良く分からない」と言った声が度々出ていたところであるが、令和元年東日本台風(台風19号)発生時の住民避難と災害対応の中、対応における課題意識や危機意識が職員全体に生まれたところ、地域課題解決等におけるデジタル活用に関わる連携協定を結んでいたNTT東日本様よりこの度のオートコースソリューション等の具体的な提案をいただいた。実際に課題に直面したこと、官民連携により具体的なデジタル活用案が示されたことが、デジタル活用に対する不安といった組織風土を変え、今回の取組に至る結果となった。

デジタル化を実施するにあたり、苦労した点と対応方法

当町の取組については避難誘導訓練による活用であり、実際の発災時での活用には至っていない。今度の実装にあたっては、オートコールを架電すべき対象者をどのように登録いただくのか、IoTセンサーはどのような対象者に配布するのか、などの対象者を明確にするなどルールづくりが必要となる。また、「発災時にしか利用しないシステム基盤」では、緊急・有事の際、そもそも職員が利用できない状況に陥ることが想定されるので、定期的な利用訓練や、恒常的に利用するシステムとしても活用できる環境整備が必要であると考えている。

今後DX化に取り組む自治体等へのアドバイス

DXの推進において、デジタル(D)はあくまでも手段であり、最も重要なのは「どのような課題を解決するのか」という変革(X)に向けた目的意識である。デジタル活用そのものが目的になってはいけない。全ての課題がデジタルで解決できると思いこむことは最も危険であるが、一方で今日においてデジタル活用という手段が課題解決の選択肢に登場しないこともない。こうした「目的意識」と「常にデジタル活用の可能性を探る視点」が、トップをはじめ全ての職員に培われるよう、組織全体としてトレンドとなっている技術や優良事例等の情報に触れられ、常にデジタルリテラシーの向上を図れる環境づくりが重要であると考える。その上では、ワークライフバランスの推進や働き方改革など、職員個々が「学び」や「自己研鑽」に励むことができる一定程度の余裕づくりも重要である。

連携団体
東日本電信電話株式会社埼玉支店
問い合わせ
部署
上里町 総合政策課 情報システム戦略係
電話
0495-35-1238(直通)
メールアドレス
nwinfo@town.kamisato.lg.jp
関連サイト
http://www.town.kamisato.saitama.jp/bousai/